著者は京極夏彦。評価はA+。


うぶめと、姑獲鳥のエピソードに量子力学を深く絡ませた、演出に感嘆しました。


上巻の最初の100ページくらいは、量子力学に関する薀蓄がほとんどなので、
『水月』やら『ネバーセブン』で慣れ親しんだ私としては、
「それは知ってるからさっさと次いこーぜ」と思っていたのですが、
ここまで深く絡んでくるとなると、やはり入れざるを得なかったのでしょう。


姉と妹の入れ替わりについては、容易に予測出来るのに関口君がちっとも
気づいてくれないので、ついついそちらばかりに目が行きがちだったのですが、
これは、簡単な謎に読者の意識を向けさせて、難しい謎に意識を向けさせない
読者操作なのでしょうか。……考えすぎかな?


しかし、救われない話ですねぇ。ほとんどの登場人物は亡くなるし、
二番目にいけ好かない内藤君は生き残るし(笑)。


余談ですが、『ダチュラ』という単語に敏感に反応した俺がいる……。
『コインロッカーベイビース』にも出てきたんだけど、
てっきり村上龍の造語かと思ってました。
実在の植物なのですね。
造詣の浅さを恥じ入るばかりです。