試合会場は西ベルリンです(笑)。
この74年ワールドカップは西ドイツで行われた大会なんですね。

チリなんて誰も知らないんじゃないかと思ったら、一人だけ名前を知ってる人がいた!
チリのDFフィゲロア選手。この当時の南米最強DFということで、名前だけ知っていました。

一方の西ドイツは……まぁ、この大会優勝する事になるのですが、
皇帝ベッケンバウアー、爆撃機ゲルト・ミュラーをはじめとして、
現バイエルンのマネージャーのヘーネスや、元レアル監督のハインケス、
バイエルンのGKコーチを務めていたGKマイヤーやら
元ドイツ代表監督のフォクツなど、よりどりみどり。
まず、結果と試合内容の評価から先に。結果は1-0で西ドイツの勝利。試合内容は A-


試合を見た感想ですが、西ドイツは強い。
まず、守備戦術なのですが、当時ほとんどのチームが『リトリート』と呼ばれる戦術をとっています。つまり、敵にボールを奪われたらまずは迅速にゴール前まで戻り、敵が自陣ゴール前に到達するのを待って守るという戦術です。スコットランドもチリもザイールもこの戦術をとっていました。
一方西ドイツは現代サッカーの主流でもある『プレッシング』戦術を行なっていました。これは、敵にボールを奪われたらポジションがどこであれ、追いかけてボールを奪ってしまおうという戦術です。
これは画期的な戦術で、これを行う事により相手ゴールに近い位置でボールを奪えるので、スムーズに攻撃に移ることができます。
このプレス戦術のおかげで、現代のサッカーは昔と比べて大変スピーディーになった一方、中盤での潰しあいが延々と続き、シュートがちっともない退屈な試合も増える事になりました。
前者は、昔ならばゴール前に到達する前はとてものんびりしたものでしたが、現在はどこの位置にボールがあっても、プレッシャーがあるので油断できなくなったということ。後者は、両チームともプレスをかけあうので、攻撃力のないチーム同士、あるいは守備力の高いチーム同士がぶつかりあうと、延々とボールを奪い合うだけになってしまうわけです。


西ドイツの攻撃に話を移しますと、(予想とは違い)大変魅力的なサッカーをするチームですね。ドリブル突破が主体で、どの選手も非常に高いテクニックを持っています。見ていて大変面白く、今まで私が抱いていた「機械のように正確だが、意外性や面白みに欠ける。ひたすら真面目なドイツサッカー」というイメージは、この大会の西ドイツには全くあてはまらないようです。
長くなってしまったので、選手個々の話は次の西ドイツの試合の記事に譲るとして。


これだけ強くて、更に審判にも助けられてるんじゃそりゃ優勝しますって。
この試合のチリのカセミ(ハセミ? 文字を見たわけじゃなく、音声なのでなんとも)選手の退場シーンなんて、あからさまにおかしい。
西ドイツの選手が、チリのカセミ選手にラフタックルをかますもお咎めなし、直後カセミ選手が報復にこれまたものすごいラフタックルをかまし、カセミ選手だけが退場というのが経緯。
なお審判は一部始終、間近で見ていました。本来なら、西ドイツの選手がタックルをかました時点でイエローカードを出すべきではないのか。それをファウルもとらないとは何事か。
カセミ選手のラフタックルは、まぁレッドカードでも仕方ないラフタックルではあるし、報復行為がよろしくないというのも事実。しかし、そもそもそのカセミ選手のラフタックルを誘発したのは西ドイツの選手のタックルであり、主審の判定だったのではないか。
開催国だから、なのかそうでないのかはわかりませんが、納得のいかない退場でした。
この退場で折角の緊迫した試合の興がそがれました。


MVPはブライトナー(西ドイツ)。とにかくよく走る選手で、テクニックもあり華麗なミドルシュートも見せてくれました。現代でいうならネドベドとザンブロッタを足して2で割ったような選手です。