大変長らくお待たせしました。平日に全くゲームができない状態だったので、
休日をフル動員して「車輪」全エンド、クリアしました。

感想の前にまずは得点から。

シナリオ125/150 キャラ130/150 絵75/100 音楽70/100
Hシーン・システム等 70/100 思い入れ 35/50

総合505/650(総合39位/150ゲームくらい中)

ESにつける予定の点数 82点

ESに書いた感想はこちら


一言で言うと、なかなか面白かった。プレイして良かったと素直に思えるし、
良いゲームだったなと思う。
ただ、一方でいろいろともやもやしたものが残るのも確か。
とりあえず、先にざーっと不満点を書いちゃいたいと思う。


最大の不満は、やはりスケールの面。「車輪の国」という世界に、
リアリティ(現実っぽいという意味ではなく、嘘くさくないという意味)はない。
要するに薄っぺらく感じてしまう。
「車輪の国」は、誰がどう見てもおかしな、理不尽なことだらけだし、誰がどう考えてもまともな世界には思えない。
事実、主人公は特別高等人という立場を捨ててまで、「車輪の国」に反逆した。

けれど。エンディングを見ればわかるように、この物語は「車輪の国」を転覆させるような物語ではない。
夏咲・さち・灯花・ハーレムエンドではほとんど触れられていないが、より疑問が残るのは璃々子エンドでの「車輪の国」の扱われ方。
ライターは、「車輪の国」を明確には否定していないように感じるのだ。5章まででは、あれだけ否定していたにも関わらず、だ。
結局、「車輪の国」という大きな歯車に対して、主人公が立ち向かうような熱い展開を個人的には求めていただけに、拍子抜けした気分だった。
5章の璃々子の演説シーンがなかなか良かっただけに、残念。


そうではなく、1つスケールを落として、あくまで向日葵の少女たち・温かな故郷を守るための少年少女の奮闘モノとして捉えれば、このゲームは十分良作だと思う。
なまじ、世界観を中途半端に押し出してしまっただけに、世界変革モノとして見れば良いのか、青春ドラマとして見れば良いのかで視点がブレてしまったような感じだ。

この、どっちつかずというのは、恋愛・友情という軸にも見られた。
似たような展開を持つゲームに、「てのひらをたいように」というゲームがあった。このゲームは、恋愛面をほとんど描かず、友情を描くことに徹した。結果、仲間同士の絆を強く感じることができ、感動することができた。


一方この「車輪」は恋愛色の方が強い。というか、友情色がさほど強くない。
これは多分、さち・灯花・夏咲間のやりとりが不足しているためだと思われる。5章に入るまで、この3者がやりとりするシーンはあまり多くない。
そのせいで、5章の「友情・仲間」を描くべきポイントで、一体感・絆を感じきれなかったという側面がある。
ならば、恋愛を強く押し出したのかというと、5章を見た限りではそういうわけでもない。どのヒロインを選んでも、ちょっとしたラブラブイベントが挿入されるだけで、ほとんど共通テキストなのだから。


では、良かったところ。
途中感想にも書いたのだけど、このゲーム、4章を境に突然面白くなりました。
理由は前述の通りだけど、やっぱり賢一が腑抜けた特別高等人候補の立場を捨てたことにあるんだと思います。法月先生も、3章まではウザったい上司だったのが、4章からは明確な敵として割り切って見られるようになりました。


2章の後半、まながさちの家を出て行くシーンや、4章、夏咲が法を犯すシーン、5章の璃々子の演説などが、ピンポイントで凄く好きなシーン。
他に、元気な時の夏咲の立ち絵はとてもかわいいし、灯花のデレっぷりもなかなかで、キャラの魅力も水準以上。ヒロインの中で嫌いなキャラがいません。


叙述トリック(「あんた」)はそんなにすごいと思いませんでした。探せばかなり矛盾が出てきそうな気がしています。
どう見ても姉貴への言葉には思えないようなところも、いくつかあったように記憶していますし(リプレイしていないので、思い違いかもしれませんが)。
一方で、法月の脚と、健一の薬の伏線は凄かったなと。


総合の感想としては、人気になる理由の一端はうかがえた、という感じ。
一方で、絶賛するほど凄かったかな、という感じもあり。
ESでの、得点操作疑惑やら何やらで、信者とアンチがくっきりしている印象があるのですが、僕はどっちつかずの82点。
5章の終わり方が、もっと「車輪の国」の在り方に深く関わってくるエンディングなら、もう少し点数を上げたのだけど。

あるいは、初めから「車輪の国」の社会体制に深くメスを入れる構成ではなければ、純粋に「一つの街の話として」楽しめたのだけれど。


章の好みは、4章>>>>>>>>>5章>>>>>>>2章>>>1章>3章。
キャラの好みは、夏咲、(まな)、灯花、璃々子、さちの順。