2012年11月

G線上の魔王(重バレあり感想)

話120/150 人125/150 絵80/100 音90/100 システムその他70/100 印象25/50 合計510/650

ESにつける点 83


【はじめに】

このゲームは、シナリオをマクロに見るか、ミクロに見るかでだいぶ印象が変わってくると思います。

なのでまず、シナリオ全体(マクロ)について書き、次にヒロインごとのシナリオの感想(ミクロ)を書こうと思います。



【全体の感想】


前作「車輪の国~」の時も思ったのですが、るーすぼーい氏は、『盛り上げ方を知っている』ライターさんです。
今作でも、シーンごとの牽引力は大したもので、思わず感情を揺さぶられるだけのパワーを秘めていました。

一方で、緻密な設定を作り上げたり一つのテーマに沿って物語を完結させるという、シナリオ構成力は持ち合わせていません。
極端な言い方を言えば、他の方がプロットを切って、それをるーす氏が文章化した方がいいのではないかとすら思えます。


今作に関して言えば、テーマらしきテーマが分散し、描ききれていないところに大きな問題があります。
この作品をプレイする方の多くは、


①「魔王と勇者の頭脳バトル―魔王の正体―」(序章の展開)
②「命をかけた、純愛」(キャッチコピー)


大体このあたりを期待しているのではないかと思います(多分)。


ですが、①に関しては完全に破綻しています。
この破綻は、①を楽しみにしていた方、あるいは物語の整合性を大切にする方にとっては一発レッドカード、これが理由で即0点をつけてもおかしくないくらいの、致命的なものです。
個人的には①にはあまり期待していなかったので、減点幅は少ないですが、それでも「ちょっとなぁ」と思ってしまったのは事実です。


他の方も仰っていますが、念の為に申し上げれば、ここで言う破綻とは、「魔王」の正体が序章~4章までと、5章では明らかに別人だという点です。
ミスリードならいいのですが、これはミスリードではなく、ライター自身が「何も考えずに書いている」のです。
このような描き方は物語に対して誠実であるとは言えません。


兄弟そろって頭痛持ち、個別シナリオでどうして「魔王」が消えるのか、序章~4章ではほとんど出てこなかったのに、5章に入ってから突然登場頻度が増える兄、など。
そんなわけで、「主人公だと思っていたら、兄が魔王でした」などと言われても、驚くどころか呆れるばかりでした。
こんなのは叙述トリックとは言いません。


そもそも、「主人公が魔王」ではなぜいけなかったのでしょう? 
個人的には、「兄」など出してくるよりも、よほどこちらの方が面白くなりそうでした。


批評というよりも単なる感想になりますが、僕としては『ロミオとジュリエット』を期待していました。
2章では「誘拐を狙う魔王(主人公)」VS「誘拐の被害者家族(椿姫)」という関係が成立していましたし、
3章でも「花音を陥れる魔王(主人公)」VS「被害者(花音)」という関係が成立していました。
ならば、ここから先もそういうふうになるのかな、と期待したのです。

5章でも「勇者」の立場のハルと、「魔王」の立場の主人公が恋に落ちる、そういう展開になれば面白いなと思っていたのですが、そんなこともなく。
新しく「兄」なる人物が登場して「魔王」の役をひっかぶってしまい、主人公が「勇者の仲間」になってしまったことで、
「勇者VS魔王」という軸もブレ、「魔王VS魔王の弟」に変わってしまったように感じています
(というか、ハルではなく主人公が「勇者」の立場になってしまった感じ)。

もちろん5章でも、「憎み合う一家の娘と息子」という因縁は存在しますが、「お互いを赦しあう過程がどうにも弱く」、描ききれていない印象を持ちました。


また、悪役として「魔王」の魅力が乏しいのも残念です。これではただのテロリスト、というより単に迷惑な人ではないですか。全く同情できません。


このように、物語全体を通して見ると、多くの不満がありました。
では、このゲームはクソゲーだったのかと言うと、まぁ否定はしきれないのですが、良かった部分も多くあったと思います。


それでは次にヒロイン別に、感想を書いていきます。


【ヒロイン別の感想】

2章 椿姫シナリオ  B+


主人公がモロに悪役となって、ヒロインである椿姫をビッチへと調教していくお話。


読んでいてストレスが溜まるのは、物語構成上仕方のないところ。それでもやはりイライラしました(苦笑)。
ただ、善良な椿姫のキャラクター造形はよくできていて、その椿姫が徐々にツマラナイ女になっていく描写も巧かったと思います。


せっかく素敵だった椿姫という女の子を、どんどん俗な女に貶めていく姿を見ては「もったいない……何がしたいんだよ」と思ってしまったので厳しかったですが、
調教ゲーさながらに、「高貴な姫を、堕としていく」過程を楽しめる人になら受けるかもしれません
(むしろ、そういう描写に慣れて目が肥えている人は、逆に評価しないかもしれませんが)。

しかしそれにしても、言い訳を探すように自己肯定化を始める、主人公の小物臭には少々ウンザリしたのも事実です。


繰り返しになりますが、椿姫の造形は良いと思います。
単なる「頭の軽い、いい子ちゃん」ではなく、本当に「純真で綺麗、故に危うい(騙されやすい)」女の子がよく描けているからです。


ゲームヒロインとしても、「可愛い!萌える!」という感覚はないし、仮に現実にいても、めちゃくちゃモテるような女の子ではないと思います。
しかし、こんな子と一緒にいたらきっと心が暖かくなれるだろうな、こんな子と結婚できたら幸せだろうなと思わせる、陽だまりのような女の子でした。
一歩間違えればエロゲによくいるアホの子なのですが、しっかり描くことによって、厚みのあるキャラクターになったと思っています。


3章 花音シナリオ A


母親の造形が素晴らしかったです。
ただ邪悪なわけではなく、わが子に対し歪んだ愛を押し付ける描写が、実に自然で感嘆させられました。
それだけに、急な心変わりがかえすがえすも残念ではありました。
あそこまで歪んだ母親が改心するなら、もう少しドラマチックなイベントが欲しかったところです。


花音の頑張りから物事が好転するのではなく、まず母親の改心から物事が好転しだすというのは、ストーリーとして見栄えが良いとは言えないと思います。


ただ、『見せ場を盛り上げる』のが非常に巧いるーすぼーい氏。
スケートシーンでは思わず引き込まれ、花音にたっぷり感情移入しながら読むことになりました。

物語構成の粗さを一点突破でブチ破る。
それは、このゲームの評価にも通じるものがあると思います。


4章 水羽シナリオ B+


水羽が、可愛すぎてたまりません。

本筋に進むと、籠城事件に物語が進むわけですが、正直退屈でした。
それより、水羽個別ルートの方が良いです!
弱々しくも健気に咲く一輪の花を、愛でるも手折るも主人公次第。
そんなシチュエーションは椿姫ルートに共通するものがありますが、こちらの方が手折り方がエロいので好みですw


椿姫が、嫁にしたいヒロインなら、水羽は恋人にしたいヒロインでした。エロかわいくて萌えまくりです。


ハル A(5章 B+ 最終章 A)


最終章の展開は素晴らしかったです。
出頭する主人公を引きとめようとするハルから始まって、
留置場で次々とヒロインのフラグを叩き折っていくシーンの切なさときたら。


(しかし、この一連のシーンが評価されるなら、もう少しエロゲにも失恋ゲーがあって良いと思います。
もっと身を切るような切なさを味わいたいです!)


ただ、5章には(というか、G線上の魔王という作品には)色々と問題があったのも確かです(前述)。
序章~4章までと、この5章では明らかに前提条件が違うし、「主人公」VS「ヒロイン」の図式も崩れており、
この章だけが浮いているようにも見えるからです。
『ハル√だけで良かった』と語る方が多いのも、それが原因だと思います。


また、ハルというヒロインは悪くはないものの、水羽や椿姫に比べるとそこまで惹かれなかったのも残念でした。



【まとめ】

物語全体を見ると、「そもそも魔王の正体おかしくね?」という致命的な欠陥があり、
それ以外でも「魔王がショボい」、「ハルが5章で勇者っぽくない」、「主人公」VS「ヒロイン」で最後までいってほしかったなど、主に魔王関連に多くの不満があります。


一方で、花音シナリオのスケートシーンの素晴らしさ、最終章の見事な流れ、中だるみが少なく全編読みやすいテキスト、水羽の可愛さ、椿姫のキャラ立てなどなど、
個別に見ていけば、「良いな」と感じる部分も多くありました。


一見して良作といって良い点数をつけていますが、致命的にダメな部分と、感銘を受けた部分を相殺し、
やや甘めにつけた点数が、83点となります。


通りすがりさんへのレス2

通りすがりさん、こんにちは!
レスありがとうございます。


「分際」などと仰らず、気が向いた時はいつでもコメントいただければ大歓迎です。
真摯なコメントをいただけることは、こちらとしても励みになりますし、むしろ喜んでいるくらいです。


では、細かく(冗長に)レスをさせていただきます。


>>レス1

まずみちる√に関して、通りすがりさんの仰るとおりだと思います。

確かに、少々説明不足ではないかと思う気持ちは僕にもあります。
通りすがりさんのレスをいただいて、微妙に感想を修正したのですが、
修正する際に「そうは言っても説明不足であり~」などとブツブツごねることもできました。


ただ、そうせずに不満の矛を収めたのは

・当初僕が考えていたようなあからさまなミスではなく、単に説明の加減の問題だったこと

・説明がないと多少引っかかる部分はあるが、それを知らないと物語が楽しめないほど深刻な問題ではないこと


この2点を考え合わせた結果、ライター氏を叩く必要はないと判断しました。


なお、採点の際の490点(シナリオ110点)には現れていませんが、通りすがりさんのご指摘のおかげで、
実際のシナリオ点が、109.1→110.8に上がったことも付け加えておきます。
整数5点区切りで四捨五入しているので点数自体は変わりませんが、些細ながらも評価は上がりました。
重ね重ね、ありがとうございます。



>>レス2~3

通りすがり氏の主張は、理解いたしました。
丁寧にご説明いただき、ありがとうございます。
僕にとっては、これくらい丁寧に書いてくださった方が、誤解も生じないので助かりますw



まず、僕の意見は、Front Wingさんへアンケートや投書、メッセージフォームなどで送付しているわけではなく、
あくまでも『エロゲーマー』が読むことを前提に書いています。
また、僕の意見が『全てのユーザーにとって正しい』などと思い上がっているわけでもありませんし、
「冗長である」というのも、「面白かった/つまらなかった」などと同じで、あくまでも「僕はそう思った」程度の意味合いでしかありません。

(以前、『ご都合主義である』と僕が書いた内容に対して、反論をされた方がいらっしゃったのですが、
これもまた、「(僕が)ご都合主義だと感じた」以上の意味ではありませんでした)


だからこそ、無責任に「俺はこう思う」を書けるわけですし、違う意見の方はいくらでもいると思っています。


ユーザーを代表しての意見・主張ではなく、あくまでもfeeという一エロゲーマーの意見であるという前提に立てば、
自分にとって興味のない、ノベルやアニメ、コミックやカードゲーム(すみません、ノベルはちょっとだけ興味ありますw)への展開を視野に入れた結果、
肝心の本編が(自分にとって)面白くなくなれば、そこは指摘して良いのではないか、と思うのです。


(*「僕には無駄と思える部分を、楽しむユーザー」のために、間口を広く取ること自体は否定しませんが、
間口を広く取ったことで、「退屈してしまう」人間が出ることも考えれば、
全ての人が満足いくように作る、という考え自体が、極めて困難であると感じます。)


「むしろ共通シーンがいいんじゃないか!」という意見にも価値があり、僕の「共通シーンはもっと短くてもいいんじゃね?」という意見にも価値があり、
受け取り手は色々な意見から取捨選択をして、自分なりの結論を導けば良いと思っています。



更に、これは既に理解していただいているようですが、
『本来は、まず優れた原作があり、人気が出たら、そこから派生してメディアミックスが生まれ、様々なネタが生まれていく』というのが僕の考え(綺麗事)で、
初めから『メディアミックスされた後』を、視野に入れすぎるのは(現実的にはそうかもしれないけれど)、姿勢としてどうなのかな?とも思うわけです。


もっとも、前述のように「販売本数に恵まれず~」という事実があることは、承知してはおります。
メーカーも、そこを責められるのは厳しいのかもしれません。


ただ、「そういう風に商売させているのは、我々」という、「我々」に自分を含めたくはないですし、
百歩譲ってメディアミックスを目指すなら、僕のようなユーザーにも受け入れてもらえるような形で、
目指してほしいかなと思います。
メディアミックスするのが気に入らないわけではなく、単に、それを意識しすぎて原作本編の質を下げてほしくない(もちろん、質の低下自体も、僕の主観によるものです)
というだけのことなのですから。

通りすがりさんへのコメントレス

返信をしたのですが、800字制限に引っかかってしまったので、記事に致しました。
それにしても……800字って少ないですよね。どうにかならないのかしら。


>>通りすがりさんへ

はじめまして。
コメントありがとうございます。

>>みちる√について

なるほど、と思って読みました。
これは自分一人では辿りつけない、とても有益な情報ですね。
「えっ?そうなの?」と思って軽く調べたのですが、確かに心臓移植はアメリカで行われるのがメジャーなようです。
(過去に、日本国内で心臓移植をする作品を読んだことがあったこともあり)、何の疑問も持ちませんでした。


疑問が残るのは、主婦が呟いた「住所はガーディナ……」という台詞だけで、プレイヤーが「日本人街」だと理解できるかどうか?
という点ですが、
これは単に僕が無知なだけなのかもしれません。


感想の方、修正しておきました。ありがとうございます!
 


>>しかしビジネスとして異分野展開を考えた場合に、求められる足場として見れば、必要な「冗長化」なのではないでしょうか
>>偏ったマニアも、ライトなカジュアル層も、それなりの評価を出せるように作ってあると見れば、不満点を挙げ連ねるのも間違っているように感じます 

こちらに関しては、正直よくわかりません。


まず、1点目。メディアミックスで成功している作品は(ビジネスとして異分野展開とは、メディアミックスのこと……でいいんですよね?)
グリザイア以前にも何作もプレイしておりますが、ここまで「冗長」と感じた作品はありません。

「冗長」というのは単なるプレイ時間の長さではなく、物語のメリハリ、シーンの要/不要などに対する批判なので、「必要な冗長化」というものがそもそもわからないのです。
膨大な長さのテキストが必要だったとしたら(その必要性もイマイチわかっていませんが)、そのテキストを「冗長」だなんて感じさせないように、楽しく読ませなきゃいけないと思うのです。


ちなみに、テキストの長さは、『雄二が学園に溶け込む』様子を自然に演出できている……という点ではある程度必要だと思っています。
ある程度必要……でも、ここまでは要らないよねという意味で3割カットと書きました。
削ろうと思えば3割どころか7割くらい削れると思っていますが、そんなに削ってしまうと「良さ」もある程度失われそうなので3割と書いています。


2点目。

「偏ったマニアや、ライトなカジュアル層」のどこに僕が分類されるのかはわかりませんが、
一応僕も一購入者・評価者なわけです。
そして、僕も「それなり」の評価はしていますし(批評空間には74点をつけています)、批評空間では中央値85ということなので、成功しているのだと思います。
ただ、「不満点を挙げ連ねるのが間違い」というのはどういった意味かがわかりません。
 

まず、良いと思ったことは良いと書き、不満に思ったことは不満だと書くことが、間違いだとは到底思えません。


また、万人に好かれる人がいないように、「どこからも不満が出てこない作品」なるものは、恐らくこの世には存在しません。
更に、商売としては必要かもしれませんが、僕はそういう作品の『作り方(創り方、ではない)』は正直好きではありません。


通りすがりさんのコメントを読んでおりますと、汚い言葉もありませんし、理性的な方だろうという推測ができます。
なので、「不満点を挙げ連ねるのは間違っている」という表現は、
僕が受け止めた意味(グリカジは、こういうコンセプトで作られている。だから不満なんて言うな)
ではないんじゃないかな、と感じていたりもします。


ただ、僕のキャパシティではそれくらいしか思いつけなかったので、それに沿って反論をしました。
お気に障ったらすみません。

グリザイアの果実 終了(重バレあり)

* 本記事は辛口感想らしいので、そういうのが嫌いな方は読まないことをお薦めします。
読んだ結果、気分を害されて、中傷の類を送ってこられても対応しませんのでよろしくお願いします。




まずは採点から。
シナリオ110/150 キャラ105/150 絵80/100 音 90/100 その他システム 65/100 印象 30/50 
合計 480/650(80位/約150ゲーム中) 


 【前置き】
このゲームよりも、プレイ時間が長いゲームというのはいくらでもあります。
しかし、ここまで『長い』と感じたゲームは未だかつてありませんでした。
主人公の雄二が学園へと馴染んでいく過程を、コント的な小イベントを連続させて描いた共通ルートは、
なるほど、確かに割と笑えます。
ですが読み始めて、10時間経っても物語が動き出さない……というのはさすがにやりすぎではないでしょうか。


地味に痛かったのは、好きになれるキャラクターが少なかったこと。
主人公の雄二はいくらなんでもズレすぎで、なんでもミリタリー関係に持っていこうとする彼の会話はちっとも面白くありません。


また、このゲームには、みちるや学園長をいじって笑いをとるシーンが割と多いのですが、たまに度が過ぎると感じるシーンがありました。
特に蒔菜に顕著でしたが、雄二や幸にもそういうところがあって割と不愉快でした。
みちるが「おバカないじり役」であることは周知の事実だし、彼女をいじればギャグになるというのもわかります。
実際、結構笑えますし。


ですが(メモをとっていないので詳細には書けませんが)、「仲間はずれ」を思わせるような発言はやりすぎではないでしょうか?
「他の人のことを思って寂しかったけど、みちるのことは思い出しもしなかった」とか、
その手の発言が確実に3回はあったように記憶していますが、さすがにこれは冗談にしても悪質で、笑えないと思います。
蒔菜ルートの覆面会議でも、千鶴に対して行き過ぎた「いじり」があって不快でしたし(この時も幸の性格が悪かった)、
度を過ぎた「いじり」は「いじめ」と変わらず、笑えません。


特に大事でもない場面で、「あぁ、こいつら性格悪いな……」と、感じてしまい、キャラクターを好きになれなかったのは
割と痛かったように思います。


では、攻略した順に感想を書いていきます。



・蒔菜 C-

このシナリオを最初に持ってきたのは失敗でした。
前述の理由から、蒔菜には苦手意識を持っておりまして、正直この無礼な小娘が嫌で嫌で仕方がなかった(ファンの方、超すみません!!)。
そんなわけで、「あまり美味しくなさそうなものから、いただくのよさ!」と始めましたが、危うくゲームをやめてしまうところでしたわい。


クリアして真っ先に思いついた感想としては、「とにかく冗長」。
共通ルートの途方もない長さは、ヒロイン達と雄二の関係性を丁寧に描く役回りを果たしていましたが、
その調子で個別ルートまで書かれるといくらなんでもあくびが出ます。


例えば「バイクを見つけ」てから、「実際にバイクに乗る」までのあいだのメンテナンス作業を、
バイクの専門用語を交えて200行以上も使って描写しているシーンがありますが、
こんなのはムダもいいところです。
物語上全く必要のないポイントだし(バイクのメンテ不足や、メンテに伴う時間の経過が物語に何か影響するのかと思いましたが、そんなこともなかった)
バイクマニア以外の人間が楽しめるような描き方にもなっていません。
ライターがバイクを好きなことはわかったが、読まされるこちらの身にもなってほしい。
こういう言い方は好きではありませんが、ライターのオナニーに付き合わされるのは勘弁です。


主人公とヒロインの関係性についても、(これは単に好みの問題かもしれませんが)
最後まで蒔菜が『被保護者』以上のものになりきれていなかったのが大いに不満でした。
あくまでも雄二が保護者で、蒔菜が被保護者。
実際には年が2つくらいしか違わないはずなのに、蒔菜は雄二を『パパ』と呼び、甘え、
そして最後まで何一つ、雄二の役に立ちません。
あまつさえ、鉢植えを取りに行くなどという、頭のネジがズレた行動で雄二の足を引っ張った時は、心底キレかけました。


グッドエンドを見て、ヤレヤレとため息をつき、バッドエンドも回収。
バッドエンドでは雄二が亡くなってしまうので、雄二離れが出来ているものかと期待してみたら、より悪くなっていますし……。


そもそもこの2人の間に、およそ恋愛感情なるものが存在したとは僕には到底思えませんでしたし、
蒔菜を守りたいという気持ちにも最後までなることができませんでした。


それなりに人気のあるシナリオに対して使うのは勇気がいりますが、
正直に言って、ドギツい描写以外に見所のない、駄シナリオだったと思います。



・幸 B+

『良質な素材に、スパイスをびっしり振りかけたら失敗。でも、素材自体が美味しいから何とかなった!』という印象のシナリオ。
割と楽しめましたが、紙一重のところだったかもしれません。


このシナリオは、本来親娘のすれ違いを描いた、「何てことはない、小さくて平凡な。それでいて、暖かい物語」だったと思います。


ところが、それではインパクトに欠ける、ドラマ性に欠けるとライターは考えたのか、
妙に盛り上げよう、盛り上げようと頑張っている姿が目立ちました。
盛り上げを重視しようとするその姿勢は空回り、不自然さも見受けられます。


最大の問題は、最後の選択肢。いや、選択肢前の雄二の発言でしょう。
「殺さなくてはいけない」。


幸は、極めて視野の狭い、思い込みの激しい少女です。
プレイヤー視点で見れば、幸の両親が幸を嫌っているはずがないことは明白で、
ただ幸だけがそう思い込んでいます。
そんな幸に向かって、あぁいう深刻な誤解を招くようなことは普通、言いません。


なお、最後の選択肢は「母親を殺す」で正解です。
正解というか、「自分を殺す」は完全な間違いなので、消去法にすればそれしか考えられないというのが実際のところ。
まさに国語のテストそのものの選択肢で、ここでは幸ルートのテーマをプレイヤーが本当に理解しているのかを尋ねているのではないかと。


幸は、今まで「自分」を殺して生きてきました。
そんな幸が、新しい一歩を踏み出す物語において「自分を殺さねばならない」という選択肢は当然誤りになります。


ただ……そうは言いましても、ね。
そもそも雄二があんな誤解を招くような発言をする必然性は、実際まるでないわけで。
物語をドラマチックに、そしてテーマを強調するためにのみ発された雄二の発言はいかにも作為的で、
主人公の無能さを強調してまで、書かれるべきセリフだったのか、疑問が残るところです。


作為的といえば、学校の破壊もです。
より詳しく言えば、学校の破壊そのものは良いのですが、学校の破壊を生徒たちに伝えていなかったところが問題だと思います。


恐らくプレイヤーにこの後の展開を予測しにくくさせるため、そして生徒たちと一緒に驚いてもらうため、意図して伏せたのだと思いますが、
普通に考えれば、こんな大事なことを生徒たちに隠す方がおかしい。

盛り上げよう、盛り上げようとして、リアリティを欠く展開にしたのはライターの腕不足を感じます。


ただそれを差し引いても、幸ルート自体が本来持っている「おうちに帰ろう」という暖かなテーマは
プレイヤーを感動させるに十分ではあるし、幸の持つ狂気自体は非常に巧く描けていました。


「言われたとおり、早寝早起きをする良い子ですから」


幸ルート前半のこの台詞が発する狂気、それを聞いた時、ぞくっと背筋に寒気が走りました。
そんな経験はなかなかできるものではありません。
エンディングでの感動も含め、一定の評価はしたいと思います。



・みちる B+

良いシナリオでした。


とりわけ良かったのが、『過去からの電話』。
『立ち絵つきの親友(以下、親友と呼称する)』へ向けた電話だと、僕は疑いもなく信じました。
なのに、まさかあそこに繋げてくるとは。
ちょっぴりファンタジーだけど、ここで「なぜ?」と考えるのは野暮でしょう。
優れた物語にはたいてい、グッと引き込まれるシーンが存在するもので、みちるシナリオの『過去からの電話』は
まさにそんなシーンでした。


ラストへの展開も地味に評価したいポイントです。

ありがちなパターンとしてすぐに思いつくのは、『もう一人のみちる』の正体を『親友』ということにし、
ラストで『親友』から卒業するという形。
僕などが書いたらきっとこんな感じの話になることと思います。
これはこれで良い話にはなるものの、特に目新しさのない、手垢のついたストーリーラインです。


この物語ではそうせずに、『もう一人のみちる』の正体をズラすことによって、
『擬似ハーレム(2人ではハーレムとは呼ばないか)』エンドを作りあげることに成功しました。
重いシナリオが多いこのゲームにおいて、幸せな結末を迎えることができたのは、このアイディアのおかげでしょう。


ラストの演出も泣くところまではいかずとも、暖かい気持ちになれてとても良かったです。


一方、ちょっと気になる点もあります。
最も気になったのは、「大切な箱を見つけるシーン」での幸の強引さです。
箱を見つけないと話が進まないのはわかるが、幸はあそこまで空気が読めないお節介キャラだったでしょうか?
もう少し巧い方法で、雄二が箱を見つけるよう仕向けられなかったのでしょうか。
この辺の処理は割と雑で、もう少し説得力ある展開を期待したかったところです。


【また、楽々と言葉の壁を超越しているのはやはり気になります。
アメリカ人であるはずの「彼女」やその親が、どうして日本語でみちると会話できるのでしょうか。
そもそも相手を『アメリカ人』にする意味はどこにもありません。】

→この部分は、通りすがり氏のコメントにより疑問が解消されました。
有益なご指摘、感謝いたします!
 


このような粗さえなければ、更に素直に楽しめたのですが。



☆由美子ルート  B-


批評空間では随分と不評なこのルート。
ビビりながらプレイしてみましたが、至ってフツーでした。
そんなに言われるほど悪くないじゃんと思う一方で、
必死になってこのルートの良さを力説したいような出来でもないという……。


他シナリオと比べて、良かったのは恋愛描写ですね。
蒔菜、みちる、幸、天音。
どのルートでも、雄二とヒロインの間には保護者―被保護者という関係性はあれど、
お互いを支え合うパートナーという意識が欠けていたように思います。
幸に関してはまだ、回想シーンでは『支え合う』ことができていたのでいいのですが、
蒔菜やみちる、天音に関しては、あくまで雄二が導いてあげる側。ヒロインが導いてもらう側という分業体制が貫かれており、
なおかつ雄二がヒロインを好きになる描写が弱いため、恋愛モノとして見ることが難しかった。


一方このシナリオでは、由美子自身、雄二に守られることに罪悪感を覚え、(お嬢様ゆえなかなか思うようにならないながらも)
何とかして対等であろうとする意識が見えたし、雄二が由美子を好きになる過程も、他シナリオに比べて自然に描写されていたので、
恋愛モノとして見ることができた。
由美子自身の可愛らしさも相まって、キャラクターノベル、萌えの強度はこのシナリオが一番でした。


物足りないのは、『インパクト』が少なかったことでしょうか。
蒔菜ルートのようなドギツさもなければ(僕はあのドギツさはあまり好きではないが、印象には残る)、
幸ルートのような静かな狂気もなく、みちるルートラストのような心がほっこりとするようなシーンもない。
無難、を地でいくようなシナリオで、もう少し何かあっても良かったのにとは感じました。


ま、でも由美子に萌えたので、最低限の満足は味わえましたよっと。




☆天音ルート A-


本作の中で、最も気に入ったルート。
ではあるのですが、手放しで褒めて良いかと聞かれると、割と難しい。


天音ルートでよかったところを挙げると、一も二もなく「エンジェリック・ハウル」(天音の回想シーン)です。
逆に言うと、「エンジェリック・ハウル」前の現代話は、やけにウェット(雄二ベッタリ)でそのうえ下品な天音に
ウンザリさせられ、お世辞にも読み口が良かったとは言えません。
下品なのとエッチなのは違うと、今すぐ天音ちゃんに言いたいです。


「エンジェリック・ハウル」における、サバイバル描写のリアリティはなるほど一読の価値があり、
(雄二なんかよりもよほど魅力のある)一姫という主人公格の少女と天音、そしてバスケット部の部員たちが織り成す
極限状況の生活は緊迫感もあり、本作の中でも読み応えのあるシーンでした。


ただ一方で、「そうは言うても、回想シーンなのよさ。現代の物語だけを抜き取ってみたら、しょうもない話なのよ?」というのも
また事実でありまして、


『天音が雄二にベッタリ→天音、辛い過去を告白【エンジェリック・ハウル】→キモいおっさんが襲ってくるけどあっさり返り討ち→エンディング』という
構造を抜き取ってみると、いかに「エンジェリック・ハウル」の部分が優れていようとも、手放しで賞賛して良いものだろうか?とも
思ってしまうのです。


【その他感想】


このゲームを一文で表すなら、『社会生活から阻害されたヒロイン達が、雄二に問題を解決してもらう話』となります。

どのシナリオでもほぼ共通なのが、『親との関係で問題を抱え、社会からも阻害されたヒロイン』という構図で、
必然的にどのヒロインにも過去回想話が重要になってきます。


何か過去に不幸があって、結果「美浜学園」に通うことになるわけなので、仕方ないといえば仕方ないのですが、
この辺の構造は少々ワンパターンだったかなと感じました。


特に、ほぼ全てのルートで、親の虐待・愛情不足の問題が関わってくる(幸の場合はすれ違いですが)のは少々不自然で、
何か意味がありそうなのですが、
天音ルートに関しては彼女の親はクローズアップされませんし、正直よくわかりません。


また、(そういう人たちは実際にもそれなりの数いるのでしょうが)、ヒロインの過去エピソードに出てくる周囲の人々が皆、ゲスいのもどうかなと。
渡る世間はゲスだらけというか、ここまで頭のおかしい人々が多いのかしら?とも。
そうなのかもしれませんが、あまり認めたくはないですねぇ……。


【総評】

5ルート中、3ルートが(大当たりではないものの)当たり。
にも関わらず、苦手なキャラクターの多さと、あまりにも冗長なテキストが災いし、どうにも点数が伸びませんでした。


大体、ここまで無駄に文章を増やすなら、
三部作などにせず、一本のソフトにまとめられなかったのでしょうか。


物語には適切な長さというものがあって、当然、長大なボリュームを費やさないと描けないテーマというものもあるでしょう。
ですが、今回の「グリザイアの果実」という物語を描くのに、ここまでのボリュームが必要だったかと聞かれると、
必要なかった。と思うのです。

グリザイアの果実 プレイ中

全く記事を書かないのもどうかと思ったので。


現在、「グリザイアの果実」というゲームをプレイ中です。
5ルート中、2ルート(蒔菜、幸)をクリアしたところ。
今のところ、中の上くらいの面白さですね。
丁寧に作られているなと思う反面、
蒔菜ルートは正直とんでもない駄シナリオだと思ったし、幸ルートは話自体は良いんだけど味付けがどうにもぎこちない。まぁ、幸ルートはそれなりに評価はしています。
この辺は、総評を書くときにきちんと触れるつもりです。
共通ルートは面白かったのに(笑)。

 
ただこのゲーム、とにかく長いんですわ。
しかも言っちゃなんだけど、無駄に長いと感じる部分もあり、なかなかクリアできません。
そんなわけで、もう少し待ってくださいませ。

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