2010年 読書 短文感想    最終更新7月27日

S・A→心から読んでよかったと思える本

渚にて/ネビル・シュート……核戦争後、世界の終わりをつづった小説。静かな感動を味わえました。

暴力教室/エヴァン・ハンター……学級崩壊のクラスを受け持つことになった熱血教師を戸惑わせる、学園一の問題児の描写が秀逸。この作者の本は今までに12冊読んでいるが(後何冊か読む予定)、この作品はあまりにもずば抜けている。

自動車/アーサー・ヘイリー…自動車都市デトロイトを舞台に、工場労働者からデザイナー、会社のトップまで様々な立場から自動車に関わる人々を、徹底した取材に基づいて描いた傑作。

ウィンター・キルズ/リチャード・コンドン……ケネディ大統領暗殺を題にとった、めくるめく陰謀の世界。誰が味方で誰が敵なのか、誰が嘘をついていて誰が真実を語っているのか。作者に振り回され続けた。

富めるもの、貧しきもの/アーウィン・ショー……ある3兄弟の大河小説。子供時代から、大人になり、自分の人生を見つけていく彼らを味わう長編作品。

イルカの日/ロベール・メルル…イルカを愛する全ての人、必読の書。のみならず、9・11後のアメリカを彷彿とさせる描写も垣間見られ、SFとしても一流と言わざるを得ない。

悪魔のハンマー/ラリー・ニーヴン&ジュリー・パーネル……彗星による世界崩壊と、崩壊後の世界で繰り広げられる、科学VS宗教両陣営の激突を描いた一大叙事詩。

君たちはどう生きるか/吉野源三郎……中学生向けに戦前に書かれた小説。人が生きるうえで、本当に大切なことが詰まっていて、一人でも多くの人に読んでほしい名作。

真夜中の滑降/アーウィン・ショー……人生は何が起こるかわからないから面白い。冴えない中年男性のもとに大金が転がりこんだことから始まる、素敵な物語。

ウォーターシップダウンのうさぎたち/サミュエル・アダムズ……個性溢れるうさぎたちの冒険を活き活きと描いた、動物ファンタジーの傑作。

ウは宇宙船のウ/レイ・ブラッドベリ……ブラッドベリの自選短編集。ブラッドベリ入門には良い一方、他短編集と作品にかぶりが多い。

ファイアスターター/スティーブン・キング……迫害される異能者を通して、他人を傷つけることに鈍感な、社会の病巣を描いた作品。

一角獣・多角獣/シオドア・スタージョン……幻想恐怖小説「考え方」をはじめ、「ビアンカの手」など良質の作品が揃った短編集。

スキャナー・ダークリー/フィリップ・K・ディック……麻薬を取り締まる捜査官が、麻薬に溺れていくストーリーを軸に、「自分」も「世界」もが曖昧になっていくジャンキー小説。重厚なテーマで考えさせられるにもかかわらず、読みやすく、娯楽としても楽しめた。

魔の都の二剣士/フリッツ・ライバー……ヒロイック・ファンタジーの名作シリーズ、第1巻。バトルで活躍する男性陣はもちろんだが、それを陰から操る女性陣の魅力=支配力をひしひしと感じる。

輪廻の蛇/ロバート・A・ハインライン……良質の短編集。ハインラインはやはり短編の方が面白い。話が長くなればなるほど、彼の主義主張・思想を押し付ける傾向にある。短い話なら、彼の創造力を純粋に味わえる。

水源/アイン・ランド……この本で描かれる「絶対自分中心主義」を守れる人など果たしているのだろうか?洗脳されやすい人が無茶をしなければいいが……と、いらぬ心配をしてしまうくらい、圧倒的な説得力を持って迫る思想小説。100%理解できてはじめて、目指すべき理想がここにある。


B→読んだ時間・お金以上に価値があったもの

ナヴァロンの嵐/アリステア・マクリーン……マクリーン作品5作目にして、初めて面白いと思った。レナルズというキャラクターの存在が、適度な緊張感を生んでいたのが、その理由だと思う。

悪党パーカー:怒りの追跡/リチャード・スターク……相変わらず、ストーリーに中身はない。しかし、中身のないストーリーをよくもこれだけ飽きさせずに読ませてくれるものだと感心する。文章力、表現力の為せる業だろう。

ホテル/アーサー・ヘイリー……ホテルを舞台にした、群像劇。これを読んでいた期間、プライベートでとても嫌なことがあったので、あまり集中できなかったのが悔やまれる。ヒロインでもなんでもないドドが一番萌えた。


自由未来/ロバート・A・ハインライン…今まで読んだハインライン作品6作の中では最もお気に入り。「愚痴だらけの役立たず」キャラを、あそこまで醜く書かなくてもいいじゃんか、とは思うけど。

汝殺すなかれ/ローレンス・サンダーズ……寒村を舞台に、怪しい実験を繰り広げるマッドサイエンティスト。派手さはないが、じっくり読めば読むほど味が出てくるミステリ。

シャイニング/スティーブン・キング……家族間の絆と、その綻びを描いたホラー作品。前半の濃密な家族描写は秀逸も、後半は幽霊屋敷の描写が多く(それがメインなのかもしれないが)、少々中途半端ではある。

スローターハウス5/カート・ヴォネガット……ドレスデン爆撃をメインテーマにした、奇抜なSF。独特の浮遊感が味わえる。

黄金の街/エヴァン・ハンター……盲目のジャズピアニストを主人公に、“アメリカ”を描いた純文学作品。長いが、味わい深い。同著者の“87分署シリーズ”とは作風が全く違い、こういうのも描けるんだと感心した。

ハナの差/エヴァン・ハンター……オチが個人的にイマイチだが、息もつかせぬ展開でグイグイと読者を引っ張る力は本物。面白い。

レッドプラネット/ロバート・A・ハインライン……良質の冒険物語。火星人や火星生物が仲間というのが、今まで作者の作品を読んできた身からすると少し意外だが。とりあえず、ウィリスのかわいさは異常。

女生徒/太宰治……かなり不安定な女生徒の気持ちがよく描けているなと。ハっとさせられる鋭いフレーズが散らばっているあたりは、さすが太宰と言うべきか。

夜の果ての旅/セリーヌ……醜悪な人間の姿を面白おかしく描きつつ、圧倒的な孤独を抉り出す、セリーヌ渾身の傑作。後半も面白いが、前半に比べると破壊力が落ちてB+評価。前半ラストの切なさは圧巻。

大空港/アーサー・ヘイリー……限りなくAに近いB+。空港を舞台に、パイロットやスチュワーデスから、空港職員、密航者、爆弾魔、騒音反対の住民グループまで、緻密な取材を基に描かれる業界小説にして、一級のスリラー。

心変わり/ミシェル・ビュトール……独特の『二人称』と、精緻な心理描写、細密な情景描写が、退屈なはずの物語を魅力的にしている。読む前は絶対つまらないと思っていただけに、嬉しい驚き。

アブサロム、アブサロム/ウィリアム・フォークナー……「枯木灘」に大きな影響を与えただけあって、ストーリーの骨組みはほぼ同じだが、むしろ「嵐ヶ丘」に近い読後感。黒人蔑視が、白人をも呪う南部の様子が描かれる。

枯木灘/中上健次……入り混じった血の因習と、『伝説』、『噂』が跋扈する集落を舞台にした傑作。登場人物たちが粗野で全く共感できないのは難点だが、それでいて話に引き込まれた。古き悪き(?)時代の田舎を味わえる。

高い城の男/フィリップ・K・ディック……BとCの中間。易経で行動指針を決めるという、エキゾチックというか摩訶不思議な感覚がたまらない。しかし、そこを除くとイマイチな気がする。あと、kaeremakule男爵に吹いた。そんな名前の日本人いねーよww


失われた遺産/ロバート・A・ハインライン……短編2つに中編2つ。短編2つは文句なしに面白い(AとA-)。中編は1つがつまらなくて、もう1つも途中まではつまらない(C-とB-)。評価に困るがBとした。


お伽草紙/太宰治……笑える、太宰。ユーモアのセンスもなかなか良いです。「瘤取りじいさん」に爆笑。「舌切り雀」の雀に萌え、心温まる。

死の世界1/ハリー・ハリスン……わずか250ページの中によくこれだけのドラマとメッセージを詰め込んだものだと感心する。ラストはあまり気に入らないが、次巻へ続くためには必要なステップか。

死の世界2/ハリー・ハリスン……救いようがない愚かな仲間(?)が、なぜだかユーモラスに感じられ、憎めないのは作者の力量か。この、ミカというキャラクターの造形だけで、高評価に値する。

泥棒日記/ジャン・ジュネ……ゲイ小説が苦手にも関わらず、うっとりとしてしまうような男娼小説。フランスの闇が描かれている一品。

C→暇つぶしにはなったもの

ザ・スウィッチ/エルモア・レナード……悪党モノでも、応援したくなるキャラが一人でもいれば、ぐっと物語に入り込める。被害者→加害者、加害者→被害者のどんでん返しが面白い。

栄光の道/ロバート・A・ハインライン…途中までは、青少年向きの冒険活劇。物語ラインがしっかりしているため、読後感は良いが、後半は正直に言えば退屈だった。訳も悪い。

ナヴァロンの要塞/アリステア・マクリーン……序盤は良かったけど、だんだんつまらなくなってくる。ちなみに、映画の「ナバロンの要塞」は面白い。映画版を勧める。

金髪女/エド・マクベイン……浮気症の懲りない男と、ヒステリックで衝動的な女。昼ドラ的展開が面白いは面白いが、「カッとなってやった」殺人に、イマイチ納得できないのは、私が男だからだろうか??

宇宙の孤児/ロバート・A・ハインライン……地動説を信じない盲信者たちへの、ガリレオの嘆きin space。宇宙船=全世界、というアイディアは素晴らしい。無神論者からすると、宗教って害悪にしか思えなかったりする。

失われた時を求めて/マルセル・プルースト……「ものを書く」ということは、「人生を歩む」ということ。あらゆる経験を糧にして、主人公が物語を書き始めるまでのストーリー。にしても長すぎだ!

ゲイトウェイ/フレデリック・ポール……冒険モノだと思って読み始めたら、主人公の頭がおかしくて全然共感できないし、ほとんど冒険もしない。最後まで読んだら、これは冒険モノではないことに気がついた。これはこれで悪くはないが……。

若き獅子たち/アーウィン・ショー……戦時の兵隊の様子を、3人の主人公を通して描いた作品。

断崖/スタンリー・エリン……描写もドンデン返しもなかなか巧く面白いが、主人公が徹底的に青臭くて好きになれない。16歳じゃ仕方ないか……。

脱出航路/ジャック・ヒギンズ……半分を過ぎた頃からようやく話に入り込めたが、そこからはなかなか面白かった。登場人物が多く、ころころ視点が変わるので入り込みづらいのが難点。

大列車強盗/マイクル・クライトン……クリミア戦争期のイギリスの描写が非常に興味深い。340ページの作品で、強盗事件が発生する270ページ以降はとても面白いが、それまではひたすら犯行準備のシーンで退屈。

サランボオ/ギュスターブ・フローベール……ポエニ戦争時のカルタゴというエキゾチックな舞台が魅力だが、平成元年に増刷りされたにも関わらず旧字旧仮名で訳されているのが難点すぎる。読みにくい思いをしてまで読む価値があるかどうか。

死の世界3/ハリー・ハリスン……前2作同様、社会学的アプローチのSF冒険劇。社会学的アプローチは本作の場合、種明かしになっている。根底に流れているのは間違いないが、出番が少ないのが残念。

D→正直、自分には合わず、読んだ意味がなかったもの

八点鐘が鳴る時/アリステア・マクリーン……アダム・ホールもそうだけど、秘密諜報員とか、情報部員という言葉に何のロマンも持っていない人間には、読む価値を見出しにくい作家かもしれない。

悪党パーカー:漆黒のダイヤ/リチャード・スターク……パーカーシリーズ11作目。私が読むのは8冊目。シリーズの中ではつまらない部類に入ると思う。

ソドムの百二十日/マルキ・ド・サド……スカトロマニア垂涎の書。それ以外の人間が読むと、吐き気を催すのでやめたほうが無難。スカトロ以外にもたっぷりSMプレイが行われるが、とにかくスカトロのイメージが強い。

燈台へ/ヴァージニア・ウルフ……ある1日(実際は2日だが)を切り取ることで、時間感覚を描いた作品…だと思われる。元々退屈な上、ほぼ唯一キャラが立っているラムジィ夫人が全く出てこない後半は、輪をかけて退屈。

光の王/ロジャー・ゼラズニイ……インド神話風ファンタジー。知識不足と、話が飛び飛びでもあったので、展開についていけませんでした。雰囲気的には、ファーマーの「階層宇宙シリーズ」に似ている気がします。


わが名はコンラッド/ロジャー・ゼラズニイ……ギリシア神話風ファンタジー…らしいけど…。突飛な世界観の割に説明不足な点と、登場人物に魅力がないため、筋に入り込めないのは「光の王」同様。合わないのかもしれない。

トリストラム・シャンディ/ロレンス・スターン……これぞ、前衛小説。わけのわからん本が読みたい人にお勧め。わけがわからないだけで、面白いとは思わなかったけど。

野獣の街/エルモア・レナード……殺人犯は最低のクズヤローだけど、それを追いかける刑事も刑事。美人女弁護士くらいしか興味の湧くキャラがいない。殺人理由も「カッとなってやった。反省はしていない」だし。ちなみに殺された奴もクズヤロー。

人間以上/シオドア・スタージョン……登場人物の名前とキャラが一致しない時点で、全然入り込めていないことがわかろうというもの。一部笑えるシーンはあったが。

愛の生活/金井美恵子……たった50ページの作品中で、主人公が煙草を10回も吸うのにはウンザリ。たまたまスパゲティミートソースを食べながら読んでいたら、スパゲティが回虫にたとえる描写があって泣けた。

プレイヤー・ピアノ/カート・ヴォネガット・ジュニア……全てが機械化・自動化され、人々の職を次々と奪っていく社会のお話。未来の予知、先見の明という意味では優れた作品だと思う一方、魅力のある人物がおらず、物語としては退屈。

ヴァインランド/トマス・ピンチョン……不思議な世界が展開されている。男が突然女言葉を話したり、逆もありで訳が悪い。アメリカの文明批判はバシバシと伝わってきたが、ストーリーは今ひとつよくわからんかった。

優しい侵略者/キース・ローマー……いくら優しくても嫌なものは嫌なんだろうなぁ。しかし、でてくるキャラクターがほとんどみんな頭がおかしいので、ユーモア小説なのにストレスが溜まった。

ポディの宇宙旅行/ロバート・A・ハインライン……ポディがあんまり好きになれない。17歳にして、中身がかなりオバサンくさい。ろくでなし扱いされているクラークは、ちょっとやんちゃって程度で、全然悪い子じゃないし。

暗殺者/ロバート・ラドラム……ラドラム作品を読むのは3作目だが、前2作(スカーラッチ家の遺産・マタレーズ暗殺集団)に比べて悪役・陰謀のスケールがイマイチで、のめりこめなかった。読書するにあたって、私自身のコンディションが良くなかったのも確かだが。

デューン:砂漠の神皇帝/フランク・ハーバート……SFの仮面をかぶった教養小説。物語の大きな流れは理解できるが、なぜそうなったのかは理解不能(シオナとかダンカンとか)。

月は無慈悲な夜の女王/ロバート・A・ハインライン……序盤は、喋る人間知能のマイクのキャラクターが面白く読めるが、中盤からは政治思想の話ばかりになり、退屈。誤字・脱字も多く、訳も良くない。

ユリシーズ/ジェームズ・ジョイス……よくもまぁ、こんな退屈な話をノリノリで描けたものである。と感心しきり。「トリストラム・シャンディ」と同じで、前衛的でヘンテコな小説だが、ヘンテコだから面白いとはならないのが現実。

ひぐらしのなく頃に誓 見ました

見終わっての感想としては、「悪くはなかった」(B評価)といったところです。

原作の『罪滅し編』には、山場が2つ(+1つ)あります。
前半の『レナの告白』と、後半の『レナの篭城』。
それから、罪滅し編の山場ではないですが、ひぐらし全体の山場である『圭一の告白』です。


このうち、原作では『レナの告白』シーンと『圭一の告白シーン』は、涙なしではいられない泣かせるシーンです。この2つのシーンがあるため、『罪滅し編』は私にとってひぐらしで一番好きなシナリオになっています。一方で、クライマックスである篭城シーンは唐突に始まる決闘がなんとも言えない読後感を残してくれました。


この映画では、逆でしたね。『レナの告白』シーンは、なんだか言葉が上滑りしているだけにしか思えず全く感動できませんでした。『圭一の告白シーン』も、圭一に抱かれる魅音や、目の前のラブシーンに目を白黒させる沙都子に萌えはしましたが、肝心の告白は誰も圭一を許すこともできず、悲しいできでした。


このままで終わったらD評価だったのですが、原作で寂しい出来だったクライマックスの篭城シーンはなかなか魅せてくれました。結局終わってみれば、原作で伝えようとしていたエッセンスは最低限詰まっていましたし、
これはこれでアリだったのかなぁと思います。


「泣きながら」会話するシーンは、文字にして読めば何を言っているかもわかりますが、実写ですとかすれ声だったり声が小さかったりで何を言っているのかわからない部分も多く、感情移入しづらい部分がありました。
また、ゲームの「罪滅し編」は6作目なのでレナが良い子だということをプレイヤーは皆が知っていましたが、実写ですとまだ2作目なためにレナが単に危ない奴に見えてしまうのは致命的だったかもしれないなぁと思います。

ユリシーズ読了

著者はジェームズ・ジョイス。評価はD。

マジでつまらなかった。ただただ退屈、ただただ欠伸の出る瞬間睡魔発生装置のような本だった。
そもそもがユーモア本、時代を超えて楽しめるユーモアっていうのはなかなかない気がする。それをこの分厚さで、しかもわけのわからないヘンテコな文体でやられるんだからたまらない。

元ネタ(「オデュッセイア」)を知らないから楽しめないのかもしれな……いや、そんなレベルじゃないだろう。
これを読んで本当に楽しめる人というのは、「教養」があり、「時間」があり、「忍耐力」があり、「読解・理解力」がある人だけだと思う。


意地で読了しましたが、僕はお金をもらっても、再読したくないです。
読了というか、ただ読んだだけというか……。
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