まずは点数から。

シナリオ 145/150 キャラ 130/150 絵 70/100
音楽 100/100 その他システム等 75/100 思い入れ 50/50

ESの感想はこちら。点数は92点。

総合 575/650(5位/131ゲーム中)

……ただ、順位ほど名作かと聞かれると、???なんですけどね(笑)。

このゲームは、私の大好きな過去作の良いとこどりみたいな感じでして、
「てのひらを、たいように(総合9位)」のエッセンス、「君が望む永遠(総合11位)」のエッセンス、
「僕と僕らの夏(総合7位)」のエッセンス、「ダブルキャスト(ランク外)」のエッセンスあたりが
見事に融合していたりします。

ですが、単品で考えると、例えば「ひらたい」のエッセンスだけを見れば
世界ノ全テはひらたいに及ばない。
「君望」の要素では、世界ノ全テは君望に及ばない。僕夏、ダブルキャストも同様です。
ただ、今挙げたゲームの弱点を世界ノ全テは、各々見事に補っているんですよね。
拙いたとえで申し訳ないですが、国語5(全国テストでもトップ!)、算数2、社会1のゲーム(例えばひらたい)と、
国語4、算数4、社会4の世界ノ全テの内申は世界ノ全テの方が上、みたいな。
だから5位というほどのインパクトは無かったりします。
それでも、名作に変わりは無いんだけどね。

そんな、世界ノ全テにも一つ、スペシャルな武器がありました。
100点満点をつけた音楽です。
「Free Will」「世界ノ全テ」「祈る夜」といった名曲は、内容にマッチした歌詞・心に切ない余韻を残す旋律共に、ギャルゲー界で随一の完成度を誇るといっても過言ではないでしょう。また、背景に流れるBGMの質も素晴らしく、シナリオを感動的に盛り上げている。アレンジも実に多様で、バンドを舞台にした物語と歩調を合わせるように、素晴らしい楽曲が多数用意されています。


物語の感想は……文章が堅いのは気にしないであげてください。
感動をうまく言葉に出来なかった、苦戦の痕跡が見え隠れしています。


 『小西智子シナリオについて

 世界ノ全テの本流と言える智子シナリオは、さすがにメインヒロインだけあって最長かつ最良に仕上がっている。このシナリオは前半と後半に大きく分かれている。前半は智子の引越しを阻止する為に、仲間たちが立てこもるクリスマスまでの話。後半は智子と玲子を中心にした、二重人格の話である。個人的には前半の方がより出来が良く感じたため、やや後半が失速気味に思えてしまった。

前半戦のクライマックスについて

 智子シナリオのクライマックスはやはり、7人の仲間たちが智子を守る為に楽屋に立てこもるあのシーンだろう。警察に追われ、世界から追放された7人が、大切な仲間たちと過ごす最高のクリスマス……残念ながら状況はそれを許さず、夢幻に終わってしまったけれど。

 瑞樹と麗次は結ばれ、智子とほのかが解り合うなど、7人の中にはこれまで以上の力強い絆が結ばれた。そんな彼らの姿こそが、青春をテーマにしたこのゲームで最も印象に残った。

家族について

 このゲームの陰のテーマは家族である。浩や智子に顕著だが、7人全てに家族設定が用意されているのは珍しい。宮本家と小西家、草薙家と村上家はそれぞれ類似性を持っている。浩と智子は、優秀だった兄、姉と比較され続け、屈折していく。浩の竜彦への想い、智子の玲子への想いは嫉妬と羨望、そして愛情の入り混じる複雑なもの。だが、竜彦も玲子も、浩や智子に愛情を注いでいたことで、二人の心が完全に壊れることはなかった。智子の心が折れてしまったのは、大きな支えとなっていた玲子を失ったためだろう。

 一方、草薙家と村上家はそれぞれ親の存在が希薄だが、兄弟の強い結びつきが一家を支えている。悪き父・母に代わって、良き兄・姉が弟・妹を支えている構図が見えてくる。


  「智子と玲子―Remind Of You―」

 Remind Of Youのラストで、智子と玲子は合一を果たす。だが、これはややご都合主義ではないだろうか。智子と玲子は本来一つの人格ではない。通常の二重人格とは違い、別個であることが自然、智子が消えてしまうことこそが自然なのだ。玲子と智子が合わさったラストは、いかにも不自然であやふやな状態であるといえる。せめて、智子の記憶が補完された玲子の状態ならば、まだ納得がいったのだが。

 だが、Remind Of Youが蛇足だったかといえばそんなことはない。世界ノ全テ=智子を失った浩の描写、彼を想う友人たちの描写は実に見事である。それだけにラストがやや拍子抜けではあったのだが。



感想の出来はさておいて、これを読んで……というか見ていただければ、
私がこのゲームを好きなことは、なんとなく伝わると思います。

……粗探しはポンポン出てくるのに、感動したゲームの感想を書くというのは
本当に難しいですね。