88点。
まいりました。 

まだ姫子おまけシナリオをプレイしていませんが、ここまでの4ルート内での比較では、圧倒的大差で「メサイア」を推します。

(メサイア>>>>>>>死神の花嫁>>小さなイリス>>>>>>>>>>>>シーラスの高さへ)


早狩氏の物語は、毎回必ずスロースターターという悪癖がありまして。
終盤一気に面白くなるのですが、序盤はたいてい退屈なんですね。
今回の「メサイア」も3章まではとても退屈でした。
ターニングポイントは4章、久也視点に切り替わってから。ここから一気に面白くなりました。 

4章に出てくる、
「たったいま、この瞬間に、自分は健康で余命が数十年残っていると信じきっていながら、まったく無自覚で致命的な病を抱えている奴が、果たしてどれくらい・・・・・・」

という文章に深く共感してからは、スルスルと文章が胸に染み込んでいきました。


繰り返し語られる、「余命が三ヶ月だろうと、三年だろうと、三十年だろうと、そこに一体何の違いがあるのだろう」
「どうせ僕らは最後には死んでしまうのに」という変えようのない真実を、
にも関わらず、多くの人が目を背けているであろう死生観を描いたこの短編は、
一番僕の死生観に近かったです。


ヘルパーさんとの和解や、終盤のツーリング、ラストの家族との和解まで
本当に流れるように美しくシナリオを描ききったなと。
改めて、早狩氏は一流のストーリーテラーだなと感じました。

「ただ・・・・・・おれは、おれ自身が理由(の死因で)で死にたかったよ」


注:()内はfeeが補足


という発言にも強く肯けましたし、


ヘルパーさんの
「だれもが、周囲に迷惑をかけ、罪を犯し、そして生きています・・・・・・それで良いのです」

という台詞には、僕自身も大いに励まされた思いがしています。


改めて、『ナルキッソス』とはこんなに胸の痛くなる、真摯なメッセージの詰まった物語だったんだよなぁ、と感じた一方で、
そんな「プレイした後、人生についていろいろと考えたくなるような物語」を体感できたのが
この『メサイア』1編だけだったのは、残念だなと感じました。


しかし、『あとがき』で、「死神の花嫁」と「シーラスの高さへ」が若者的死生観?(ライターが若者)
「メサイア」と「小さなイリス」が中年的死生観?(ライターが中年)
と書かれていましたが、僕、中年的ですかね。まだピチピチの(?)二十代なんですけど。

・・・・・・うーむ。