評価はC-。著者はトーマス・マン。


読者(私)の教養不足も問題ではあるのだが、
それにしても面白くない。
物語は、ショーシャ夫人とハンス、ペーペルコルン三者の関係を除いては起伏に乏しく、
ショーシャ夫人はいつのまにか物語の舞台から降りている。

文化の違い故か、呼びかけ(「君」と「あなた」)に対するやりとりに対して、かなりのページが割かれているが、正直「君」という呼び方に、特別な響きのない日本人にとっては、全然ピンと来なかったりする。
というか、今までは童貞のように控えめだったのに、一度会話しただけで突然ショーシャ夫人に馴れ馴れしく接するハンス、ウザいです。


私が特に辛かったのは、「生命とはなんだろう」とハンスが考えるシーン。
赤字部は引用。


この生きた肉体は、血液によって養われ、神経や静脈や動脈や毛細管の無数の分枝によって覆われ、リンパ液によって隈なく浸透された四肢の神秘的均整美を見せているが、それは本来の支持質である膠様組織にカルシウム塩と膠が固まって支え骨、すなわち、骨髄の詰まった管状骨、つまり肩甲骨、椎骨、ふ骨などで組み立てられた、肉体の足場ともいうべき骨組によって支えられていて、関節の莢膜、ぬらぬらしたかこう、靭帯、軟骨、200あまりの筋肉栄養や呼吸や刺激の報知伝達の用をなす中枢諸器官、保護の役を果たす皮膚、しょう液の満ちた窩腔、分泌物に満ちた腺、開口して体外の自然に接している複雑な体内壁の管組織や亀裂組織を有していること、そういうことをハンス・カストルプは学んだ。



こんなん、読んでられねーよ。一文が異様に長いし、読んでもつまらないし、「生物の体組織について、ハンスは深く学んだ」以外の情報もないし。


他に、幽霊が出てくるところも謎だった。他は、一貫して「現実」の話なのに、なんであそこだけファンタジーになったんだ?
ある意味、サナトリウム自体、非現実的な空間なのかもしれないが……。


医療知識不足な上、誰も突っ込んでないからあれだけど、
サナトリウムに来てから体調壊す人が何人もいるんだけど、まさか院内感染じゃないでしょうね?
結核って、空気感染するらしいんだけど……。


良かったのは、セテムブリーニはキャラ的に良かったです。
あと、ハンスがショーシャ夫人と交わす秘密の合図みたいな描写は良かった。
その後、ハンスがずうずうしくなるのには閉口でしたが。