ESで見つけた、非18禁の同人作品で、シミュレーションゲーム。
「アトリエ」シリーズを知っている人は、あんな感じだと思っていただけると説明が楽ちんである。


では感想を。


まず、このゲームが同人で1000円だということを念頭においておく必要がある。
このゲームは実際良く出来ていて、フルプライス作品の中に混ぜても遜色ない、
65~70点はあげられる作品だ。
そんなゲームが1000円で出来るのだから、評価も俄然甘くなる。
しかしそうは言っても、ここで「値段が安いから」べた褒めしても、しょうがない。
結局は普通のゲームと同じように感想を書くことになる。


とにかく「商品を仕入れて、売って売ってひたすら売りまくる」だけのゲームなのだが、
不思議と中毒性があり、クリアまでの22時間、ほとんどノンストップでプレイしてしまった。
これは大いに評価すべき点だろう。
「鶏小屋→牛小屋→畑→(略)→港」といった施設のステップアップなんかも、なかなか心をくすぐるものがある。
この辺、前述の「アトリエ(注:管理人は、マリー、エリー、リリーの3作のみプレイ)」シリーズに比べても、
勝るとも劣らない……いや、中毒性では上を行っているポイントである。
システム自体は誇るべきレベル、商業用ゲームの上すらも行く。


一方で、最大の弱点はゲームシステム以外の部分にある。
それは、1つにはキャラクターの魅力。1つには、アイテムの魅力だ。

「アトリエ」シリーズの面白さは、実はここにある。
仲間たちの1人1人が魅力的なために、会話イベントを楽しむためにアイテムを作る。
また、新しいアイテムを作ると、マリーやエリーが「ノート」という形で、1つ1つのアイテムに対し、個性溢れる説明をしてくれるのだが、これを読むのが楽しい。よって、新しいアイテムを作ってしまう。


この「海猫亭」にはこの部分の魅力が欠けている。キャラには愛着が湧かないし、アイテムの説明は無味乾燥な1行のみ。
これは非常にもったいない。せっかく作ったアイテムだ。1つ1つのアイテムに愛着が湧くような工夫がほしかったところだ。
お客さんデータの説明はなかなか面白かったので、アイテムにもこれと同じことができれば良かったのだが……。


また、これは「海猫亭」に限ったことではなく、この種のシミュレーションゲームの宿命なのだが、最終盤が完全に作業と化してしまう。
このゲームでは「お金儲け」が目的なので、極論すれば何も凄いアイテムを作らなくても構わないのだ。
事実僕は途中から、茶碗蒸しとパンと海の幸弁当をひたすら売り続けていたが、
これでもクリアは可能である。というより、新しいアイテムを探すのに試行錯誤するよりも、クリア自体はこの方が遥かに速い。
繰り返すが、これはほとんどのシミュレーションゲームに言えることである。
なので、この点を取り上げて海猫亭を叩く気はない。


もう1つ。システムが複雑な割に、説明が不足しているように感じた。
特に、「保管庫」と「売り棚」、「倉庫」の関係は最初の2時間まるでわからなかったし(というか、保管庫の存在に気づかなかった)、
データの見方もわかりにくかった。もっとも、やっているうちに慣れていくというのもまた確かなのだが。


後は、キャラクターの「勲功」という要素は要らなかったのではないか。
最後の方で仲間になるキャラクターは、当然難しい任務にチャレンジしてもらう必要があるのだが、「勲功」が足りないため、簡単な任務から徐々に慣らしてあげないといけないのだ。正直メンドクセー。


ひたすら中毒性があり、脇目も振らずにプレイしてしまう反面、クリアした後には何も残らない。
そんな「海猫亭」だが、暇つぶしと考えればコストパフォーマンスは非常に高い。
暇だけど、お金はセーブしたい。そんな人には自信を持ってお勧めできる。