前記事:個人的エロゲーギャルゲー20選①
に続いて今回は11~20の10作を紹介。こちらも数字は純粋なナンバーであり、
順位ではないのでご理解ください。



11 120円の春(非18禁)

ここではないどこかへ。120円の片道切符で、車掌から逃げ隠れしながら遠くを目指す小学生小雪と、そんな彼女を見つけ、一緒に遠くを目指すことにした青年の物語。
青年は、小雪の姿を通して、毎日が輝いていた少年時代を思い出す。
名前も知らない、どこにあるのかもわからない。そんな駅から見えた星の輝きと共に。


「120円」をキーワードにした4つの短編集。文ではその中から『120円の冬』をピックアップしましたが、表題作にもなっている『120円の春』もお勧め。
清々しい読後感を保証する短編集です。


12 エリュシオン

地中海に浮かぶ孤島の洋館。法外な価格に誘われて遼一は館を訪れる。
マフィアのボス、テオ・パドリーノと、美しいメイド達。
そこには現実から隔絶された、様々な想いが満ちていた。

本作の特徴は、様々な社会問題を無駄なく、効果的に使いこなし、
重厚なストーリーに織り込んでいるというところ。それも、核になる部分に使われています。

ざっと挙げれば、コソボ問題に、イタリアの南北問題、第二次大戦とナチスドイツ、イギリス国教会とカトリックの対立、クリミア戦争などなど。
また、萌えをアピールするためのアイテムとしてのフレンチ・メイドではなく、魂の在りようを規定するメイドという在り方、恋人としての愛とは違う、メイドとしての愛をも描いた、究極のメイドゲーです。


13 夏夢夜話(非18禁)

ある朝、怜二の家に、今話題の絵本の世界を再現した、『フェルネラント展』への招待状が届く。
その日を境に、怜二の前にペルソナと名乗る謎の人物が現れ、やがて……。


童話的な世界フェルネラントを舞台に、ヒロインの生々しい深層心理を描いた異色作
童話という世界観だからこそ描ける、残酷で悲痛で孤独で、それでいてどこか和やかで温かい、そんなお話。

田中ロミオ作品の中で、一番のお気に入りです。
出典は、童話が中心ですが、童話じゃないものも混ざっていたり。
僕にわかるのは、『不思議の国のアリス』『長靴をはいた猫』『ピーターパン』『家なき子』『ヘンゼルとグレーテル』『オズの魔法使い』『宇宙戦争』『シャーロック・ホームズ』『モンテ・クリスト伯』『白鯨』『ザカリウス親方』『雪の女王』くらいです。


全く関係ないんですが、僕は以前この作品と全く同じテーマで(ヒロインの深層心理を、童話的世界で描く)長編小説を書こうとして、挫折したことがあります。
なので、僕のアイディアで(いや、もちろん田中ロミオ氏のアイディアなんだけど)、敏腕ライターが書くとこんな物語になるんだなぁと、勝手な感慨を抱いています。


14 Ever17(非18禁)

水深117メートルの海洋アミューズメント施設、LeMU。
閉鎖されたこの施設に、7人の男女が取り残される。
そんな、オープニングから始まるSFエンターテイメント。

この作品の凄いところは、完全なまでの主人公とのシンクロだ。
主人公が得られる情報と、プレイヤーが得られる情報。そして、プレイヤーだけが得ている情報。それらを全て計算し尽くして書かれたテキストによって、
主人公の感情とプレイヤーの感情は極度なまでに一致する。

謎解きゲーにおいてよく見られるのが、謎が簡単すぎて主人公より先にプレイヤーがわかってしまう場合と、
謎が難しすぎて主人公がわかっても、プレイヤーにはわからない場合がある。
それが、このゲームでは主人公に謎がわかる瞬間に、プレイヤー(私)もわかるという奇跡的なまでのシンクロを果たした。

この一点においても、素晴らしい出来と言えよう。


なお、KIDから出ている他作品『セパレイトハーツ』もまた、謎の難易度バランスが極めて優れた作品だ。
残念ながら『EVER17』と比べると、物語のスケールに大きな差があり、今回は『EVER17』を選んだが、『セパレイトハーツ』もまたお勧めの作品である。

また、謎解き過程がやや杜撰なために外した『Remember11』もまた、お勧め作品の一つである。謎自体は非常に良くできているのに、プレイヤーへの開示を誤った作品といえる。


15 最果てのイマ

町外れの廃工場。そこは、7人だけの聖域だった。
それぞれの学校に溶け込めぬものたちも、そこに集う仲間達の前では、
自然な自分でいることができた。
絶対的な信頼。居心地の良い空間。そんな、7人だけの世界がずっとずっと続いていく……そのはずだった……。


『EVER17』において、謎の難易度バランスについて書いたが、この『最果てのイマ』の謎は、私がプレイした中では最難である。
この、謎解きゲームとしての側面も素晴らしいのだが、個人的には作中に流れる『青春ゲーム』としての側面も高く評価したい。
叙情的なストーリーと、論理的な謎。
謎解きゲームの好きな方には、これらが複合した『最果てのイマ』に、
是非とも挑戦してほしい。


16 水月

瀬能透矢には記憶がない。
気がつけば、自分はここにいて、『瀬能透矢』という単語記号で呼ばれていた。

記憶が無い、ということ。歴史が無い、ということ。
自分を確立するための根拠が、思い出せないということ。
自我のあやふやな夢幻のような世界で、繰り広げられるヒューマンドラマ。


粗も散見されるのだが、雪シナリオの切なさと那波シナリオの見事な世界解釈は見逃せない。

なお、ほぼ同タイプの特徴を持つ『Never7』(非18禁)と、この『水月』。どちらも甲乙つけがたかったのだが、『Ever17』を紹介した関係でこちらの『水月』を選んだ。『水月』が気に入った方には、是非『Never7』もプレイしていただきたい。


17 蜜柑

世捨て人的な小説家肇(はじめ・漢字違うかも)は、極度のスランプに陥っていた。ある日、ふとした弾みで立ち寄った古本屋で、彼は運命の出会いを果たす。

3本の一見関わりの薄いストーリーが絡み合って、一本のシナリオを構成しているこのゲーム。
主人公の『書く』ことに対するスタンスに、とても共感できました。
物語を紡ぐ、京極夏彦風(僕が勝手に思っているだけ?)の文体も見所の一つです。
恐らく、『20選』の中で最もマイナーであろうこのゲーム。是非プレイしてみてください。


18 プリンセスうぃっちぃず
御堂真樹は、正義の味方に憧れるちょっぴり助平な単純バカ。
そんな彼の元に現れた、魔女の世界のプリンセス。
こちらもかなりの単純バカで、結成したのが魔女っ娘委員会。
幼なじみの林檎や、クラスメイトの委員長。
謎の美少女かれんも加わり、今日も正義を守るため
魔女っ娘委員会は大騒ぎ。


萌えとシナリオ、エロのバランスが非常に良い作品。萌えゲーの体裁を守りつつ、
中身のあるシナリオがそこでは描かれています。お馬鹿なギャグに笑い転げること必至で、ほのぼの楽しくプレイできます。
シビアな物語・現実も魔女っ娘委員会持ち前の明るさで乗り切っていく。そんな、力に溢れた作品です。


19 月は東に日は西に

朝起こしに来る幼なじみに、かわいい従姉妹。
そんな毎日を送る直樹の元に、空から転校生が降ってきた。


純正萌えゲーからも一作くらいということで、オーガスト作品から『はにはに』を選びました。
シナリオだとか世界観だとか、整合性だとか。そんな堅苦しいことはひとまず忘れて、気楽にほのぼの楽しみましょうというのが、今作をプレイする上で必須の心構え。
かわいい女の子達に囲まれた幸せなスクールライフが楽しめます。


萌えゲーから一作ということで、『ダカーポ1』『夜明け前より瑠璃色な』と『はにはに』の3作から、どれを選ぼうか迷いました。
結局、他2作がファンタジー要素が強いのに対して、純粋に『スクールライフ』で勝負をしてきた『はにはに』を選んでみました。
『はにはに』にファンタジー要素が無いかと言われると、そんなこともないのですが、とりあえず無視できるかな、と。


20 Close To(非18禁)

穂村元樹は恋人の柏木遊那とのデート中に交通事故に遭い、重症。幽体離脱をしてしまう。
身体を持たず、ただ空間を漂うだけの元樹。
極度のショックから彼の記憶を失う遊那。
途方に暮れる元樹が唯一頼れる相手は、人間嫌いの霊能力者小雪だった。
辛抱強い元樹のコミュニケーションもあって、小雪は徐々に心を開いていく。
だが……。
心臓が弱く、このまま臓器提供者が現れなければ死んでしまう小雪。
そして事故に遭う前、ドナー登録をしていた元樹。彼の臓器こそが、小雪の生命を繋ぐ最後の望みだったのだ。
元樹が死ねば小雪は助かる。元樹が助かれば、小雪は死ぬ。
そんな出会ってはいけない二人の、珠玉のラブストーリー。


ここでは小雪シナリオを紹介しましたが、遊那シナリオにも非常に印象深いシーンがありますし、ラストの麻衣シナリオもとても感動できますので、是非全キャラプレイすることをお勧めします。


……ちょっとネタバレしすぎた気がしないでもないんですが、Close Toはマイナーゲームということもあって、具体的にシチュエーションを提示しないと誰も興味を持ってくれそうになかったので、やや突っ込んだことも書いてみました。
本作では麻衣シナリオがグランドフィナーレなので、小雪シナリオのある程度のネタバレは許されるかな……と、いうのが言い訳です。すみません。


後書き


やっぱり、20作に絞るのは難しいですね……。紹介したゲームのシリーズ作は我慢するとしても、

『群青の空を越えて』
『もしも明日が晴れならば』
『家族計画』
『パンドラの夢』
『ナルキッソス』
『ダカーポ』
『Lの季節』
『ファントム』

あたりは、入れたかったなぁ。
と拡げていくと、グダグダになってしまうのですが。

逆に言えば、30作に拡げてしまうとやや劣る作品も含むことになり、
『ベスト版』(?)の意義が低下してしまうような気もします。



以前に比べると、ゲームのペースはかなり落ちていますが(以前がやりすぎだった)、これからものんびりとゲームを続けていくと思いますので、よろしくお願いします。
これからも20選に新たに入るようなゲーム、あるいは入れようか迷うようなゲームに出会えると嬉しいです。


追記:2014年

この記事を書いて、もう随分になる。
この数年の中で出会った作品で、この20選に確実に入るのは『穢翼のユースティア』、『Steins;Gate』、
『俺たちに翼はない』の3作までか。
『ef』も入れたいところだが、『はるのあしおと』とライターが被るので入れるか迷う。


単純にプレイ本数が減っているという事情もあるし、何をプレイしても楽しめた初心者の頃に比べれば
求めるものが高くなっているという側面もあるだろう。


あと、自分にツッコムのもなんだが、なぜ『月は東に日は西に』を入れたんだろう。
萌えゲー枠ということだろうか。
それなら、『Sugar+Spice』と入れ替えてもいいかな。
『はにはに』は、『ユースティア』ともライターがかぶるしね。