正月休みは、友人とカラオケに行ったのと、親戚付き合いをしたのと、
「君が主で執事が俺で」を2ルートクリアした以外は、終始読書に励んでおりました。
おかげさまで、15冊もの本を読んだので、その感想を書いてみます。
……微妙に寂しい正月な気もしますが、ある意味充実していた、かも?




1、ガラスの鍵 著者 ダシール・ハメット 評価C
2、デイン家の呪い 著者 ダシール・ハメット 評価B
3、マルタの鷹 著者 ダシール・ハメット 評価C

ハードボイルドの巨匠、ダシール・ハメットの三作品。
趣味でというよりも、ジャンル研究のために読みました。
なので評価は低め。だって、ハードボイルドに興味ない人間が
ハードボイルドを読んでるんだから、しょうがないやね。
同じハードボイルドでも、レイモンド・チャンドラーに比べると、ダシール・ハメットの方がすんなり読めました。
有名なマルタの鷹よりも、デイン家の呪いの方が面白かったです。
一部で解決しなかった謎を二部に持ち越していく、その構成力には感心しました。

ただ、訳が……。昔の人の訳のせいで、「小さい平仮名(っゅょ等)」が無いんですよ。
一例を挙げますと、「ごちやごちやいうんじやねえ」と書いてあるんです。
「ぶつとばされたくなかつたらそこをどきな」ってもんです。実に読みづらい。昭和62年の訳なんだから、頼みますよ。


4、暗いところで待ち合わせ 著者 乙一 評価A+

後半の失速が残念だけれども、前半は乙一作品の中でも一、二を争うくらい
良かった。
この作家は、本当に繊細な感覚を文に表すのが巧いなと思う。
自分の家にいる時に感じる平安と、外界に出ることの不安や、
自分一人が孤立している時に、心に感じる圧迫感。そういった、言葉に表しにくい感覚を掴んで、的確に表現できるところに、この作家の天才を見る。


自分にあるのは、家と、その中に充ちている暗闇だけだ。他には何もない、コンパクトな一人だけの世界。家が卵の殻、暗闇が白身、自分が黄身。寂しいような、それでも穏やかな気分だった。


一歩、外に出ると体が萎縮する。家の中にある暗闇と、外で感じる暗闇とでは、種類が違う。家の中の静かな暗闇は温かく自分を外界から守るようにある。しかし外で感じる暗闇は、ただ恐いだけだ。


日ごろから、自信のかけらもなかった。自分の姿は、どこかがおかしいのではないかと、いつも不安だった。どこかで笑い声が起こると、自分が話題にされたのではないかと、いつも怯えていた。

昔からそうだったが、学校でも、就職して会社にいるときでも、アキヒロは居場所に困っていた。休憩の時間など、人と接触を持たないように生活していると、身の置き場所に困るのだ。どこにいても緊張を感じ、圧迫されるような息苦しさがある。(中略)見えない手で首をやわらかくつかまれ、しめつけられているような気持ちになる。


この物語は、視覚障害のミチルと、社会不適合者のアキヒロの心の交流を描いているのだけれど、ほとんどと言っていいほど、二人は言葉を交わさない。
全部拾い集めても、二人が交わした会話は2~3ページ分くらいしかない。
けれど、言葉は交わさなくとも二人はお互いのことをあれこれと考え、理解し、居心地の良い空間をつくっている。
「ありがとう」の一言だけで、泣かされるとは思わなかった。


5、クリスマスデイズ 著者? パラダイム文庫 評価B-

思った以上にエロかったので良かったです。それだけ。


6、君が主で執事が俺で 久遠寺森羅編 著者 布施はるか 評価D

ベタノベライズ。パソコンのシナリオまんまです。


7、カナリア 著者 ヤマグチノボル 評価B+

甘酸っぱい青春恋愛モノ。特に何の変哲もない主人公に、かわいい綾菜が一目惚れ、って部分さえ気にならなければ、恋物語として良い出来だと思います。
綾菜アプローチ早すぎだよね、と思わなくもないけど、リアル恋愛でもそういうことってあるわけだし。
主人公の周りの恋模様が描けているのもグッド。偏見かもしれないけど、この手の話って往々にして「主人公だけがモテる」という形態をとりがちなんだけど、個人的にそういうの、あんまり好きじゃないのです。


8、シタフォードの秘密 著者 アガサ・クリスティ 評価C

うるさい電車の中で、あまり集中できずに読んだ、という点を差し引いてもイマイチだったような。
偶然なのか必然なのか、僕の好きなクリスティ作品って全部ポアロものな気がします。ポアロという人物自体が好きってわけじゃないんだけど、ポアロものは面白い作品が多いような。なお、今作はポアロものじゃないです。


9、南青山少女ブックセンター① 著者 桑島由一 評価D
10、南青山少女ブックセンター② 著者 桑島由一 評価C-

桑島由一は、以前から脳の湧いたような文を書いている。以前読んだ彼の著作でもそうだった。「トゥザキャッスルディスコアンダーグラウンド」とかそんな感じのタイトルのやつ。
僕はその電波文がかなり苦手で、何度も投げだそうと思ったけれど、何故か最後の方では電波文があまり気にならなくなっていた。
で、今回。やっぱり電波文だった。そして、今回は最後まで気になった。
第一、出てくる女の子の大半がビッチである。これはいただけない。
2巻は、フィーチャーされたヒロインがビッチではなかったので、1巻よりも評価が高い。それだけのことである。


11、サンタクラリスクライシス 著者 ヤマグチノボル 評価A

サンタを使った物語は、ある方向性を示しやすい。この物語も例によって、王道ともいえるサンタストーリーである。
冒頭から、変態四銃士ネタなどで笑わせてくれるあたり、さすが「グリーングリーン」を書いたライターだなと思わせる。
とにかく思春期の、ちょっぴり痛く微笑ましい、そして何だか身につまされるような少年を描くのがこの人は巧い。
単に痛いだけじゃなく、「うわっちゃー、俺もそういう時期あったなぁ」みたいな、さじ加減が絶妙なのだ。
魅力的な二人のヒロインもさることながら、やっぱり今作はラスト直前のシーンでの主人公の格好良さに尽きると思う。

悪者からヒロインを守るのがヒーローなら、この主人公はヒロインを守ろうとしてボコられるタイプ。そんな凡人の彼が大好きな人にあげたプレゼント。
王道でも、良いものは良い。


12、火魅子炎戦記10巻  著者 舞阪洸 評価C-

僕は火魅子伝シリーズ、火魅子炎戦記シリーズのファンである。
シリーズ自体の評価をしろと言われたら、評価はAである。
でも、この10巻のみの評価をと言われると、悲しいかなC-なのである。

この本は第2シリーズ最終巻。最終巻ならではの悪いところが一気に出た感じだ。
まず、極めて急ぎ足。次に物語をなんとかゴールさせるための、事務的な文の多さと、見せ場の少なさ。見せ場なんかにページを引き裂いている場合ではない、とにかく終わらせなければという焦りのようなものすら感じる。

僕はこのシリーズが好きなので、新シリーズも(あるなら)楽しみにしている。ただ、次からはもう少し終わらせ方も考えて物語を作ってくれるとなお嬉しい。まぁ、最終巻まで散々楽しませてもらってるから、いいんだけどさ。


13、そして誰もいなくなった 著者 アガサ・クリスティ 評価A

これを読んで、「うみねこのなく頃に第1話」を思い出した。雰囲気良く似てます。
今作はミステリーといえばミステリーですが、どちらかというとホラーに近い感じ。
探偵がいると事件が起こるなんてよく言われるけど、探偵がいなくても事件は起きる上に、その場に探偵がいないと、こんなことになってしまうんですねぇ。


14、マブラヴ4巻 著者 北側寒囲 評価B

マブラヴ「アンリミテッド編」後半のノベライズ。普通のノベライズなんだけど、マブラヴはシナリオがしっかりしているので、単体ラノベとして十分読むに値します。
ただ、悪趣味な戦闘服を、まさか表紙に使ってくるとは。この本は18禁じゃないというのに。あれは勘弁、マジで勘弁。

15、描きかけのラブレター 著者 ヤマグチノボル 評価B

高校や大学の雰囲気がとても良く出ていて、青春の香りが感じられる。
ただ、物語自体山があるわけでもなく、終始淡々としているのはマイナスか。
ヒロインも、魅力が無いわけじゃないんだけど、ちょっとわがまますぎて
これと長期間付き合うのはぶっちゃけ無理だなぁとか思いながら読んでました。