2012年10月

サカつく7、感想記事

18年目、名古屋グランパスで世界制覇(ワールドディビジョン1優勝)を成し遂げたので、
自慢もかねて(笑)、感想を書きます。


まずはプレイを振り返り、次にゲーム全体の感想を書く二段構成で行きますね。


たまたま、結構強いグランパスというチームを選んだせいもありますが、前作に比べて難易度が下がっているなと感じました。
初年度からタイトルに恵まれ、トントン拍子でしたね。


初期は
GK楢崎、DF阿部、千代反田、闘莉王、田中隼磨、
MFダニルソン、ブルザノビッチ、小川、三都主、FWケネディ、玉田という布陣。
もうこれだけで、結構凄いでしょう。
楢崎、闘莉王、ケネディあたりは、最終メンバー(18年目)に入れても活躍できそうなくらい優れた選手です。


2年目にナビスコカップ、3年目にJリーグ、4年目にアジアCLを制覇、そこから8年目までアジアを5連覇と
アジアでは最強モードだった名古屋でしたが、WCC(クラブワールドカップ)は大きな壁でした。
ACミランにボコられ、マンチェスター・シティにボコられ、マンチェスター・ユナイテッドにボコられ、バルセロナにボコられ……。


9年目にはとうとう世代交代の時期がやってきてしまいます。
ただ、10年目くらいになると施設も揃ってきて、収入が格段に上がり、お金に不自由しなくなってくるんですよね。
また、この10年目はフリー移籍でなんとあのオーウェンを獲得できた記念すべき年でもありました。
オーウェンはこの後、名古屋のスーパーエースとして、418試合に出場し635ゴールという化け物じみた数字をたたき出すことになります(いくらゲームだからって、この数字はちょっとひどいのでは)。

溜まってきたお金を一気に使い、外国人に一線級を揃えたのが12年目。
GKにツェフ、SBにボシングワを迎えます。ユースにも日本代表クラスの選手が揃ってくる時期でもあります。
ただ、一方でこの時期が一番つまらなかったですね。
何せ、お金は余るほど持っている。にも関わらず、外国人枠もあるし、23人しか選手を登録できない事情から
選手をこれ以上獲得しても仕方がない。ただ、彼らが成長するのをひたすら待つのみという。


3年後の15年目。
とうとうクラブワールドカップも制覇。
この年のクラブワールドカップは、なんと欧州代表がリール(フランス)だったんですよ。
マンチェスターとかバルサとかじゃなくて、リール。これはイケる!と思ったと同時に、
ここで勝てなきゃもうやめちゃおうかな、とも一瞬思いました。
決勝の相手は、グアダラハラ(メキシコ)。これで勝てなきゃ嘘だろ……と思ったのですが、なんと試合は1-1のまま、延長に突入してしまいます。
延長後半13分、グランパスFWアロイージオ(オーストラリア国籍。長い間、オーウェンの相棒を務めました)が決まった時は、めちゃくちゃ興奮しましたね。一番楽しかった瞬間です。


これで念願のプレミアディビジョンに参加できたわけですが……。
ここから先はほとんどドラマもありません。
まず、600億円を数える余剰金を使って、プレミアディビジョン用に有力外国人を買いあさりました。
ロベルト・カルロス、ザンブロッタ、カイト、プジョル……やりたい放題ですね。

で、その選手を配置して、 後は勝つだけ。
実際プレミアディビジョンは、全く危なげなくディビジョン1まで昇格し、そのまま呆気なく優勝してしまいました。


最終メンバーは、

GKツェフ、
DFは、ボシングワ、プジョル(Jでは転生した闘莉王)、秋田豊、 ロベルト・カルロス(Jでは山田暢久)
MFは、稲本、名波、小野、ラモス、
FWはオーウェン、高木たくや。

コーチ:ファンハール

以上のメンバーになります。


さて、次に感想を。


基本的に前作サカつく6を若干改良したものが、今作となっております。
前作に比べて、あらゆる面でマシになっている一方で、前作のダメなところをそのまま継承した部分も多いです。
まぁ、前作よりは面白いと思うので、前作が楽しめた方はそれなりに楽しめるのではないでしょうか。


まず、サカつくで最も問題なのは、やはり試合シーンですね。
一体いつまで、このような『つまらない』試合シーンを流し続けるのでしょうか。
戦術なども、細かく設定できるものの、全く試合シーンに活かされているように思えません。


ハイプレスからのショートカウンター戦術をとろうが、ポゼッション戦術をとろうが、
試合シーンを見ても違いは見えません。
笑ってしまうのが、ツェフが出場停止だった試合では稲本をGKにしたのですが、
それでもACミランに無失点で勝ってしまいました。
それからの試合、ネタでラモスをGKにしたにも関わらず勝ち続け……なんか、萎えますよね。
見て楽しめるゲームになれば、本当に神ゲーになるのに、惜しいです。


選手の顔グラフィックが似ているとか、そんなのはどうでもいいんです。
極論すれば全員ゴリ顔とかでもいいから、とにかく面白い試合を見せてください!


また、選手保有が23人というのは少なすぎます。
「18人」という、トチ狂った所業に出た前々作サカつく5よりはマシですが、それでも少ない。

まず、常時3人は期限付き移籍に出ているので、それでもう20人になってしまう。
世代交代をスムーズに進めるために、次世代の選手を各ポジションに用意する……なんてとてもできません。
そこを持ってきて、代表に選ばれた選手が使えなかったりすることもあるのですから、言葉を失うばかりです。


「6」に比べて良くなったのは、まず何と言ってもJリーグ以外のリーグが8つも選べること。
欧州サッカーのファンである僕には、これはとても嬉しいです。
また、監督の成長や、「解任」の導入なども評価したい部分ですね。
前者のおかげで、バルサやマンチェスターのようなメガクラブで指揮を執ることを目指してニヤニヤしながら
下積みすることができますし、(結局今のところ一度も解任されておりませんが)後者のおかげでスリリングな要素が加わりました。


また、選手の衰退年齢がようやくまともになりました。
以前は下手をすると25歳とか26歳でもう衰えていく選手がかなりの数いましたが、
今回はほとんどの選手は32歳くらいまでは衰えません。
これで、成長タイプが『晩成』の選手にこだわる必要はなくなり、ようやく落ち着いて育成が進められるようになりました。


さて、次はフランスあたりに渡って、プレイを続けたいと思います。
ではでは。

アイン・ランド 「肩をすくめるアトラス」読了(重バレあり)

評価はB-。


『アメリカ人が、影響を受けた本2位』(聖書が1位)ということで、読みました。
どういう影響かはわかりませんが、僕の正直な感想としては「こんな本に影響を受けるようでは……」というものでした。



この小説のあらすじをおおざっぱに書くと


・作中世界では社会主義が広まっている。天才が虐げられ、天才の富が分配され、無能な貧乏人が『たかり屋』として利益を貪っている。

・天才はとうとうたまらずに逃げ出し、残された世界は崩壊する。


という流れです。
実際、『社会主義崩壊』のプロセスはなかなか真に迫った描写で、面白い。

また、「国家のため、公共のために他人に自己犠牲を強要(して、自分を守る)する人間」などは戦時中などにも散々展開された光景ですし、「人生は楽しむもの」というあたりは共感できます。


ただ……この本が訴えたい内容自体には、大反対ですね。
この小説には3つの大きな問題があります。


1。アイン・ランドが自らの価値観を肯定させるべく、対立する陣営(社会主義)には、とんでもないバカキャラのみが配置されている。

2。そもそも、アイン・ランドの思想自体がめちゃくちゃである。

3。多くの登場人物が登場するにも関わらず、キャラの書き分けがほとんどできていない。作中には、2タイプの人間しか存在していない。



この世界では、『社会主義』VS『完全資本主義(実力主義)』という2つの思想しかなく、
愚物の集まりとして前者が、天才達が支持する価値観として後者があります。

目を覆いたくなるほどにひどいのは、


敵キャラ『社会主義者=性格が最悪=しかも無能=(本来なら)貧乏』
VS
味方キャラ『資本主義者=人格者=天才=(本来なら)金持ち』


という図式を意図的に作っているところ。

そして、「人格者で天才なのに金持ちにならないのは、社会主義だから! 社会主義者の無能なクズどもに、俺たちが稼いだ金を1円たりともやるもんか!」
という流れになっているわけですね。

確かに、作中世界では、社会主義者はマジで性格が悪いので、「こんな奴らにはあげたくない」という気持ちになります。この辺が本作の巧いところであり、嫌らしいところです。


実際はどうか。

まず、「能力」と「人格」は関係がないでしょう。
貧乏でも素敵な人はいますし、嫌らしい金持ちだっているでしょう。


次に、「能力」と「お金」。
自分の代で成功を収めた、大金持ち(億万長者)はたいてい天才なような気がしますが、 
親の資産を相続した二代目・三代目が必ずしも天才かどうかはわかりませんし、
芸術家などは死後認められた人もたくさんいます。
才能はあっても、開花する前に事故や事件に遭ってしまう人もいるでしょう。
また、大企業の窓際で新聞を読んでいるサラリーマン(最近いないそうですね)と、中小企業で頑張って働いている人に、年収の差ほど実力に開きがあるかどうかも不明です。


アイン・ランドの思想は極めて単純です。

良い人は、才能もある。才能があって金持ち。
悪い人は、無能な上に貧乏。

なのに、税金とかなんとかで、金持ちはたくさんお金を取られ、そのお金が貧乏人に行ってしまう(福祉とか生活保護とかで)。
ふざけんな。


まとめればこんなところです。


フィクションとしては、「ハイハイ、ワロスワロスw」で済むのですが、「影響を受けた本」2位だなんて言われると
ちょっと穏やかな気持ちではいられません。

また、ネットの感想を読みあさってみても、「こんなに共感できる本があるなんて!」とか、「これに反対する人は、社会主義者か頭の弱い人くらいだろう」のような、熱狂的な……狂信的なご意見を散見します。


個人的には、作中で書かれているディストピアは論外(北朝鮮とかみたい……)ですが、
だからと言って、作中で理想として描かれるアトランティスも、話にならないくらい嫌ですね。


それとは別に、「では、どういうお金の使い方が正しいのか」について全く触れていないのも気になります。
もちろん、個人が稼いだお金をどのように使うかは個人の自由です。
作中に出てくる「たかり屋」のように、皆に分配するのが当然というような、厚顔なことを言うつもりはありません。


ですが、たとえばあなたが1000億円のお金を手に入れたとします。
そのお金を、『自分のためだけ』に、『そして有効に(つまり、払った金額のぶんだけ自分が幸せになるために)』使うことが果たしてできますか?


残念ながら、僕にはできません。
海外旅行に行きたいわーとか、超綺麗なお姉ちゃんをはべらせたいわーとか、美味いもん食いたいわーとか
それくらいの希望は僕にもあります。
親が今よりも高齢になった時に、きちんとした老人ホームに入れてあげたいとか、そういう希望はあります。


が、海外旅行に毎週行っていたら、遠からず飽きてしまうでしょう。
超綺麗なお姉ちゃんも、1年もすれば見飽きてしまうでしょう。
美味いもんを毎日食べていたら、それが当たり前になってしまうでしょう。

それでも惰性のように毎週海外旅行に行きますか?
惰性のように、綺麗なお姉ちゃんを探し歩きますか?
惰性のように、毎日とにかく高級なものを食べますか?


それを楽しめているうちはいいですが、飽きてしまったら、それは『消費』ではなく『浪費』です。


人間の幸せというものは、『刺激』と『安定』にあると僕は思っています。
ですが、『安定』は恐らく、お金ではほとんど買えません。 
そして、お金で買える『刺激』には限りがあります。


翻って、お金がなくて貧困に喘いでいる人は世界に何億人もいるわけです。
そんな人たちのごく一部でも、自分の『余った』お金で救ってあげることができたら。
そう思うことの何が、いけないのでしょうか?


別に、崇高な想いなんてなくていいんです。
人の命を救えた、その救えた人から感謝の手紙が届いた。
それは、出資者本人にとっても、すごく幸せなことではないですか。
他人のためではなく、自分のために他人を救っても良いと僕は思います。
これは別に強制ではありません。作中のように、無理やり奪ったりするのは言語道断です。


ですが、作中のアイン・ランドの思想は、「慈善」までもを「悪」と断じている。
厳密に言えば、P1143の数行では、「自己満足のためならOK」とも書いてあり、それに従うならば特に問題ないと考えますが……これだけ長大な小説のほんの1センテンスじゃ、注意深く読まなければ伝わらないだろうなぁと。


 こんな小説に影響されて、「お金が全て」の世界にならないことを祈るばかりです。
そういったわけで、僕はこの小説が嫌いですし、この小説を全肯定する人とは仲良くなりたくはありません。
同様に、作中の「たかり屋」のような連中も相手にしたくありませんが。


2012年読書短文感想 最終更新10月14日

S・A→心底から読んで良かったと思える本。

天国の五人/ミッチ・アルボム……主人公が、自らの人生に価値を見出す姿に涙する、感動小説。直球ではあるものの、優しい気持ちになれる作品。

もう一日/ミッチ・アルボム……『親孝行、したい時には親はなし』。亡くした母と、“もう一日”だけ過ごせるとしたら? 母の愛は万国共通。アメリカ小説でありながら、日本人の感性にも強く訴えかける作品。

チップス先生さようなら/ジェームズ・ヒルトン……生涯を通して男子校に勤め、皆から愛された老教師チップス先生の生涯を描いた名作。温かくて優しくて愉快な、チップス先生の人柄に魅了され、心が洗われる想いがしました。

上海ビート/韓寒……中国発のユーモア青春小説。作者の優れた観察眼と笑いのセンス、知識量には脱帽の一言。お調子者の主人公の恋愛を応援しつつ、中国のことが身近に感じられる一作。

それから/夏目漱石 ……高等遊民である主人公が、愛のために頑張っちゃう話。と書くといかにもあれだけど、間違ってはいないと思う。

塩狩峠/三浦綾子……キリシタン作家ということで、宗教色が強いのは確かだが、心理描写が丁寧で読ませる。ラストは解っていても、しんみり来るものがある。

9歳の人生/ウィ・ギチョル……真っ直ぐな心をもった、9歳の前向きな少年から見た、韓国貧民街の生活。悲惨な環境すらも、ワクワクするような世界に変えてしまう少年の心ゆえ、しんみりするシーンはあれど、読みやすく楽しい。

グッドライフ/チョ・チャンイン……一人息子を勇敢に守る崇高な父の愛を、カシコギ(トゲウオ)をモチーフにして描いた名作。直球で泣かされます。


ひつじが丘/三浦綾子……『愛することは、赦すこと』。泥沼恋愛関係から、キリスト愛を描いた作品。

赤い指/東野圭吾……ある事件をめぐっての、家族間のドラマや絆を描いた、泣かせ系小説。

さまよう刃/東野圭吾……『少年法』の問題点を描いた、サスペンス小説。

ボッコちゃん/星新一……笑える話あり、切ない話ありのショートショート傑作集。次はどんな話かなと、ワクワクしながら読めました。

TSUGUMI/吉本ばなな……エネルギーにあふれた病弱少女、つぐみの魅力。海辺の町で過ごす、キラキラと煌めくひと夏の思い出を描いた作品。 

クージョ/スティーブン・キング……不毛で哀しい闘争を描いたB級ホラーの傑作。

 
B→出したお金、読んだ時間以上の価値があった本。

スケルトンクルー:神々のワードプロセッサ:ミルクマン/スティーブン・キング……キング初期短編集。それなりに楽しめる短編集で読んで損はないが、彼がものす傑作長編に比べるとやや物足りなさも。

白い犬とワルツを/テリー・ケイ……Aに近いB。死へと向かう老人の生活を、淡々と描いた作品。あまりにも淡々としすぎていて、中盤までは退屈だったが、読み終わった後は、とても切なくなりました。心に残る作品です。

トムソーヤーの冒険/マーク・トウェイン……古き良きアメリカを駆け巡る、やんちゃな少年トムソーヤーの愉快な毎日を描いた物語。童心に返って楽しめるので、子供はもちろん大人にもお薦め。


かもめのジョナサン/リチャード・バック……全ての囚われを振り切って、自由を、どこまでも高みを目指すかもめの物語。小説というよりは自己啓発書に近い感じだが、面白い。

あの銀色の夜をふたたび/サンドラ・ブラウン……人間味のあるヒロインとヒーローで、素直に応援しながら読むことができた恋愛小説。それにしてもヒロインたら、ウッカリさん。

熱き夜の香りに/サンドラ・ブラウン……妄想ヒロインが、自分の妄想を好きな人に見られて大喧嘩。でも、許しちゃう。今度はあなたの妄想をお・し・え・て(はぁと)。というお話。

見知らぬ人でなく/サンドラ・ブラウン……『テキサス三部作』(「謎の女を探して」、「偽りの愛の果てに」、本作)の中では、主人公が試練を乗り越えるシーンが描かれているぶん、一番まとも。 

セーラー服と機関銃/赤川次郎……読みやすい青春ミステリ。人が死んでるというのに、この明るさはいったいなんだろうとも思うが、その牧歌的なところが味とも言える。

ドロレス・クレイボーン/スティーブン・キング……遠い過去から幻覚が追いかけてくる。ある饒舌な老婆が語る、サイコホラーの秀作



ノックの音が/星新一……『ノックの音がした』から始まる短編ばかりを集めた、面白い趣向のショートショート集。

ようこそ地球さん/星新一……ショートショート『天使考』が絶品でした。

盗賊会社/星新一

ちぐはぐな部品/星新一

エヌ氏の遊園地/星新一

なりそこない王子/星新一

おせっかいな神々/星新一

悪魔のいる天国/星新一

トワイライト/ステファニー・メイヤー……少女の夢を詰め込んだ、『体感型恋愛小説』。甘々で実に感情移入がしやすい作品だが、切なさや苦悩といったものとは無縁で、身分違いの恋にしてはいやに軽さが目につくのは瑕瑾。

トワイライト2 New Moon /ステファニー・メイヤー……同じB評価でも、切ない(というほどでもないが)失恋が描かれた2巻の方が、1巻よりも面白かった。

トワイライト3 eclipse/ステファニー・メイヤー……バトルシーンの描写が相変わらずショボいものの、恋愛模様は悪くない。悪くないが、本命役のエドワードが少しウザい。

トワイライト4 breaking dawn/ステファニー・メイヤー……シリーズ最高傑作ではあるのだが、どうにももったいない終わり方。

冬のバラ/キャサリーン・ウッディウィス……ベッタベタな少女漫画系ロマンス小説。ヒロインのツンデレぶりが正直ウザかったけれど、まぁ面白いは面白い。

悲劇の土地/アースキン・コールドウェル……金もなければ職もなく、おまけにも一つ頭も悪い、最低最悪な貧民のエネルギーを感じ取れる作品。何だか生活保護受給世帯への偏見を助長しそうな気がするのではあるけど、こういう人もいるにはいるんだろうなとも。

ブランコのむこうで/星新一……ショートショートで有名な星さんには珍しい、長編小説。子供の視点から描かれた、様々な人の人生模様。子供にはもちろん、大人にもお薦め。

人生におけるいくつかの過ちと選択/ウォーリー・ラム……最後の100ページ以外は文句なしにA評価だったのだが。暗く重い話でありながら、心地よくテンポ良く読めるその技術には脱帽。

時をかける少女/筒井康隆……あっさりしてはいるものの、ひと昔前の爽やかな青春小説として、趣のある一品。

にぎやかな未来/筒井康隆……『古いSF』作品特有の、妙な明るさを伴った未来世界が印象深い良質の短編集。

容疑者Xの献身/東野圭吾……前半3分の2は文句なしに面白い。後半3分の1は微妙。ひたむきで深い愛は特に狂気と紙一重となるが、『石神が誰かを守るために、犠牲にされた人』へのフォローが全くなく、石神の行動はまるで共感できない。「悪いことをすれば、結果は更に悪くなる」という教訓話としてなら可。

手紙/東野圭吾……犯罪者の家族として、どのように世間と関わりを持っていくのか。そんな重いテーマを描いた作品。テーマがあまりに重く、明確な正解がないだけに、作者自身が非常に迷いながら物語を綴り、結局最後まで答えを見出せなかったように感じた。安易に一つの解に飛びつかなかった作者の誠実さは評価したい一方、作品全体が煮え切らないのも確か。

予知夢/東野圭吾……一見、超常現象風の事件を、科学の観点から解いていく連作集。 短編連作集なので、1つ1つの事件はあっさりしているが、読みやすく面白い。 

探偵ガリレオ/東野圭吾……科学の観点から事件を解いていく連作短編集。「予知夢」に比べると事件自体が地味なので、やや面白みには欠けるか。


ブーリン家の娘/フィリッパ・グレゴリー……ヘンリー8世治下のイギリス宮廷を舞台に、権力に生きた魔女アン・ブーリンと、その控えめな妹メアリー・ブーリンを描いた作品。何とも息苦しく、愚かしいルールに支配された16世紀イギリスの宮廷は、まるで異世界ファンタジーのよう。


プレイ―獲物―/マイクル・クライトン……上質のエンタメ小説。サスペンスフルで、一気に読ませる魅力に溢れている。ナノテクノロジーのうんちくも相まって、とにかく飽きさせない。


砂の器/松本清張 ……旅情豊かに描かれる出張シーンや、方言の分布、そして何より活き活きと捜査をする今西と吉村の関係性が楽しい刑事小説。欠点は、今西刑事が名探偵すぎる点。それこそホームズやポワロ並である。

聖なる予言/ジェームズ・レッドフィールド……「スピリチュアル」+「冒険小説」の見事なコラボ。スピリチュアル入門として優れた書であると感じた。

氷点/三浦綾子……「原罪」というテーマを描くため、計算しつくされたプロットを持った力作。母親キャラがウザいのは、テーマ上やむを得ないところか。

下り階段をのぼれ/ベル・カウフマン……劣悪な環境のハイスクールに赴任した、一人の女性教師の奮闘を描いた話。生徒がユーモラスでとにかく笑える。書簡体で構成された表現形式も面白い。

ゼロの焦点/松本清張……良くも悪くも、時代を感じさせるミステリ小説。今の時代なら、こんな動機で人は殺さないだろうなぁ。

最後の将軍/司馬遼太郎……日本史の知識が無いと、あるいは読みながらでも知識を得る努力をしないと楽しめないであろう作品。江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜の短くも輝かしい青春と、その後の姿に、哀切を感じた。

フォレストガンプ/ウィンストン・グルーム……サヴァン症候群の主人公が巻き起こす、痛快なコメディ活劇。逆境にもめげず、読者に生きる元気と勇気を分けてくれる愉快な作品だ。


スクループルズ/ジュディス・クランツ……高級ブティックを舞台に繰り広げられる、華麗なる恋愛模様。ファッションにもセレブ生活にも全く興味のない僕を、陶酔させたその雰囲気づくりはお見事。

マディソン郡の橋/ロバート・ジェームズ・ウォラー……ラスト60ページまでは割に退屈だったが、そこからの盛り上げはなかなか良かった。長い歳月、一人の人を想う気持ちに触れて心を打たれるラブストーリー。主人公とカップルが、50代の孤独な男と、40代の平凡な主婦というのも心憎い。

PS アイラブユー/セシリア・アハーン……最愛の人を亡くした女性が、そこから立ち直るまでを描いた物語。てっきり、新しい恋人を捕まえるまでの話かと期待していたのだが、それはナシ。ベタでもいいので、新恋人を捕まえても良かったんじゃ……。家族、とりわけリチャードとキアラの人物造形がグッド。

ファントム/ディーン・クーンツ……B級ホラーな内容を、ここまで面白く読ませるのは素直にすごいと思う。登場人物の丁寧な描き込み(保安官4人など、それぞれにキャラが立っていた)が、読者を物語に誘う呼び水となっている。

ウィスパーズ/ディーン・クーンツ……可も不可もないながらも読みやすい文章が続く上巻を読み終えると、背筋が薄ら寒くなる下巻が待っている。ジェットコースターのように面白い「ファントム」に比べ、心に残るのはこちらか。

変身/フランツ・カフカ……妹の変心がやや唐突で、尺の短さの弊害を感じるものの、なかなか面白い作品。リアリスティックな筆致からは、作者がこれでもかというほど、主人公のことを考えて描いたことが伝わってくる。

いくたびか美しく燃え/ジャクリーン・スーザン……父親に恋をした少女の悲劇的な恋愛遍歴を描いた小説。『時代』に拒絶された父親と、『時代』に殺された娘の物語は、伏線に富んでおり読み応え十分。

テスタメント/ジョン・グリシャム……ブラジルの大地を舞台に、一人の中年男性が人生を取り戻していく、再生の物語。法廷シーンに期待をすると拍子抜けするかもしれないが、こういうのも有りだろう。ちょっと良い話、的な。

処刑室/ジョン・グリシャム……死刑制度と、時代によって移り変わる「悪」をテーマとした物語。

魔術はささやく/宮部みゆき……全く飽きずに最後まで読めた、良質のエンタメ。ただ、犯人に魅力が乏しいのと、一番死ぬべき(?)人間が生き残っているというのはちょっと釈然としなかったり。

ジョーズ/ピーター・ベンチリー……文学的な意味でも『白鯨』の後を継いだ『ホオジロ鮫』が、海辺の街の人間と死闘を繰り広げる海洋サスペンス小説。

贈りもの/ダニエル・スティール……相互に贈り物を贈りあい、絆を深めることの大切さを描いた作品。心温まる素敵なお話。一方で、あまりに素直、あまりに先が読めるのが欠点か。3分の1を読んだあたりでもう、終わり方がわかってしまう。

QBⅦ/レオン・ユリス……一見、「善人」だと思われたケルノ博士の鬼畜な所業を、多くの証人を重ねることで、徐々に解明していく法廷ドラマ。にしても、ケルノ博士、鬼畜な上にバカすぎる。

カラーパープル/アリス・ウォーカー……序盤から中盤まではとても面白かった。「妹の長手紙」が続く中盤以降はかなりダレてしまったが……。黒人同士の間でも、女性差別があるという事実に気づかせてくれた一冊。

ミスターグッドバーを探して/ジュディス・ロスナー……「孤独」故にセックスに逃げる女性の破滅を描いた作品。セックスに逃げても孤独は消えないのに、何で繰り返すんだ?と、似たような気持ちから一度行きずりの関係をしたことがある僕が言ってみました。

悪を呼ぶ少年/トマス・トライオン……子供の心を覆った、邪悪を描いた作品。

死因/パトリシア・コーンウェル……キャラが立っていて楽しくサクサク読める作品だけに、悪役の荒唐無稽さが残念。

肩をすくめるアトラス/アイン・ランド……好きか嫌いかと聞かれたら「嫌い」だが、力作であることは確か。


C→最低限、暇つぶしにはなった本。

クリスマスボックス/リチャード・P・エヴァンズ……単純だが、心温まる、素朴な良いお話。ただ、この手のメッセージは(普遍的だから仕方ないのだが)語り尽くされた感もあり、文や物語構成がとりわけ秀でているわけでもなく、なぜ今この作品が大ヒットしたのか?と聞かれると、ちょっぴり疑問。まぁ、短いし、損はしないと思います。

天使の卵/村山由佳……丁寧な物語だが、設定の割に盛り上がりに欠ける。最後のヒロイン死亡エンドも唐突で、作者の伝えたい『切なさ』が伝わってこなかった。

謎の女を探して/サンドラ・ブラウン……読みやすく、適度にエロくて楽しいのは良いが、主人公の価値観が意味不明で、悪役が最初からバレバレである。

偽りの愛の果てに/サンドラ・ブラウン……正直、駄作。亡き妻に義理立てして、惹かれている相手に対して冷たく振舞う主人公の行動が不愉快だった。

愛ゆえに哀しくて/サンドラ・ブラウン……強烈なストレスがかかっているこの状況では、いけ好かない男になってしまうのはわからないでもない。しかし、いけ好かない男になってしまっている男性を、どうしてヒロインが好きになるのかが全く理解できない。

野菊の墓/伊藤左千夫……初恋の描写はなかなか良い。まぁ、『姉さん女房ってだけで、二人の仲を裂く』親類一同は今の感覚でいうと意味不明にもほどがあるが、そういう時代だったんだろう。

門/夏目漱石……陰鬱な過去がつきまとうものの、本筋は至って平和であり、退屈。

トム・ゴードンに恋した少女/スティーブン・キング……いくらなんでも冗長に過ぎるが、ラストシーンは良い。そのラストシーンだけでB評価をしても良いとすら思ったが、それもあれなのでCに。

銀河ヒッチハイクガイド/ダグラス・アダムス……時折クスリと笑わせてくれるが、序盤が一番笑えたのでこの評価。笑いのテンポに慣れてしまったのか、ページを追うごとに微妙に……。

おのぞみの結末/星新一……星さんの作品の中では、ハズレの方。

おかしな先祖/星新一……「おのぞみの結末」と同じで、1編の長さがショートショートというよりは短編集程度のボリュームがある。星さんはやはり、10ページ前後のショートショートの方が面白い気がする。


悪魔とプリン嬢/パウロ・コエーリョ……コエーリョ作品の中では読みやすい方かも。テーマは人の心が抱える、善悪二つの側面で、まぁよくある話じゃないのかな、とも。

アソシエイト/ジョン・グリシャム……アメリカ法律事務所のブラック企業ぶりを描いた作品として興味深く読めた。一方で、肝心なことは何一つ解らないままで、作者が物語を投げたようにも映る。もっとも、世間の酷評を見ていたので、期待していなかった分、思ったよりは面白いじゃんとも。


アメリカの鱒釣り/リチャード・ブローディガン……なんかよーわからん。というのが正直な感想。

ドラゴンの眼/スティーブン・キング……キングってこういうのも書けるんだなぁ、という意味で面白かった作品。とはいえ内容は、いつものキングを子供向きにしたような感じなので、大人は何もわざわざこれを読む必要はない気もする。

ライラの冒険①黄金の羅針盤/フィリップ・プルマン……ライラの持つ特殊能力(予言の羅針盤が使える)とか、ダイモンという設定は面白い。だが、シリーズものの1巻だからなのはわかるが、あまりに構成が悪い。

スキッピング・クリスマス/ジョン・グリシャム……クリスマスなんて大嫌い! そんな主人公が、隣人からの数々の妨害・嫌がらせに遭いながらも、頑なにクリスマスを祝うことを拒絶する物語……だったはずだが、後半は一転。おかげで、後味自体は良い話になったものの、そんな終わりでいいのか?という疑問も。

陪審評決/ジョン・グリシャム……ラストのカタルシスはなかなかなのだが、中だるみが酷い点と、色々ツッコミ所が多い部分がマイナス。タバコの害を扱った物語なのに、副流煙についてほとんど触れないというのも……。

ラマン/マルグリット・デュラス ……とりとめもなく語られる、若かりし頃の彼女の姿。文章は流れるように流麗で、独特の雰囲気を持っている。

薄灰色に汚れた罪/ジョン・D・マクドナルド……個人的に、マッギーシリーズは250ページくらいのサイズのものの方が出来が良い気がする。犯人退治とマッギーの生き様の2点が見どころのシリーズだけど、前者はイマイチだった。

潮騒/三島由紀夫……漁師の若者と、海女の娘の淡い恋愛を描いた作品。素朴でいいですね。

金閣寺/三島由紀夫……劣等感から、美への憧れと憎悪に身を焦がした青年の物語。

愛の決断/ダニエル・スティール……読みやすくスラスラ読めるお話だが、作者の『子供を持ちたがらない人間=悪』のような価値観が透けて見えるのが不快。

大いなる殺人/ミッキー・スピレイン……「悲惨な犯行を目撃」→「許さねぇ、俺が犯人を殺してやる」→ズキューンバキューン。要するにいつものスピレイン。

復讐は俺の手に/ミッキー・スピレイン……上に同じ。

スローワルツの川/ロバート・ジェームズ・ウォラー……結ばれない恋を描くのが巧い作家だが、結ばれた後を描くのは苦手なのだろうか。前半は面白かったが、彼女がインドに旅立ってから急激につまらなくなってしまった。

1973年のピンボール/村上春樹……やはり、春樹は合わないようだ。

風の歌を聴け/村上春樹……手抜きで申し訳ないが、上に同じ。

ラブストーリー/エリック・シーガル……乾いた感じの恋愛小説。全然青春っぽさも恋愛っぽさも感じなかったが、解説によれば『アメリカの青少年が憧れる青春の形を描いた』とのことで、言葉が出ない。

D→自分には合わず、読むだけ無駄だった本。

三四郎/夏目漱石 ……恋愛ものだと思って読むと、全然面白くない。明治時代の学生生活と思って読めば悪くはないが、どうやら求めていたものと違っていたようだ。

草枕/夏目漱石……小説というか、芸術論に近いのでは……。

点と線/松本清張……何が面白いのか全然わからなかった。犯人候補が1人しかいないので、犯人はモロバレ。ひたすらアリバイを崩していく話だが、ミステリをそこそこ読んだ経験があれば簡単に解る上に、刑事は頭が悪すぎた。 


ef a fairy tale of the two (重バレ感想)

シナリオ 120/150 キャラ 135/150 絵85/100 音 90/100 その他システム 80/100 印象 35/50 
合計 545/650(歴代20位) ESにつける点 89









【共通するテーマ】

全ての章に共通するテーマは『夢』、ということになります。また、この作品ではその『夢』をより分かりやすい形で提示するために、芸術活動を強調した作りになっています。
そこで、便宜上、芸術活動に向かう者を主、それを側で力強く支える者を従とします(5組のカップルがいるわけですが、不思議と芸術家同士のカップルはいないんですよね)。
お互いがそれぞれ独立した夢を追うというベクトルではなく、内助の功を意識した組み合わせになっていますね。


「1章:『夢である仕事と、現実に直結する学校との選択に悩む少年の物語』」

主:広野紘(漫画)
従:宮村みやこ


1章は、夢と現実に悩む少年紘と、ゴーイングマイウェイな少女みやこが織り成す、青春物語。
夢を叶え漫画家という職業につけた紘。けれど、叶えられた夢は続き、1つの現実となっていく。
漫画家とは(他の芸術家と同様に)不安定な職業。
いつまで人気漫画家でい続けることができるかもわからない。
一方、学校に通い続けておけば、将来へのセーフティネットとして機能する。
学歴が全てではもちろんないけれど、それでも中卒(高校中退)と高卒では、選べる選択肢の幅が違う。
紘はその2つを両立させようと頑張るあまり、どちらも中途半端になっていく。


物語の結末で紘が選んだのは、『夢である漫画に専念するため、学校をやめる』というもの。
自ら退路を断ち、夢のために専心する決意をするわけですね。
今こうして振り返ると、1章の段階で既に、「ef」という物語の方向性を明示していたのだなぁと気づかされます。
そしてまた、紘が『現実に直結する』として切り捨てた学校生活自体を、
夢見ていた少女(千尋)がいたこともまた、心に留めておいても良いかもしれません。


対として、学問の天才でありながら、その才能の活かし方がわからず無軌道に生きていたみやこが、この1章のヒロインに据えられています。
みやこがきちんと学校に通うようになるというのが1章の結末なのですが……
紘が仮に売れなくなった場合に、セーフティーネットになるために大卒の学歴を得ることに決めたみやこ……と振り返ると、ちょっと夢がない気もしますね。
綺麗な言葉にしてみます。
1章をみやこ視点で見るならば、『どんな時でも紘の支えになるという夢』を得た少女が、前向きに将来を考え始めるエピソードということになります。


「2章: 2つの夢を失った少女が、新しい夢を見つけるまでを描いた物語」

主:堤京介(カメラ)
従:新藤景

『恋』と、『バスケットボール』という、2つの夢を失った少女が、新たな『夢』である恋を見つけるまでのお話です。
よく子供の頃からの夢と言いますが、移り変わっていく夢もまた多数あると思います。
そして余談ではありますが、『初めて結ばれた相手→結婚ハッピーエンド』とか、
『主人公に選ばれなかったヒロインが、新しい男性を見つけるシーンが描かれない』、
主人公絶対主義のエロゲーでは描けないテーマを持ち出してきたことは、評価したいと思います。


ただ……これは、本当に好き嫌いなのですが……efというゲームに登場する5人のヒロインのうち、景だけはどうしても好きになれませんでした。
そのせいで、2章に関してはどうも印象が薄いです。彼女のファンの方、申し訳ない。


景の対になるのは、『仲間たちとともに(馴れ合いながら)夢を追いかけていくのをやめ、1人ででも夢を追う強さを持った』少年、京介ですね。
恋愛面では、多数の女性と適当な関係を結んでいた彼が、真に愛する1人の女性に出会い~という流れですが、これは4章の久瀬さんと重複でしょうか。


ここまでがFirst Taleの物語で、ここからがLatter Taleの物語となります。


(注:First taleの物語は、約1年半前にプレイした記憶を基に書いています。間違いがあるかもしれません。
ディスクが見当たらないので、再プレイできないので:苦笑)


「3章:やり始める前から夢を諦めていた少女が、夢に向かって踏み出す姿を描いた物語」

主:新藤千尋(小説)
従:麻生蓮治


「13時間の記憶障害」という特殊なギミックに目を奪われてしまいがちですが、本質は今までの物語と何一つ変わっておりません。
この章では、重度の記憶障害のために夢を諦めてしまった少女が、蓮治という強力なサポーターを得て、再び夢に挑み始める物語となっています。


対になるのは、千尋と同じ夢を持つ蓮治。
ですが、才能にはだいぶ差があったようで、蓮治は千尋を支えるという新たな夢のもと、これからも精一杯頑張っていくことになります。


バックアップメモリである「手帳」や「PC」が壊れたら、このカップル(と言っちゃっていいですよね?)は大丈夫なのかと、めちゃくちゃ不安になるのではありますが……。


「4章・最終章」

ここからは少々特殊な作りとなっておりまして、現代編にあたるミズキ編の中に、過去編である優子編が組み込まれ、交差する形になっています。
しかし感想でそういうトリッキーなことをするのもどうかと思うので、ここでは、ミズキ編→優子編の順に書こうと思います。


「ミズキ編:死期が見え、夢を続けることをやめてしまった青年が、再び夢を掴む物語」

主:久瀬修一(音楽)
従:羽山ミズキ


かつて大成功を収めるも重病が発覚し死期の見えてしまった久瀬が、ミズキの支えによりエネルギーを充填し、ささやかな夢を再び見つける物語。
大舞台ではもう演奏できなくとも、限られた周囲の人へ素敵な演奏を届けることはできる。
そうして、幸せな余生を送るという、切ないながらも一応ハッピーエンドを迎えるのが、このカップルの物語です。


『精算』のために、ミズキを遠ざけようとする久瀬の行為は行き過ぎなのですが、それをも受け入れ、彼の愛を信じたミズキの健気さには胸を打たれました。
最年少ヒロインではありますが、包容力を持つミズキだからこそ、久瀬の支えになることができたのだと思います(ミズキちゃん可愛いよ!!)。


「優子編:恋人の死を乗り越えた少年が、数ある夢の中から最も自分が進みたい未来を選ぶ物語」

主:火村夕(建築)
従:雨宮優子


長年義兄から陵辱にあっていた優子の壮絶な過去や、未来(ミズキ)を助けて亡くなってしまうその最期など、実にドラマチックな物語。
ですが、テーマに沿って骨子だけを取り出すならば、
「多芸多才で様々な未来があるあまり道を決めきれなかった少年が、恋人の死をきっかけに、建築という夢を見つける物語」ということになります。


「どんなに突飛な夢でも、途方もない夢でも、信じ、それに向けて前進していけば叶う日が来る」という、
ある種のおとぎ話が『ef a fairy of the two』というゲーム自体のテーマであり、物語になっているわけですね。


「音羽が2つある(かもしれない)」というギミックは3章の段階で気づけましたが、
そのもう一つがオーストラリアにある、というのは率直に言ってぶっ飛びました。
その荒唐無稽な設定に一瞬怒りさえ覚えたのですが、実際最後までプレイするとその突飛さこそが大切だったことに気づきます。


また、あれだけ壮絶な過去を背負いながらも、『完全には』壊れなかった優子には、本当に強さを感じます。
4章のミズキもそうなのですが、妹が死んだという過去1つで(もちろんそれも大きな傷ではあります)壊れてしまう雨宮兄や、足踏みを繰り返す夕と比較して、
女性陣の強さ・気丈さがよく出ているなぁと。
2人もレイプされたヒロインがいながら、(ミズキのあれもレイプですよね)2人とも気丈に振る舞える。
それどころか、相手を許すことができる(優子は、「完全には許せない」とは言っていましたが)。


単純な力の強さや、あるいは何事をもやり遂げる意志の強さは割と頻繁に描かれる「強さ」ですが、
こういう懐の深さ、全てを包み込む「強さ」はあまり描かれることが多くないので、印象に残りました。
夕と再会した屋上のシーンでの、「あなたを恨んでいます」という言葉は、優子に(雨宮兄を超える)包容力がなければ現実になっていても(=夕を恨んでいても)おかしくありませんでした。



ここからは、シナリオテーマ以外で、他に思いついたことを軽く書いていきます。


『音楽について』


このゲームは、音に関して独特の演出を行っています。
いつから生まれたお約束かは知りませんが、ほとんどのエロゲ・ギャルゲにおいて、音楽はほぼ常に鳴り続けているものでした。
ヒロインが出てくればヒロインのテーマ曲、日常シーンでは日常曲、ギャグシーンではとぼけた曲、バトルになれば熱い曲、泣けるシーンではしんみり曲といったふうに。


ですが、このゲームではかなりの割合を、曲の流れない無音の時間が占めています。
正直に言って、音を使わない演出が、これほど効果的だとは思いませんでした。


ここぞという場面では、無音の状態から印象的に曲を使用することで、シーンの演出力を数倍にまで高めています。
ずっとほとんどの場面で音楽が流れていなければいけないという、妙な『お約束』を覆すだけでこれほど効果を得られるとは、目から鱗が落ちた思いがします。


『距離感について』


このゲームに登場するカップルの距離感は、とても心地良いものでした。
これを言葉で表現するのは極めて難しいのですが、何と言えばいいのかなぁ。


相手を、1人の人間としてきちんと認め、信頼した上で、親密に付き合っていく感じというか。
相手の心に土足で踏み入ったり、ベタベタしすぎて距離を『ゼロ』にしてしまうのではなく、すっと寄り添う感じと言いましょうか。
個人個人のパーソナリティがしっかりと確立された上で、1人と1人が合わさってカップルになっている感じ……。
……うーん、一応努力してはみましたが、伝わっている自信はあまりありません。
言葉にならないものを言葉で表現しようとするのは、非常に難しいですね。



『最後に』


萌えゲーとしてもレベルが高かったように感じています。
みやこ、ミズキ、優子の3人は大好きレベルで好きになりました。


5人中3人が、(好みをS~Eで表して)A評価以上というのは、なかなかあることじゃありません。
みやこの小悪魔的魅力と著しい不安定さ(first taleの感想で書きました)、
ミズキの健気な可愛らしさ、
優子の軽妙な語り口と、壮絶な過去からくる心の闇。


平面的ではない、しっかりとした存在感を持った良質なヒロイン像が描けていたように思います。

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