S・A→心から読んでよかったと思える本
火星年代記/レイ・ブラッドベリ……火星と地球の30年を扱った叙情的な大河ドラマ。火星を席巻し、我が物にしていく姿に古くは新大陸発見、現代のグローバリゼーションに通じる業の深さを感じた。
十月はたそがれの国/レイ・ブラッドベリ……ホラー色の強い初期短編集。19編中8編がお気に入りなので、やはりレベルは高い。
華氏451度/レイ・ブラッドベリ……近未来。本が焼かれ、テレビに汚染された世界を描いたSF。
破戒/島崎藤村……被差別部落出身の主人公を描いた小説。この手の差別は今なおあるらしく、考えさせられる。何も被差別部落に限らず、社会的弱者の立場になって読めば共感できるだろう。
真理先生/武者小路実篤……牧歌的な雰囲気が漂う人生ドラマ。善い人は、その善行故に幸せになる。安心して読める、「良いお話」。
ドンキホーテ/セルバンテス……メタフィクションを駆使したギャグ物語にして、人生の悲哀を描いた作品。読後、目を閉じるとドンキホーテ&サンチョの愉快な冒険が浮かぶ。
ガリバー旅行記/スウィフト……人間社会、それに伴う悪徳を突き詰めて考え、描写した諷刺小説の最高峰。300年経っても色あせない、珠玉の名作。
ガープの世界/ジョン・アーヴィング……ガープと、その周囲の人々の一生を描いた、伝記的小説。作品に流れる空間を、その五感全てを使って味読した。
マタレーズ暗殺集団/ロバート・ラドラム……このジャンルに興味のない私ですらも虜にしてしまう、超一流のスリラー小説。国境を越えて深め合う主人公たちの絆も見所。一度読み始めたら、本を置くことは難しい。
郵便配達は二度ベルを鳴らす/ジェームズ・ケイン……殺人犯人を主人公にした物語。愛し合う二人の共犯者の心の流れが面白い。
B→読んだ時間・お金以上に価値があったもの
されど罪人は竜と踊る/浅井ラボ(暫定2巻)……理系知識を活かしたバトルと、軽妙洒脱なやりとりが楽しいライトノベル。漢字の多用が極めて読みにくいのはマイナスだが、それを差し引いても面白い。
浮雲/二葉亭四迷……古いお話なのでちょっと読みにくいし、途中やや中だるみもするけれど、読後感も良く、素敵なお話です。意外に笑えますし。限りなくAに近いBです。
何かが道をやってくる/レイ・ブラッドベリ……幻想小説。パパが格好いい。しかし、ブラッドベリにしてはイマイチに感じた。
人間失格/太宰治……作品自体はBだけれど、ラストのインパクトはAランクに匹敵。鬱話が読みたいならどうぞ。しかし、日本のベストセラー1位と2位が「こころ」と「人間失格」って、皆さん鬱話が好きですね。
蒲団/田山花袋……身勝手で格好悪い中年オヤジの、いじましくも情けない失恋模様。意外にも読みやすく、思ったよりも面白かった。主人公の「処女厨」ぶりを見るに、処女厨は昔から存在したのだと実感。
俘虜記/大岡昇平……「野火」のグロさで読む前からビビッていたが、同じ戦争小説でもこちらはあまりグロくない。何気ない選択が、兵士の命を左右する。
ひかりごけ/武田泰淳……小説として読むなら「アリ」。ただし、実際の事件を『噂』に取材して描いた結果、一人の男を不幸にしたその罪は重い。舞台を架空の設定にして、誰にも迷惑がかからないように書いても良かったのでは?
ゼロの使い魔16巻/ヤマグチノボル……シリーズ全体の評価はA-で、この巻だけだとB。基本、萌え小説なのだけれど、たまに思わぬところで感動させられたりするので気に入ってたりする。
春琴抄/谷崎潤一郎……句読点をほぼ全廃した実験的文体も、読みにくさはさほど感じない。主従の愛、そして盲目の愛(文字通りの意味で)。異常な部分はあれど、これも一つの愛。
キングの身代金/エド・マクベイン……自分の家族ではない者のために、身代金を払えるかというお話。キングは人格に難点があるけど、払わないと悪人扱いというのも酷な話だよなぁ。
月曜日ラビは旅立った/ハリイ・ケメルマン……アラブ諸国に侵略しては、報復のテロが起き…。個人的に持っていた、「地獄」のようなイスラエルのイメージとは違って、「平和な」イスラエルが味わえます。
木曜日ラビは外出した/ハリイ・ケメルマン……頭が冴えているときに読んだせいか、伏線が一つ一つ見事に張り巡らされていて、無駄なシーンがほとんどないことに気づいた。……このシリーズ、こんなにみんな巧かったっけ?
ライ麦畑でつかまえて/サリンジャー……主人公のホールデンに魅力を感じる青春小説。逆に言えば、ホールデンを気に入るか気に入らないかが全てかも。文章は、疲れている時でも自然にすっと入ってくる。
暗夜行路/志賀直哉……小心でいじましい。ダメ人間だけど共感できる。純文学にありがちな主人公の人生を描いた作品。呪われた出生から始まり、幾度も家族の危機に見舞われるも、「案ずるより産むが安し」か。
唾棄すべき男/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー……警察の腐敗をテーマにした、警察小説。犯人を応援しながら読んでしまったのは我ながらどうかと思うが、それくらい感情移入できた。
都市/クリフォード・シマック……壮大なスケールで描かれる地球の歴史。人間の衰退、犬の時代、そして新興勢力である蟻の世界。人間の気まぐれな実験が、歴史を作る。個人的にはロボットのジェンキンズがお気に入り。
熊を放つ/ジョン・アーヴィング……面白いかつまらないかと聞かれたら、「つまらない」のだけど、読後に妙な余韻が残ったので甘めのB評価。お勧めは、しない。
我輩は猫である/夏目漱石……100年前のユーモア小説。呑気で個性溢れる登場人物のやりとりを楽しむ話。意外に寒いギャグも多いけど。
失われた黄金都市/マイクル・クライトン……良質な冒険モノ。綿密な取材によって書かれた、動物の薀蓄が面白い。人間の女性ロスの無能ぶり・ムカつきぶりとは対照的に、雌ゴリラのエイミーが愛らしい。
万延元年のフットボール/大江健三郎……卑劣で迷惑を撒き散らす最低人間を、実に見事に描いたものだと感心。しかし、谷間の人々の方言が妙にウザく感じたのは私だけかな? 方言を叩いても仕方ないが。
さようなら、ギャングたち/高橋源一郎……小説というよりも散文に近い。ユーモラスで笑いながら読め、文字数がスカスカのため、2時間で読めてしまった。
アイディアの勝利。
魔性の殺人/ローレンス・サンダーズ……1つの事件を刑事側と犯人側の双方から眺めるタイプの、警察小説。犯人の気持ち悪さが印象に残った。
C→暇つぶしにはなったもの
D坂の殺人事件/江戸川乱歩……明智小五郎初登場。まぁまぁ。
外套/ニコライ・ゴーゴリ……ワーキングプアの役人が、モラハラにもめげず、ボーナスで外套を買うが、その外套は強盗に取られてしまい、絶望のあまり役人が自殺する欝話。化けて出る気持ちもよくわかる。
フルメタルパニック(戦うボーイミーツガール)/賀東昭二……ハリウッドアクション的なライトノベル。ヒロインのかなめが微妙にウザかったりするけど、許容範囲かな。アクションシーンは巧い。
涼宮ハルヒの憂鬱/谷川流……前半150ページくらいは、かなり面白かったのだけど。「異変」が起こってからつまらなくなるとは、こはいかに。似たテーマなら、田中ロミオ著「AURA」の方が好み。
世界の中心で愛をさけんだけもの/ハーラン・エリスン……短編「聞こえていますか」は面白かったけれど、それ以外の短編はあまりピンとこなかった。扱っている世界観が特殊にもかかわらず、説明不足な気がする。
即興詩人/アンデルセン(森鴎外訳)……一人の男の恋の遍歴みたいなお話。文語体のため読みにくく、読了までに時間がかかった。物語としてはそこそこ面白いが、敢えて文語体に挑む必要はないかも。
追込/ディック・フランシス……シリーズの中では外れ気味。とはいえ、見るべき点もあるのだが。悪役の存在感が希薄だったためだろうか。
日曜日ラビは家にいた/ハリイ・ケメルマン……ジャンル的にはミステリだけど、相変わらず事件は二の次三の次で、ユダヤの街の権力争いが描かれるシリーズ。良くも悪くもまったり。
火曜日ラビは激怒した/ハリイ・ケメルマン……学生とラビとのやりとりは楽しかったが、なぜ学生から尊敬を勝ち得たのかはイマイチ謎。というか、元々問題の少ない学生に思えるのだが。事件は小粒。
カイロ団長/宮沢賢治……特筆すべきほどのこともなく。お酒の呑みすぎには気をつけましょう。
二十世紀の旗手/太宰治……とりあえず勢いは買う。
駆け込み訴え/太宰治……ユダの人物造形が素晴らしい。発想の勝利だと思う。
警官殺し/マルティン・ベック&ペール・ヴァールー……2つの事件がリンクしているようで、あまりリンクしていないのがイマイチ。
メトセラの子ら/ロバート・A・ハインライン……「退屈」→「急展開:面白い」→「また退屈」という感じ。退屈部が全体の約7割を占める。ラストも、なんだかなぁという感じ。
ブラウン神父の童心/G.K.チェスタトン……「折れた剣」と「サラディン公」の話は面白かった。推理小説なんだけど、文章が硬いのでスラスラとは読めない。
カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー……つまらなくはないんだけど、ちょっと宗教色が強すぎるのと、3兄弟に比べて犯人に魅力が薄いのがちょっと。
フレッチ殺人方程式/グレゴリー・マクドナルド……過剰なまでの会話を繋げて、物語を語るという試みは面白い。前半はやや退屈で(50点)、後半は盛り上がるが(70点)、ラストはイマイチ(減点5)。
ボヴァリー夫人/フローベール……善良な医者が、スイーツ(笑)な美人妻と人間のクズである借金貸しに滅亡に追いやられるお話。ロクな人間が出てこない。
五万二千ドルの罠/エルモア・レナード……卑怯な恐喝屋に立ち向かう、タフな男……って感じの、いかにもアメリカ的な小説。
ハックルベリーフィンの冒険/マーク・トウェイン……友人キャラ、トム・ソーヤをウザく感じるか感じないかで評価は変わってくるかも。個人的にはウザかった。
女王陛下のユリシーズ号/アリステア・マクリーン……極限状況という非現実的時間を、重厚な筆致でリアルに描いた作品。退屈だったけれど、二度読めば面白く感じるかもしれないとは思った。ラストは良い。
D→正直、自分には合わず、読んだ意味がなかったもの
きみの血を/セオドア・スタージョン……ホラー小説を期待して読んだけれども、全然怖くないのでガッカリ。寂しさから血を求める青年を、研究者視点から眺めるようなお話。幕引きは巧い。
春昼・春昼後刻/泉鏡花……読解力の無さが原因だろうと思うけれど、何が起きているのか全然わからなかった。一応最後まで文字を追いかけたが、これで読んだと言えるのだろうか。
高野聖/泉鏡花……どうも、今の私には鏡花は楽しめないらしい…。やはり、全く頭に入らなかった。
阿Q正伝/魯迅……私の勉強不足。「辛亥革命」かぁ、名前くらいは知ってるぞ程度の知識では、全然わからなかった。世界史得意だったのになぁ。
象牙色の嘲笑/ロス・マクドナルド……「さむけ」は面白かったけど、それ以外は今のところイマイチ……。
魔の山/トーマス・マン……読者の知性、もしくは忍耐力が試される。しかし忍耐力を試された読者は、仮に読み終えたとしても、達成感以外の何も得ることはできないだろうと思われる。
鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンズ……ドイツ落下傘部隊の活躍を描いた冒険小説。超人気作なのに、あんまり面白くなかった。デブリンのロマンスは良かったけど……私には、硬派すぎたのかも。
あらくれ/徳田秋声……気が強くて働き者な女性の暮らしぶりが描かれるお話。
つまらないとは言わないが、山もオチもなく、読後感は「それで?」の一語だった。
不死鳥を倒せ/アダム・ホール……暗号モノ。英語・ドイツ語など、欧州圏の言語に精通していれば、きっと面白かったと思う。しかし、アルファベットやラテン語の暗号では、私には荷が重い。
火星年代記/レイ・ブラッドベリ……火星と地球の30年を扱った叙情的な大河ドラマ。火星を席巻し、我が物にしていく姿に古くは新大陸発見、現代のグローバリゼーションに通じる業の深さを感じた。
十月はたそがれの国/レイ・ブラッドベリ……ホラー色の強い初期短編集。19編中8編がお気に入りなので、やはりレベルは高い。
華氏451度/レイ・ブラッドベリ……近未来。本が焼かれ、テレビに汚染された世界を描いたSF。
破戒/島崎藤村……被差別部落出身の主人公を描いた小説。この手の差別は今なおあるらしく、考えさせられる。何も被差別部落に限らず、社会的弱者の立場になって読めば共感できるだろう。
真理先生/武者小路実篤……牧歌的な雰囲気が漂う人生ドラマ。善い人は、その善行故に幸せになる。安心して読める、「良いお話」。
ドンキホーテ/セルバンテス……メタフィクションを駆使したギャグ物語にして、人生の悲哀を描いた作品。読後、目を閉じるとドンキホーテ&サンチョの愉快な冒険が浮かぶ。
ガリバー旅行記/スウィフト……人間社会、それに伴う悪徳を突き詰めて考え、描写した諷刺小説の最高峰。300年経っても色あせない、珠玉の名作。
ガープの世界/ジョン・アーヴィング……ガープと、その周囲の人々の一生を描いた、伝記的小説。作品に流れる空間を、その五感全てを使って味読した。
マタレーズ暗殺集団/ロバート・ラドラム……このジャンルに興味のない私ですらも虜にしてしまう、超一流のスリラー小説。国境を越えて深め合う主人公たちの絆も見所。一度読み始めたら、本を置くことは難しい。
郵便配達は二度ベルを鳴らす/ジェームズ・ケイン……殺人犯人を主人公にした物語。愛し合う二人の共犯者の心の流れが面白い。
B→読んだ時間・お金以上に価値があったもの
されど罪人は竜と踊る/浅井ラボ(暫定2巻)……理系知識を活かしたバトルと、軽妙洒脱なやりとりが楽しいライトノベル。漢字の多用が極めて読みにくいのはマイナスだが、それを差し引いても面白い。
浮雲/二葉亭四迷……古いお話なのでちょっと読みにくいし、途中やや中だるみもするけれど、読後感も良く、素敵なお話です。意外に笑えますし。限りなくAに近いBです。
何かが道をやってくる/レイ・ブラッドベリ……幻想小説。パパが格好いい。しかし、ブラッドベリにしてはイマイチに感じた。
人間失格/太宰治……作品自体はBだけれど、ラストのインパクトはAランクに匹敵。鬱話が読みたいならどうぞ。しかし、日本のベストセラー1位と2位が「こころ」と「人間失格」って、皆さん鬱話が好きですね。
蒲団/田山花袋……身勝手で格好悪い中年オヤジの、いじましくも情けない失恋模様。意外にも読みやすく、思ったよりも面白かった。主人公の「処女厨」ぶりを見るに、処女厨は昔から存在したのだと実感。
俘虜記/大岡昇平……「野火」のグロさで読む前からビビッていたが、同じ戦争小説でもこちらはあまりグロくない。何気ない選択が、兵士の命を左右する。
ひかりごけ/武田泰淳……小説として読むなら「アリ」。ただし、実際の事件を『噂』に取材して描いた結果、一人の男を不幸にしたその罪は重い。舞台を架空の設定にして、誰にも迷惑がかからないように書いても良かったのでは?
ゼロの使い魔16巻/ヤマグチノボル……シリーズ全体の評価はA-で、この巻だけだとB。基本、萌え小説なのだけれど、たまに思わぬところで感動させられたりするので気に入ってたりする。
春琴抄/谷崎潤一郎……句読点をほぼ全廃した実験的文体も、読みにくさはさほど感じない。主従の愛、そして盲目の愛(文字通りの意味で)。異常な部分はあれど、これも一つの愛。
キングの身代金/エド・マクベイン……自分の家族ではない者のために、身代金を払えるかというお話。キングは人格に難点があるけど、払わないと悪人扱いというのも酷な話だよなぁ。
月曜日ラビは旅立った/ハリイ・ケメルマン……アラブ諸国に侵略しては、報復のテロが起き…。個人的に持っていた、「地獄」のようなイスラエルのイメージとは違って、「平和な」イスラエルが味わえます。
木曜日ラビは外出した/ハリイ・ケメルマン……頭が冴えているときに読んだせいか、伏線が一つ一つ見事に張り巡らされていて、無駄なシーンがほとんどないことに気づいた。……このシリーズ、こんなにみんな巧かったっけ?
ライ麦畑でつかまえて/サリンジャー……主人公のホールデンに魅力を感じる青春小説。逆に言えば、ホールデンを気に入るか気に入らないかが全てかも。文章は、疲れている時でも自然にすっと入ってくる。
暗夜行路/志賀直哉……小心でいじましい。ダメ人間だけど共感できる。純文学にありがちな主人公の人生を描いた作品。呪われた出生から始まり、幾度も家族の危機に見舞われるも、「案ずるより産むが安し」か。
唾棄すべき男/マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー……警察の腐敗をテーマにした、警察小説。犯人を応援しながら読んでしまったのは我ながらどうかと思うが、それくらい感情移入できた。
都市/クリフォード・シマック……壮大なスケールで描かれる地球の歴史。人間の衰退、犬の時代、そして新興勢力である蟻の世界。人間の気まぐれな実験が、歴史を作る。個人的にはロボットのジェンキンズがお気に入り。
熊を放つ/ジョン・アーヴィング……面白いかつまらないかと聞かれたら、「つまらない」のだけど、読後に妙な余韻が残ったので甘めのB評価。お勧めは、しない。
我輩は猫である/夏目漱石……100年前のユーモア小説。呑気で個性溢れる登場人物のやりとりを楽しむ話。意外に寒いギャグも多いけど。
失われた黄金都市/マイクル・クライトン……良質な冒険モノ。綿密な取材によって書かれた、動物の薀蓄が面白い。人間の女性ロスの無能ぶり・ムカつきぶりとは対照的に、雌ゴリラのエイミーが愛らしい。
万延元年のフットボール/大江健三郎……卑劣で迷惑を撒き散らす最低人間を、実に見事に描いたものだと感心。しかし、谷間の人々の方言が妙にウザく感じたのは私だけかな? 方言を叩いても仕方ないが。
さようなら、ギャングたち/高橋源一郎……小説というよりも散文に近い。ユーモラスで笑いながら読め、文字数がスカスカのため、2時間で読めてしまった。
アイディアの勝利。
魔性の殺人/ローレンス・サンダーズ……1つの事件を刑事側と犯人側の双方から眺めるタイプの、警察小説。犯人の気持ち悪さが印象に残った。
C→暇つぶしにはなったもの
D坂の殺人事件/江戸川乱歩……明智小五郎初登場。まぁまぁ。
外套/ニコライ・ゴーゴリ……ワーキングプアの役人が、モラハラにもめげず、ボーナスで外套を買うが、その外套は強盗に取られてしまい、絶望のあまり役人が自殺する欝話。化けて出る気持ちもよくわかる。
フルメタルパニック(戦うボーイミーツガール)/賀東昭二……ハリウッドアクション的なライトノベル。ヒロインのかなめが微妙にウザかったりするけど、許容範囲かな。アクションシーンは巧い。
涼宮ハルヒの憂鬱/谷川流……前半150ページくらいは、かなり面白かったのだけど。「異変」が起こってからつまらなくなるとは、こはいかに。似たテーマなら、田中ロミオ著「AURA」の方が好み。
世界の中心で愛をさけんだけもの/ハーラン・エリスン……短編「聞こえていますか」は面白かったけれど、それ以外の短編はあまりピンとこなかった。扱っている世界観が特殊にもかかわらず、説明不足な気がする。
即興詩人/アンデルセン(森鴎外訳)……一人の男の恋の遍歴みたいなお話。文語体のため読みにくく、読了までに時間がかかった。物語としてはそこそこ面白いが、敢えて文語体に挑む必要はないかも。
追込/ディック・フランシス……シリーズの中では外れ気味。とはいえ、見るべき点もあるのだが。悪役の存在感が希薄だったためだろうか。
日曜日ラビは家にいた/ハリイ・ケメルマン……ジャンル的にはミステリだけど、相変わらず事件は二の次三の次で、ユダヤの街の権力争いが描かれるシリーズ。良くも悪くもまったり。
火曜日ラビは激怒した/ハリイ・ケメルマン……学生とラビとのやりとりは楽しかったが、なぜ学生から尊敬を勝ち得たのかはイマイチ謎。というか、元々問題の少ない学生に思えるのだが。事件は小粒。
カイロ団長/宮沢賢治……特筆すべきほどのこともなく。お酒の呑みすぎには気をつけましょう。
二十世紀の旗手/太宰治……とりあえず勢いは買う。
駆け込み訴え/太宰治……ユダの人物造形が素晴らしい。発想の勝利だと思う。
警官殺し/マルティン・ベック&ペール・ヴァールー……2つの事件がリンクしているようで、あまりリンクしていないのがイマイチ。
メトセラの子ら/ロバート・A・ハインライン……「退屈」→「急展開:面白い」→「また退屈」という感じ。退屈部が全体の約7割を占める。ラストも、なんだかなぁという感じ。
ブラウン神父の童心/G.K.チェスタトン……「折れた剣」と「サラディン公」の話は面白かった。推理小説なんだけど、文章が硬いのでスラスラとは読めない。
カラマーゾフの兄弟/ドストエフスキー……つまらなくはないんだけど、ちょっと宗教色が強すぎるのと、3兄弟に比べて犯人に魅力が薄いのがちょっと。
フレッチ殺人方程式/グレゴリー・マクドナルド……過剰なまでの会話を繋げて、物語を語るという試みは面白い。前半はやや退屈で(50点)、後半は盛り上がるが(70点)、ラストはイマイチ(減点5)。
ボヴァリー夫人/フローベール……善良な医者が、スイーツ(笑)な美人妻と人間のクズである借金貸しに滅亡に追いやられるお話。ロクな人間が出てこない。
五万二千ドルの罠/エルモア・レナード……卑怯な恐喝屋に立ち向かう、タフな男……って感じの、いかにもアメリカ的な小説。
ハックルベリーフィンの冒険/マーク・トウェイン……友人キャラ、トム・ソーヤをウザく感じるか感じないかで評価は変わってくるかも。個人的にはウザかった。
女王陛下のユリシーズ号/アリステア・マクリーン……極限状況という非現実的時間を、重厚な筆致でリアルに描いた作品。退屈だったけれど、二度読めば面白く感じるかもしれないとは思った。ラストは良い。
D→正直、自分には合わず、読んだ意味がなかったもの
きみの血を/セオドア・スタージョン……ホラー小説を期待して読んだけれども、全然怖くないのでガッカリ。寂しさから血を求める青年を、研究者視点から眺めるようなお話。幕引きは巧い。
春昼・春昼後刻/泉鏡花……読解力の無さが原因だろうと思うけれど、何が起きているのか全然わからなかった。一応最後まで文字を追いかけたが、これで読んだと言えるのだろうか。
高野聖/泉鏡花……どうも、今の私には鏡花は楽しめないらしい…。やはり、全く頭に入らなかった。
阿Q正伝/魯迅……私の勉強不足。「辛亥革命」かぁ、名前くらいは知ってるぞ程度の知識では、全然わからなかった。世界史得意だったのになぁ。
象牙色の嘲笑/ロス・マクドナルド……「さむけ」は面白かったけど、それ以外は今のところイマイチ……。
魔の山/トーマス・マン……読者の知性、もしくは忍耐力が試される。しかし忍耐力を試された読者は、仮に読み終えたとしても、達成感以外の何も得ることはできないだろうと思われる。
鷲は舞い降りた/ジャック・ヒギンズ……ドイツ落下傘部隊の活躍を描いた冒険小説。超人気作なのに、あんまり面白くなかった。デブリンのロマンスは良かったけど……私には、硬派すぎたのかも。
あらくれ/徳田秋声……気が強くて働き者な女性の暮らしぶりが描かれるお話。
つまらないとは言わないが、山もオチもなく、読後感は「それで?」の一語だった。
不死鳥を倒せ/アダム・ホール……暗号モノ。英語・ドイツ語など、欧州圏の言語に精通していれば、きっと面白かったと思う。しかし、アルファベットやラテン語の暗号では、私には荷が重い。