著者は貴子潤一郎。評価は


本当にどうしょうもなく感動したとき、それを伝える文章は無力になる。
とはいえ、それを言ってはおしまいなので、頑張って伝えるよう努力してみる。


まずは、Ever17と肩を並べるくらい見事だった叙述トリック。これにはまんまと騙されてしまった。
読み返してみると、緻密な伏線が縦横無尽に張り巡らされていて、完成度の高さに驚かされる。


本作の素晴らしさは、それだけではない。
「眠り姫」とそれを守る騎士というとてもロマンチックな組み合わせが、純愛モノとしての完成度を高めており、終盤に至っては何度も涙腺が緩んだ。


叙述トリックにまつわる背景も精密かつ情感豊かに描かれており、
トリックだけが見事な味気ないドラマとは一線を画している。


大賞の名に相応しい、素晴らしい作品だ。



こういう作品を読むと、比べてしまって自分の才能の無さに泣けてくる。
まぁ、「こんなの俺でも書けらぁ」という本をいくら読んでも、
あんまり身になるとも思えないので、いいことかもしれないけど。