2018年01月

リチャード・ハル「伯母殺人事件」読了(バレあり)

評価はA+

一説には「倒叙三大名作」とか言われる作品らしい。
寡聞にして初めて聞いたが、確かに名作だ、これは。

口だけは一人前のやる気なしプータローのエドワードと、厳格なウザ伯母ミルドレッドの視点で描かれる、ある殺人事件の顛末。



どこからどこまでもディスコミュニケーションの二人である。
エドワード(ヘタレ)がどうしょうもないのは言うまでもないが、ミルドレッド(厳格)ももうちょっとうまくできないものかと歯がゆい。
何もそこまでエドワードを管理しなくても、と思うし、殺人の切っ掛けを作ったのは間違いなくミルドレッドである。
僕個人はエドワード寄りの人格なのでミルドレッドに色々言いたい……。
もちろん、『あの程度』の事で何も殺さんでも……というのは当然思うわけだが、
殺すほどではないにしてもウザい事は確かだ。


しかし、この作品の真の『謎』は、『語り手』が信頼できない事だ。
エドワード視点で描かれる1~4章の記述は果たして本当なのか?
ミルドレッド視点で描かれる5章の記述は果たして本当なのか?
お互いが、都合よく自分を美化し、相手を非難しているのではなかろうか?

エドワードの父母の死も、本当に『エドワードの父母』のせいなのだろうか。
ひょっとして、遺産を奪うためにミルドレッドが仕組んだのでは? など、疑い出すとキリがない。
もしそうなら、ミルドレッドのお金は本来エドワードのものになるので、プーのエドワードを非難するのは間違いになる。
そして、今回目標を達成したミルドレッドはこれからも大手を振って、エドワードたちのお金を使えるわけだ。
……その可能性もある、と思えてしまうこの本は、やっぱり怖い。


(というか、そもそもミルドレッドもプーなのでは?)


背筋がぞっとするサイコスリラー的な事件が展開しているわけだが、その実、筆致はユーモアに溢れ、
読んでいて楽しく、笑えるものとなっている。
エドワードの『どうしょうもないヘタレなのに、どこか憎めない』様子や、
ミルドレッドの『ウザいんだけど、血管が切れるほどではない適度なウザさ』、そしてどちらの人物も
(殺人を除けば)「こういう人ってどこにでもいるよね」と思わせるリアルさ。

作者のバランス感覚が光る名作だ。


つよきす3部作やってます⑭素奈緒ルートクリア

実はこのルートをプレイしている時、僕は睡眠不足だったのね。
寝不足で疲れている状態で一気にプレイしちゃったの。
本来エロゲをやるようなコンディションではないんだけど、さりとて他の事も出来ない。
そんな時にやったルートなので、ちゃんとした感想になっているか怪しいところがあるんだけど……。


中学時代、大の仲良しだった素奈緒とレオだけど、あることが切っ掛けで疎遠になっちゃうのね。
素奈緒は、自分の主張を曲げずに『正しいものは正しい』という信念を持って突き進んでいく女の子。
そんな素奈緒だったんだけど……残念ながら、クラスで浮いちゃった。
その素奈緒の心の支えになっていたレオ君だけど、ついに素奈緒にブレーキをかけちゃうのね。
「そんなに頑張ったって報われないだろ」「大人になれよ」って。
それは、大切な素奈緒がこれ以上傷つくのを見たくないレオ君の優しさでもあったし、
レオ君自体が傷つくのを恐れてしまった部分もあるんだけど、レオの『変節』に素奈緒は逆ギレして……
見事に喧嘩別れ。


という間柄。

体育武道祭、演劇部の手伝いにレオが駆り出された事から物語は始まります。
乙女さんのナイスアシストや、演劇部内での素奈緒の振る舞いなどなど、序盤はなかなか読ませるものがありますね。
特に八景島観覧車での『偽りの仲直り』や、武道祭終了後の『フォークダンス』は良かったです。

ただ……『フォークダンス』が物語最大の見せ場で、それ以外で面白かったところは『告白』のシーンくらいかなぁ。

武道祭と『告白』の間に挟まれる無人島のエピソードはあんまし面白くなかったし、素奈緒は恋人になってもそう極端にレオとの接し方が変わるキャラクターでもないので、『レオと素奈緒の、2人のやりとり』もちょっとマンネリというか単調に感じちゃいました。

最後の、エリーとの対決は、物語メッセージ的には『テンションに流されて突っ走る』だけではなく、『心に余裕を持つ』事も大切というだけの話で、バランスの良い結論ではあるけれど……。
突っ走る素奈緒の手綱をレオがしっかりと握る、という付き合いがこれからも続いていくのかな。

素奈緒は生徒会メンバーでもなければ、対馬ファミリーでも、2-Cでもないので、どうしてもやりとりが
レオ&素奈緒の1対1が多くなってしまうのが難点でした。
一つ前に、対馬ファミリーの絆が描かれるカニルートをやってしまったのも、響いたと思います。
また、これは僕の体調も大きく影響したと思うんですが、他ルート以上に『素奈緒視点(で、村田や西崎と絡むなど)』が多かったため、どうにも『レオ君になりきってエロゲをプレイ』するなりきりプレイがしづらく、
『俯瞰した角度から物語を読み取る』シーンが多かったです。

これは、本来なら全然マイナスポイントではないのですが、今の僕は対馬レオ君になりきって学園生活を楽しみたい!というコンセプトを持って、なるべくプレイしていたので。ちょっとそれはやりにくかったかな、とは。




SーE

レオ A-
素奈緒 B

シナリオ B 
羨ましさ B+
青春度  B+

Hシーン B-


データ

    シーン回想数 3 
    レオの射精回数:6
    sex回数:3 H日数:3
    素奈緒が逝った回数:2
    

つよきす3部作やってます⑬1学期カニルートクリア

癒される……癒されるんじゃあ……

対馬ファミリー最高!と言えるルートで、カニはもちろん、スバルもフカヒレも本当に最高。

6月20日、カニと二人三脚に出場することに決まり、館長の『縄』で身体を縛る。
この辺は漫画的お約束ですよね。ここから仲が急速に深まっていきます。
6月25日、烏賊島の肝試しでカニと初キス。
7月1日の体育武道祭でのキス2回目まで、本当に甘酸っぱい感じで楽しい。
どう見ても相思相愛なんだけど、『付き合う』ところまでは行っていない、
そんな甘酸っぱさがたまらない。
好き好き大好きバカップルもいいけど、僕はこういう関係確定前の、お互いを意識し合うような
雰囲気が最高に好きですね。


7月5日に、スバルからカニが好きだと伝えられ、その後カニを遠ざけてしまうレオ。
これも解るよなぁ。
スバル、イケメンすぎるし。
まぁ、『誰を選ぶかはカニが決める事』なんだから『身を引く』必要は全くないんですけど、
それでもレオの気持ちはわかる。
レオの態度に傷つくカニの描写も含めて、『青春してるなぁ』って感じ。

7月20日、スバルとの激突を経て、ついにカニとカップルに。
その後、7月25日のスバルとの別れシーンも良い感じだし、この物語のもう一人の主役はスバルですよね。

それに、この対馬ファミリー内での恋愛からは距離を置くフカヒレも、レオの相談に乗るなど、
レオの支えになってくれたと思います。
フカヒレもいい奴だ、うん。薬ネタはドン引きしたけど。


まぁ、その後はひたすらカニといちゃつくだけなんで、大した事もないんですけど、
デレモードのカニはほんとかわいいですね。普段とは大違い(?)だ。
後は、このデレモードをコンパクトにしてくれたのも良かったかも。

あくまでも『物語』としては、7月25日のスバルとの別れで終わった方がむしろスッキリする感じで、
その後のカニとのイチャツキは(カニとのイチャツキ自体は素晴らしいものなんですが)、オマケというか後日談的なところがあるので。
長々やられたら、スバルがくれた感動が台無しになるところだけど、ダレる前にスパッと切った(それでいてバカップルシーンはいくつか堪能できる)のは良かったと思う。
ラストもいいしね。

対馬ファミリーよ、永遠なれ!




SーE

レオ A-
カニ A-

シナリオ B+ 
羨ましさ A
青春度  B+

Hシーン B


データ 
    シーン回想数 4
    レオの射精回数10+4
    sex回数:3 H日数:4
    




総合満足度 B+

つよきす3部作やってます⑫ よっぴールートクリア

あのさぁ……。
何が書きたかったの? このルート。真面目によくわかんないんだけど。


6月15日に、よっぴーと一緒にロッカールームで閉じ込められるシーンがピークだったね。
ここはエロい。真面目にこういうシチュはエロい。
できればここでもっと大胆にお触りHしてほしかったけど、それはいいんだ。

6月16日、あまりにもエロい気分になりすぎて学校を休んだ(!)よっぴーをお見舞いに来て、
そのままH! H! めくるめくH!!


そしてそのままいつのまにかカレカノに……。あれ、なんで……? どして……?
Hする=恋人になる、なの? よくわかんね。まぁいいや。
とにかく付き合うことに。

よっぴーは「自分がエロすぎる事」に悩んでるとか。
そんなの全然気にする事ないよ!と男らしさを見せるレオ。


翌日から、レオを束縛しまくり、他の女とちょっとでも話すとやきもちを焼きまくるよっぴー。
本人が気にしている「エロすぎる」事はどうでもいいが、この拘束癖はヤバいよ。息苦しい。
俺ならソッコー別れるんだが、我らがレオ君は大らかなのか抜けてるのか、そのまま付き合うことに。


で、いちいちよっぴーが「他の女と話さないで!」とか「これじゃ幸せになれない!」とかヒスを起こすわけです。
ついに7月2日、よっぴーは謎の桃色頭脳で「エリーと3Pをすれば、レオ君もエリーを見なくなるかも」と考え、エリーを罠に誘い込みます。


選択肢 エリーと3P
    よっぴーを叱る


「よっぴーを叱る」と、エリーと3Pはできません。うーん、残念。
でも一応こっちが正規ルートです。

自己嫌悪に陥ったよっぴーは、レオ君の前で謎の放尿プレイをして、嫌われようとしますが
雨の中追いかけてきたレオ君に抱かれてハッピーエンド(???)。


あのさぁ……普通この程度で消える程、よっぴーの心の闇はおめでたくないだろ……。
よっぴーの心を治療するには年単位かかると思うし、付き合って2週間で解決できるようなもんではないです。


多分この後もよっぴーは毎日ヒスを起こすし、レオ君もいつか耐え切れなくなって逃げちゃうと思うぞ。それぐらいヤバいテーマだし、そもそもライターが真剣にこのテーマに向き合っているようには思えないのよ。

もし真剣に「親の虐待が、子供に与える精神ダメージ」というテーマを描きたいなら、
「姉に虐待されたトラウマ」を発動させるフカヒレを、あんなふうに茶化して書くか?って話で。
だってあれ、全然笑えないでしょ? 笑える?


で、だ。エリーとの3Pルート。
ハッキリ言えば、こっちの方が幾分かマシだと思う。
真っ当なレオ君と違って、ぶっ飛んだエリーの方が、よっぴーの問題を扱うのには向いてると思う。
よっぴーの悩みなんて小さいもんだと、エリーが教え続けてあげることで、よっぴーは救われるんじゃないかと思った。
レオ君に任せるより、こっちの方が確実だよ。


レオ君とよっぴーの純愛エンドなら、よっぴーの「心の闇」を最小限度にしか描いていない、エリールートからの派生(聖域の崩壊ルート)の方が出来も良いと思う。


とにかく、よっぴー正規ルートは中途半端。
「トラウマ問題」についても、真面目に描きたいのか、茶化したいのかがわからない。
こういうのを書くな、とは言わない。ただ、書くならもう少し真面目に書いてほしいと思った。




SーE

レオ B
よっぴー D
(エリー A-)

シナリオ D 「3Pルート」 C
羨ましさ E 
青春度 C

Hシーン C


データ
    シーン回想数3+1(エリー3Pルート)
    レオの射精回数:7+1(3P)+30(!?)
    sex回数:2+1(エリーとの3P)+7回 H日数:4+7日(多分毎日)
    よっぴーの逝った回数:わからんw




総合満足度 D-

アンソロジー「翠迷宮」を読みました。

全体の評価はB。

ベストは乃南アサの「指定席」。繊細な男の、静かでありながら心温まる交流が描かれる前半から打って変わって、中盤からはカミュ「異邦人」の様相を呈し、ラスト一発でホラーへと化ける力作。
A+

森真沙子「黄昏のオー・ソレ・ミオ」は傍迷惑極まりない老夫婦の物語だが、夫に向ける老妻の優しさが、(他人からは極めて迷惑だが)暖かく読後感は良い。A-

新津きよみ「捨てられない秘密」も女性の親友同士の「親密さの中になんだかジメジメした微妙な何か」があり、ホラーとしても面白い。B+。

ホラー色の強い作品には雨宮町子の「翳り」もあり、こちらは直球。これはこれで楽しめた。B+。

春口裕子「カラオケボックス」は、いつまでもぶらぶらしてないで社会に出ろよ!とフリーターが説教されるその前で、会社員が上司から執拗なパワハラを受け続けるような救いのない話で、よくもまぁここまで不愉快な話を書けたもんだと別の意味で感心した。僕は嫌いなタイプの作品だが、下手ではない。が、読んでて死にたくなった。 C+。

その直前の海月ルイ「還幸祭」はキチガイ姑にいびられる嫁の話で、連続で読むと殺傷力が高く、メンタルが弱い僕のような人間は注意すべし。こんなのもできれば読みたくねぇ。B-。
一応「おもひでぽろぽろ」的な、故郷に帰ってきた女性の再生というか、自立した強さみたいなものが描かれてる作品なんだが、アンソロジーの順番が件の「カラオケボックス」の隣なのはキツすぎた。


藤村いずみの「美しき遺産相続人」は、面白いもののちょっとやりすぎと思われるところもあった。
特にラストの一文は要らないのでは? B

皆川博子の「鏡の国への招待」は上品かつ上質な心理ミステリで面白い。ただ、ちょっと主人公の女性心理が複雑で、僕にはよくわからない部分もあった。 A-

五条瑛の「神の影」はイスラムの物語で、新鮮味があった。B+

正直良さがわからなかったのが光原百合の「わが麗しのきみよ……」で、なんだか古くさい海外ミステリの二次創作のような感じを受けた(が、ネットでは評判が良いようだ)。このアンソロジー内では唯一、ガチガチの古典的ミステリ臭がするからその筋の人が好んだのだろうか。ミス研の雰囲気は良かったが。C+。

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