かなり重大なネタバレを含んでいます。要注意!!


もしらばが泣きゲーという評判は嘘じゃなかったんですね。
ちはやというヒロインがそれを教えてくれました。
彼女の設定は、とても私好みです。


君望やこなかなにありましたように、このゲームにもタイミングの妙があります。
つまり、あの場所で一樹が明穂に告白をしなかったら、千早が明穂を殺すことはありませんでした。
それはもちろん、千早が殺したことに変わりはないけれど、
一樹が明穂を好きにならなければ、せめて告白の場所を別のところにしていれば、
明穂は死ななかったということ。
つばさの後押しで告白を決めた一樹。
それはつまり、つばさが一樹を後押ししなければ、明穂は死ななかったということ。
誰もが知らず知らずのうちに、殺人の一端を担ってしまったということ。
そんなことを考えると、この話は重いなと思います。
確かに泣かせようと作っていることはわかるんですが、こうも見事な『掛け違い』を
見せられると、素直に感心してしまいます。


後、しつこいくらいの繰り返しになるけれど、音楽が最高です。
「僕と僕らの夏」「エリュシオン」「ディアマイフレンド」と、
樋口さんの手がけたゲームをプレイするのはこれで4本目になるのですが、
ギャルゲーエロゲー界では一番好きな音楽家さんだったりします。


一方で、テキスト力がもっと上だったら号泣間違いなしの泣きゲーになったのにとも思います。
なんというか、*1「引き込み」というか「つかみ」が弱いんです。
シナリオ展開は大体読めてしまうし、先が気になる、謎があるというわけでもないので、
早く続きをやりたいという意欲がイマイチ湧かないんですね。
プレイしている間はとても楽しいし、プレイ後も余韻が残るのですが、
廃人プレイしてやる! とか、プレイがやめられん!! と言ったことが一切無く、
続きを早くプレイしたい!! ということがないのです。
プレイしている間は、本当に面白いゲームなんですけどね。


ただし、やや弱いかなと思ったテキストの中でも、
“もしも明日が晴れならば、空の向こうが見えるかも" のフレーズは珠玉だと思いました。


正直、何だってこんな長ったらしいタイトルにしたんだろうと、ずっと疑問だったのですが、
この『勝負フレーズ』のためだったんですね。
僕は長いタイトルが好きじゃないのですが、これには脱帽です。
実に巧い。


そんなわけで、委員長エンドという一番(苦笑)なエンドを見てしまったわけですが、
逆に考えればお楽しみはこれから。
ここまでで、もしらばが良作確実、名作のポテンシャルすら秘めていることは
わかったので、集中して楽しんでいきたいと思います。


……去年は不作だと思っていたけど、これは当たりだったなぁ。
「こんにゃく」や「オルタ」を選んで、これを選ばなかった自分の見る目の無さを笑うばかりです。


*1 どう表現していいものか言葉が思いつかなかったのですが、
  a103netさんが使っているのを見て、言葉をパク……借用させていただきました。