著者は秋山瑞人。シリーズ通しての評価は A。巻ごとの評価は A/B/A+/A


物語は大きく2つに分かれ、『部活を中心にした、平和な日常』が描かれる前半と、
『主人公の浅羽とヒロインのイリヤの2人を主に描く、非日常』が描かれる後半に分かれます。


とにかく描写の巧い作品で、3巻の『無銭飲食列伝』や後半の『耳を傷つけるシーン』などは必見です。
この描写力の高さにより、読者にイメージを喚起させることに成功しており、スラスラと読めますし、読後の余韻もなかなかのものがあります。

また、「普通の少年の挫折」をテーマに持ってきたというところも評価したいポイントで、
超人ヒーローが活躍する作品に辟易、という方にも、文句なくお勧めできます。
4巻の浅羽の降伏シーンなどは、胸に迫るものがありますね。
情けない、とも思いますけど、やっぱり僕が浅羽だったらこうしてしまうだろうなと。
なんだか自分のことのように考えてしまい、浅羽のやるせなさ・徒労感を追体験した思いです。


一方、『日常』→『非日常』への展開があまりにも唐突だったり、『非日常』シーンにおいて、
『日常』シーンであれほど活躍していたキャラクターのほとんどがいなくなってしまうあたりには
若干不満も残ります。

けれど、それを差し引いてなお、読むに値する作品と感じました。