正直、要約とはこれは言えないと思う。要約に失敗した残骸と言うべきか。
とりあえず晒す。ネタバレっちゃネタバレだけど、何も起こらないのでネタバレかどうかも不明。
再挑戦してもう少し巧くいったら書き直すかも。



鎌倉の稲村ヶ崎は、山と海に囲まれた大自然溢れる田舎である。主人公の中野と五歳の息子“クイちゃん”は、この稲村ヶ崎に引っ越してきて以来、近所の松井さんと年の離れた妹、美紗ちゃんの二人と家族同然の付き合いを続けている。

松井さんは便利屋を生業としていてそれなりに忙しいのだが、妹の美紗ちゃんは便利屋の手伝い、中野はかなり時間のとれる職業(コンビニ本の企画・編集)に就いている為、クイちゃんも入れての朝の散歩はほぼ日課のようになっている。夜は松井さんの家に押しかけて、酒を呑んだり取り止めのないおしゃべりをしたり。そんな時間が緩やかに流れている。

クイちゃんは好奇心旺盛で、『時間はどのくらい大きなものなのか?』とか、『時計を見ないでいる間は時間は流れないのか』、
『紙を見えないくらいにまで千切っていったら、紙は無くなってしまうのか』といった、難しい質問を中野にぶつけてくる。そんなクイちゃんが、中野には可愛くて仕方が無いのである。

クイちゃんのお気に入りは、宇宙の本とミュータントタートルズ、散歩コースにあるお化け屋敷などである。

美紗ちゃんはさばさばした性格で、クイちゃんの面倒を楽しんで見てくれる女性である。歳の離れた兄とも仲が良く、一種社交性に乏しい中野や松井さんに比べ、人当たりが良い。松井さんは容貌魁偉な大男で、何でもそつなくこなす才能があって便利屋という職に就いている。

中野は奥さんと離婚して稲村ヶ崎に移った男で、クイちゃんを溺愛している。教育方針として、保育園に預けず文字を教えていない。クイちゃんは近所のやんちゃ小僧として有名で、いろんな大人たちから可愛がられている。

この物語は主にこの四人の日々の暮らし、とりわけクゥちゃんの育児日記的性格を持った物語である。

ある日、ナッちゃんという子連れのバツイチ女性が引っ越してくる。ナッちゃんは七年ぶりに故郷に帰ってきた出戻りで、美沙ちゃんや松井さんとは旧知の仲である。中野はナッちゃんの自己完結的な性格、何事にも決め付けてかかる癖に反感を覚える。血液型がAだから几帳面、Bだから変わり者といった、非科学的なレッテル貼りが中野の神経に障るのだ。

ナっちゃん以外にも、何人かの人物がこの小説には登場する。愉快な電話をかけてくる変人蛯乃木や、最近恋人のタツヤに振られてしまったゲイの二階堂、美沙ちゃんの奇妙な腐れ縁、木村君などである。

さて、ナっちゃんとはあまり巧くいかない中野であるが、中野の息子クゥちゃんと、ナっちゃんの娘で同じく五歳のつぼみちゃんは、大の仲良しとなる。人見知りが強いつぼみちゃんは、美沙ちゃんとクゥちゃんが優しく話しかけることで、打ち解けることが出来たのである。

だが、そのつぼみちゃんの投じた小さな小石が、ちょっとした波紋を呼び起こす。ある日、つぼみちゃんとクゥちゃんが喧嘩した折、つぼみちゃんに「文字が読めない」と言われたクゥちゃんが、文字を覚えようと考え始めるのである。今まで、本は中野か美沙ちゃんに読んでもらっていたし、文字を読み書きする必要性は無く、クゥちゃんも文字に対して興味が無かったのである。一方の中野も、小さい頃は文字に縛られない世界に生きて欲しいと願っていた為、積極的に文字を教えようとはしていなかったのだ。

宇宙の本を使って、文字を覚え始めるクゥちゃん。だが、興味のあるページに関して、クゥちゃんは暗唱出来るほどに内容を記憶しており、興味の無いページはすぐに飽きてしまう為、結局クゥちゃんの文字覚えは三日坊主に終わる。気がつけば、クゥちゃんとつぼみちゃんは仲直りを済ませており、二人でおままごとをしたりして楽しく遊んでいるのだった。

三次元や四次元、因果関係や迷信などについて、夜な夜な飽きもせずに論じ続ける中野と松井さん、時折意見を挟む美紗ちゃんと、枕を相手に格闘したりレゴを作ったり、たまに興味のある単語を聞きつけるとやってくるクゥちゃん。

大人の世界と子供の世界。大人が思いもよらないことまで理解していたり、鋭い観察眼を見せたりと、瑞々しい感性を振りまくクゥちゃんを中心にした、四人の関係はまだ当分続いていくはずである。

だが、季節が緩やかに移り変わるように、ある日突然にそんな季節も終わりを告げてしまうかもしれない。いつも鳥に餌をやっていたホームレスのおじさんが、いつの間にか姿を現さなくなってしまったように。例えば美紗ちゃんが結婚をしたら。

例えばクゥちゃんが成長し中学生くらいになったら。今ままの関係ではいられなくなってしまうだろう。

ふとした瞬間、懐かしくも優しい気持ちを持って思い出す、そんなかけがえのない季節を生きていくのだ。