2019年01月

シャーロット・アームストロング「毒薬の小壜」(重バレあり)

悪意なく人を押しつぶす「死神=固定観念」と、それを打破する6人の仲間

本の裏にある紹介に『心暖まるサスペンス』とあります。
僕は癒しを求めているので、その紹介に飛びついたわけですがこれがなかなかの劇薬で、精神的にしんどい読書にw
とはいえ、名作だと思います。

主人公は55歳の童貞男ケネス君。すっごくいい奴だけど、今まで女性に縁がありませんでした。
彼は32歳の貧乏な女性ローズマリーと出会います。彼はローズマリーを金銭的に助け、無事結婚!
しかし、幸せは長く続きません。

ローズマリーの起こした事故によりケネスは足に怪我を負います。
そこでこの二人の生活を助けるためにやってきたのが、ケネスの妹である『死神』エセルです。

「自分が正しい」、「あなたたちはわかっていない」とマウントを取る性格で、
二人の家に住み着き、新婚生活を仕切り出してしまいます。

事故に遭ったのはローズマリーがケネスを殺したかったからでは?
だって23歳も年下のローズマリーが、財産以外でケネスと結婚するわけないじゃん。
結婚して財産ゲットしたら、ケネスが死んでくれた方がいいに決まってる。
隣に独身(バツイチ)イケメンの男性が暮らしているし、ローズマリーはそっちを狙っているのでは?
すごく仲が良さそうよ。
でも大丈夫、兄さん(ケネス)は私、エセルが守ってあげるからね!
えっ、ローズマリーはそんな娘じゃない? 兄さんは何もわかっていないのね。
世間ではこんな事件はザラにあるわ。
ローズマリーが兄さんと結婚したのはまさか自分の魅力によるものだと思うの?
だって55歳まで童貞だった兄さんなのよ? お金目当てに決まってるじゃない。
お金をゲットしたら、次は楽しみたくなるに決まってる。
離婚を考えているか、もっと酷ければ兄さんを殺すかもね。
でも大丈夫よ、私だけはちゃんとそういうの解ってるから。

いやぁぁぁぁ、こいっつ読んでてほんっとつらいわ!! 

僕の親戚に、こういう人いるんですよ……。
僕、その人の前だと自分が無力な幼稚園児になった気がするんです。
対等な立場というのが初めから望めず、「正論を言う親戚(エセル)」と「わがままを言う僕」という構図に何故かいつの間にかなっているんです。
僕(他人)がどう感じるかとかには興味がないのかなんなのかは知りませんが、僕はこの人とは、『邪悪だとは思わないけど、なるべく顔を合わせたくない』です。
というわけで癒されるどころか読んでいてしんどいですw 
全然癒されねぇ~……。

そして哀れケネス君はエセルの言う事に『洗脳』されて、遂に自殺未遂を起こしてしまいます。

しかしそこで、ケネス君は毒薬をうっかりバスに置いてきてしまう……。
消えた毒薬を求めて、たまたまそこに乗り合わせたバスの運転手、女性看護師、金持ち老婦人、画家+主人公・ローズマリー・ポール(隣の家のイケメン)・ジニー(ポールの娘)などが集結。
団結して毒薬の探索を行うとともに、世の中そんな捨てたものじゃないということ。
ケネスとローズマリーにかけられた、エセルの『洗脳』をみんなが解いていくのです。
ケネスとローズマリーは心底、愛し合っていたのです。
それを惑わし、揺るがしたのはエセルの『自信に満ちた憶測』でした。
他にも運転手のリーと看護師のヴァージニアがこの一件で結ばれるエピソードがあるなど、なかなか心暖まる良い物語になっております。

[引用本文]
「なぜ人間は、誰かがいる場所に行きたがるのでしょう。それは、その誰かの見かけがいいからというだけでは説明できません。その誰かが若いからというだけでも説明がつきません。
何よりも大切な事は、どれだけの楽しみを共にするかってことです。お互いに一緒にいる事を楽しむという、それだけの事を言いたいんです。なぜみんなはこれはすてきなことだって言わないんでしょう。これはすてきなんです。とてもすてきなんです。世界中で一番すてきなことなんです」

ネット社会の今、ネガティブな情報は世の中に沢山存在しています。
テレビのニュースでも、新聞でも悲惨な話を次々と聞きます。
口さがない友人・隣人の口から聞かされることもあるかもしれません。

そういう『ネガティブな一般常識』に惑わされ、心を病んでしまう事のないように。
世界の『暗いところ』『悪いところ』だけに行きがちな目を、明るい方向へ見開けるように。

僕自身、周囲の『ネガティブな一般常識』に押しつぶされ、悲観的な気持ちになりがちだからこそ、
もっと明るく、もっと希望を信じて生きていきたいと思いました。

レイ・ブラッドベリ「刺青の男」の対談、公開しました

「雑記帳」の管理人で、エロゲー批評空間(submoon01名義)シミルボンでも活動をなさっている
仔月さんと、ブラッドベリ『刺青の男』の対談を行ないました。

全5回程度のボリュームになると思います。 
全7回ぐらいにはなりそうですね。
全6回じゃねぇか!! 予想外れすぎ……。

第1回 12/8公開

第2回 12/15公開

第3回 12/22公開

第4回 12/30公開

第5回 1/5公開

第6回(最終回) 1/12公開

興味・お時間のある方は是非!

NBA ここまでの雑感(西地区)

現在NBAは約半分の日程を消化。PO争いも少しずつ見えてきました。
そこで各チームの印象を雑~に書きたいと思います。
東も書こうかと思ったけど、西の方が興味があるし、西の記事だけで疲れてしまったので東は書くかどうか未定で!


☆西地区

超・激戦&超混戦区。
絶対王者ウォリアーズがやや苦戦(とはいえ2位だけど)、シーズン前対抗と目されたロケッツとジャズは期待を大きく裏切り、特にジャズに至っては開幕前対抗に挙げたのが恥ずかしく思えるほど。去年ベスト4のペリカンズも低迷し、そんな中、去年全然ダメだったキングスやマーベリックスが健闘を見せる。
一人最下位に沈むサンズを除いて14チームにPO進出の可能性がある、史上稀に見る(と観戦歴3年の俺が言っていいんかな?)激戦が展開されているのが西地区だ。


〇プレーオフ安全ライン

ゴールデンステイト・ウォリアーズ
デンバー・ナゲッツ

現在まさかの首位を走るのがナゲッツ。ヨキッチを中心としたややスローテンポなバスケだが、怪我人がこれだけいるにも関わらず首位を走る強さは本物。

そしてもちろんウォリアーズ。
グリーンとデュラントの確執や、例年に比べ上がらない勝率など『無敵感』はやや薄れてきてはいるが、天才児カリーのゲームメイクに安定感抜群のデュラント、たまに大爆発するクレイ・トンプソンと3人のハイスコアリングマシンを擁し、グリーン、イグダーラ、リビングストンとサポーティングキャストもバッチリ。このチームがPO進出を逃すとは考えづらい。

〇プレーオフ有力ライン

オクラホマシティ・サンダー
サンアントニオ・スパーズ
ロサンゼルス・レイカーズ
ヒューストン・ロケッツ


この中でチームの総合力が最も高いと感じるのはサンダーだ。
去年まではウェストブルックのワンマンチーム+アダムスだったが、今年はポール・ジョージがウェストブルックを押しのけてファースト・オプションになるほどの存在感を発揮。
脇役に回った時の方が輝くウェストブルック(たまにエゴを出して自滅するが……)、古典的センターではリーグ屈指のアダムスと、『BIG3』は揃っている。
セカンドユニットもシュルーダーの獲得で層に厚みが生まれてきた。戦力的にはかなり高いレベルと観て良い。

ではなぜこのPO安全ラインではないのか?というと、懸念点はスケジュールの問題である。
現時点で25勝16敗の3位と一件文句のない成績だが、PO圏外の9位ジャズ21勝21敗とは5敗差分しか差はなく、まだまだ安心とは言い難い。
そしてサンダーのスケジュールを見ると、『確実に勝利が計算できる弱小5(勝手に命名。ファンの方すみません)』サンズ、ブルズ、ニックス、ホークス、キャバリアーズとの対戦を既にほぼ全て済ませてしまっているのだ(あと2試合のみ)。
これが、たとえばユタ・ジャズはこの5チームとの対戦を9試合も残していたりする。
現在の順位は、弱い相手に恵まれた結果かもしれないのだ。


レイカーズは結局レブロン次第だろう。
故障欠場のほぼないレブロンがいる限り、最後のところでPOにきっちり滑り込んでくるはずだ。
ロンドのゲームメイクや、タイソン・チャンドラ―マギーのセンター。
クーズマ、ボール、イングラムの若手たちに曲者スティーブンソンなど、
多士済々の個性派集団が繰り出すアップテンポで攻撃的なバスケは、観ていて楽しく、好きなチームの1つだ。

昨シーズン、王者ウォリアーズを土俵際まで追い詰め、『事実上のファイナル』を演じたロケッツは
移籍マーケットでの動きに失敗し、戦力は確実にダウンした。
故障がちのエース、クリス・ポールに高年俸を払った結果しわ寄せが来ており、
既存戦力でもジェラルド・グリーンあたりからは去年の輝きを感じられない。
そんな逆境を、1月現在、1人で勝たせているのが髭の悪魔ジェームズ・ハーデンだ。
しかし、いくらハーデンが凄くとも、ハーデン1人(+カペラ)のワンマンチームでは、せいぜいのところ去年のサンダー止まり。高年俸に見合ったクリス・ポールの活躍や、ゴードンあたりの更なる奮起も期待したい。

ジノビリ、パーカーと一時代を築いた名選手たちと袂を分かち、新時代を担うはずだったレナードも喧嘩別れのように放出したスパーズ。
それでも、新エースのデローザンオルドリッジを中心に、ベルターンスパートルといった若手たちを活躍させる名将ポポビッチの類まれなる手腕には脱帽させられる。
このチームの真の強みは監督だろう。
レブロンが何とかしてくれるレイカーズ、ハーデンが何とかしてくれるロケッツ、ポポビッチが何とかしてくれるスパーズ。この3チームは結局、何とかPOには入るものと思われる。


☆プレーオフギリギリライン(上位)

ポートランド・トレイルブレイザーズ
ロサンゼルス・クリッパーズ
ユタ・ジャズ


開幕前の高い評価は何だったのか。
9位に低迷するジャズと、ほぼノーマークから突如として5位に躍り出ているクリッパーズ。

昨シーズンと戦力は変わらないものの、ルビオやミッチェル、ゴベアからイマイチ『躍動感』が感じられないジャズは、ここまで9位と苦戦中。とはいえ、腐っても『開幕前No2候補』。
スケジュール的に厳しかったのは事実で、ここから巻き返す可能性はある。

昨シーズン10位のクリッパーズは、表のエースハリスとセカンドユニットのエース、ルー・ウィリアムズが存在する異色のチーム。
長距離砲のガリナーリやハッスルプレイが魅力のハレルなどが驚きを演出し、超スーパースターがいない代わりに、ベンチメンバーが出ても戦力が落ちない面白いチームとなっている。
そんなチームが5位ということでてっきりスケジュールに恵まれたのか?と日程を見ても、案外そうでもない。前述した『弱小5チーム』との試合を8試合も残しているし、意外とこのままPOに入ってきそうな予感も。

期待外れのジャズと期待以上のクリッパーズ。そして、『期待どおり』なのがブレイザーズだ。
戦力も変わらず、成績も、やっているバスケもおおよそ変わらない印象のブレイザーズは、
POの常連チームでもある。
だとするならば今年も例年通りPOに進出するという予想も成り立つが、いやいや待っていただきたい。

ウォリアーズ、ナゲッツ、サンダー、ロケッツ、スパーズ、レイカーズの6チームを当確とするならば、
ジャズ、クリッパーズ、ブレイザーズのうち1チームはPOに出られないのである。
となると……?? 
やはり、今年の西地区は大激戦区。全く予想がつかず、これからの展開が非常に楽しみだ。


☆プレーオフギリギリライン(下位)

ダラス・マーベリックス
サクラメント・キングス
メンフィス・グリズリーズ
ニューオーリンズ・ペリカンズ
ミネソタ・ティンバーウルブズ

現在14位のマーベリックスですら19勝22敗。
8位のレイカーズ23勝19敗とはわずか負け数が3つで、数字上は全くどこが来てもおかしくない。
それでも敢えてこの5チームを下に選んだのは、
『戦力面での不安』・『去年までの実績』・『現在の順位』の3つを重ね合わせた結果だ。

10位キングス、11位ウルブス(21敗。9位のジャズも21敗で同じ)、
12位ペリカンズ、13位グリズリーズ、14位マーベリックスが22敗。
このような混戦では『現在の順位』にさほど意味はないのだが、戦力を見れば(クリッパーズを除き)やっぱり10~14位はこのチーム達だよな、という顔ぶれなのである。
とはいえ、この5チームに対する印象はやはり大きく異なる。


ペリカンズは去年の西地区ベスト4。
期待されていたはずのシーズンだったが、司令塔ロンドやカズンズの放出など、どうもフロントにやる気があるように見えない。
怪物アンソニー・デイビスを擁しているのだから、もっとやる気を見せても良いと思うのだが。
そして何より(?)rakutenTVで全く放送がないw 
データを見る限り西地区最高の得点力を擁しており、失点もガバガバである。
去年は副官ホリデーやシューターのミロティッチが補佐していたが、今年はどうなっているのだろうか?

キングスのスタイル変更には驚かされた。
去年までのキングスといったら、グリズリーズOBの会のようなメンバーで、グリズリーズのようなスローテンポなバスケをやっていたような気がする。
ところが今年は若手主体のラン&ガンで凄まじい爆発力を発揮。
フォックスコーリー・スタインらが活き活きと躍動する楽しいバスケを展開している。
ただ、このチームは本当に若い。
その上、チーム自体は10年以上PO進出ナシと、『勝ちの味を知らない』チームである。
勢いのあるうちは良いが、勢いが止まったら案外脆そうだと予想。とはいえ、好きなチームの1つだ。

オフの補強に成功したのがマーベリックスだ。
去年まではハリソン・バーンズが1人で頑張っているようなイメージを持っていたが、
そこに今年の最優秀若手選手ほぼ確定のドンチッチと、屈指のセンター、デアンドレ・ジョーダンを加え、確固たる3本の柱ができた。
ベテラン、バレアのゲームメイクも良い。
しかしこのチームはあまりにもアウェイで弱すぎるし、序盤の日程にも恵まれ、『弱小5』との試合は4試合しか残していない(そもそも弱小5との試合だって、アウェイでは勝てない気がする)。
そうは言っても、開幕前全く期待していなかったチームだけに、彼らのここまでの活躍はリーグを面白くしてくれている。

ジミー・バトラーのトレードでゴタゴタしていたウルブズは、
シーズンが始まっても突如シボドーHCを解雇するなど迷走が止まらない感じ。
涙の50ゴール復活のローズや、ウィギンズ&タウンズ、ティーグなど戦力はむしろキングスやブレイザーズあたりにも引けを取らない気がするが、どうもチームとしての一体感に欠ける印象だ。

最後に、日本人プレイヤー渡邊効果でrakutenTVで全試合放送(ただし英語実況)のグリズリーズ。
渡邊選手は大いに応援したいところだが、チーム自体の魅力は?というと難しいところ。
スローテンポなバスケで、得点29位、失点(の少なさ)は1位と、
まさにロースコアの粘りがウリのチームで、玄人ファンには良いかもしれないが、
ミーハーニワカファンの僕から観るとアクビが出てしまう。
司令塔コンリーとセンターのマルク・ガソルのベテラン2人に頼りがちで、3ポイントも打てるルーキーのジャクソンJrも好印象だが、いかんせん攻撃の駒が足りなすぎる。
むしろよく13位(19勝22敗)にいるなという印象だが、ここから上昇気流に乗る材料は乏しい。
僕が購読している『ダンクシュート』誌(2月号)では妙に高評価されているようなのだけど、どうなんだろ(さすがに、コンリー&マックのコンビが、カリー&リビングストンより高評価なのはおかしいと思うが、そういうおかしさを楽しむのも好き)。


☆プレーオフ絶望ライン

フェニックス・サンズ

普段なら一緒にドアマットを担ってくれるお仲間が他に何チームもいるのに、底辺仲間だったキングスやマーベリックスが健闘している中、一人取り残されたサンズについては触れるのも可哀そうな感じである……。来シーズンの躍進に期待したい。











キラキラやってます③ きらりルート1&2クリアあらすじ&感想(バレあり)

・きらりルート1(ハピマニエンド)、きらりルート2(きらり生存エンド)



☆きらりルート

きらりルートは、きらりの就職記念で寿司を食べるシーンから分岐します。
ここできらりの『曖昧な誤魔化し』をそのまま受け入れるとルート1に、
『追及して椎野家に上がり込むと』ルート2に分かれます。
が、実際にはそこまで選んできた選択肢で物語が分かれます。
そもそも初回はルート1にしか行けなかったはず。


そこまでの物語は、きらりと鹿之助がイチャイチャしているだけです
(が、30分程度の内容なので、イチャラブ感はありません。
この作品にイチャラブを求める人もいないとは思いますが)。
ところが、急にきらりと連絡が取れなくなって、会いに行くと『別れよう』ときらりが言い出す。
何かを隠している様子のきらり。就職が決まって、働き始めるというきらり。
というのが序盤の展開です。


☆きらりルート1あらすじ

夜中に電話がかかってきて、椎野家に火事が起きたと聞かされた鹿之助。
うつ病を患うきらりパパが一家心中を図り、家族を助けようとしたきらりが一人、亡くなってしまう。

そして5年後。
鹿之助は進学も就職もせず、独り暮らしでフリーターをしながら『ハッピーサイクルマニア』という
バンドを続けています。傍らには悪友の村上。
そして、かつて第二文芸部が行なった大阪ツアーで出会ったアキがボーカルとして、ハピマニに参加。
しかし、世の中は世知辛く貧乏バンドの生活は非常に苦しく、ライブを行なっても収支は赤字。
バンド仲間は抜け、解散するバンドは多く、【真っ当な社会人】に、もっと酷くなると闇社会へと堕ちていく。
そんな極貧バンドマン生活で身体を壊した鹿之助は、病院に運ばれ、一時実家へと帰る。
バンドを辞めて、『他人が喜ぶ人生を歩むべきか』真剣に悩んだ鹿之助。
家族の暖かさに触れ、きらりの幻影に諭され、そして……。鹿之助は決心する。
やはり、『自分がやりたい事をやるべき』だ、と。

鹿之助はバンド生活を選ぶ。
社会からドロップアウトしようがなんだろうが、瞬間に生きるパンクロッカーとして。

ここまでの5年間、きらりの幻影に囚われたまま、鹿之助はバンド生活を続けてきた。
でもこれからはそうじゃない。きらりを吹っ切り、思い出として消化した上で、
鹿之助は『やりたい事を見つけた』のだ。


☆きらりルート2 あらすじ

椎野家に無理やり上がり込んだ鹿之助は、『きらりが風俗で働くこと』を聞かされる。
椎野家の緊迫した経済状況が、そうさせたのだ。
だが、よくよく聞いてみると、『自己破産』や『生活保護』といった手段に頼る事もできるのに、
きらりパパがそれを望まないというのだ。

きらりパパはかつては優秀な技術者だったが、事業を起こし独立するタイミングでうつ病を患った。
それでも何とか妻(きらりママ)がパートなどをして、やりくりしていたのだが、
去年(つまり物語が始まる前の年)から悪質な債権回収業者に売られ、恐ろしい状況になってしまったのだった。
きらりパパを問い詰める鹿之助だったが、きらりパパは酒に酔い、話にならない状態であったが、
ふと『きらりをさらってくれないか。そうすれば一人だけは助かる』と鹿之助に告げるのだった。

きらりが風俗の面接を受ける前日、鹿之助ときらりは最後のデートをする。
そして朝帰りをし、家に戻るきらりと鹿之助は悲しい別れを迎えるのだった。

ところが、その様子を見ていたきらりパパが、
『自分の不幸にきらりを巻き込むのは良くない』と遅ればせながら気づき、自殺未遂をしてしまう。
これはきらりルート1の『一家心中』とは違う。
鹿之助との交流があっても、きらりパパは『まともに生きる』という形での更生はできなかった。
しかし、『自分の不幸に家族を巻き込む無理心中』ではなく、『一人での自殺』を選んだ。
個人的には、この差は大きいと思う。

きらりパパの自殺をある種見過ごし、きらりパパが死ぬに任せた『罪』を背負った鹿之助。
公的扶助に反対していたパパの死により、遅ればせながら援助を受けられるようになった椎野家は何とか経済的に持ち直す事ができた。
しかし、パパを見殺しにした鹿之助は罪の意識に悩み、きらりを避けるようになっていった。

時が過ぎ、正月の夜、ついに鹿之助はきらりに『罪』を『告解』する。
それを聞いたきらりは、『OLとして普通に暮らす』のではなく、『歌を歌い続ける未来』を選んだ。

3年後、大学生になった鹿之助は就職活動を行なっていた。
恋人のきらりの練習に付き合ったりもしているが、『まともな』人生を歩む鹿之助であった。


☆きらりルート 評価


鹿之助 A(1) A-(2)
きらり A+(共通)
シナリオ A+(1) A-(2)
羨ましさ B(1) A(2)
青春度 B+(ある意味S:1) A(2)
Hシーン C+


☆きらりルート1 感想

このゲーム中最もヘヴィなルート。
追い続けていた時はキラキラと輝いていた夢。
それに妄執として囚われ、ギラギラと命をすり減らしながら亡者のようにバンドを続ける鹿之助。
それでもラスト、色々と吹っ切れて改めてバンド活動に向かう鹿之助の姿は、ある種輝いています。
『ある意味羨ましく』(S)、『ある意味あぁはなりたくない』(E)、そんな両極端な印象を抱かせるこのルートの羨ましさは、間をとってBにしました。
しかし、これは平凡なBではありません。

こんな人生も、一度は歩んでみたかったような。
それでも、こんな人生に飛び込むのは恐ろしいような。
僕には勇気が足りずに飛び込めないけれど、基本的に社会不適合者な僕としては、憧れもないわけじゃない。

他ルートの鹿之助はヒロインとの未来を迎えるべく、堅実な人生を送ろうとしています。
けれど、このルートの鹿之助だけは違います。
きらりに囚われ続けてバンドをやっていた鹿之助ですが、それを吹っ切った今、
ある意味、本当に鹿之助が鹿之助として生きる人生は、このルートのみなのかも

青春度は、千絵姉曰く『永遠の青春時代を、鹿之助は生きている』という事ですが、
少なくとも僕が憧れたい青春とは違うw 青臭い、という意味では青春全開ではあるのですが、
青春というよりもこれは『オトナになれなかった、オトナ』の物語。
言い方を変えれば、社会に適合できなかった人間の物語。

貧困の中に生まれ、いつも人々を照らし続け、そして椎野一家の不幸を一身に受けて死んでいったきらりは、さながら天使・聖女のようで、さすがはメインヒロイン


まぁ、色々と胸に刺さるものはありますね。読んでいて身につまされ、非常にしんどかったです。
でも、しんどいだけではない、祝福もまたこのルートにはあると思います。

あと、アキちゃん攻略したかったー!


☆きらりルート2

こちらはこちらでヘヴィなルートなのですが、『1』に比べると『優しい世界』。
その優しい世界をつかみ取ったのは、紛れもなく『手を汚した鹿之助』にある……んですけど、
そもそもきらりパパを殺したのは鹿之助なのかな?という疑問はあります。
『邪念が生じて、助けを呼びに行くのが遅れた』のは確かだけど、ちゃんと(?)助けを呼んでいるし、仕方ないんじゃない? 
まぁ、実際に仕方ないかどうかが問題なのではなく、鹿之助の『罪の意識』が問題になるわけですが。

きらりパパに関しては、個人的には『更生の可能性はあった』と思います。
一家心中ではなく、一人で自殺しようとしているこちらのルートの彼ならば、『生活保護』や『自己破産』をもう少しまともに考える事もできたかもしれません。


【脱線】

まぁとにかく、公的扶助は使えるなら使った方が良いです。
よく生活保護受給者を叩く人とか、どうしょうもなくなった人に対してまで自己責任論を唱える人とかもいますけど、あれなんて半分人殺しみたいなものですよ。
そういう蔑視を気にして生活保護を受けずに、不幸から抜け出せない人は沢山いると思います。
心が弱いけど本当に制度を必要としている人を委縮させるような空気を作り出すのは良くないですよ。

日本社会には、「家族の事は家族内で解決するので、家族の中では甘えても、公的機関には甘えない」みたいな悪弊があると思うんです。
老々介護の問題とかもそうですけど、無理ですって。家族の中だけで解決できない事なんていくらでもありますよ。共倒れになりますって。
そんな時のための、公的援助だし、もっといえば個人(家族)の力ではどうしょうもない、そういう時のための『国・自治体』だと思うんですわ。
そういう意味でも、『妻や娘(きらり母やきらり)には甘えるけど、公的扶助には甘えない』きらりパパってのは、悪い意味で『(うつ病になった)真面目な日本人』そのものだなって思いました。

もちろん、自立して生きていくのは立派な事です。素晴らしいことです。
でも、それが当たり前にできなくなってしまった人も、劣等感を強く抱くことなく、胸を張って生きていける世の中になってほしいと思います。
どうせなら皆が幸福なのが一番いいじゃないですかw 

心に余裕がなくなると犯罪だって増えるでしょうし、犯罪まで行かなくても苛々してすぐに怒鳴り散らしたりするような人が多かったら、こっちまで気分が悪いじゃないですか。
他人が不幸になると、巡り巡って自分も不幸になると思うんです。

うつ病は恐ろしい病気です。
僕も(うつ病ではないはずですが)、心の病に罹った経験があります。
まぁ僕はきらりパパほど真面目な人間ではないので、「ヤバい!」と感じたら早めに休むし、
しょっちゅう他人に愚痴ってストレス発散するダメ人間なので、うつ病になるほど重症化はしなかったけど……。

笑顔で冗談を言いながら、内心は絶望で真っ黒だったり。
元気そうに見えるけれど、実際には吐いていたり、そういう事って結構ありました。
朝起きた瞬間から、徹夜で受験勉強した後のような疲労感が頭にあって、
ちょっとでも文字を見ると気持ち悪くなったりね……。いや、あの時期は本当にヤバかった。
周囲には解らないんですよね。言っても信じてもらえない。
「テレビの前で1時間座って番組を見ると気持ち悪くなる」のに、「数時間道を歩いても平気」なんです。
経験のない方は理解できないと思います。自分だって理解できないけど、実体験しました(苦笑)。

体の怪我は目に見えるから、足を骨折して松葉杖を突いていれば周囲の人が親切にしてくれるけど、心の病気はそうはいかない。
松葉杖の時より、何十倍もしんどいんですけどね。
周囲の無理解には結構苦しみました。
まぁ自分でも自分の症状が理解できないからね、他人が理解できないのは当然だよね。
でもだからこそ、親切な人の暖かさはとてもありがたく、文字どおり日々の支えにもなります
75%の人が完治するらしいので(25%の人は完治しないらしい……怖すぎ)
完治したら恩返ししなきゃ。

きらりパパにも(家族以外に)そんな相手がいれば、違ったのかもしれません。


【脱線終わり】


だから、鹿之助がとった対応は『きらり』に対しては正解かもしれないけど、
『きらりパパ』には酷だなぁと思いながら読んでいました。
鹿之助にとってきらりは『身内』でもきらりパパは『他人』。だから、あぁいう対応になるのは解る。
でも僕がきらりパパだったら、多分鹿之助にキレて家を追い出してますね。
そんな元気すらなかったのかな、きらりパパには。

『家族以外で、親身になってくれる人がいれば』きらりパパは立ち直れたかもしれない。
鹿之助にそこまでを求めるのは酷ではありますが。
そういう意味で、最後のあの自殺も『きらりパパ』が『世間の人が自分を受け入れてくれるかどうか』を試したのかもしれないなぁとは思いました。

ま、きらりパパの事はいいやw 
多分誰もきらりパパの事を擁護しないと思うから、敢えて肩を持つように書いたけど、
「いいから素直に自己破産しろや! 生活保護受けろや!」って思うし、
なんでそうしないんだかマジで解らない
。僕が同じ立場なら受ける。

そんなわけで、きらりパパを殺した『罪の意識』を鹿之助がきらりに『告白』をし、
きらりがそれを赦して終わります。
その後は結構あっけなかったですね。

3年後、皆で集まって同窓会なシーンは結構良かったけど、逆に言うと見せ場はそれぐらい。
きらりと鹿之助がどんな付き合いをしているのかもほとんど描かれていないし、
その辺はもう少し書いてくれても良いのになぁと思いました。


ドストエフスキーの「罪と罰」を下敷きにしているそうなのですが、「罪と罰」を読んでいないので解りません。
ただまぁ、『罪の意識』と『告解』の作用や、貧困に喘ぐ光なき世界で皆を照らしたきらり(天使)あたりは、確かにキリスト教を連想するところはありました。




さーて、しんどいところ(個別ルート)は読み終えたので、共通ルートをマッタリ楽しみます。
普通とは順番が逆だけど、まぁそこは再読なので気にしないw

読書ランキング2018

というわけで、2018年に読んだ小説、ベスト10を発表しますー。

2017年11月から、『ミステリのオールタイムベストを片っ端から読んでみる』という“一人ミステリ祭り”を開催しているため、【ミステリ】だらけのランキングになっております。
この“祭り”は来年の春頃まで続く予定でして、その後はまた“雑食”に戻るはずでございます。

ちなみに、2018年に読んだ小説は122冊でした
(上下巻は2冊でカウント)。

普段の年は平均100冊前後なのですが、今年は他の趣味の時間を割いて読書に時間を充てたので、
150冊ぐらい読みたかったんですけども……。

2018年に読んだ本トップ10(発売したものではなく、僕が読んだもの、です)

1位 生ける屍の死 山口雅也

生ける屍の死

生ける屍の死著者: 山口 雅也

出版社:東京創元社

発行年:1996

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死人が蘇る世界で、ゾンビ探偵が自分を殺した犯人を探し求める。
作品世界に漂う『パンク』に生きる元気をもらった。

ネタバレ感想はこちら

2位 弁護側の証人 小泉喜美子

弁護側の証人

弁護側の証人著者: 小泉 喜美子

出版社:集英社

発行年:2009

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有罪にされようとしている無実の女性主人公。彼女は果たして救われるのか? 真の犯人は?
一度読み始めたら止まらない法廷小説。

3位 千尋の闇 ロバート・ゴダード

千尋(ちいろ)の闇 上

千尋(ちいろ)の闇 上著者: ロバート・ゴダード/幸田 敦子

出版社:東京創元社

発行年:1996

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身に覚えのない重婚の罪で、愛する女性に軽蔑された男性主人公。そして月日は流れ……。
身を切られるほどに悲しく、それでいて切ない大河ロマンス小説。

ネタバレ感想はこちら

4位 推定無罪 スコット・トゥロー

推定無罪

推定無罪著者: スコット・トゥロウ 西村 月満

出版社:英潮社フェニックス

発行年:1997

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敵の検事をバッタバッタとやっつける爽快感あり、ほろ苦い愛情の物語アリと、人間ドラマとしても楽しめる贅沢な法廷小説。やや病んでいる愛情深い妻、バーバラの存在がとりわけ印象深い作品。

5位 百万ドルをとり返せ ジェフリー・アーチャー


詐欺師に取られた百万ドル! 『被害者』が集まって、詐欺師からお金をとり返す!
1ペニーも多くなく、1ペニーも少なくなく、ピッタリ取られた分だけ取り返そうと奮闘する四人の姿に笑いが止まらない。

6位 ドーヴァー4 切断 ジョイス・ポーター

切断 ドーヴァー4

切断 ドーヴァー4著者: Porter Joyce

出版社:早川書房

発行年:1969

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バラバラ殺人死体が見つかった! 誰が何故、バラバラ死体をこしらえたのか? と書くと『いかにも』なミステリだが、殺した理由・何故バラバラにしたのかの理由が秀逸で爆笑。
ただし少々下ネタありなので注意w

ネタバレOKな方は反転して下さい。
『ヤリチン男のチンポを、村の婦人会がちょん切ったら、男がショックで死んでしまった。
動機を悟られたら困るので、他の部分までちょん切った』



7位 十日間の不思議 エラリー・クイーン

十日間の不思議

十日間の不思議著者: エラリイ・クイーン

出版社:早川書房

発行年:1976

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偉大すぎる父親と、その陰に隠れる息子。『家庭の悲劇』が描かれるエラリー・クイーンの名作。
なお、『いわゆる』謎解き小説ではないので、そちらを期待して読まないように。

8位 沙高楼奇譚 浅田次郎

沙高楼綺譚

沙高楼綺譚著者: 浅田 次郎

出版社:徳間書店

発行年:2005

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『千夜一夜物語』よろしく、参加者1人ひとりが自分の身に起こった『不思議な話』を物語る連作短編集。

9位 ヒューマンファクター グレアム・グリーン


『二重スパイ』。祖国を裏切った男は、いかにしてその決断に至ったのか。
祖国に代えても、男が何よりも大切にしたかったものとは……と書くともうネタバレな気もするが、
しみじみと感慨深い一作。

10位 偽のデュー警部 ピーター・ラヴゼイ

偽のデュー警部

偽のデュー警部著者: 中村保男/ピーター・ラヴゼイ

出版社:早川書房

発行年:1983

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豪華客船で妻を殺した男が、『有名な警部』と間違われ、自分が犯した犯罪を捜査する事に!?
豪華客船という密室で交錯する、様々な人生が楽しいユーモアミステリで、掛け値なしに楽しい小説。

というわけで、ベスト10の紹介でした。

次点は

りら荘事件/鮎川哲也

八百万の死にざま/ローレンス・ブロック

心引き裂かれて/リチャード・ニーリィ

あたり。

来年もまた、よろしくお願いいたします。
それでは皆様、良いお年を!


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