S・A→心底から読んで良かったと思える本。
1984年/ジョージ・オーウェル……究極のデストピア小説。圧倒的な感染力を持っているだけに、読み手の知性が試される本。下手な人に読ませると危険思想を生み出しかねない、禁断の書。
動物農場/ジョージ・オーウェル……容赦のない鬱展開を見せる、社会主義批判の書。恐るべき小説だが、『1984年』と基本筋は一緒なのでどちらか片方を読めば良い気もする。
天使と悪魔/ダン・ブラウン……ハイレベルな「知的好奇心」と「スリル」を同時に味わえる逸品。「科学」と「宗教」の対立なども見どころ。
きみの友だち/重松清……短編連作形式で、少女たち、少年たちの友情を描いた名作。クラスから『ハブられた』足の不自由な少女と、病気がちな少女の友情は光り輝いていて。読後、思わず自分の親友に連絡をとりたくなりました。
グリーンマイル/スティーブン・キング……容赦のない鬱物語、多数の邪悪なる人間の中でもがき苦しむ善良なる人々という構図は、キングの得意とするところ。モチーフはキリストの磔刑だろうか。
精神寄生体/コリン・ウィルソン……重々しい語り口でありながら、サイコキネシスで月を吹き飛ばす娯楽SF小説。「MMR」的、あるいは「Xファイル」的な面白さが。終わり方は不満だが、ギリギリAランクか。
殺人者/コリン・ウィルソン……白昼夢のような世界で生きる、フェティッシュな下着ドロボー、リンガードが語る、彼と彼の周囲の物語。ラスト20ページ、リンガードのレンズを外した後の、アビーとの再会シーンは脳みそを揺さぶられるほどの衝撃だった。
タウゼロ/ポール・アンダースン……既読のP・アンダースン5冊の中では群を抜いてベスト。あまりに壮大なスケールの物語は、これぞSFだ!!と叫びたくなるほど。人物描写も割に頑張っている。
キノの旅10/時雨沢恵一……既読10冊の中では、1、2を争うくらい良かったかも。ただし、その高評価の原因が『キノの旅らしい』面白さ(=諷刺・奇抜なアイディア)とは関係なかったのは、皮肉かもしれない。
イリヤの空、UFOの夏4/秋山瑞人……『普通の少年の挫折』という、ラノベではある種珍しいテーマ性。それを描ききる描写力。事態が急展開してから、ほとんど部活メンバーが出てこないのは寂しいが。
銀河英雄伝説(全10巻+外伝1・3・4巻)/田中芳樹……広大な世界観を舞台とした、大河ドラマ風歴史小説。政治思想の描写が多く、思想小説として見ても面白い。
ずっとお城で暮らしてる/シャーリィ・ジャクスン……引きこもり少女が夢みる、大好きな姉との二人だけの楽園。妹に共感するか姉に共感するかで、Happy end とも Bad endとも受け取れる。セカイ系のご先祖様とも言える作品。
悲しみよこんにちは/フランソワーズ・サガン……父親の再婚相手を、策略で排除しようとする少女を主人公に据えた作品。心理描写が極めて巧みで、地味な話をグイグイ読ませる。ラストの余韻も素晴らしい。
針の眼/ケン・フォレット……スパイ視点と一般人視点(スパイと対決する)を自在に操り描かれた作品。スパイ視点ではスパイを応援してしまい、一般人視点では一般人を応援してしまったのは比類ない文章力の賜物か。
ジュラシックパーク/マイクル・クライトン……パニックものとしての面白さはもちろんだが、『過ぎたる力をコントロールしようとする人間の傲慢さと、科学技術への批判』に主眼が置かれた、骨組みのしっかりした作品。
ハリーポッターと賢者の石/J・K・ローリング……設定に幾つか粗は見受けられるが、純粋に読みながらワクワクできる物語。僕も、こんな楽しい学生生活を送りたかったなぁ、と。
黒馬物語/アンナ・シューウェル……“一人”の馬の一生を通して、思いやりの大切さを描いた名作。考えさせられ、癒される物語。
蹴りたい背中/綿矢りさ……ややSっ気を秘めた恋心を、鮮やかに描いた作品。『著者の若さ』が騒がれたため食わず嫌いをしていたが、素直に読んで良かったと思えた。
東京タワー―オカンとボクと、時々オトン/リリー・フランキー……ノンフィクション小説ならではの、『よくある、それでいてかけがえのない人生』を描いている作品。読んでいて、ちょっと気分が暗くなるのがあれではあるが、胸を打つ。
リング/鈴木光司……「怨」に勝る恐怖は、人の「愛」か。大切な人を守るため、自分に関わりのある別の人を殺す。貞子という直接的な恐怖以上に、増殖していく呪いのテープの構造が恐ろしい。
ふたり/赤川次郎……インパクトには欠けるが、少女の成長を描いた暖かく綺麗な物語。雰囲気がとても心地良い。
B→出したお金、読んだ時間以上の価値があった本。
キャリー/スティーブン・キング……シンデレラをモチーフにした、キングのデビュー作。いじめられっ子の、『私にこんな力があれば、あんな奴らぶっ飛ばしてやれるのに』という妄想を具現化したような、良い意味で厨二病的作品。ホラー、ではないような気がする。
ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女/スティグ・ラーソン……Aに近いB。ページをめくる手が止まらない、上質のサスペンス小説。時間を忘れて読み進められる、エンターテイメント小説。
ケインとアベル/ジェフリー・アーチャー……Aに近いB。二人の主人公の生い立ちとその生涯に渡る対立を描いた力作。二人の対立が端から見ると無意味過ぎるのが難点。無意味なことに全力を費やすのが人生だ、と最後まで読めばしみじみと悟れる、心に残る作品ではあるが。
風と共に去りぬ/マーガレット・ミッチェル……傍若無人な南部の女性を主人公にした、大河ドラマ。ここまで性格の歪んだ主人公が出てくる作品は、正直珍しい。それでいて、読ませてしまうのは流石だ。流石だが、スカーレットはウザすぎる。この手の女に、酷い目に遭った(進んでひどい目にあわされていた)僕には痛すぎた。
アルケミスト/パオロ・コエーリョ……前半は間違いなくAランク。心に突き刺さる文章が目白押しで、読ませる。ところがアルケミスト(錬金術士)が出てきたあたりから、突然つまらなくなるのはどうしたものか。
探求者/ジョン・ジェイクス……アメリカの歴史を、ある一族(ケント一族)の視点から描いた『ケント家物語シリーズ』第三巻。面白いが、基本的に陰鬱なのでそういうのが大丈夫なら。
無法者/ジョン・ジェイクス……単体で見れば面白いのだが、この作者の他の作品も読んでいると「またこの展開か……」と言わざるを得ない。とりあえず、気違いキャラクターが多すぎる。毎回必ず気違いが数人出るというのは……。
濃紺のさよなら/ジョン・D・マクドナルド……ハードボイルドものの良作。ジョン・Dは、ハードボイルド作家でありながら、人の孤独、寂しさというものを描くのが非常に巧い作家さんだと思う。
黄色い恐怖の眼/ジョン・D・マクドナルド……ロマンスとしてはB+、ハードボイルドとしてはC+。ツンデレキャラの描き方がお見事な一方で、事件としては尻すぼみの感が。
琥珀色の死/ジョン・D・マクドナルド……ロマンスとしては期待はずれの感が残るが、悪役の大物感は本シリーズ随一(と言っても比較対象はここまで読んだ5作品のみだが)。
とらドラ!(1巻)/竹宮ゆゆこ……ともすればウザく感じてしまうヒロイン大河の毒を、絶妙なギャグセンスでうまく中和している、良質のラブコメ。余談だが、作者の文体が僕の文体に似ていた(似た文体の人っているものですね)。
妻という名の魔女たち/フリッツ・ライバー……夫たちの出世競争を、妻たちが魔術合戦でサポート。男性作家だからこそ書ける、神秘的で摩訶不思議な女性の世界。やはりライバーは女性を描かせると面白い。
分解された男/アルフレッド・ベスター……「虎よ、虎よ」ほどの疾走感はないが、「虎」の速度に途中からついていけなくなった身としては、『分解』はよりわかりやすくそれでいてベスター節も効いていて面白かった。
新世界の黎明/C.L.ムーア……良質な娯楽SFを根底から支えているのは、豊かに描かれた主人公を取り巻く人間関係だろう。描写力も優れており、一読に値する。ラストの光景も鮮烈で良かったが、仲間のその後が気になりすぎる。
ガラスの檻/コリン・ウィルソン……ある殺人鬼の生態を、多角的に掘り下げた研究論文のような味わい。動物の観察日誌みたいな。それにしてもこの殺人鬼、キモいな…と思ったのは僕だけかしら??
夢みる宝石/シオドア・スタージョン……独特のスタージョン的世界観。「水晶が夢を見る」というこのフレーズで、幻想的なビジョンを描ければ、期待は裏切られないだろう。悪役との直接対決はイマイチな気もしたが(注:この本を読んでいる時、別の悩みで頭がいっぱいだったために、楽しみきれたか自信はない)。
内死/ロバート・シルヴァーバーグ……テレパシー能力持ちの不幸と、その能力が失われていく不幸。つまらなくはないが、ストーリーが全体的に重苦しく、読みにくい部分も多い。
ローズマリーの赤ちゃん/アイラ・レヴィン……親切めかした隣人が、実は悪魔の手先だったら?というホラーもの。面白いのだが、「怖い」というよりは「ムカつく・酷い」と感じてしまった。また、あまりにも誤字脱字が酷い(15ヶ所はあった)。ちゃんと校正してから売りなさい。
ブラジルから来た少年/アイラ・レヴィン……スケールの大きなサスペンス小説。恐怖の引きを残すような靄に包まれたようなエンドも良い。ただ、ラスボスが功を焦って自滅した感があり、主人公もかなりのウッカリさんではある。
臆病者の未来/フレデリック・ポール……Aに近いB。今と全く異なる社会ルールで運営されている未来に飛ばされた主人公が、全く適応できずトラブルを巻き起こす、高品質の娯楽SF。巻末の作者ノートも必読。
チャンピオンたちの朝食/カート・ヴォネガット……痛烈なアメリカ諷刺に満ちた滑稽小説。肩の力を抜いて笑って楽しめるが、注意深く読まないとそれだけで終わってしまい、煙に巻かれてしまうかも。
時の歩廊/ポール・アンダースン……基本的に、大当たりはしない代わりに外れもしないP・アンダーソン。縦横無尽にいろんな世界に行くのは楽しいけど、今回はちょっとやりすぎな気もします(混乱した)。
子供の消えた惑星/ブライアン・オールディス……世界観の確立された終末テーマのSF。淡々と物語が進むため引き込む力はないが、丁寧に読めば味わい深い作品。個人的に同著者の「地球の長い午後」より上。
時間線を遡って/ロバート・シルヴァーバーグ……「詐欺」としか思えないレベルで内容を表していないあらすじ紹介はおいといて、タイムパラドックスを扱ったSFとしては悪くない。
夜の翼/ロバート・シルヴァーバーグ……可も不可もない程度ではあったが、夜にしか飛べない種族をヒロインに抜擢したあたりは、さすが『イメージの作家』シルヴァーバーグだなと。
クビキリサイクル/西尾維新……『すべてがFになる』に似ている。日本語を意図的に崩した文体は好き嫌いが分かれそう。萌え+ミステリなので、萌え好きにはミステリ入門に、ミステリ好きには萌え系入門にいいかも??
吉永さん家のガーゴイル9~11/田口仙年堂……ガーゴイルシリーズは好きなんだけど、その中では水準レベルの出来かも。この作者、本当に日本史が好きだねぇ。
暗い光年/ブライアン・オールディス……思考実験としてのSF。地球人と宇宙人のファーストコンタクトものだが、異性間、異文化間のコミュニケーションにまで踏み込んでいてなかなか興味深い。
弱虫チャーリー、逃亡中/ドナルド・E・ウェストレイク……ユーモラスな会話センスが光る、ドタバタ逃亡劇。肩の力を抜いて楽しめるが、ストーリーはやや複雑か。
百年の孤独/ガルシア・マルケス……ギャグで物語を牽引しつつ、寂しさ、人生の無常観、強烈な『孤独』を持って幕を引く例は『エロ事師たち』などにも見られるが、本書はその代表か。読後、強烈に寂しくなってしまった、というのは果たして良いのか悪いのか。
夜の記憶/トマス・クック……隠された真相はなかなか衝撃的で、面白いといえば面白い。しかし、そこに至る道のりはやや退屈だし、真相も、作品的には全然アリだけど、僕の好みからはやや外れていたかも。
たたり/シャーリィ・ジャクスン……古典的ホラー作品。ベタではあるが、楽しく読める。ただ、さっさと脱出すりゃいいのに、と思わなくもなかったのだった。スティーブン・キング『シャイニング』のご先祖様的作品かと。
カンディード/ヴォルテール……世界中を旅して回り、浮き沈みの激しい大冒険を繰り広げる主人公・カンディードの物語。愉快で面白い。
ポップ1280/ジム・トンプスン……『無能で、頭の巡りの極度に悪い、いじられキャラ』。を、演じる、本当は『頭のめぐりが抜群に良く、冷酷無比な悪人』を主人公にしたノワール小説。これだけ酷いことをしているのに、何故か感情移入できるのは凄い。
ナボコフ短編全集1巻/ウラジミール・ナボコフ……つまらない短編もいくつもあるが、「ベルリン案内」の美しい文章や、「名誉の問題」「ドラゴン」などストーリーの面白い作品など、気に入った短編もいくつもあり、読んで良かったと思わせた。
エクソシスト/ウィリアム・ピーター・ブラッティ……「催眠術」と「悪魔憑き」についての考察など、なかなか面白いのだが、後半になるとキリスト教臭の強い話になってしまうのが残念。
ペスト/アルベール・カミュ……ペストに襲われたある街を舞台に、人々の行動をリアリスティックに描いた作品。非常体制下では分け隔てなく皆が敗者・被害者であるのに対し、平和が取り戻された瞬間、勝ち組・負け組がハッキリしてしまうのが悲しい。
アラバマ物語/ハーパー・リー……アメリカ南部を舞台にした、少女の成長物語。子供の世界を瑞々しく描いた作品という印象を受けた。
ハリーポッターと炎のゴブレット/J.K.ローリング……ハリー達が思春期を迎え、彼らの恋愛模様が描かれた前半は、なかなか楽しめる。面白いんだけど、この巻で復活したヴォルデモートのキャラがいかにも小物っぽくて、次巻以降の楽しさに疑問が残る。
告白/湊かなえ……エンタメとしてとても面白いが、読んでいていやーな気分にさせられる本。個人的には、森口先生のやっていることを批判はしません。自分に一番似ている直樹君の描写は、身につまされました。
博士の愛した数式/小川洋子……数学で結びついた、三人の暖かな絆を描いた作品。優しく、心温まる作品だった。子供(ルート君)が少々、良い子すぎる気はしたけれど。
蔵の中/宇野浩二……ユーモラスな語り口で活写される、四十路男のイケてない恋愛の数々。微妙にモテるのにすぐ捨てられてしまうあたりが、何というか泣ける。
陰日向に咲く/劇団ひとり……連作短編集。恋を描いた短編が、なかなか切ない。『ピンボケな私』がA-、『拝啓、僕のアイドル様』がB+。後はB~Cくらい。
抱擁家族/小島信夫……それぞれキャラクターが立っていて、読みやすい家庭小説。主人公の余裕の無さが何とも言えないが、それに輪をかけて謎なのが奥さんの容姿。全て主人公の目線を通して語られているのだが、一体この主人公の目線はどこまで信用できるのか。
国旗が垂れる/尾辻克彦……いや、そんな人目を気にしなくてもいいのに。僕は思想的には左寄りではあるけど、さすがに正月に国旗を立てている人を見ても、特に何とも思わないぞ。
鉄道員/浅田次郎……粒の揃った短篇集で、しみじみと良いお話が多い。『伽羅』、『うらぼんえ』あたりが好き。唯一気になったのが、ほぼ全ての短編に、えらく古い価値観が染み付いているところ。物語は面白いんだけど、何が何でも仕事第一主義の価値観には共感しづらかった。
ゲームの達人/シドニー・シェルダン……先が気になる、一流のエンタメ小説。面白いのだけど、女主人公のケイトのウザさ・キモさが極まっており、個人的にもの凄くストレスが溜まった。悪役ではないため、大した罰も受けないので、モヤモヤしなくもない。
きみに読む物語/ニコラス・スパークス……心が洗われる純愛小説。読後感が良い。
奇跡を信じて/ニコラス・スパークス……アメリカ版『セカチュー』。ベタではあるけれど瑞々しい恋物語。
真夜中は別の顔/シドニー・シェルダン・・・・・・悪女が大活躍する、相変わらずのシェルダン節。スピード感があって面白く、最後には少ししんみりとするお話でした。真に怖(酷)いのはラリーなのか、それともノエルなのか、意見が別れそうですね。
C→最低限、暇つぶしにはなった本。
失楽園/渡辺淳一……不倫である以上、家族に礼を尽くせとは言わない。しかし、主人公の男性は家族どころか不倫相手のことすら、思いやれていない。不倫をすることではなく、大好きな不倫相手をきちんと思いやれない主人公に腹が立った。共感できなかったのはある意味ショック。下品なエロ作品を絶賛するつもりで読んだのに。
ハリーポッターと秘密の部屋/J.K.ローリング……完全なる伏線回。前作に感じた驚き・ワクワク感が乏しいのは、ハリー共々、読者の私たちもホグワーツに『慣れ』てしまったからなのか。もしもそうならば、今後初巻を超えるのは難しいかもしれない。
ハリーポッターとアズカバンの囚人/J.K.ローリング……初巻では叩いたクィディッチ競技のシーンは、なかなか読み応えがあって面白い。しかし、失速傾向は今作も健在。やはり『賢者の石』が鮮烈すぎたのだろうか。
痩せゆく男/リチャード・バックマン(スティーブン・キング)……可も不可もないB級ホラー。人を恨めば、それは自身にかえってくるという典型か。凶暴美人の一人勝ちっぷりが気になるが。
バッカーノ/成田良悟……不老不死の酒を巡って、様々な組織が抗争を重ねるドタバタアクションもの。それぞれの組織の行動が絡み合って、物語を動かすその手腕で、退屈せずに読ませる。が、キャラが駒のようで、魅力あるキャラが少ないのも確か。
紺碧の嘆き/ジョン・D・マクドナルド……なかなか面白いのだが、「中だるみが激しい」ことと、何よりもエンディングが酷すぎることがマイナス。ネタバレしてしまうが、「250ページにもわたって主人公と相思相愛だったヒロインが、最後の5ページで突然別の男と浮気する」のだ。これは酷い。
生き残った一人/ジョン・D・マクドナルド……最後まで読めば、まずまず面白い。しかし、一見『重要そうには見えない』大勢の登場人物が、章ごとに視点変更を行って物語を進めていくので、入り込むのはなかなか大変。事件の黒幕がビッチすぎて少し不快だった。
ラッキージム/キングズリー・エイミス……アカデミックな世界を舞台にした、ユーモア青春小説。つまらなくはないのだが、とことん地味なお話。
偶然世界/フィリップ・K・ディック……えっ、これディック作品なの?と目を疑ってしまう、ディックのデビュー作。厭世的で、世界の輪郭が曖昧な彼の諸作品と違い、活きのいい(勢いだけで書いた?)SF作品。
疫病犬と呼ばれて/リチャード・アダムス……動物冒険モノと言うよりは、ひたすらワンちゃんが可哀想な目に遭うお話。それだけに、ラストは本当に嬉しかった。ワンちゃん好きな人なら1ランクアップ。
グリーンマン/キングズリー・エイミス……幽霊モノとの評判だったが。幽霊1/3、お酒1/3、「奥さんと女友達で3Pしようぜ」1/3という文章量。僕が印象に残ったのは「3Pしようぜ」であり、幽霊ではありませんでした。
北極基地・潜航作戦/アリステア・マクリーン……相変わらずヤローしか出て来ない冒険小説モノ。マクリーンは苦手なのだが、今回は割に楽しめたのは主人公の動機づけがしっくりきたためか。
縮みゆく人間/リチャード・マシスン……舞台となる世界や結末は違えど、描かれているのは「アイ・アム・レジェンド」と同じく、独りぼっちの男の闘い。あまりに重苦しい今作よりは、「アイ・アム・レジェンド」を推す。
いばらの旅路/ロバート・シルヴァーバーグ……どこかスタージョンの香りを漂わせるSF。恋愛モノで、ヒロインがどうしても好きになれないのは辛い。
栄光の星のもとに/ロバート・A・ハインライン……ハインラインらしいジュブナイルSF。ハインラインのジュブナイルは大人が読んでも面白い作品もあるが、この本は文字通り子供向けな気がする。
宇宙商人/シリル・コーンブルース&フレデリック・ポール……コマーシャリズム戦争を扱ったSF小説。意外にサスペンス色も強く、なかなか凝った作りだがその割に面白く感じなかったのは、動機が私的なものではないからか。
オリバー・ツイスト/チャールズ・ディケンズ……真っ正直に王道を突っ走ったが故に、先の展開が読める読める。小説を書く人にとっては、わかりやすい物語例として参考になるかも。
柔らかい土をふんで、/金井美恵子……句点がなく、ひたすら長い文章が延々と続きイメージを喚起する小説。独特の味わいはあるし、こういうのが好きな人がいてもいいが、「物語」を求めて小説を読む僕のような人間とは方向性が真逆ですね。
ポオ小説全集(全4巻)/エドガー・アラン・ポオ……5つか6つ、A評価を出せるほど気に入った作品もあった。しかし、残りの(数えていないが)60ほどの作品はあまり面白くなかった。5~6の優れた作品に出会えたので、不満ではないが、打率を考えると全体ではC評価が妥当か。
盲目物語/谷崎潤一郎……按摩さんを主人公に、安土桃山時代を舞台にした歴史小説。
内なる殺人者/ジム・トンプスン……父親の歪んだ教育が生み出した、精神奇形児のお話。よくあるノワールものではある。主人公に対して「かわいそう」と感じるよりも、「ウザい」と感じてしまったので、どうにも。
桃色の悪夢/ジョン・D・マクドナルド……トラヴィス・マッギーシリーズの中では、ロマンス・サスペンス共に地味な作品。組織力ある悪役は不気味ではあったが、悪役に対して「許せない!」というような熱い気持ちはついに抱けず。
燃える接吻/ミッキー・スピレイン……暇つぶし以上の何ものでもないことからC評価としたが、ごく単純なプロットでありながら退屈させずに結末へと引っ張っていく牽引力はさすがと言わざるを得ない。
裁くのは俺だ/ミッキー・スピレイン……どうでもいいが、ここまで破天荒で無茶苦茶な主人公なのに、「エッチは結婚するまでダメだ」という貞操感は意外だ。これが時代なのか。
リリィ、はちみつ色の夏/スー・モンク・キッド……家出娘の記憶の秘密を探る、極めて地味なお話。
海辺の光景/安岡章太郎……頭がおかしくなった母親を看病するお話。(読み落としたのでなければ)病名が書いておらず、痴呆症なのかと思って読んでいたが、入院直後に亡くなっていることから、別の病気だったっぽい。
メッセージ・イン・ア・ボトル/ニコラス・スパークス……わかってはいてもラストはじーんとは来る。じーんとは来るが、ラストまでが平坦すぎる印象。良くも悪くもリアルな恋愛モノであり、題材にも関わらずロマンチックとは程遠い(個人的にはロマンチックな方が好きだけど、これは人それぞれかと)。
D→自分には全く合わず、読んでも無駄だった本。
影のジャック/ロジャー・ゼラズニイ……Cに近いD。根底に流れる『時の流れ・不滅なるものと有限なるもの』あたりの描写は面白いと感じたが、ファンタジー小説としてはどうしても軽さが目立つんだよね。
ビッグタイム/フリッツ・ライバー……世界観は魅力的だが、その世界観を存分に活かした物語ではなく、単なる背景設定に留まっている。ヒューゴー賞受賞作は基本的につまらない、という定説(自分の)がまたしても証明された。
再生の時/クリフォード・シマク……つまらん…。
銀河の女戦士/C.L.ムーア……ヒロインの心理描写は悪くないだけに、そちらを丁寧に描いてほしかったところ。圧倒的な量のバトル描写が、あまり面白くなかった。
虹の彼方に/高橋源一郎……「さようなら、ギャングたち」は何となくわかったような気になり、何となく楽しめたのだが、こちらはまるでわからなかった。野球にまるで興味がないのも、導入として辛かったか。たまに笑える箇所があるんだけどね。
レモン色の戦慄/ジョン・D・マクドナルド……改めて感じたのだけれど、事件モノの場合、聴き込みの相手(兼容疑者)同士の仲が、私的であればあるほど面白いと僕は感じるらしい。元恋人とか兄弟とか、主人公の昔の親友とか。一方、保安官とか会社の社長とか、公的な繋がりしかないと退屈を感じるようだ。この本は後者。
赤く灼けた死の海/ジョン・D・マクドナルド……犯人も拍子抜けなら、ヒロインも今一つ。
謎解きはディナーのあとで/東川篤也……何で話題になっているのか、サッパリわからなかった話題作。
裸の顔/シドニー・シェルダン……主人公が孤軍奮闘するストーリー展開上、好きになれるキャラがいないのは仕方ないのかもしれないが。キャラに興味が持てないと、事件にも興味が持てないのよね……。
暗い絵/野間宏……集中して読めなかったという自分の側の問題もあるが、やはりあまり面白くはなかった。
空気頭/藤枝静男……一種独特の雰囲気、空気感を醸し出している点は評価できる。ただ、個人的にスカトロとか人糞ネタは、出来不出来に関わらず勘弁願いたい。ごめんなさい、これだけはどうしても生理的にダメなの。
眠れる美女/川端康成……アイディアはいいけど、どうにも退屈。
第七官界彷徨/尾崎翠・・・・・・タイトルから、もっとこう幻想的でロマンチックな話かと勝手に勘違いしていました。
1984年/ジョージ・オーウェル……究極のデストピア小説。圧倒的な感染力を持っているだけに、読み手の知性が試される本。下手な人に読ませると危険思想を生み出しかねない、禁断の書。
動物農場/ジョージ・オーウェル……容赦のない鬱展開を見せる、社会主義批判の書。恐るべき小説だが、『1984年』と基本筋は一緒なのでどちらか片方を読めば良い気もする。
天使と悪魔/ダン・ブラウン……ハイレベルな「知的好奇心」と「スリル」を同時に味わえる逸品。「科学」と「宗教」の対立なども見どころ。
きみの友だち/重松清……短編連作形式で、少女たち、少年たちの友情を描いた名作。クラスから『ハブられた』足の不自由な少女と、病気がちな少女の友情は光り輝いていて。読後、思わず自分の親友に連絡をとりたくなりました。
グリーンマイル/スティーブン・キング……容赦のない鬱物語、多数の邪悪なる人間の中でもがき苦しむ善良なる人々という構図は、キングの得意とするところ。モチーフはキリストの磔刑だろうか。
精神寄生体/コリン・ウィルソン……重々しい語り口でありながら、サイコキネシスで月を吹き飛ばす娯楽SF小説。「MMR」的、あるいは「Xファイル」的な面白さが。終わり方は不満だが、ギリギリAランクか。
殺人者/コリン・ウィルソン……白昼夢のような世界で生きる、フェティッシュな下着ドロボー、リンガードが語る、彼と彼の周囲の物語。ラスト20ページ、リンガードのレンズを外した後の、アビーとの再会シーンは脳みそを揺さぶられるほどの衝撃だった。
タウゼロ/ポール・アンダースン……既読のP・アンダースン5冊の中では群を抜いてベスト。あまりに壮大なスケールの物語は、これぞSFだ!!と叫びたくなるほど。人物描写も割に頑張っている。
キノの旅10/時雨沢恵一……既読10冊の中では、1、2を争うくらい良かったかも。ただし、その高評価の原因が『キノの旅らしい』面白さ(=諷刺・奇抜なアイディア)とは関係なかったのは、皮肉かもしれない。
イリヤの空、UFOの夏4/秋山瑞人……『普通の少年の挫折』という、ラノベではある種珍しいテーマ性。それを描ききる描写力。事態が急展開してから、ほとんど部活メンバーが出てこないのは寂しいが。
銀河英雄伝説(全10巻+外伝1・3・4巻)/田中芳樹……広大な世界観を舞台とした、大河ドラマ風歴史小説。政治思想の描写が多く、思想小説として見ても面白い。
ずっとお城で暮らしてる/シャーリィ・ジャクスン……引きこもり少女が夢みる、大好きな姉との二人だけの楽園。妹に共感するか姉に共感するかで、Happy end とも Bad endとも受け取れる。セカイ系のご先祖様とも言える作品。
悲しみよこんにちは/フランソワーズ・サガン……父親の再婚相手を、策略で排除しようとする少女を主人公に据えた作品。心理描写が極めて巧みで、地味な話をグイグイ読ませる。ラストの余韻も素晴らしい。
針の眼/ケン・フォレット……スパイ視点と一般人視点(スパイと対決する)を自在に操り描かれた作品。スパイ視点ではスパイを応援してしまい、一般人視点では一般人を応援してしまったのは比類ない文章力の賜物か。
ジュラシックパーク/マイクル・クライトン……パニックものとしての面白さはもちろんだが、『過ぎたる力をコントロールしようとする人間の傲慢さと、科学技術への批判』に主眼が置かれた、骨組みのしっかりした作品。
ハリーポッターと賢者の石/J・K・ローリング……設定に幾つか粗は見受けられるが、純粋に読みながらワクワクできる物語。僕も、こんな楽しい学生生活を送りたかったなぁ、と。
黒馬物語/アンナ・シューウェル……“一人”の馬の一生を通して、思いやりの大切さを描いた名作。考えさせられ、癒される物語。
蹴りたい背中/綿矢りさ……ややSっ気を秘めた恋心を、鮮やかに描いた作品。『著者の若さ』が騒がれたため食わず嫌いをしていたが、素直に読んで良かったと思えた。
東京タワー―オカンとボクと、時々オトン/リリー・フランキー……ノンフィクション小説ならではの、『よくある、それでいてかけがえのない人生』を描いている作品。読んでいて、ちょっと気分が暗くなるのがあれではあるが、胸を打つ。
リング/鈴木光司……「怨」に勝る恐怖は、人の「愛」か。大切な人を守るため、自分に関わりのある別の人を殺す。貞子という直接的な恐怖以上に、増殖していく呪いのテープの構造が恐ろしい。
ふたり/赤川次郎……インパクトには欠けるが、少女の成長を描いた暖かく綺麗な物語。雰囲気がとても心地良い。
B→出したお金、読んだ時間以上の価値があった本。
キャリー/スティーブン・キング……シンデレラをモチーフにした、キングのデビュー作。いじめられっ子の、『私にこんな力があれば、あんな奴らぶっ飛ばしてやれるのに』という妄想を具現化したような、良い意味で厨二病的作品。ホラー、ではないような気がする。
ミレニアム1ドラゴンタトゥーの女/スティグ・ラーソン……Aに近いB。ページをめくる手が止まらない、上質のサスペンス小説。時間を忘れて読み進められる、エンターテイメント小説。
ケインとアベル/ジェフリー・アーチャー……Aに近いB。二人の主人公の生い立ちとその生涯に渡る対立を描いた力作。二人の対立が端から見ると無意味過ぎるのが難点。無意味なことに全力を費やすのが人生だ、と最後まで読めばしみじみと悟れる、心に残る作品ではあるが。
風と共に去りぬ/マーガレット・ミッチェル……傍若無人な南部の女性を主人公にした、大河ドラマ。ここまで性格の歪んだ主人公が出てくる作品は、正直珍しい。それでいて、読ませてしまうのは流石だ。流石だが、スカーレットはウザすぎる。この手の女に、酷い目に遭った(進んでひどい目にあわされていた)僕には痛すぎた。
アルケミスト/パオロ・コエーリョ……前半は間違いなくAランク。心に突き刺さる文章が目白押しで、読ませる。ところがアルケミスト(錬金術士)が出てきたあたりから、突然つまらなくなるのはどうしたものか。
探求者/ジョン・ジェイクス……アメリカの歴史を、ある一族(ケント一族)の視点から描いた『ケント家物語シリーズ』第三巻。面白いが、基本的に陰鬱なのでそういうのが大丈夫なら。
無法者/ジョン・ジェイクス……単体で見れば面白いのだが、この作者の他の作品も読んでいると「またこの展開か……」と言わざるを得ない。とりあえず、気違いキャラクターが多すぎる。毎回必ず気違いが数人出るというのは……。
濃紺のさよなら/ジョン・D・マクドナルド……ハードボイルドものの良作。ジョン・Dは、ハードボイルド作家でありながら、人の孤独、寂しさというものを描くのが非常に巧い作家さんだと思う。
黄色い恐怖の眼/ジョン・D・マクドナルド……ロマンスとしてはB+、ハードボイルドとしてはC+。ツンデレキャラの描き方がお見事な一方で、事件としては尻すぼみの感が。
琥珀色の死/ジョン・D・マクドナルド……ロマンスとしては期待はずれの感が残るが、悪役の大物感は本シリーズ随一(と言っても比較対象はここまで読んだ5作品のみだが)。
とらドラ!(1巻)/竹宮ゆゆこ……ともすればウザく感じてしまうヒロイン大河の毒を、絶妙なギャグセンスでうまく中和している、良質のラブコメ。余談だが、作者の文体が僕の文体に似ていた(似た文体の人っているものですね)。
妻という名の魔女たち/フリッツ・ライバー……夫たちの出世競争を、妻たちが魔術合戦でサポート。男性作家だからこそ書ける、神秘的で摩訶不思議な女性の世界。やはりライバーは女性を描かせると面白い。
分解された男/アルフレッド・ベスター……「虎よ、虎よ」ほどの疾走感はないが、「虎」の速度に途中からついていけなくなった身としては、『分解』はよりわかりやすくそれでいてベスター節も効いていて面白かった。
新世界の黎明/C.L.ムーア……良質な娯楽SFを根底から支えているのは、豊かに描かれた主人公を取り巻く人間関係だろう。描写力も優れており、一読に値する。ラストの光景も鮮烈で良かったが、仲間のその後が気になりすぎる。
ガラスの檻/コリン・ウィルソン……ある殺人鬼の生態を、多角的に掘り下げた研究論文のような味わい。動物の観察日誌みたいな。それにしてもこの殺人鬼、キモいな…と思ったのは僕だけかしら??
夢みる宝石/シオドア・スタージョン……独特のスタージョン的世界観。「水晶が夢を見る」というこのフレーズで、幻想的なビジョンを描ければ、期待は裏切られないだろう。悪役との直接対決はイマイチな気もしたが(注:この本を読んでいる時、別の悩みで頭がいっぱいだったために、楽しみきれたか自信はない)。
内死/ロバート・シルヴァーバーグ……テレパシー能力持ちの不幸と、その能力が失われていく不幸。つまらなくはないが、ストーリーが全体的に重苦しく、読みにくい部分も多い。
ローズマリーの赤ちゃん/アイラ・レヴィン……親切めかした隣人が、実は悪魔の手先だったら?というホラーもの。面白いのだが、「怖い」というよりは「ムカつく・酷い」と感じてしまった。また、あまりにも誤字脱字が酷い(15ヶ所はあった)。ちゃんと校正してから売りなさい。
ブラジルから来た少年/アイラ・レヴィン……スケールの大きなサスペンス小説。恐怖の引きを残すような靄に包まれたようなエンドも良い。ただ、ラスボスが功を焦って自滅した感があり、主人公もかなりのウッカリさんではある。
臆病者の未来/フレデリック・ポール……Aに近いB。今と全く異なる社会ルールで運営されている未来に飛ばされた主人公が、全く適応できずトラブルを巻き起こす、高品質の娯楽SF。巻末の作者ノートも必読。
チャンピオンたちの朝食/カート・ヴォネガット……痛烈なアメリカ諷刺に満ちた滑稽小説。肩の力を抜いて笑って楽しめるが、注意深く読まないとそれだけで終わってしまい、煙に巻かれてしまうかも。
時の歩廊/ポール・アンダースン……基本的に、大当たりはしない代わりに外れもしないP・アンダーソン。縦横無尽にいろんな世界に行くのは楽しいけど、今回はちょっとやりすぎな気もします(混乱した)。
子供の消えた惑星/ブライアン・オールディス……世界観の確立された終末テーマのSF。淡々と物語が進むため引き込む力はないが、丁寧に読めば味わい深い作品。個人的に同著者の「地球の長い午後」より上。
時間線を遡って/ロバート・シルヴァーバーグ……「詐欺」としか思えないレベルで内容を表していないあらすじ紹介はおいといて、タイムパラドックスを扱ったSFとしては悪くない。
夜の翼/ロバート・シルヴァーバーグ……可も不可もない程度ではあったが、夜にしか飛べない種族をヒロインに抜擢したあたりは、さすが『イメージの作家』シルヴァーバーグだなと。
クビキリサイクル/西尾維新……『すべてがFになる』に似ている。日本語を意図的に崩した文体は好き嫌いが分かれそう。萌え+ミステリなので、萌え好きにはミステリ入門に、ミステリ好きには萌え系入門にいいかも??
吉永さん家のガーゴイル9~11/田口仙年堂……ガーゴイルシリーズは好きなんだけど、その中では水準レベルの出来かも。この作者、本当に日本史が好きだねぇ。
暗い光年/ブライアン・オールディス……思考実験としてのSF。地球人と宇宙人のファーストコンタクトものだが、異性間、異文化間のコミュニケーションにまで踏み込んでいてなかなか興味深い。
弱虫チャーリー、逃亡中/ドナルド・E・ウェストレイク……ユーモラスな会話センスが光る、ドタバタ逃亡劇。肩の力を抜いて楽しめるが、ストーリーはやや複雑か。
百年の孤独/ガルシア・マルケス……ギャグで物語を牽引しつつ、寂しさ、人生の無常観、強烈な『孤独』を持って幕を引く例は『エロ事師たち』などにも見られるが、本書はその代表か。読後、強烈に寂しくなってしまった、というのは果たして良いのか悪いのか。
夜の記憶/トマス・クック……隠された真相はなかなか衝撃的で、面白いといえば面白い。しかし、そこに至る道のりはやや退屈だし、真相も、作品的には全然アリだけど、僕の好みからはやや外れていたかも。
たたり/シャーリィ・ジャクスン……古典的ホラー作品。ベタではあるが、楽しく読める。ただ、さっさと脱出すりゃいいのに、と思わなくもなかったのだった。スティーブン・キング『シャイニング』のご先祖様的作品かと。
カンディード/ヴォルテール……世界中を旅して回り、浮き沈みの激しい大冒険を繰り広げる主人公・カンディードの物語。愉快で面白い。
ポップ1280/ジム・トンプスン……『無能で、頭の巡りの極度に悪い、いじられキャラ』。を、演じる、本当は『頭のめぐりが抜群に良く、冷酷無比な悪人』を主人公にしたノワール小説。これだけ酷いことをしているのに、何故か感情移入できるのは凄い。
ナボコフ短編全集1巻/ウラジミール・ナボコフ……つまらない短編もいくつもあるが、「ベルリン案内」の美しい文章や、「名誉の問題」「ドラゴン」などストーリーの面白い作品など、気に入った短編もいくつもあり、読んで良かったと思わせた。
エクソシスト/ウィリアム・ピーター・ブラッティ……「催眠術」と「悪魔憑き」についての考察など、なかなか面白いのだが、後半になるとキリスト教臭の強い話になってしまうのが残念。
ペスト/アルベール・カミュ……ペストに襲われたある街を舞台に、人々の行動をリアリスティックに描いた作品。非常体制下では分け隔てなく皆が敗者・被害者であるのに対し、平和が取り戻された瞬間、勝ち組・負け組がハッキリしてしまうのが悲しい。
アラバマ物語/ハーパー・リー……アメリカ南部を舞台にした、少女の成長物語。子供の世界を瑞々しく描いた作品という印象を受けた。
ハリーポッターと炎のゴブレット/J.K.ローリング……ハリー達が思春期を迎え、彼らの恋愛模様が描かれた前半は、なかなか楽しめる。面白いんだけど、この巻で復活したヴォルデモートのキャラがいかにも小物っぽくて、次巻以降の楽しさに疑問が残る。
告白/湊かなえ……エンタメとしてとても面白いが、読んでいていやーな気分にさせられる本。個人的には、森口先生のやっていることを批判はしません。自分に一番似ている直樹君の描写は、身につまされました。
博士の愛した数式/小川洋子……数学で結びついた、三人の暖かな絆を描いた作品。優しく、心温まる作品だった。子供(ルート君)が少々、良い子すぎる気はしたけれど。
蔵の中/宇野浩二……ユーモラスな語り口で活写される、四十路男のイケてない恋愛の数々。微妙にモテるのにすぐ捨てられてしまうあたりが、何というか泣ける。
陰日向に咲く/劇団ひとり……連作短編集。恋を描いた短編が、なかなか切ない。『ピンボケな私』がA-、『拝啓、僕のアイドル様』がB+。後はB~Cくらい。
抱擁家族/小島信夫……それぞれキャラクターが立っていて、読みやすい家庭小説。主人公の余裕の無さが何とも言えないが、それに輪をかけて謎なのが奥さんの容姿。全て主人公の目線を通して語られているのだが、一体この主人公の目線はどこまで信用できるのか。
国旗が垂れる/尾辻克彦……いや、そんな人目を気にしなくてもいいのに。僕は思想的には左寄りではあるけど、さすがに正月に国旗を立てている人を見ても、特に何とも思わないぞ。
鉄道員/浅田次郎……粒の揃った短篇集で、しみじみと良いお話が多い。『伽羅』、『うらぼんえ』あたりが好き。唯一気になったのが、ほぼ全ての短編に、えらく古い価値観が染み付いているところ。物語は面白いんだけど、何が何でも仕事第一主義の価値観には共感しづらかった。
ゲームの達人/シドニー・シェルダン……先が気になる、一流のエンタメ小説。面白いのだけど、女主人公のケイトのウザさ・キモさが極まっており、個人的にもの凄くストレスが溜まった。悪役ではないため、大した罰も受けないので、モヤモヤしなくもない。
きみに読む物語/ニコラス・スパークス……心が洗われる純愛小説。読後感が良い。
奇跡を信じて/ニコラス・スパークス……アメリカ版『セカチュー』。ベタではあるけれど瑞々しい恋物語。
真夜中は別の顔/シドニー・シェルダン・・・・・・悪女が大活躍する、相変わらずのシェルダン節。スピード感があって面白く、最後には少ししんみりとするお話でした。真に怖(酷)いのはラリーなのか、それともノエルなのか、意見が別れそうですね。
C→最低限、暇つぶしにはなった本。
失楽園/渡辺淳一……不倫である以上、家族に礼を尽くせとは言わない。しかし、主人公の男性は家族どころか不倫相手のことすら、思いやれていない。不倫をすることではなく、大好きな不倫相手をきちんと思いやれない主人公に腹が立った。共感できなかったのはある意味ショック。下品なエロ作品を絶賛するつもりで読んだのに。
ハリーポッターと秘密の部屋/J.K.ローリング……完全なる伏線回。前作に感じた驚き・ワクワク感が乏しいのは、ハリー共々、読者の私たちもホグワーツに『慣れ』てしまったからなのか。もしもそうならば、今後初巻を超えるのは難しいかもしれない。
ハリーポッターとアズカバンの囚人/J.K.ローリング……初巻では叩いたクィディッチ競技のシーンは、なかなか読み応えがあって面白い。しかし、失速傾向は今作も健在。やはり『賢者の石』が鮮烈すぎたのだろうか。
痩せゆく男/リチャード・バックマン(スティーブン・キング)……可も不可もないB級ホラー。人を恨めば、それは自身にかえってくるという典型か。凶暴美人の一人勝ちっぷりが気になるが。
バッカーノ/成田良悟……不老不死の酒を巡って、様々な組織が抗争を重ねるドタバタアクションもの。それぞれの組織の行動が絡み合って、物語を動かすその手腕で、退屈せずに読ませる。が、キャラが駒のようで、魅力あるキャラが少ないのも確か。
紺碧の嘆き/ジョン・D・マクドナルド……なかなか面白いのだが、「中だるみが激しい」ことと、何よりもエンディングが酷すぎることがマイナス。ネタバレしてしまうが、「250ページにもわたって主人公と相思相愛だったヒロインが、最後の5ページで突然別の男と浮気する」のだ。これは酷い。
生き残った一人/ジョン・D・マクドナルド……最後まで読めば、まずまず面白い。しかし、一見『重要そうには見えない』大勢の登場人物が、章ごとに視点変更を行って物語を進めていくので、入り込むのはなかなか大変。事件の黒幕がビッチすぎて少し不快だった。
ラッキージム/キングズリー・エイミス……アカデミックな世界を舞台にした、ユーモア青春小説。つまらなくはないのだが、とことん地味なお話。
偶然世界/フィリップ・K・ディック……えっ、これディック作品なの?と目を疑ってしまう、ディックのデビュー作。厭世的で、世界の輪郭が曖昧な彼の諸作品と違い、活きのいい(勢いだけで書いた?)SF作品。
疫病犬と呼ばれて/リチャード・アダムス……動物冒険モノと言うよりは、ひたすらワンちゃんが可哀想な目に遭うお話。それだけに、ラストは本当に嬉しかった。ワンちゃん好きな人なら1ランクアップ。
グリーンマン/キングズリー・エイミス……幽霊モノとの評判だったが。幽霊1/3、お酒1/3、「奥さんと女友達で3Pしようぜ」1/3という文章量。僕が印象に残ったのは「3Pしようぜ」であり、幽霊ではありませんでした。
北極基地・潜航作戦/アリステア・マクリーン……相変わらずヤローしか出て来ない冒険小説モノ。マクリーンは苦手なのだが、今回は割に楽しめたのは主人公の動機づけがしっくりきたためか。
縮みゆく人間/リチャード・マシスン……舞台となる世界や結末は違えど、描かれているのは「アイ・アム・レジェンド」と同じく、独りぼっちの男の闘い。あまりに重苦しい今作よりは、「アイ・アム・レジェンド」を推す。
いばらの旅路/ロバート・シルヴァーバーグ……どこかスタージョンの香りを漂わせるSF。恋愛モノで、ヒロインがどうしても好きになれないのは辛い。
栄光の星のもとに/ロバート・A・ハインライン……ハインラインらしいジュブナイルSF。ハインラインのジュブナイルは大人が読んでも面白い作品もあるが、この本は文字通り子供向けな気がする。
宇宙商人/シリル・コーンブルース&フレデリック・ポール……コマーシャリズム戦争を扱ったSF小説。意外にサスペンス色も強く、なかなか凝った作りだがその割に面白く感じなかったのは、動機が私的なものではないからか。
オリバー・ツイスト/チャールズ・ディケンズ……真っ正直に王道を突っ走ったが故に、先の展開が読める読める。小説を書く人にとっては、わかりやすい物語例として参考になるかも。
柔らかい土をふんで、/金井美恵子……句点がなく、ひたすら長い文章が延々と続きイメージを喚起する小説。独特の味わいはあるし、こういうのが好きな人がいてもいいが、「物語」を求めて小説を読む僕のような人間とは方向性が真逆ですね。
ポオ小説全集(全4巻)/エドガー・アラン・ポオ……5つか6つ、A評価を出せるほど気に入った作品もあった。しかし、残りの(数えていないが)60ほどの作品はあまり面白くなかった。5~6の優れた作品に出会えたので、不満ではないが、打率を考えると全体ではC評価が妥当か。
盲目物語/谷崎潤一郎……按摩さんを主人公に、安土桃山時代を舞台にした歴史小説。
内なる殺人者/ジム・トンプスン……父親の歪んだ教育が生み出した、精神奇形児のお話。よくあるノワールものではある。主人公に対して「かわいそう」と感じるよりも、「ウザい」と感じてしまったので、どうにも。
桃色の悪夢/ジョン・D・マクドナルド……トラヴィス・マッギーシリーズの中では、ロマンス・サスペンス共に地味な作品。組織力ある悪役は不気味ではあったが、悪役に対して「許せない!」というような熱い気持ちはついに抱けず。
燃える接吻/ミッキー・スピレイン……暇つぶし以上の何ものでもないことからC評価としたが、ごく単純なプロットでありながら退屈させずに結末へと引っ張っていく牽引力はさすがと言わざるを得ない。
裁くのは俺だ/ミッキー・スピレイン……どうでもいいが、ここまで破天荒で無茶苦茶な主人公なのに、「エッチは結婚するまでダメだ」という貞操感は意外だ。これが時代なのか。
リリィ、はちみつ色の夏/スー・モンク・キッド……家出娘の記憶の秘密を探る、極めて地味なお話。
海辺の光景/安岡章太郎……頭がおかしくなった母親を看病するお話。(読み落としたのでなければ)病名が書いておらず、痴呆症なのかと思って読んでいたが、入院直後に亡くなっていることから、別の病気だったっぽい。
メッセージ・イン・ア・ボトル/ニコラス・スパークス……わかってはいてもラストはじーんとは来る。じーんとは来るが、ラストまでが平坦すぎる印象。良くも悪くもリアルな恋愛モノであり、題材にも関わらずロマンチックとは程遠い(個人的にはロマンチックな方が好きだけど、これは人それぞれかと)。
D→自分には全く合わず、読んでも無駄だった本。
影のジャック/ロジャー・ゼラズニイ……Cに近いD。根底に流れる『時の流れ・不滅なるものと有限なるもの』あたりの描写は面白いと感じたが、ファンタジー小説としてはどうしても軽さが目立つんだよね。
ビッグタイム/フリッツ・ライバー……世界観は魅力的だが、その世界観を存分に活かした物語ではなく、単なる背景設定に留まっている。ヒューゴー賞受賞作は基本的につまらない、という定説(自分の)がまたしても証明された。
再生の時/クリフォード・シマク……つまらん…。
銀河の女戦士/C.L.ムーア……ヒロインの心理描写は悪くないだけに、そちらを丁寧に描いてほしかったところ。圧倒的な量のバトル描写が、あまり面白くなかった。
虹の彼方に/高橋源一郎……「さようなら、ギャングたち」は何となくわかったような気になり、何となく楽しめたのだが、こちらはまるでわからなかった。野球にまるで興味がないのも、導入として辛かったか。たまに笑える箇所があるんだけどね。
レモン色の戦慄/ジョン・D・マクドナルド……改めて感じたのだけれど、事件モノの場合、聴き込みの相手(兼容疑者)同士の仲が、私的であればあるほど面白いと僕は感じるらしい。元恋人とか兄弟とか、主人公の昔の親友とか。一方、保安官とか会社の社長とか、公的な繋がりしかないと退屈を感じるようだ。この本は後者。
赤く灼けた死の海/ジョン・D・マクドナルド……犯人も拍子抜けなら、ヒロインも今一つ。
謎解きはディナーのあとで/東川篤也……何で話題になっているのか、サッパリわからなかった話題作。
裸の顔/シドニー・シェルダン……主人公が孤軍奮闘するストーリー展開上、好きになれるキャラがいないのは仕方ないのかもしれないが。キャラに興味が持てないと、事件にも興味が持てないのよね……。
暗い絵/野間宏……集中して読めなかったという自分の側の問題もあるが、やはりあまり面白くはなかった。
空気頭/藤枝静男……一種独特の雰囲気、空気感を醸し出している点は評価できる。ただ、個人的にスカトロとか人糞ネタは、出来不出来に関わらず勘弁願いたい。ごめんなさい、これだけはどうしても生理的にダメなの。
眠れる美女/川端康成……アイディアはいいけど、どうにも退屈。
第七官界彷徨/尾崎翠・・・・・・タイトルから、もっとこう幻想的でロマンチックな話かと勝手に勘違いしていました。