生島治郎「黄土の奔流」感想(冒険小説のお話)

前置き

冒険というフレーズに、心を躍らせた時期があった。
ゲーム世代な事もあり、それは多分に「ドラゴンクエスト」的な色彩を帯びていた。

勇者になって魔王(悪)を倒したい、なんて思った事は実は一度もなかったけれど、
大きな事を、心が通い合う大切な仲間たちと共に成し遂げる。

「仲間たちとの絆」に憧れただけ、ではない。


この作品にはそんな「信頼できる仲間」なんていなかった気がするけど、何とも怪しげで何ともチャーミングな
シルバー船長と共に過ごす航海はやはり胸躍るものだった。

しかし、人間主体の「冒険」モノには存外、惹かれた作品が少ない。


グリックの冒険

グリックの冒険著者: 藪内 正幸/斎藤 惇夫

出版社:岩波書店

発行年:2000

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冒険心をくすぐられた作品はむしろ、こういったファンタジーの方に多かったようだ。

僕には向かなかった『冒険小説』

時は流れ、『冒険小説』というジャンルがある事を僕は知った。
しかし、最初に手に取った作品が悪かったのだろう。
あるいは、僕の期待が間違っていたのだろう。

僕が最初に手に取ったのは、アリステア・マクリーン

女王陛下のユリシーズ号

女王陛下のユリシーズ号著者: アリステア・マクリーン

出版社:早川書房

発行年:1972

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だった。
これは、絶望的な状況の中、最後まで屈せずに敵と戦い続ける男たちの、血と、涙と、汗と、絆を高らかに謳い上げた作品……だと思う。
日本人にもファンが多く、

冒険・スパイ小説ハンドブック

冒険・スパイ小説ハンドブック著者: 早川書房

出版社:早川書房

発行年:1992

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で堂々の『第1位』に輝いた作品だ。

しかし……僕の心には「しんどいなぁ……」という気分しか残らなかった。
しんどい、のだ。楽しくない、のだ。ワクワクしない、のだ。

これはその後も続いた。
ファンの方を怒らせたくないのであまり触れないが、↑のベスト100は6割近く読んでいます。

ソモソモ論として、船で大災害に遭ったり、軍用機で敵とバトルしたり、カーチェイスしたり、
僕の憧れはそういう方向には向いてないんだよね……。

「黄土の奔流」が思い出させてくれた冒険心

そんな鬱屈を吹き飛ばしてくれる作品に、ようやく出会えた。
生島治郎「黄土の奔流」だ。

時は大正時代末期。
満州(上海)で会社を潰してしまった主人公は、お宝『豚の毛』を求め、
揚子江を遡り重慶へと向かう。
行く手には、土匪、軍閥らが跳梁跋扈する無法地帯が待っている。

主人公と旅路を共にするのは、
曰くありげな悪友、葉村(「宝島」のシルバー船長的な曲者)やバリバリ国粋主義者の九州男児、
レモン大好きな純真少年などの個性派揃い。
そしてその中でも出色なのは、殺伐とした空気の中で、一人マスコットとして物語を和ませてくれる飯桶(ウェイドン)。
この男、主人(主人公)が破産しようが何しようが、とにかく主人を車に乗せて人力車を担いでいれば幸せ!という何ともニクい奴なのだ。
正直言って、足りない奴だ。足りない奴だが、実にいい奴なのだ。
そんな飯桶に春が来たエピソードでは本当にほっこりしてしまった。

道中には美人女匪賊との出会いアリ、涙の別れアリ、次々と失われていく命あり。
それでいて過剰にしんみりとせず、さりとてしっかりと心に余韻を残す。
僕の求める冒険物語がそこにあった。

日本にありがちな『せちがらく、湿った』雰囲気もなく、エネルギッシュでカラっとしているのは
中国大陸を題材に取っているからだろうか?
それでいて、『ワビ・サビ』はきちんと感じられ、最後には『生きる元気』を与えてくれる。

この作品を読んだ後、もう1つ『ワクワク冒険』作品に出会う事ができた。

山猫の夏

山猫の夏著者: 船戸 与一

出版社:小学館

発行年:2014

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こちらはブラジルを舞台に日本人主人公が冒険する物語。
どうも、「異国の地」を舞台に「日本人」が活躍する作品に、当たりが多いのかもしれない。

僕が冒険小説に(もっと言うなら、創作全般に)求めているのは、
『ここではない場所』への『逃避』かもしれない。

現実世界で「冒険」と言えば、『今まで接点のなかったイベントに参加してみる』とか
(こないだ、人生初ヨガを経験してきました! 楽しかった。またやりたい!)、
『心理的ハードルが高い店に入ってみる』とか、
『賭博・ギャンブル・株・転職・起業・プロポーズ』(最後の方は別の意味で夢はあるけど)などで、
どうも子供心のワクワク大冒険とは違う。

そういう類の冒険ではなく、夢のような大冒険をしたい。
そんな事を思ったのでした。

余談

なお、記事にはまとめられなかったけれど、この『冒険』作品は面白かったです。

失われた黄金都市

失われた黄金都市著者: Crichton Michael/平井 イサク

出版社:早川書房

発行年:1990

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とってもチャーミングなゴリラ(メス)と二人でアフリカの秘境を冒険するの。
お薦めです!

やっぱり『異世界』とか『秘境』がいいなw

余談2

本は読んでいるんですが、本の感想をまとめる気力がなく、長文感想は凄く久しぶりになります。
やはり、感想をまとめるだけでもエネルギーがいるんですね。
久しぶりの感想なので、感覚が少し変な気がします。

この青空に約束を再読⑥ 共通ルート第1章(批判気味なので、嫌な方は読まないでください)

「こんにゃく」は全3章構成になっておりまして、
第1章(共通ルート)マラソン大会・凛奈加入まで
第2章(7割共通ルート)寮生活~ヒロインの一人と結ばれるまで
第3章 個別ルート

となっています。
で、今回は第1章をクリアしたので感想を書きますが……ハーーーッキリ言っちゃうと、ツラい。
僕の「こんにゃく」評価があまり伸びないのは、この第1章が足を引っ張っている部分が大きいです。


つぐみ寮に新しい仲間がやってきた。沢城凛奈、転入生。
寮に馴染もうとしない凛奈を、海己が、航が、仲間に入れようとする。
しつこくアプローチを重ねた結果、「マラソン大会で、航が凛奈に勝てば」寮の仲間に入るという約束を取り付けた。
そしてマラソン大会当日。
「航を勝たせたくない」学園長側の妨害などに遭いながら、それでも善戦した航だったが、最終的にはズルをして勝とうとする。
結局失格になってしまった航だったが、凛奈は航の必死さに打たれ、7人目の仲間として溶け込むのだった。


というのが大まかなあらすじだけど、なんつーか、酷い。

酷い点を列挙する。


学園長側の陰謀があまりにもショボすぎる    不満度 6(10が最高。1が最低)

これは、多分誰もが頷いてくれると思う。
普通に考えて、『生徒間の口約束』を鵜呑みにして陰謀を仕掛けるというのはあまりにもアホらしいし、学園長の陰謀によって死者が出たら、学園側の問題は追及され、当然学園長は責任を問われかねない。
実際、航は『骨折』しているが、『熱射病で死ぬ』可能性だってある。
そんな陰謀を企てるとは、『常識的に言って、あり得ない』。


航がウザい    不満度 9・5

しかし僕の不満は上記よりも、むしろこちらの方が根深い。
ちなみにこれについて、あまり他人に理解してもらった事はない(反論をもらった事もある)ので、
読者の方に共感してもらえるかどうかはわからないが。

僕は、一貫して『凛奈になったつもりで』読んでいたように思う。
転入生。友だちがいない。寂しい。荒れている。友だちがほしい。が、別に自分からは頼んでいない。
そんな時に、寮生の航が声をかけてきてくれた。というシチュエーションだ。

ところがこの航(含めてつぐみ寮メンバー)、性格なのか何なのか知らないが、下ネタはガンガン使ってくるし、かなり無神経で挑発的な上、
凛奈が大事にしている陸上競技に対してズルまでするのだ。


僕が凛奈なら、
『確かに友達はほしい。が、お前と仲良くしたくはない。他に友達を探したい』と思う。
別に寮以外で友達を作ったって構わないのだ。
凛奈はスカイフィッシュで、三田村兄と最低限の交流は持っていた。
それで良かった、という見方もできる。
そこから三田村茜に繋がる未来はあったし、茜に繋がれば少しずつクラスに溶け込める可能性はあった、と思う。


仲良くなりたくてアプローチをするのは良いと思うが、度が過ぎればストーカーだ。
更に言えば、真正面から「仲良くなりたい!」と訴えかけるならいいとして、下ネタは言うわ、挑発的な言動はするわではどうにも厳しい。
航が普通に、凛奈の神経を逆撫でしないような距離の詰め方をすれば、読んでいて不快にはならなかっただろうし、せめて最後のズルさえなければ流せたと思う。

僕が神経質なのかもしれないが、スポーツ観戦において、『ズル・アンチフェアプレー』に対してものすごい嫌悪感がある。
そのうえ、航のこれは、ハッキリ言って『必要ない』のだ。
なぜならズルをしなくても、凛奈は既に航に絆されかけていた。
真剣に凛奈に向かい合っていれば、もっと早く凛奈は航を認めていただろうと思う。
仲良くなりたい、という気持ち自体が悪いのではない。ただ、絶望的にやり方を間違えている
あれでは、仲間に入りたいと思えない。僕ならば。


『この青空に約束を』は、オトナになりたくない子供たちの楽園を描いた作品だと思う。
南栄生島や、つぐみ寮は『ピーターパン』のネバーランドに対応している。
しかし、彼らは『純粋なコドモ』ではない。
『酒は飲むし、エッチはするし、ズルだってするけど、オトナにはなりたくない』コドモなのである。彼らの楽園を潰すオトナは無条件で敵であらねばならないし、
彼らの楽園に入ってくるコドモたちは、大事な仲間に『ならねばならない』のだ。

この大前提に則って物語が展開されているため、この『約束事』に違和感を覚えると
作品全体に違和感を持つことになる。


星野航と浅倉奈緒子は、『純粋な(真っ白な)コドモ』として見るには、汚れているように見える。
藤村静、羽山海己、沢城凛奈はコドモだし、六条宮穂や桐島沙衣里(漢字自信ナシ)も半子供半大人と言った感じに映るが、航と奈緒子の2人はネバーランドの住人としては少々厳しい。

むしろ、「ヤンキー・ミニギャングたちの巣窟」として表現されていれば特段違和感も覚えなかっただろうが……。










2019年に読んだ本



S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

山猫の夏/船戸与一……何十年間も殺し合っていた二つの家が、ついに住民を巻き込んで全面抗争。
マッチョな作風なのに随所に挟まれる歴史トリビア含め、英雄的な『山猫』とそれを間近で見守る『おれ』、バンビーナやチラテンデスといった、ある意味原始的な(野蛮なと言ってもいい)が力強く暴力と金に活き活きと生きる人々の、ある種強烈なエネルギー。そして、胸を吹き抜ける爽やかさと寂寥感。
ブラジルを舞台に作者の描いた『白昼夢』に魅せられた。

酔いどれの誇り/ジェイムズ・クラムリー……薄汚れた町に舞い降りた、天使のツラしたメンヘラビッチ、ヘレン。飲みほした酒と共に、彼女を赦す、どうしょうもなくダメでどうしょうもなく優しい男、ミロ君。叙情的ハードボイルドの名作。
どうしょうもない人生に疲れ、孤独に苛まれ、酒に溺れ、それでも人を求める主人公の描写が胸を打つ。

黄土の奔流/生島治郎……詳細感想はこちら

1920年代の中国、揚子江。
一攫千金を夢見て、豚の毛を買いに上海から重慶に向かう旅。
土匪(賊みたいなもんか)、軍閥らの無法地帯と化した内陸中国を舞台に繰り広げられる冒険劇。

曰くありげな悪友、葉村(「宝島」のシルバー船長的な曲者)や美人女匪賊、
バリバリのネトウヨ(ネットではないが)九州男児や、レモン大好きな純真少年、
ラスボス格の老豚など、とにかくキャラクターが活き活きとしている。
殺伐とした空気の中で、一人マスコットとして和ませてくれるウェイドン(まさかの嫁さんゲットw)など、本を閉じた後でも彼らの冒険が胸に息づく、優れたエンターテイメント小説。

めざせダウニング街10番地/ジェフリー・アーチャー……感想はこちら(バレあり)で。

A→読んで良かったと思える作品

毒薬の小瓶/シャーロット・アームストロング……感想はこちら(バレあり)で。

アイガーサンクション/トレヴェニアン……『情』を知らない殺し屋が、『情』を知って人を殺せなくなる話。これは人間としては『成長』と言えるが、『殺し屋』としては『廃業』レベルの後退ぶりで、なかなか面白い。
主人公の特異な設定、ケイビングへのこだわり(設定だけを見れば、敵を倒す話のようだけど、実際のところ、そういう話では全くないのが良い)など、さすがトレヴェニアンと思わせる。
作家の中では、人殺しの技術なんかよりも、人を赦す事ができるようになる事の方が、より重要という事なんだろう。
(逆パターンの作品はたくさんありますよね。躊躇なく相手を殺せるように訓練をして、それを『成長』と呼ぶような話)
しかし、続編の「ルー・サンクション」ではまた山に登るらしいけれど、
それじゃ、今作での「成長」はなんだったんだ!?と思わなくもない。

悪魔の手毬唄/横溝正史……因習残る山奥の村、手毬唄に見立てて殺される美女たち、といった横溝ワールドが存分に楽しめる良作。因果が色濃く巡っており、ある意味好きになれるキャラが(特に中年以降の世代のキャラには)一人もいないが(苦笑)。気持ちは多少はわかるが、犯人はキチガイやな(最初の殺人はいいとして、2つ目からの殺人は同情できない)……。
お節介爺さんは殺されても仕方ないお節介ぶりだけど、(爺さんを恨みたくなる人間は他にいるにせよ)一番親切を受けた犯人が爺さんを殺すのはどうかと。
娘たちの殺人は、犯人は人であることをやめて、殺人鬼と化してしまったんやな。
因業渦巻く村社会が悪しき昭和の象徴なら、娘たちの可憐さは旧き良き昭和の象徴……なんて書くとマズいかな。

暗い落日/結城昌治
……これはロス・マクドナルドの翻案小説ではないか?と思ってしまうほど、ロスマク作品にそっくりで、ロスマクとの類似点よりも、相違点の方が遥かに少ない。
作者自身ロスマクの「ウィチャリー家の女」を意識して書いたと明言しているので、盗作云々という話はしないが、これはもうオマージュというレベルを通り越して二次創作に近い。
相違点は主に2点。1点は暴君めいた男と虐げられる女性像という構図はロスマクにはあまり感じられない(海外ミステリではあまり観られない)点で、いかにも『日本風(昭和の女ふう)』である。

もう1点は、主人公の探偵が悪を断罪する傾向が強い点で、特に最終章に諸悪の根源であるクソジジイを主人公が断罪するシーンでは
「リュー・アーチャー(ロスマク小説の主人公)はこんな事言わねぇから!!」とツッコミを入れたくなってしまった。ここだけ出来の悪い二次創作みたいな感じを受けた。悪を少しでも罰する事で溜飲を少しだけ下げる効果はあったと思うけど、
個人的には最終章は要らず、「……悲しいなぁ……」と、とぼとぼと背中を落として家を後にするリュー・アーチャーでいてほしかったw(だから主人公はアーチャーじゃなくて真木探偵だって!)

オマージュというのは、あくまで『(主に展開などを、部分的に)似せて』作るものだと思うが、
ロスマク作品の持つ味わいまでを模倣出来てしまったのは、良かったのか悪かったのか。
これはもう、結城昌治の真木探偵シリーズというよりも、ロス・マクドナルドのリュー・アーチャーシリーズの一作に加えてしまった方が良いのではないか、と思った。

肝心の作品評価について言えば、ロス・マクの中に入れても上位に入る面白さはありました。
しかし、主人公探偵が盛んに怒っている2人の諸悪の根源、英作と啓一だけど、
英作はクズだけど啓一よりも信久やミサ子の方がクズだと思ったので、
探偵の断罪にイマイチ同調できない部分はありました(啓一が悪くないとは言いませんが)。


大統領に知らせますか?/ジェフリー・アーチャー
……大統領が暗殺される、という陰謀をキャッチしたFBIの主人公は、陰謀者たちに命を狙われる(序盤)
しかしそこは華麗に回避。命の危機は去った。恋愛しながら謎を調査(中だるみ)。
恋愛相手が、犯人グループの一員かも!? さぁどうなるのか!(後半)
という感じで、『王道』ではあるけど巧い。
『大統領が暗殺されるのを阻止しなきゃ』だけだと、僕的には全然盛り上がれなくて、『主人公の命が危ない!』とか『主人公の恋人が暗殺犯?』みたいな、『主人公が直面する、私的な理由』があって初めて、『事件の顛末』に惹き込まれるんだなぁと改めて思った。

夜の熱気の中で/ジョン・ボール……黒人差別が蔓延る南部で、黒人探偵が活躍する。初めは彼を蔑んでいた警部や巡査も、いつしか彼に敬意を表するようになる。
ラスト「白人専用」の席で一緒に星を見上げる、白人警部と黒人探偵のショットも美しい。良作。

クロイドン発12時30分/クロフツ……非常に丁寧で趣深い倒叙小説&法廷小説の名作。欠点があるとすれば、あまりに丁寧すぎる&遊び(余分な部分)がなさすぎる点だろうか。ずっと読んでいると、疲れてしまうw しかし名作。

男の首/ジョルジュ・シムノン……なるほど、これがメグレ警部シリーズか。
古いながらも、犯人の心理に寄りそう作品で、なかなか読ませる。これがラディカルに進化すると、異常心理小説、あるいは社会派小説になるのかな。コンパクトで読みやすく、中身も詰まった作品。

さらば甘き口づけ/ジェイムズ・クラムリー……失踪人探し、家庭の悲劇、隠された狂気といった、いわゆるロス・マクドナルドが書きそうな正統派ハードボイルド。
面白かったけど、直前に読んだ著者の別作品「酔いどれの誇り」が最高すぎたので、比べると落ちる。

狙った獣/マーガレット・ミラー……統合失調症の主人公(?)を迫真の筆致で描いた良作。最終盤がちょっともたついた感があったけど、とにかく怖く、ぞっとする作品。まぁ、好みとは言いかねるけど、凄い事は確か。

闇に踊れ/スタンリー・エリン……偏執的な黒人差別の老人、差別され続け黒人以外には当たりのキツい黒人女性(これも、差別だと思う)、黒人女性の美貌にへーこら従うしょっぼいイタリア人男性(一番嫌いだったw)と、マジでロクな奴がいないのはアレだけども。
黒人差別を主軸に、黒人側からの白人への差別や、その他モロモロを扱った骨太作品で面白かった。
差別は良くない。
というのは当然そう思うけれど、自宅周辺がある日突然黒人しか住まないようになって、(日本文化ではなく)黒人文化全盛のような雰囲気になったらやっぱり居心地の悪さは感じちゃうかもしれない。
あるいは、ある特定の層(白人黒人でもいいし、年齢層、世代でもいいし、職業でも性別でもなんでもいいけど)に自分の事を散々悪く言われたら、やはり前もって身構えてしまうかもしれない。
差別意識というものについて考えさせられる。
同じ人種差別を扱った作品では、娯楽としては『夜の熱気の中で』の方が好きだけど、『闇に踊れ』の方がエグくて、ある意味リアルかもしれない。



B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

リトルドラマーガール/ジョン・ル・カレ……愛する男に操られ、中東問題の渦中に投げ込まれた女性主人公。ラスト数十ページ、段々に壊れていく彼女の姿が印象深い。しかし、ル・カレは読みづらいな……。もう少し読みやすく書いてほしいw

マダム・タッソーがお待ちかね/ピーター・ラヴゼイ……ヴィクトリア朝イギリスの風俗情緒を伝えるラヴゼイ節は健在で、彼の作風が好きな方なら少なくとも大はずれする事はなさそう。
ただ、『悪女』のスケール感が小さく、『並の悪女』だったのは残念。犯人の自滅の印象が強い。
個人的には以前読んだ2作(『偽のデュー警部』は別格として、『苦い林檎酒』)よりも評価は低い。

しかし作者は、年上のヘタレ男が一回り年の離れた女の子に手玉に取られてあたふたするのを描くのが本当に好きですね。

枯草の根/陳舜臣……渋い話だったな~~。地味ながら読ませる。

ロシア皇帝の密約/ジェフリー・アーチャー……相変わらず読ませるアーチャーだが、読むたびに(「ケインとアベル」→「百万ドルを取り戻せ」→「大統領に知らせますか?」→「ロシア皇帝の密約」)少しずつ作品評価が下がっていくのはどうしたものか。最初に読んだ2つが素晴らしすぎてなぁ。

伯林1888/海渡英祐……
ドイツ留学時代の森鴎外を主人公に、「舞姫」でおなじみのエリスや、新しい浮気候補クララなどが登場。19世紀、激動の時代を迎えるドイツを舞台に、森鴎外のキングオブヘタレっぷりを楽しめる佳作。



キドリントンから消えた娘/コリン・デクスター……迷推理・珍推理を組み立てては外すモース警部のめくるめく妄想は、前作「ウッドストック行最終バス」から更に磨きがかかった。
ヒラリー・ウォー「失踪当時の服装は」に捧げる、素晴らしきオマージュ。

悪魔の選択/フレデリック・フォーサイス……ソ連・ウクライナ(のテロ組織)・イギリス・アメリカ・西ドイツ・オランダなどの思惑が錯綜し、第三次世界大戦or大規模重油汚染の二択を迫られる西側諸国。非常にリアリティがあり、よくできた作品。
ただ、下巻に入ったあたりから、第三次世界大戦の芽はほぼなくなり(そもそも残りページ数で解る)、ウクライナのテロリストをどう巧く処理するかという話になってしまうので、失速感も大きかった。

まるで天使のような/マーガレット・ミラー……夫ロス・マクドナルドの作風にあまりにも似ていて驚いた、ロスマクの妻、マーガレットの作品。
マーガレット自身も著名な作家なのでこういうのもおかしいが、よく描けている。怪しい宗教団体が魅力的だったので、できればそっちを濃密に描いてほしかったところはあるけど。


別れを告げに来た男/フリーマントル……『無能な上司とその取り巻き、無能な同僚に囲まれて、正しい事をしている有能な主人公が冷遇される(けど、最後少しだけ認められる)』話。
有能だけど不器用で、組織の中でいつも冷遇されているけど、正しいのは主人公なのだ……みたいな。
実力もあって優しいのに、気弱でルックスも悪い(若ハゲ)ため、ほとんどの人から相手にされない
悲しい主人公……。
最後に一発、上司にガツンと噛ます「消されかけた男」よりこちらの方が好きだけど、それにしたって哀愁漂いすぎ……。


高層の死角/森村誠一……ストーカーと大差ないような執念のアリバイ崩しが印象深い。しかし、冤罪だったらどうする気だったんだろう。
犯人の動機が意味不明すぎてどうにもノレなかった。普通こんな理由で人を殺すか? 『太陽が眩しかったから』の方が遥かに説得力を感じるぞ。
トリックもとても複雑だが、『ホテルのシステムを使って、やろうと思えばできたんだろうな』とは思った。

死神の精度/伊坂幸太郎……仔月さんという方と、対談を行ないました。よろしければ、対談記事をお読みください!

影の告発/土屋隆夫……アリバイ崩し系ミステリ。犯人のアリバイを執念の捜査で崩していくのだが、
被害者があまりにクズすぎて、「もうほっといてやれよ」と思ってしまった。追いつめられた犯人が2人目の殺人を犯してしまうのだが、警察が放っておいてあげれば2人目は死なずに済んだし、犯人も捕まらずに済んだんじゃない? 
そりゃ殺人者を捜査して逮捕するのは当たり前だけど、最初に殺された奴があまりにも酷すぎるので、むしろ殺した犯人に賞状でもあげたい気分だし、犯人を捕まえても誰も幸せにならない胸糞悪い話だった。

極大射程/スティーブン・ハンター

猿丸幻視行/井沢元彦……トンデモ系歴史小説としてはなかなか楽しめたし、普通小説(あるいはミステリ小説)として考えるとちょっと厳しい出来。また、そのトンデモ部も大部分、海原猛さんの説におぶさっているらしく(海原さんの本を読んでないので断定はできないが)、そうだとするなら、海原さんの著書への手引きにしかならない気もする。
僕は海原説(柿本人麻呂=柿本猿=猿丸太夫)を知らなかったし、この小説がなければ恐らく知らなかっただろうから、そういう意味では楽しめた。



C→暇つぶし程度にはなった作品

消されかけた男/フリーマントル……肩の力を抜いて読める、良い娯楽小説。しきりに「サラリーマン小説」っぽいと解説で述べられていたが、確かにそう言われればそうだなぁと思った。

料理人/ハリー・クレッシング……悪魔のような暴君シェフが大暴れする話。特に退屈せずに読めたが、「……で!?」っていう。偉い人とお近づきになりたいとか、大豪邸でパーティーを開いて評判になりたいとか、そういった虚栄心を悪魔が巧みに突いてくる感じだけど、この手の欲がほぼ全くない僕には、なんでそんな面倒な事をしたがるのかサッパリわからないのだった。

匣の中の失楽/竹本健治……やりたいことはわからないでもないけど、合わない。
仲間内での殺人が起こっても、ゲーム感覚で処理する『ファミリー』たちの軽さが最後まで馴染めなかった。
『匣(作中作)』の中の匣の中の匣の中の匣の中の匣の話なので、
この本自体が一つの匣ではあるし、それを読む私(このブログを書いている私)も、更に外側から見ればこれもまた一つの匣ではありますよね。
というだけの話に思えた。


スクールボーイ閣下/ジョン・ル・カレ……前作「ティンカー、テイラー~」に比べればまだ解りやすい。

スマイリーと仲間たち/ジョン・ル・カレ……
3部作の中では一番読みやすく、面白い。しかし、2000ページ読んだ感想が、「戦いは汚く、虚しいねぇ……」程度なので、読む必要はなかったよね。
僕には難しすぎたのかな。宿命の対決モノならジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」が好きです。

戦争の犬たち/フレデリック・フォーサイス……

お楽しみの埋葬/エドマンド・クリスピン……

なめくじに聞いてみろ/都築道夫……奇想天外ハチャメチャ不条理アクションギャグ小説。和製007。都築道夫は数作読んだけど、今のところこれが一番良いかな。ただ、それにしても僕向きの作家ではないな、とは思う。


猫の舌に釘を打て/都築道夫

黒蜥蜴/江戸川乱歩……
「明智小五郎」シリーズの長編作品は、モーリス・ルブランの「ルパン」シリーズにかなり似ている気がする。
変装名人が山ほどいて、怪盗VS探偵の虚々実々のやり合いが楽しい作品だと思う。
個人的には「なんでもアリ」でどんでん返しに次ぐどんでん返し! でしかないので、正直付き合い切れない部分はある。
むしろ、物語としては枝葉末節に当たる、黒蜥蜴の『人間動物園』『人間水族館』の描写が光る。乱歩先生はこういうのが巧い。
黒蜥蜴が萌えキャラなぶん、昨日読んだ「吸血鬼」よりは良いか。


吸血鬼/江戸川乱歩……行き当たりばったりとしか思えないようなエピソード集で、幾つかの短編を無理やり長編につなぎ合わせたような唐突さ、ぎこちなさを感じる作品

D→自分には合わなかった作品

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ/ジョン・ル・カレ……そもそも何が起きているんだかすら分からないw こいつら(英国情報部)は何と戦っているんだ? 普段の業務ってなんなんだ?
ソ連情報部に壊滅させられるわけだけど、そもそも英国情報部って普段何やってたの? 何やってたからソ連情報部と対決する事になったの? てかソ連情報部も普段何やってんの?
という基礎的な事すらよく解らない。
もちろん、『国防上の何か大事な事をやっているので、無いと困るんだろう』という推測はできるけど、実際何やってんだか分からないし、何やってんだか分からない組織同士が暗闘してても『ナンダコイツラ』ってなってしまった。
スパイ小説でこんな感想になったのは初めてかもしれない。

影の護衛/ギャビン・ライアル


X→以前読んだのに、何故か読書メモから漏れていた作品。頭文字はランク。備忘録用。

A レイチェル・ウォレスを探せ/ロバート・B・パーカー
B マンハッタン特急を探せ/クライブ・カッスラー……
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