前編後編合わせての評価はA-。著者はセルバンテス。


一見して、「現実と虚構の区別のつかなくなった老人が暴れるギャグストーリー」。
でも本当は……??


前編についてはドンキホーテとサンチョの愉快な暴れっぷりを爆笑しながら楽しめたのだけど、
後編になってくると、ドンキホーテとサンチョを馬鹿にしようとする性悪の公爵夫妻が現れるため、
なんだか「いじめ」に見えてくる。
そのため、読んでいて気持ちよく笑うことができず、不愉快な気持ちでいっぱいになった。


サンチョの永年の夢(領主になる)を、あんな形で台無しにしたり、
(サンチョが領主になって大喜びした奥さんもかわいそう)
ドンキホーテに猫をけしかけて怪我をさせて笑ったり、
いったい何様なんでしょうか。


ところで、この公爵夫妻、「ドンキホーテ前編の愛読者」でもあると記されています。
その彼らが、ドンキホーテを散々からかって馬鹿にする。
メタ的に考えると、これは「前編の読者」に対する抗議でもあるのかなと思ったりもします。
ギャグ要素はもちろん強いのですが、ドンキホーテをそんなに馬鹿にして笑わないでほしかった、という作者のメッセージなのかもしれません。


ドンキホーテとサンチョ。
いつまでも心に残るヒーローにふさわしい、魅力的な主従の物語でした。


読後感としては「現実と虚構の~ギャグストーリー」よりも、
「いつまでも心に残る~物語」の方が、しっくり来ますね。


文庫本6冊分という大長編なので、読むのはいささか大変ですが、
最初の50ページを読んでそこそこ笑えれば、最後まで読む価値はありますよ。