2009年11月

ケイン号の叛乱 感想(重バレ)

著者はハーマン・ウォーク。評価は


時は第二次世界大戦中のアメリカ海軍。
戦艦ケイン号の無能で横暴な上司、クイーグのもと、次から次へとトラブルが巻き起こり、
ついに副官がクイーグを見限る。
軍事法廷が開かれ、副官が無罪を勝ち取る。

というのが、大まかなストーリーですが、ドラマチックな内容に感動もひとしおでした。


まず、序盤。クイーグ艦長がとにかくウザいんですよ。
ウザいんですが、どことなくユーモラスに描かれているため、そこまでストレスは溜まりません。
ここまでの僕の暫定評価はB+でした。

圧巻だったのは420/606ページ以降の軍法会議のシーンと、
その後のケイン号について。

まず軍法会議のシーンでは、今までの伏線(クイーグ艦長のいただけない行動)が、これでもかと再生され、不利と思われた法廷をドローにまで持ち込みます!
ここが、この小説一番の見せ場といえるでしょう。
ここまでの暫定はA。


僕は548/606ページからの最終章に特に感動しました。

この最終章では

・クイーグ艦長もまた、戦争の犠牲の一人だったということ。

・抜け目ないキーファのこと(善悪で単純に割り切れないキャラクター)。

・別れた元恋人との復縁。

などが描かれます。
僕は、恋愛モノが大好きなので、最後の恋人とのハッピーエンドは本当に感動しました。主人公のラブレターがとても情熱的ですし、ラストの彼女への説得シーンは本当にじーんときました。

また、本書では終戦を迎え、ケイン号を去る主人公の心情はあまり描かれていないのですが、
読んでいた私は、ケイン号との(そして、本書との)お別れが
何だか少し寂しいような、そんな気持ちになりました。


クイーグ艦長を始め、深みのあるキャラクターが織り成すドラマ。
ちょっと長いのですが、時間があれば、皆さんもぜひ読んでみてください。

ケイン号の叛乱 途中感想

ハーマン・ウォーク著の「ケイン号の叛乱」を読み始めました。

600ページではあるのですが、こまかーい字の二段組なので骨が折れます。

現在223/600ページです。


クイーグ艦長という、無能を絵に描いたような人物が面白いですね。
無能な癖に、自分の命令以外のことをすると烈火のごとく怒りますし、
部下を締め上げる一方と。
そして、自分のミスを認めず、全部部下のせいと。

こういう上司、いるよなぁという印象です。
そりゃ、叛乱が起こるのも無理はありません。
間違っても、こんな人間にだけはなりたくないものです。

ただ、文章のおかげか、どことなくユーモラスなので、
過度にストレスを感じずに済むのもいいですね。

痴人の愛 感想

著者は谷崎潤一郎。評価はB+。

ナオミというヒロインが元カノに思えて仕方ありません・・・。
金銭面と家事はナオミと違って正常ですが、それにしたってひでぇ。


世の面食い男性(私を含む)にとって、背筋の凍るホラー作品。
破滅的な生を歩む女もそうだけど、それに惹かれる男の何という愚かさよ。

ナオミのような行動・言動は、ブスにはできない。
でも、自分がモテると知っている美人にはできる。それが、恐ろしい。
どんなに稚拙な嘘だとしても、男は女を信じる。
疑いつつも、それでも、あいつを信じてあげられるのは俺だけだから、と。
「誤解されやすい奴なんだよ」なんて、言いながら庇ったりするんだから大したもんだ。


手に入りそうに見えて、実は絶対に手に入らないところに女はいる。
優しそうなことを言うけれど、実は誰にでも言っている。
彼女を崇める崇拝者グループの一人としてのみ、彼女はあなたを愛す。


という、恋を5年もしていた私には、この小説が怖くて仕方ないんだわ。

自負と偏見

著者はジェイン・オースティン。評価はA-。

「あの子、あんまりイケてないな」。
ぽろっと言ってしまったその言葉を、ヒロインは聞いていた。
後になって、ヒロインのことを気になりだした男だけれど、失言は取り消せず、後の祭り。

そんな男と、ヒロインの恋愛小説です。


読んでいる間は、ほのぼのしていて面白いってくらいなんですけど、
読み終わった今、思い返してみると「いい本を読んだなぁ」ってしみじみと思うんですよね。
それだけ読後感が良かったです。
まぁ、緊迫したシーンとかはあまりないし、「まさかの展開!!」とか「感動した!!」っていうのはないんですけどね。


キャラクターが立っているのも良かった点で、
ヒロインのエリザベスは良ツンデレですし(相方のダーシーもツンデレ)、
姉のジェーンのお人よしぶりや、ミスター・ベネットの良いパパっぷりもグッド。
空気を全く読めない三人衆、ミセス・ベネット、リディア、コリンズの三人の存在感も素晴らしい。

確かにイケてない三人衆ですが、本気で「ウザい」キャラは出てこないのが、またいいです。妙に憎めないんですよね。
それも、読後感の良い理由の一つかもしれません。

ケント家物語シリーズ感想

著者ジョン・ジェイクス
のケント家物語シリーズ、スタートいたしました。
全8冊なのですが、手元には4冊しかないので、とりあえずその4冊を。


このシリーズは、アメリカ建国~アメリカが一つの確固たる国になるまでの物語です。

No1 「私生児」 評価 A

この巻では、ボストン茶会事件とか、茶法・印紙法なんかの時代が取り上げられています。
アメリカが、植民地としての立場を捨てて独立する姿と、
貴族の私生児である主人公フィリップが、
貴族という立場を捨て(諦めたともとれるが)、
新しく平等な立場の市民として、第一歩を踏み出す姿がオーバーラップしているのが巧いなと感じました。

貴族社会を代表するヒロイン、アリシャを捨て、
市民社会を代表するヒロイン、アンを選んだのも実に象徴的で、
作家の構成力が光ります。

歴史小説としてはもちろん、娯楽&恋愛小説としても実に面白かったです。


唯一の欠点は、本の作り方がひどすぎること。
誤植が、1ページにつき1箇所はあるんですよね。
あまりにも手抜きというか、校正者いなかったんでしょうか?

内容が悪くないだけにもったいないです。


No2「反逆者」 評価 B-

この巻では、アメリカの独立戦争が描かれます。

物語の出来自体は悪くないのですが、「私生児」に比べると『面白くなかった』印象です。
というのも、この巻では戦争の過酷さが強く描かれていて、
心が躍るロマンスシーンなどはほとんどないからです。
ただただ、辛く悲惨な感じを受けました。



No4「復讐者」 評価 B

この巻では、テキサスをめぐるアメリカ―メキシコ戦争と、
カリフォルニアのゴールドラッシュが描かれます。

良かった点は、この時代のアメリカについて知ることができたということです。
『テキサス兵』という言葉に違和感を感じて調べ、テキサス共和国の知識を得ることもできました。
テキサスが独立国だったということを知らなかったため、新鮮な驚きを受けました。
楽しみながら、新しい知識が得られるのは嬉しいです。


一方、微妙だった点は、主人公のアマンダに感情移入がしにくいことと、
話が陰鬱なこと。
2点とも、『小説構成としての欠点』ではなく、単純に『好き嫌い』の問題です。


前者は、アマンダが『家』という概念に異様な執着を持っている点が、理解できませんでした。悔しい気持ちはわかるのですが、何もここまでいこじにならなくてもと。

後者は、やはり黒人差別のところでしょうか。このような酷いことが、平気で行われて『いた』という事実には憤りを隠せません。
『いた』と書きましたが、海外サッカーなどを見ていますと、現在でもまだありますよね。本当に愚かなことだと思います。


No8「新世界」 評価 B



PS
日本ではほとんど知られていないのか、「私生児 ケント家物語 感想」でグーグル検索すると、トップに近い位置で表示されます(笑)。

ページ数が多い&値段が高いという欠点はありますが、
図書館で借りればタダなので、皆さんも良かったら読んでみてください。
せっかく面白い作品なので。
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