著者はジェームズ・クラベル。評価はA+。

イギリス人著者が書いた、関が原の合戦前夜の小説です。

日本人をより深く理解できる小説であると同時に、
世界の中の日本という視点に立つ小説でもあります。

スペイン・ポルトガルのカトリックと、イギリス・オランダのプロテスタント。
江戸時代という新しい時代へと向かう日本とは別に、世界でもスペインの没落・イギリスの勃興という、新しい時代が生れようとしています。
そんな時代感覚を丁寧に描いたところが気に入りました。


日本に漂着したての頃のブラックソーンの意識は、
「日本人=異人・野蛮・嫌」だったのに、
だんだん日本に馴染んでくるにつれて、彼の意識が
「イギリス・オランダ人=異人・不潔で我慢弱い・嫌」
に変わっていくところも面白いなと感じました。
文化交流の面でも面白いです。この時代の西洋人がそこまで不潔だったというのは、個人的に驚きでした。後、日本はこの時代男色に理解があったというのも意外。
離婚云々の話なども面白かったです。


下ネタも含めて思わず笑ってしまうシーンも多く、ユーモアがあるため読んでいても苦になりませんし、切腹申し付けのシーンではワビサビを感じてしまうほど、のめりこんでしまいました。


私自身、「切腹を申し付ける→ありがたき幸せ」みたいな流れは、
アリエないっしょ!と思ってしまいます。
ブラックソーンと同じ心境です。
にもかかわらず、後半、切腹シーンが出てくるところでは、何だか深い感慨が生れてしまったんですね。それを、主人公のブラックソーンも感じている。

読み手である私と、主人公のブラックソーンの感覚が、終始一緒だったことも、高評価のポイントです。