著者はハリイ・ケメルマン。

「金曜日ラビは寝坊した」 評価 C+
「土曜日ラビは空腹だった」   B-
「日曜日ラビは家にいた」    C
「月曜日ラビは旅に出た」    B-
「火曜日ラビは激怒した」    これから
「木曜日ラビは外出した」    これから


ユダヤ教の聖職者であるラビを主人公に据えた、探偵モノです。

この作品の特徴は、「日常パート」であるラビの生活に、「殺人事件」がすんなり溶け込んでいる点にあるように思います。

推理モノにありがちなのは、「非日常:冒険小説」の側面を持っているもの。
つまり、探偵が旅行なりなんなりで、遠隔地の非日常的空間に赴き、事件を解決するパターンですね。

それから、警察小説やハードボイルド探偵に代表される、「犯罪に関わること自体が日常」というパターン。

この2つが多いように思います。


しかし、このラビシリーズでは、一人の聖職者として日々の生活を送り、
社会に組み込まれた人間として、近隣の人々と触れ合ったり、信徒会の面々とやりあったりしながら、その近辺で起きた事件を片手間に(?)解決していくという、片田舎の、のどかな雰囲気の漂うミステリとなっています。

実際のところ、ユダヤ社会のパートの方が、推理パートよりも興味深かったり。
めちゃくちゃ面白いとは言わないけれど、これはこれで味があるミステリのシリーズだと思います。


注:「水曜日」だけ、なぜか図書館にないです。「金曜日」と「土曜日」は家にあって、「日」「月」「火」「木」は図書館本です。


余談:実は私はユダヤ人…というより、イスラエルという国にはかなり悪いイメージを持っています。
それを前提としてこのシリーズは読んでいます。

このシリーズでは、アメリカのユダヤ社会が描かれるのですが、
これがまたどうにも「日本人の村社会」に共通する匂いを感じるんですね。
何というか、閉鎖的で、詮索などが横行していて、見栄張りな人だらけで、あまりいいイメージではないのです。
一方で、牧歌的で、ミステリシリーズの割には平和な雰囲気が溢れています。

なんか、同じ「あまり好きじゃない」という感情でも、別人種として嫌いだったのが、なんだか同族嫌悪みたいな気分に変わってきたのが、ちょっと面白いです。

このシリーズ、日本ではあまり売れてないみたいなんですが、
ユダヤの文化に興味がある方にはお勧めですよ。