純文学オールタイムベスト100 2023年5月5日記入

既読作品

S 何を措いてでも読むべき作品
A とても面白かった作品
B まずまず面白かった作品
C あまり面白くなかった作品
D 良さがわからなかった作品
太字ではないもの  未読(あるいは小学生の頃読んで、内容も覚えていないもの)

気分でつけているので、リストごとにSになったりAになったりしている作品もあるかもしれませんが、2ランク以上のミスはないはずですw

賞はとりあえず気づいたもののみ記載。適当。

本来は禁じ手ですが、同著者別名義は自分に解りやすいように統一。表記揺れまではいじっていません。

「考える人」ベスト100


1 『百年の孤独』 ガルシア=マルケス
2 『失われた時を求めて』 プルースト
3 『カラマーゾフの兄弟』 ドストエフスキー
4 『ドン・キホーテ』 セルバンテス
5 『城』 カフカ
6 『罪と罰』 ドストエフスキー
7 『白鯨』 メルヴィル
8 『アンナ・カレーニナ』 トルストイ
9 『審判』 カフカ
10 『悪霊』 ドストエフスキー
11 『嵐が丘』 ブロンテ
12 『戦争と平和』 トルストイ 第1編26章までで一旦挫折
13 『ロリータ』 ナボコフ
14 『ユリシーズ』 ジョイス
15 『赤と黒』 スタンダール
16 『魔の山』 トーマス・マン
17 『異邦人』 カミュ 再読
18 『白痴』 ドストエフスキー  上巻のみ読んだ
19 『レ・ミゼラブル』 ユゴー
20 『ハックルベリー・フィンの冒険』
21 『冷血』 カポーティ
22 『嘔吐』 サルトル
23 『ボヴァリー夫人』 フローベール
24 『夜の果てへの旅』 セリーヌ
25 『ガープの世界』 アーヴィング
26 『グレート・ギャッツビー』 フィッツジェラルド
27 『巨匠とマルガリータ』 ブルガーコフ
28 『パルムの僧院』 スタンダール
29 『千夜一夜物語』
30 『高慢と偏見』 オースティン
31 『トリストラム・シャンディ』 スターン
32 『ライ麦畑でつかまえて』 サリンジャー
33 『ガリヴァー旅行記』 スウィフト
34 『デイヴィッド・コパフィールド』 ディケンズ
35 『ブリキの太鼓』 グラス
36 『ジャン・クリストフ』 ロラン
37 『響きと怒り』 フォークナー
38 『紅楼夢』 曹雪芹
39 『チボー家の人々』 デュ・ガール
40 『アレクサンドリア四重奏』 ダレル
41 『ホテル・ニューハンプシャー』 アーヴィング
42 『存在の耐えられない軽さ』 クンデラ
43 『モンテ・クリスト伯』 デュマ
44 『変身』 カフカ 読了
45 『冬の夜ひとりの旅人が』 カルヴィーノ
46 『ジェーン・エア』 ブロンテ
47 『八月の光』 フォークナー
48 『マルテの手記』 リルケ
49 『木のぼり男爵』 カルヴィーノ
50 『日はまた昇る』 ヘミングウェイ
51 『水滸伝』
52 『人間喜劇』 バルザック
53 『路上』 ケルアック
54 『危険な関係』 ラクロ
55 『木曜の男』 チェスタトン
56 『ゴリオ爺さん』 バルザック
57 『源氏物語』 紫式部 (漫画「あさきゆめみし」なら読んだ)
58 『幻滅』 バルザック
59 『日々の泡(うたかたの日々)』 ヴィアン
60 『スローターハウス5』 ヴォネガット・Jr.
61 『アブサロム、アブサロム!』 フォークナー
62 『ハワーズ・エンド』 フォースター
63 『魔術師』 ファウルズ
64 『ムーン・パレス』 オースター
65 『アウステルリッツ』 ゼーバルト
66 『日の名残り』 カズオ・イシグロ
67 『悪童日記』 クリストフ
68 『ガルガンチェアとパンタグリュエル』 ラブレー
69 『若草物語』 オールコット
70 『回想のブライズヘッド』 ウォー
71 『ある家族の会話』 ギンズブルグ
72 『トム・ジョウンズ』 フィールディング
73 『大いなる遺産』 ディケンズ
74 『心は孤独な狩人』 マッカラーズ
75 『緋文字』 ホーソーン
76 『大地』 バック
77 『狭き門』 ジッド
78 『不思議な国のアリス』 キャロル
79 『オデュッセイア』 ホメロス
80 『感情教育』 フローベール
81 『侍女の物語』 アトウッド
82 『二都物語』 ディケンズ
83 『予告された殺人の記録』 ガルシア=マルケス
84 『ペドロ・パラモ』 ルルフォ
85 『西遊記』
86 『薔薇の名前』 エーコ
87 『三国志』 羅貫中
88 『虚栄の市』 サッカレー
89 『親和力』 ゲーテ
90 『若い芸術家の肖像』 ジョイス
91 『死の家の記録』 ドストエフスキー
92 『イリアス』 ホメロス
93 『風と共に去りぬ』 ミッチェル
94 『ナジャ』 ブルトン
95 『V.』 ピンチョン
96 『モロイ』 ベケット
97 『灯台へ』 ウルフ
98 『冗談』 クンデラ
99 『オブローモフ』 ゴンチャロフ
100 『悪徳の栄え』 サド


アメリカ「20世紀の英語小説ベスト100」(ラドクリフ大学)

1「グレートギャッツビー」
2「ライ麦畑でつかまえて」

3「怒りの葡萄」
4「アラバマ物語」
5「カラーパープル」
6「ユリシーズ」
7「ビラウド」
8「蠅の王」

9「1984年」
10「響きと怒り」
11「ロリータ」
12「二十日鼠と人間」
13「シャーロットのおくりもの」
14「若い芸術家の肖像」
15「キャッチ22」
16「すばらしい新世界」

17「動物農場」
18「日はまた昇る」

19「死の床に横たわりて」
20「武器よさらば」
21「闇の奥」
22「クマのプーさん」
23「彼らの目は神を見ていた」
24「見えない人間」
25「ソロモンの歌」
26「風と共に去りぬ」

27「アメリカの息子」
28「カッコーの巣の上で」
29「スローターハウス5」

30「誰がために鐘は鳴る」
31「路上」
32「老人と海」

33「野生の呼び声」
34「灯台へ」
35「ある婦人の肖像」
36「山にのぼりて告げよ」
37「ガープの世界」
38「すべての王の臣」

39「眺めのいい部屋」
40「指輪物語」

41「シンドラーズ・リスト」
42「エイジ・オブ・イノセンス」
43「水源」
44「フィネガンズ・ウェイク」

45「ジャングル」
46「ダロウェイ夫人」 読んだ気がするんだけど、読んでないかもしれない
47「オズの魔法使い」

48「チャタレイ夫人の恋人」
49「時計仕掛けのオレンジ」

50「目覚め」
51「私のアントニーア」
52「ハワーズ・エンド」
53「冷血」
54「フラニーとゾーイ―」
55「悪魔の詩」
56「ジャズ」
57「ソフィーの選択」
58「アブサロム、アブサロム」

59「インドへの道」
60「イーサン・フローム」
61「善人はなかなかいない」
62「夜はやさし」
63「オーランド―」
64「息子と恋人」
65「虚栄の篝火」
66「猫のゆりかご」
67「友だち」
68「八月の光」
69「鳩の翼」
70「崩れゆく絆」

71「レベッカ」

72「銀河ヒッチハイクガイド」

73「裸のランチ」
74「回想のブライズヘッド」
75「恋する女たち」
76「天使よ故郷を見よ」
77「われらの時代に」
78「アリス・B・トクラスの自伝」
79「マルタの鷹」
80「裸者と死者」
81「サルガッソーの広い海」
82「ホワイト・ノイズ」
83「おお開拓者よ」
84「南回帰線」
85「宇宙戦争」

86「ロード・ジム」
87「ボストンの人々」
88「アメリカの悲劇」
89「死を迎える大司教」
90「たのしい川べ」
91「楽園のこちら側」
92「肩をすくめるアトラス」

93「フランス軍中尉の女」
94「バビット」
95「少年キム」
96「美しく呪われた人」
97「走れウサギ」
98「天使も踏むを恐れるところ」
99「本町通り」
100「真夜中の子供たち」


ノルウェイ・ブッククラブ 順位なし

「ドン・キホーテ」
「崩れゆく絆」

「人形の家」
「アエネーイス」
「ダロウェイ夫人」
「灯台へ」

「メディア」
「ミドルマーチ」
「見えない人間」
「変身物語」
「1984年」
「高慢と偏見」

「その男ゾルバ」
「異邦人」 再読

「シャクンタラー姫」
「百年の孤独」
「コレラ時代の愛」
「山の音」
「ギルガメシュ叙事詩」
「ブリキの太鼓」
「ファウスト」
「死せる魂」
「ノストローモ」
「白の闇」
「北へ還りゆく時」
「ハムレット」

「リア王」
「オセロ」
「ユリシーズ」
「ガリバー旅行記」

「ゼーノの苦悶」
「トリストラムシャンディ」

「赤と黒」
「夜の果てへの旅」

「神曲」
「カンタベリー物語」
「大いなる遺産」
「運命論者ジャックとその主人」
「ベルリン・アレクサンダー広場」
「ハックルベリー・フィンの冒険」
「罪と罰」

「白痴」
「悪霊」

「カラマーゾフの兄弟」

「戦争と平和」
「アンナカレーニナ」
「イワン・イリイチの死」
「ロリータ」

「餓え」
「ゴリオ爺さん」
「アブサロム、アブサロム」

「響きと怒り」
「失われた時を求めて」

「ボヴァリー夫人」

「感情教育」
「嵐が丘」

「不安の書」
「老人と海」

「草の葉」
「デカメロン」
「イリアス」

「オデュッセイア」
「イーダの長い夜」
「源氏物語」
「ブッテンブローク家の人々」
「魔の山」
「白鯨」

「特性のない男」

「ビラウド」
「エセ―」
「ハドリアヌス帝の回想」
「独立の民」
「真夜中の子供たち」
「ガルガンチュアとパンタグリュエル」
「長くつ下のピッピ」
「精神的マスナヴィー」
「ペドロ・パラモ」
「大いなる奥地」
「狂人日記」(魯迅)
「息子と恋人」
「カンティ」
「黄金のノート」
「ヨブ記」




レイモンド・チャンドラーについて

ファンの方は読まないでください

前置き

ハードボイルド御三家と言えば、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラー、ロス・マクドナルドと呼ばれた時代があった。

また、多くの「作家志望者のための本」でお薦めされる作家No1は、僕の知る狭い範囲ではレイモンド・チャンドラーがNo1である。





僕が主に趣味で書いているのは少女向けファンタジーなので、
スペースオペラでもなければハリウッドの脚本でもないのだが、それはこの際どうでもいい。

こんなにあらゆる場所で『これを読め!』と推されている作家を、僕はチャンドラーしか知らない。
(次点でクリスティ)

僕は素直なので、レイモンド・チャンドラーの長編全てを旧訳で読んだ。
全く面白さがわからなかった。

「うふぅ」という謎のマーロウのため息にも辟易とさせられたし、なんだかよくわからない理由で「やぁ、息が臭いぜ!」とか言ってチンピラと殴り合うのも意味がわからない。

ハッキリ言って、チャンドラーのせいで、僕は「ハードボイルドというのは、僕には向かないジャンルなんだな」と思い込んでしまった。
ハメットもそこまで楽しめなかったし(チャンドラーよりはマシだが)、
何とか読めたのはロス・マクドナルドぐらいだ。

その後、生島次郎やディック・フランシス、ロバート・B・パーカーや、船戸与一あたりと出会って、
「はぁ? ハードボイルドって面白いんじゃん!」と気付いた。
その間10年はかかった。失われた10年である。

その後、村上春樹訳が出たのでもう一度読んでみた(「プレイバック」のみ再読はしていない)

しかし、やっぱり面白さがわからない。

作品の中で最もマシに思えるのは

高い窓

高い窓著者: レイモンド・チャンドラー/村上 春樹

出版社:早川書房

発行年:2016

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これは何とかストーリーがつかめる。

2番手は水底の女だ。


これもまぁ何とかストーリーはわかる。
しかしそれ以外はきつい。



の2作は印象が似ているのでまとめて書いてしまおう。

この2作は序盤と終盤に読みごたえがある。
前者では8年前の元カノを慕う、へら鹿マロイの登場シーンとその最期。
後者はテリー・レノックスとの友情と、その終焉だ。

しかし……無関係な人間を求めて殺戮の限りを尽くすへら鹿マロイに感情移入をしろというのは無理な話だし、彼を応援するマーロウの心理もわからない。

テリー・レノックスとの友情と、その終焉はなるほど苦みを感じさせる両シーンだが、640ページの作品のうち40ページ程度ではないか!

2作ともそうだが、起承転結の『起』と『結』だけがあり、中身がスッカスカ……というか、マロイやレノックスとは関係ない暴力沙汰を起こしているだけなのである。
恐らく伏線のようなものもほぼない。ただ、最初と最後が独立しているのだ。

大いなる眠り

大いなる眠り著者: レイモンド・チャンドラー/村上 春樹

出版社:早川書房

発行年:2014

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の2作もその傾向はあまり変わらず、
(再読したにもかかわらず)中身もごちゃごちゃになってしまっているが、
依頼人が実は悪者だった、みたいな話だった気がする。

結局、「起」&「結」と、「承」&「転」が繋がらないのは一緒である。

プロットが複雑で僕が読み解けていないだけの可能性もあるが、
たぶんそうではない。
ただ、勢い任せに作品を書きなぐっているだけにしか思えないのである。

そんなわけで、僕のチャンドラーの評価は相当低い。

そういう作家をこの特集で取り上げるのは、連載を立ち上げた趣旨に反しているし、ただいたずらにファンの方に喧嘩を売るようで心苦しいのではあるが、
ここは備忘録代わりに書かせていただいた。

チャンドリアンの方々、申し訳ない。

全作品評価 S~E

高い窓 C+
水底の女 D+
さよなら、愛しい人 D
大いなる眠り D
ロング・グッドバイ D₋
リトル・シスター E
プレイバック 再読していないのであれだが、以前の記憶ではE

吉川英治「三国志」感想

前おき

この春、2003(2023ではない)年発売の『三国志9』にハマってしまい、
その勢いで読み返してしまった。

本当は北方謙三の「三国志」の方が好きだし、陳舜臣の「三国志」などまだ読んでいない三国志にも惹かれるところがあるのだが、
吉川英治の「三国志」は良くも悪くも牧歌的な雰囲気が漂うため、疲れた時にはピッタリなのだ。

「演義系」三国志と「正史系」三国志

「三国志」には主に二系統の作品が存在する。
中国には三国時代(220~263)という時代が存在した。
それを陳寿という当時の文官が歴史文書としてまとめたのが「正史」である。

一方、この三国時代を舞台にして、劉備(蜀)を正義とする物語が口承文学として流行り、これを明の時代にまとめたのが羅貫中の『三国志演義』。

これは、一応三国時代の歴史を大まかになぞりながら、
劉備(蜀)=正義、曹操(魏)=悪という前提のもと、
カッコいい蜀の武将たちが大活躍をしたり、諸葛亮が妖術まで飛ばしたり、追手の前に張飛が立ちふさがり橋の手前で大喝すると、橋が落ちるなど、
ファンタジー小説に半分足を突っ込んだ内容になっている。

この『演義系』三国志は『ファンタジー小説』として読めば、まずまず楽しんで読めるし、娯楽小説としての見せ場も多いため、派手な活躍も楽しめる。
一方で、「本当の三国時代はどうだったんだろう?」と調べていくと
(僕より詳しい人はたくさんいるので、あまり深入りしたくないが)、
『演義』には嘘というか、うさん臭さが付きまとうのもまた事実である。

ここは、『演義』と実際の歴史は全く別物だと割り切って、『演義』を楽しむときはファンタジー小説を読む気分で味わえばそれでいいとも思うし、
一方で、もうちょっと深くこの時代を知りたいと感じる人にとっては、『食い足りない』作品。
それが『三国志演義』である。

三国志演義 1

三国志演義 1著者: 井波 律子/羅 貫中

出版社:筑摩書房

発行年:2002

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吉川三国志について

さて、このままでは「三国志演義」の話になってしまう。
この記事で取り上げるのは、あくまでも「三国志演義」をベースにした吉川英治作、「三国志」なのだった。

とはいえ、元々演義がベース。大まかなところは変わらない。
そこで、まずは演義との違いを取り上げてみる。
〇は個人的に「演義」よりも優れていると思う点、✖は「演義」よりも劣っていると思う点である。

〇「演義」は講談調であるが、「吉川三国志」は小説である。

講談調も慣れてしまえば何のことはなく読めるのだが、やはり小説の方が読みやすいという人は多いだろう。

✖諸葛亮の死(234年)に物語は唐突に終わる。しかし「演義」ではその後も物語は続き、呉の滅亡(280年)まで続く

確かに、前半での関羽・張飛・諸葛亮といったスーパースターたちの華々しい活躍が失われ、徐々に寂しくなっていく三国時代。
諸葛亮の死を最後に筆を置くという選択も一つの手であり、実際多くの日本人作家がそれを真似している。

しかし、個人的には仮にも「三国志」というのだから、「三国時代」の最初の14年だけを書いてそれで終わりというのは、あまりに悲しい。
その後の事も知りたいと思うのは、当然ではなかろうか。

✖第1巻の謎展開

個人的に最大の謎は、第1巻の吉川先生オリジナル部分である、
劉備と麋夫人との恋物語である。
なぜか麋夫人は「白芙蓉」という名の高家の令嬢として登場し、劉備とちょっとだけ逢瀬を過ごすのであるが、これがなぜか「後の麋夫人である」という力技をかましているのには驚嘆させられる。
じゃあ麋竺や麋ホウも高家のボンボンだったのだろうか?
確か富豪の家出身ではあったはずだが。

また、オリジナル展開では張飛は割と普通の男である。
それが劉備配下に入った途端に、粗暴で酒癖の悪い「演義」どおりのパワハラバカになってしまうのはどうした事か。

オリジナル展開が終わり、反董卓連合が結成されると、途端にオリジナル展開は影を潜め、『演義』とほとんど変わらない内容になる。

劉備の青春を描きたいならそれならそれでいいが、それなら最後までこの路線でやってほしかった気もするし、そうじゃないならもうちょっと当時の後漢の情勢

(劉焉の入蜀や、西涼太守として登場する董卓と、馬騰や韓遂の関係。
袁紹陣営VS袁術陣営の対立など、歴史的側面に力を注いでほしかった気がする。特に董卓(後を継いだリカク)・馬騰はいずれも西涼太守として登場するため、よくわからないことになる。
より賢いとされる劉協=献帝を帝位につけたがる董卓の行動も謎である。
傀儡として扱いやすい劉弁=小帝のままで良かったのでは?
更に言えば、献帝は大人になると、別に賢くないのだった)

△あまりにも怪しい妖術は、なるべく物理法則を超えない範囲に書き直されている

ただし、左慈に関してと、兀突骨に関してはそのままなのが気になる。

〇曹操・呂布に対する目が「演義」より優しい

もっとも、その後に出ている作品に比べるとあれなのだが、少なくとも「演義」よりは優しく、人間味のあるキャラクターになっている。

✖ チョウコウは3度死ぬ・

魏の武将、チョウコウである(漢字変換できない)。
吉川先生の執筆当時、『演義』ですらろくに翻訳されていなかったのだろうか?
そうだとしたら吉川先生の欠点ではないが、結果として魏の歴戦の名将チョウコウは3度も死ぬことになってしまう。
『演義』を読んだ人には、チョウコウは息の長い名将であり、そんな簡単にホイホイ殺して良い人物ではないはずなのだが。

?五斗米道が邪教扱い

これはガチでわからん。張魯の五斗米道が邪教だという印象は僕にはない。
しかし吉川先生は邪教だと断言しておられる。よくわからない。

?女はバカである

まずは書かれた時代を考えたいところではあるし、
実際「演義」でも女キャラは基本バカなので吉川先生のせいではない。
しかし、今の感覚で読むと気分を害する人が一定数いるだろうとは感じる。

袁紹の後継者争いを炊きつけた劉氏、劉表の後継者争いを炊きつけた蔡氏、
呂布の足を引っ張りまくる夫人&愛人(二代目貂蝉w)。

リカク・カクシの争いを勃発させる、カクシ夫人。

宦官と通じ、何進を牽制し、董太公を殺す何皇后。

更に、1巻のオリジナル展開でも麋夫人とイチャイチャしている劉備に対して、関羽は「英雄ともあろうものが、これでは困る」と言い、
それに対して劉備は「恋は遊びのようなものさ(意訳)」という返答をしている。

唯一賢い夫人とされているのは『国のため』に劉備の活躍を祈る老母や、
孫ヨクの仇を討つ徐氏であるが、孫ヨクは(張飛もだが)酒に酔って部下を鞭打つパワハラ上司のため、殺されても仕方ないとしか思えないのであった。

感想

他にも『演義系』ならではのうさん臭さ、劉備や献帝のうさん臭さは鼻につくところがある。
劉備ほどの偽善者はなかなかいないし、献帝は偉そうにしているが足利幕府最後の将軍を思わせる『祖先は偉かったが、お前は別に偉くない。恩知らず』としか思えなかったりする。

しかしその辺は吉川三国志というよりは『演義』の弱点でもあるし、致し方ないだろう。

食い足りないという印象は否めないが、『原点・古典』として読む価値がないというわけではない。
「三国志」を楽しむために、まずはここから。そういう選択もアリだろう。

最後に、好きな武将を何人か挙げたい。

(蜀)

劉備・関羽・張飛・徐庶・諸葛亮など

正直に言うと、劉備や張飛は色々考えるにあまり好きではない。
しかしあくまでも『ファンタジー小説』である『演義系』に出てくる2人は好きである。
今はだいぶ印象が違うのだが、初読時、劉備三兄弟の死に涙した身としては、思い出補正として入れておきたい。

徐庶のデビューは華々しいものがある。
何なら鳳統より華々しい活躍をしている。活躍シーンが短いのも、逆に趣深い。

(魏)

曹操・カク

曹操はこの時代、最大の英雄だと個人的には思う。
どこか織田信長に通ずるものがあるが、信長よりも邪悪さは感じない。

カクはいかにも謀将というイメージがあり、彼の繰り出す悪の軍師感は嫌いじゃない。

なお、別作品では荀彧も好きなのだがあくまでも「吉川三国志」の感想なのでここで入れない。

(呉)

孫堅・孫策・周瑜・魯粛・陸遜

ミーハーすぎて申し訳ないが、やはり孫策&周瑜の時代こそ、呉が最も輝いていた時代だろう。
イケメン且つ、時代の小覇王たちである。ついでに妻も美女であり、おまけに若死に。完璧(?)である。

魯粛は本当はこんな無能ではなかったはずだが、諸葛亮にいいようにあしらわれるお人よしとして「演義」系では癒しキャラになっている。

魯粛在世当時は、曲がりなりにも蜀と呉はうまくいっていたのである。
ただしそれは、諸葛亮に丸め込まれていただけ、という言い方もできる。

孫堅は反董卓連合の中で大活躍したのに、袁術にモラハラ(?)を受け、
袁紹に言いがかりをつけられ、劉表に殺される不幸な人である。
不幸な人には同情をしてしまう。

陸遜は登場シーンがカッコ良いのである。

(その他勢力)

田豊・沮授(袁紹)

報われない人には、どうにも弱い僕である。
散々、献策しているのに取り上げられないどころか袁紹に死を賜る不幸属性の持ち主。
使える主を間違ったとはいえ、かわいそうである。

呂布

三国志最強の武将なのに、ヘタレ。そのギャップが何とも言えない。
別作品での超イケメンな呂布の方が好きだが、このヘタレ呂布はそれはそれで味わいがある。

董卓の母w

息子がクズだったのは、彼女の教育が悪かったのかもしれない。
しかし90代の母、50代の息子のために惨殺されるのはかわいそうである。

総評

まぁ、せっかく再読したので記事にしてみたけど……怒る人も多そうだなぁ……。
大丈夫かしらん。

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