2012年07月

聖なるかな 1周目クリア

前作『永遠のアセリア』だって、そこまで褒められたシナリオではなかった。
だが、前作には「スピリットの人権解放」のように、世界観に根ざしたテーマ性があり、
世界観もファンタジーRPGとして、それなりに作りこまれていた。



だが、今作はどうか。
行き当たりばったりに、ふわふわと異世界への転移を繰り返す物部学園そのものの惨状だった。


まず始めに、『分枝世界』というテーマを描くだけの力量をライターは持っていなかった。
この設定が、まずもって間違いだったように思う。


望たちは、剣の世界、森の世界、機械の世界のように様々な世界をふわふわと漂っていくのだが、
統一されたテーマ・メッセージ性は皆無である。
はっきり言って、1つ・2つ世界がなくても一向に問題がないだろう。


1つの世界を丁寧に描く代わりに、5つや6つの世界を、5分の1、6分の1の薄さで描く羽目になってしまった余波は至るところに出ている。
まず単純に登場人物不足・駒不足の問題。
1つの世界に登場する人物は、せいぜい5~6人程度。その5~6人の中で、仲間になるキャラが1人、仲間をサポートするキャラが2~3人、敵に回るキャラが2人。
と、こう割り振ると、敵キャラが少なすぎるのだ。
これのせいで、同じボスを使いまわす羽目になる。
序盤では、いつどこに行ってもボスがベルバルザードだったり、機械の世界に行けば「ショウ&スバル」に4戦もさせられたり。
「彼は姿を消した」とか「逃げ出した」という文章を読むたびに、「またか」と思ってしまうのは仕方ないところだが、これで能力も技までもほとんど一緒なのだから
その工夫のなさには呆れるばかりである。

序盤、主人公たちの前に立ちふさがる『光をもたらす者』の構成員は、ベルバルザードとエヴォリアしかいないのだろうか?
『旅団』と熾烈な戦いをしていたという話だが、2人だけ(+部下のミニオン)でよく頑張っていたものである。

中盤、主人公たちの前に立ちふさがる『南天神』の構成員は、イスベル(エヴォリアに憑いてる人)しかいないのだろうか。
もう1人くらいイベントキャラでいたような気もしたが、北天神と争うにはいかにも少なすぎる。


問題は駒不足だけではない。
そもそも全く異なる世界を、1つのストーリーに結び合わせるというのは土台難しい話なのだが、案の定今作は見事に失敗している。
結局、神がどうしたこうしたという風に話を飛躍せざるを得ず、その神も管理神だの南天神だの創造神だのと、
設定だけは大きいものの中身と魅力にまるで乏しいキャラを大量生産した挙句、ドラマ性のかけらもない『モノガタリ』が展開されていくのである。


このように、設定だけを大きくした結果、製作者自身も混乱しているのでは?と思われるシーンも散見される。
たとえば、4章。
『望や学生たちは、とうとう元の世界に帰るための座標』を手に入れる。いつでも帰れる状況になったわけである。
にも関わらず、主人公は帰ろうとしない。それどころか、学生たちに演説までぶちあげるのである。

「とうとう、帰れることになった。でも俺はこの世界で戦いたい。この件について、みなの意見が聞きたい。俺は戦いたいけれど、みなが帰りたいというなら、帰ろうと思っている」

このシーン、僕は開いた口が塞がらなかった。そんなに戦いたいのなら、戦いたい人だけ残ればいいのである。
何も学生たちまで巻き添えにすることはないし、別に一緒に帰る必要もないのではないか?
何のことはない、一度ものべーを現実世界へと発進させ、戦う意思のない人間を帰す。
そして、再び戦いたい奴だけが再度戻って戦いに参加すれば良いだけの話ではないか。


望・希美・沙月・絶の4人を除き、絆の描き方が弱すぎるのも問題である。
様々な世界からの、いわゆる「寄せ集め」のため致し方ない部分もあるのだが、たとえば(主人公以外で)異世界出身同士のカップル、
あるいは親友が生まれても良かったのではないか?
つるむのは、ソルラスカ&タリア&サレス程度で、これは全員旅団メンバーである。沙月とルプトナは3章で友情が芽生えたような気がしたが、
その後(望を介さずに)友情を温めるシーンはないといっていい。
人間ですらこうなのだ。神だのなんだのと、話が飛躍的に大きくなる後半になればなるほど、ますますドラマ性は薄れ、無味乾燥な話が続くことになる。


シナリオだけでなく、シナリオを支えるテキストの力も、非常に心もとない。
主人公(望)の描き方など最たるものである。
まず、『望が知っているはずのこと』と『プレイヤーが知っていること(他キャラ視点で呈示された情報)』の間がごちゃまぜになっている。
「プレイヤーである僕たちは知っているけど、望は知らないはずの内容」を、なぜか望が知っていたりだとか、(レーメが告げ口して回っているのだろうか)
普通の人間なら疑問に思うことを何も質問しなかったりする(たとえば序盤、沙月先輩の知識量:行動はいかにも怪しいが、望はまるで質問をはさまない)。

また、ようやく、やっとのことで元の世界に帰ってきたのに、あっさり流してしまったり
(あれだけ苦労をして帰ってきたのだ。感涙にむせんでもおかしくないのではないか?)と、とにかく不自然な点が多すぎるのだ。


ヒロインの魅力も非常に乏しい……というか、性格が悪いキャラが何故かとてつもなく多い。
ナルカナ様などは(僕の好みではないが)、性格の悪さをウリにしているのでまぁ1人くらいこういう人がいてもいいとしよう。
だが、性格が悪いのは1人ではない。
タリアの性格も相当悪く、機会あるごとに憎まれ口を叩かなければ気がすまないのは問題である。
では、それ以外は?というと、自分のことを「美人で有能」などと言ってしまう沙月先輩もたいがいだったりするし、
その沙月と事あるごとに張り合う希美も希美である。


望を取り合って争う沙月・希美・ルプトナ・カティマの争いは、羨ましいどころか、読めば読むほど「いい加減にしろよ」と思いたくなる代物で、
張り合えば張り合うほど、僕の好感度が下がっていく仕様となっていた。
ここで、望がもらす「なんで俺がこんな目に遭うのか」的な地の文も、これまた「いい加減にしろよ」である。
鈍感主人公はハーレムもののお約束だが、いくらなんでも鈍すぎる。そこは目をつむるとしても、
「お前ら、争わないで静かにしろよ」くらい言えないでどうするのか。



では、SLG部はどうか。


まぁ、まずまず及第点といっていいだろう。というか、シナリオがつまらない以上、SLG部もつまらないならとうに投げている。
ただ、シナリオ面の不備はSLG部にも波及しているのは紛れもない事実だ。
連続で闘わされる、代わり映えしない中ボスについてだけではない。
致命的なのは、ヒロインの魅力不足である。


『永遠のアセリア』で僕が最も感心したのは、周回プレイ前提のシステムを築き上げたところにあった。

コンシューマーRPGでも、ヒロインを選ぶ形式のRPGは存在したが、(全てをプレイしたわけではないにせよ)それらのゲームについては、
『ニューゲーム=LV1からやり直し』であった。
だが、アセリアはそうではない。『データ引継ぎ』の上、真に優れているのは、『ノーマル:ハード:スーパーハード』というレベル制限だ。
より具体的に言えば、1周目はノーマル(LV30が上限)、2周目はハード(LV60が上限)、そして3周目のスーパーハード(LV99が上限:もちろん3周目に選べるというだけで、
3周目にスーパーハードを選ばなければいけないわけではない)。
更に、レベルアップの方法も、『敵を倒して経験値をもらう』のではなく、『マナを使って、任意のキャラのレベルを上げることができる』のだから、無駄も生じない。
もう上限のLV30になったのに、敵が出てくる。無駄バトルじゃん……という事態にはならないのである。マナは溜めておけば引き継げるし、もちろん他のキャラのLVを上げればいいのだから。



これは「好きな女の子キャラをLV99まで上げたい」と思ってしまう、僕のようなプレイヤーの心を知り尽くしたシステム設計で、
これをやられたらもう最低でも3周はやらないわけにはいかない。
敵もきちんと強くなっているので遊び応えもある。


だが……「聖なるかな」には「好きな女の子キャラ」がいない……少なくともレベル99に上げたいと思えるほどの子はいなかったのである。
周回システムはよくできていても、シナリオのせいで周回する気になりにくいでは意味が無いのである。



また、前作とは違い、『1部隊やられたら即ゲームオーバー』というのも、厳しい。
このゲーム、敵が増援を呼ぶシーンが頻繁にある。増援部隊はどこから来るかわからない。

いきなり弱い部隊の真上に出現し、成すすべなく全滅→ゲームオーバーというのを、僕は4回も経験した。
もう少し、考えていただきたいものである。


バトルシステム自体は、前作同様練りに練られており、不満どころか積極的に褒めてもいいと思っている。
この部分に魅せられて購入したのだし、ここの部分だけは期待を裏切られずに済んだ。
ただ、難易度調整に関して、1周目の序盤がとにかく難しすぎ、ナルカナ加入以降は逆に簡単になりすぎかなとは思う。



最後に、ここは論ではなく単なる好き嫌いの話になるが、希美・カティマ・ルプトナは一応クリアする気にはなった。
ただ、前作でエスペリアやレスティーナ姫に萌えたことを考えると、温度にはだいぶ差があると言える。



シナリオ(テキスト、キャラ、世界観などひっくるめて)は40点、SLGは70点。
総合で60点。

個人的 Euro2012 ベスト23選手

3試合以上採点した選手のみ、採点記録を出します(全ての試合を採点したわけではないので)



GK 

イケル・カシージャス(スペイン)(69.1/6試合)……王者スペインの最後の砦。6試合で失点1はお見事で、奇跡的なセーブで何度もピンチを救った。

ジャン・ルイジ・ブッフォン(イタリア)(65/5試合)……決勝での4失点がミソをつけた格好だが、それを除けば5試合で3失点。ノイアー、ハートなど新世代の台頭もあるが、カシージャスに次ぐ世界No2の座を死守した格好だ。


ジョー・ハート(イングランド)(68.3/3試合)……超ディフェンシブなイングランド代表の、最後の砦を守ったのはこのハート。傑出した反射神経は、世界でも屈指だ。


その他……ルイ・パトリーシオ(ポルトガル)、ノイアー(ドイツ)と、上位陣のGKはいずれも安定したパフォーマンスだった。彼らを選んでも良かったのだが、より活躍の機会の多かったハートを選出した。
ロリス(フランス)、アンデルセン(デンマーク)、ギブン(アイルランド)と、知名度の高い・低いに関わらず良質なGKがそろい踏みした大会で、唯一期待はずれに終わったのがツェフ(チェコ)か。2大会連続の致命的なファンブルからの失点は、言い訳ができない。

DF
ジョルディ・アルバ(スペイン)(66.6/6試合)……大会を通じて精力的なオーバーラップを見せた、スペイン期待の新星。とりわけ決勝での得点は、世界へ向けて名刺代わりの一撃となった。

セルヒオ・ラモス(スペイン)(61.6/6試合)……相棒のピケがイマイチ頼りにならない中、彼のフォローに走り回った。今大会ではファウルも少なく、ポルトガル戦ではSBのカバーリングでロナウドを抑えるなど、守備の要として大車輪の活躍。

ファビオ・コエントラン(ポルトガル)(67.5/4試合)……神出鬼没に中盤に出没したその動きは、到底SBの振る舞いではない。パス交換から前線にまで駆け上がる姿も散見された、偉大なるダイナモ。

ペペ(ポルトガル)(65/4試合)……レアル・マドリーではラフプレイで名を馳せるも、今大会ではクリーンなプレイでDF陣を牽引。ムラのあるブルーノ・アウベスをしっかりとリードした。

マッツ・フンメルス(ドイツ)(61/5試合)……確かにイタリア戦ではバロテッリにかわされた。だが、頼りにならない相棒のバドシュトゥバーを必死に盛り立て、確かな足技から正確なロングパスを繰り出したこのCBは、大いなる発見だったと言える。

ゲブレ・セラシエ(チェコ)(62.5/4試合)……傑出した試合はなかったものの、常に安定したパフォーマンスでチェコの右サイドをカバー。人種差別の標的にもされたが、その愚行を跳ね返す活躍ぶりだった。

マテュー・ドゥビュッシー(フランス)(フランスは採点漏れが多いため、採点は割愛)……4バックと3バックの中間のような、変則的な最終ライン。フランスがこのような最終ラインを敷いたのは、正確なビルドアップと、ウイングに匹敵する攻撃センスを併せ持った、ドゥビュッシーを活かすためだった。


その他……王者スペインの右サイドを締めたアルベロアは、その安定した守備力と、機を見た攻め上がりが光った。十分選出に値する活躍だったが、スペインばかりから選ぶのもなんなので、ここはドゥビュッシーに席を譲ってもらった。
また、イングランドの右サイドバック、グレン・ジョンソンはミルナーと連携しての攻撃参加が素晴らしかった。
フランスのメクセスは、相棒のラミが頼りにならない中で奮闘したが、出場停止によりスペイン戦に参加できなかったのが悔やまれる。


MF 

シャビ・エルナンデス(スペイン)(70/6試合)……完璧なポゼッションを誇ったスペイン代表の中心。決勝での2アシストは、『本物』にしか出せない極上のキラーパスだった。

アンドレア・ピルロ(イタリア)(68/5試合)……シャビがスペインの核だとすれば、イタリアの核はこのピルロ。イングランド戦のPKは魔法のように、イングランドに向いていた空気を一変させてしまった。


サミ・ケディラ(ドイツ)(71/5試合)……ベスト4に終わったドイツ代表で、最も輝いた選手。レアル・マドリードで見せていた潰し屋としての顔ではなく、よりダイナミックに走り続け、攻撃センスも抜群であることを披露してくれた。

メスト・エジル(ドイツ)(70/5試合)……大会を通じて輝き続けたが、白眉だったのはギリシャ戦のパフォーマンス。ピッチを優雅に舞い、決定的なスルーパスを供給し続ける姿は、まさにファンタジスタの呼び名に相応しかった。

スティーブン・ジェラード(イングランド)(66.6/3試合)……ゴール前を10人で固める、イングランド流カテナチオでは攻撃に人数を割けないため、必然的に得点チャンスも限られる。そんな彼らのチャンスの大部分を演出したのは、正確無比なロングパスと、セットプレイキッカーを務めたジェラードだった。

ジョアン・モウチーニョ(ポルトガル)(63.75/4試合)……ポルトガルのバランサーであるモウチーニョは、実にクレバーで渋いプレイを見せてくれた。守備に重点を置きながらも、ここぞというシーンではきわどいパスを入れる。

ヨアン・キャバイェ(フランス)……スペインにこそ後れをとったが、イングランドを圧倒したフランスのポゼッションサッカーは、司令塔キャバイェが中心だ。ショート、ロングを蹴り分ける巧みなビルドアップが目立った。


その他……スペインのブスケッツは、堅固な守備を支えながらポゼッションにも貢献したスペインの要の一人。
波が激しかったとはいえ、ギリシャの魂を体現していたカラグーニス、フランスの防波堤となったアリュー・ディアッラ、小回りの利くチェコのテクニシャンコンビ、ピラージュとイラチェク。同じくチェコの守備のキーパーソンとなったヒュブシュマン、ダイレクトパスでイタリアの攻撃にアクセントを与えていたモントリーボらの名前を挙げておきたい。

FW

アントニオ・カッサーノ(イタリア)(63/5試合)……得点こそ1ゴールに終わったものの、持ち前のテクニックでイタリアの前線を引っ張った。

アンドレス・イニエスタ(スペイン)(71.6/6試合)……一度キープ体勢に入ったら、誰も彼からボールを奪うことはできない。世界一のドリブル技術で、サイドを席巻した。

セスク・ファブレガス(スペイン)(65/6試合)……攻撃の生命線であるポゼッションと、得点力を両立させた新システム、『ゼロ・トップ』はセスクの存在なしには完成しなかったに違いない。得点・アシスト、チャンスメイクと攻撃のあらゆる局面で存在感を発揮した。

ダビド・シルバ(スペイン)(64.1/6試合)……針の穴をも通すアイルランド戦の2点目や、決勝戦での先制ゴールなど、2年前には見られたひ弱さが消えたシルバは、レギュラーとして実に頼りになる選手へと成長を遂げた。

ナニ(ポルトガル)(67・5/4試合)……大会随一のサイドアタックを誇ったポルトガル。好不調の波が激しかったロナウドに比べ、波のないパフォーマンスでポルトガルの攻撃を支え続けた。

サルピンギディス(ギリシャ)(63.75/4試合)……開幕戦、彼の投入がギリシャのその後の運命を変えた。DFラインの裏を取る、ラインブレイクの技術は大会屈指で、強豪ドイツを相手にしても十二分に通用した。

 

その他……まず、得点王に輝いた5選手(ゴメス、トーレス、マンジュキッチ、ジャゴエフ、バロテッリ)はいずれも未選出。これは珍しい事態ではなかろうか。だが、彼らはいずれも得点以外での貢献度が高いとも、大会を通じて活躍し続けたとも言いがたい。
ベストプレイヤー選出ともなると、やはりグループリーグで敗退した国からはどうしても選びにくい。その中では、アルシャビン、クローン・デリなどが目を引くプレイを見せた。

フランスの攻撃を担ったリベリー、ルーニーに代わってイングランドを牽引したウェルベック、ギリシャ最前線の核サマラスの活躍にも触れておきたい。


ちなみに、Uefaの公式23選手も発表されました。赤字は、僕のベスト23と共通のプレイヤーです。

GK カシージャス、ブッフォン、ノイアー
DF ピケ、コエントラン、ラーム、セルヒオ・ラモス、アルバ、ペペ
MF  デロッシ、シャビ、イニエスタケディラブスケッツ、エジル、ピルロ、シャビ・アロンソ、ジェラード
FW バロテッリ、イブラヒモビッチ、セスク、シルバ、ロナウド 

イタリア&スペイン代表まとめ


【イタリア代表まとめ】 2勝3分1敗 得点6 失点7 攻撃 A- 守備 A- 面白さ A- 総合 A-

主要選手の平均採点

*アイルランド戦は採点していませんので、5試合の平均採点になります。


GK ジャン・ルイジ・ブッフォン(65)
DF レオナルド・ボヌッチ (50) 
   アンドレア・バルザーリ (50/3試合) 
   フェデリコ・バルザレッティ (61.6/3試合) 
MF  クラウディオ・マルキージオ (61) 
   アンドレア・ピルロ (68) 
   ダニエレ・デロッシ (54) 
   リカルド・モントリーボ (58.3/3試合) 
FW アントニオ・カッサーノ (63) 
   マリオ・バロテッリ (59) 


足元へボールをつなぎ、中盤を大事にするテクニカルなサッカーは、従来のイタリアとは異質だった。
顕著に現れたのが、イングランド戦で記録した64%というボール支配率だろう。
デロッシ―ピルロ―モントリーボ―カッサーノと、縦のラインにテクニシャンを配した効果が出たと言える。
また、足元だけではなく、カッサーノに預ける縦に長いロングパスも効果的で、多彩な攻撃パターンを持っていた。

光ったのは、何と言ってもまずはピルロだろう。
イタリアの攻撃の核となり、セットプレイのキッカーも務めた彼は、今なお世界最高峰の司令塔だった。
とりわけ、イングランド戦で見せたPKは、後々の語り草となるだけのインパクトがあった。
カッサーノは、前線の基準点としてピルロに次ぐ攻撃の要に。
ドイツ戦の2ゴールが印象的なバロテッリともども、記憶に残る悪童2トップとなった。
デロッシは、3バックの真ん中で印象的なプレイを見せたが、大会が進み4バックが導入されると今ひとつ『違い』を作れなかった印象だ。そのぶん、よりゴールに近い位置でモントリーボがワンタッチパスを配給した。
採点では平均61と悪くないものの、個人的にマルキージオの飛び出しがあまり見られなかったのは残念だ。


最終ラインは悪かったとまでは言わないが、クロアチア戦のマークミスと度重なる負傷で好印象を与えられなかったキエッリーニ、ユーべの先輩カンナバーロと比べると2ランクほど落ちるバルザーリやボヌッチと、
思いの外、振るわなかった印象だ。
その中で、最後尾に君臨したブッフォンは、現在でも世界屈指の名手であることを教えてくれた。

ただ、フォリクラッセ(名手)の輝きを見せた選手たちはブッフォン、ピルロ、カッサーノと、いずれも古株たち。
若手選手で継続的に活躍した選手は皆無だっただけに(バロテッリは健闘したが)、
2年後のワールドカップでイタリア代表がどのような活躍を見せるのか、少々不安ではある。



【スペイン代表まとめ】  4勝2分 得点12 失点1 攻撃 A+ 守備 S 面白さ A- 総合 S

平均採点

GK イケル・カシージャス (69.1) 
DF アルバロ・アルベロア  (63.3)
   セルヒオ・ラモス (61.6) 
   ジェラール・ピケ (55.8) 
   ジョルディ・アルバ (66.6) 
MF シャビ・エルナンデス (70) 
   セルヒオ・ブスケッツ (61.6) 
   シャビ・アロンソ (59.1) 
FW アンドレス・イニエスタ (71.6) 
   ダビド・シルバ (64.1) 
   フェルナンド・トーレス (62) 
   セスク・ファブレガス (65)

12得点の数字は立派だが、決勝とアイルランド戦の2試合で8ゴールを奪っており、その他の4試合では4ゴールである。
前述の2試合はスペクタクルでもあったが、逆にフランス戦・ポルトガル戦などはとても退屈で、スペクタクルの面では当たりはずれが激しく、評価が難しい。


スペインのサッカーは、ポゼッションありきのショートパス戦術だ。
だが、このチームが一線を画すのは、テクニックに極めて優れた選手たちをそろえており、ミスが極めて少ない
ことだ。
危ない形でのボールロスト、リズムを崩すようなタッチのぶれがないため、その気になれば半永久的にでもボールを回せてしまう。故に、相手チームがボールをもてる時間が極めて少なく、当然のように相手に与えるチャンスも少ない。
普通は『守備的:守備が堅い』と言えば、引いて守るスタイルをイメージするのだが、スペインの場合はボールポゼッションを、攻守一体の戦術の域にまで昇華している。

後は、どれだけゴールへの意識が高いか、どれだけスペースに選手が走りこめるか、どれだけ利用できるスペースが広がっているかで、スペクタクルな猛攻を見せるか、横パスばかりの退屈な展開になるかが決まる。

ポゼッションの中心は、シャビ・エルナンデス。決勝では、2アシストとMVP級の活躍で、格の違いを見せてくれた。
前線ではシルバとイニエスタの2枚のウイングが躍動。シルバのパス&ゴー、イニエスタの鬼のようなボールキープ力は大会を通して輝いていた。
最前線には、ゼロトップシステムを消化した『偽のCF』セスクが、ゲーム構築に絡みながら2得点。

また、最終ラインでは新星アルバのオーバーラップが目をひいた。
ピケにはやや不安定な守備で、ハラハラさせられたが、ラモス、アルベロアの献身的なフォロー、
そして最後尾のカシージャスの好セーブが失点を1に抑えた。

決勝 スペインVSイタリア

スペイン      4-0               イタリア

試合内容 A
MVP CH シャビ・エルナンデス(85)(スペイン)
主審 A

GK イケル・カシージャス(75)          ジャン・ルイジ・ブッフォン(55)
CB ジェラール・ピケ (55)             アンドレア・バルザーリ(40)
   セルヒオ・ラモス (60)             レオナルド・ボヌッチ (40) 
SB ジョルディ・アルバ (80)            イニャツィオ・アバテ(60)
   アルバロ・アルベロア (60)           ジョルジュ・キエッリーニ (50)  
DH セルヒオ・ブスケッツ (70)       CH ダニエレ・デロッシ (50) 
CH シャビ・エルナンデス (85)          アンドレア・ピルロ (50) 
   シャビ・アロンソ (65)             クラウディオ・マルキージオ (50) 
WG ダビド・シルバ (70)          OH リカルド・モントリーボ (60) 
    アンドレス・イニエスタ (75)     CF アントニオ・カッサーノ (60) 
CF セスク・ファブレガス(80)         マリオ・バロテッリ (55) 
 
監督 ビセンテ・デルボスケ S        チェーザレ・プランデッリ C

交代【ス】

ダビド・シルバ→ペドロ・ロドリゲス(55)
セスク・ファブレガス→フェルナンド・トーレス(70)
アンドレス・イニエスタ→ファン・マヌエル・マタ(55)

【イ】
ジュルジュ・キエッリーニ→フェデリコ・バルザレッティ(60)
アントニオ・カッサーノ→アントニオ・ディ・ナターレ(55)
リカルド・モントリーボ→ティアゴ・モッタ(?)

【試合概要】

今までの、退屈なスペインはなんだったのだろう。
そんな想いでいっぱいだ。

今日のスペインはまさに王者に相応しい戦いを見せた。
横に繋ぐだけの退屈なポゼッションから、ゴールへの意識を感じさせるキラーパスへ。
2点目、アルバのゴールはまさにその意識の表れで、飛び出したアルバ、そこへ絶妙なパスを送ったシャビともども、芸術的と評していい得点だ。
今までのスペインに最も欠けていた縦の意識が、この日は随所に見ることができた。

ただでさえ一方的だった試合を決定付けたのは、プランデッリ監督の迷采配と、モッタの故障という純然たる不運。
後半の早い時間で、最後のカードを切る、それもモントリーボを下げてモッタを投入するという意図不明な采配は、結果的に完全な裏目となる。
モッタが投入後わずか10分足らずで負傷退場。イタリアは10人で戦う羽目になってしまったのだ。
2点差で、1人少ない。そんな状況を覆せというのは、土台無理な話。
モッタの負傷自体は不運の一言に尽きるが、そもそも攻撃力があるわけでもないモッタを最後のカードとして投入した采配には大きな疑問が残る。
不測の事態に備えてカードを温存しておくのが順当なところだし、攻撃のカードを切りたいなら、ジョビンコ、あるいはまだノチェリーノあたりの方が可能性があっただろう。


試合はその後、途中投入されたトーレスが1ゴール1アシストの大暴れ。ここまで出番のなかったマタまでゴールを決めて、メジャー大会3連覇という史上初の偉業に華を添えた。

【イタリア】

はっきり言って、良いところがなかった。
これはスペインが良すぎたとしか言いようがなく、採点は伸びずとも、壊滅的な点数(30点とか)をつける気にはならない。
ただ、足元で繋ぐ意識がさほど高くなく、前半からロングボールを使っていたのは少々イタリアらしくなかったとも言える。
ファウルまがいのプレイを駆使してさえもスペインの攻撃を止めることができなかった、ボヌッチ、バルザーリは40点と低評価。
モッタは惨敗の最大要因ともいえるが、さすがに負傷退場での低採点は非道すぎるので、採点不可の「?」に。
プランデッリ監督のC評価は、上述したとおり。今日の采配だけを見ればE評価でも良いくらいだが、
今大会、ソリッドなイタリアのサッカーを植えつけたのは紛れも無くプランデッリの功績なので、
やや甘めのCとした。
低採点ではないが、今大会ここまでまばゆいばかりの輝きを放っていたピルロが今日は50点というのも痛い。

ただ、どちらにせよ相手が悪すぎた。そうとしか言いようがなかった。 

【スペイン】

いつになく、縦への意識が強い試合だった。
今までのスペインは、二列目からのスペースへの飛び出しが皆無に近く、縦になかなかボールが出なかった。
ところが、今日のスペインは二列目から面白いように選手が飛び出し、そこへセンチメーターパスがピタリと届けられていた。

この試合では、普段ほどポゼッション志向が高くなく、実際ボールを保持している時間は長くなかった。
そのためか、前半はイタリアにも何度かチャンスを与えたが、これはGKカシージャスがセーブ。事なきを得た。
左サイドバックのアルバは2点目に代表されるように、再三オーバーラップを仕掛け、攻撃のアクセントになっていた。
中盤から前は全ての選手に高採点を与えたいところだが、特にキラーパスを何本も供給し続け、2アシストをマークした(アルバの得点と、トーレスの得点)シャビを最高評価とした。
大会を通じてここまで輝いた試合はなかったものの、ほぼ全ての試合で、スペイン代表の中で最も距離を走り、最もパスを出しているのもこのシャビである。
守備の局面で、勘所を心得たインターセプトが光ったブスケッツ、パスの出し手(1点目のアシストなど)、受け手の二役で印象的な働きを見せたセスクなどにも触れておきたい。

ゼロトップという賭けに勝ったデルボスケは、この日も采配が的中。
大会を通じて、意味がわからない采配が多かったが、そのほとんど全てが結果に繋がったのだから文句の言いようがない。
その功績を称えてS評価とした。
ひょっとすると、彼の目には、僕のような素人には見えない要素が見えているのかもしれない。


最後に、トーレスは、全く精彩を欠いていたこの二年間を吹っ切るような、最高の形で大会を終えた。
来シーズン以降、かつての素晴らしかった姿をもう一度、見せてくれることを願う。




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