この作品は、批評空間で「短い」と評されている。プレイ時間だけを考えればそうだろう。
だが、「物語として本当に無駄がなく、引き締まった作品だったのか?」と問い直せば、
僕は「否」と応えたい。
この作品は、「長かった」。もっと短くして、然るべきだったのに。


不満は主に後半に集中する。


「世界崩壊モノ」と、「ヒロイン衰弱モノ」。
この作品は一体どちらを描きたかったのか?といえば、当然前者だろうと思う。


ならば何故、後者「衰弱」ネタを入れたのか、そしてシオン一人を殺したのかが僕にはわからない。
世界の終わりを一人迎えるというテーマをライターが描きたかったわけではない。
それは、今まで散々しつこく「ヒロインの衰弱」を描いてきたライターが、ヒロインの死後あっさりと筆を置いていることでもわかる。


これはもちろん僕の好みだが、終わりゆく世界を二人で過ごしていくという、
無限の拡がりを持った形で物語を締めくくって欲しかった。

(ある作品の感想で、「どうして終わりまで書かないのか!」と文句をつけたことがあるので、ある意味ダブルスタンダードではあるのだが)。
この作品に関しては、終わりを書かないことで、二人のこれからをプレイヤーが想像できるような終わり方をしても、良かったと思うのだ。


ベターな幕の引き方は幾つもあったはずだ。

真夜とのお別れシーンで、筆を置いても良かった。
丘の上、二人のキスシーンで、筆を置いても良かった。
最後の宇宙船を二人見送るシーンで、筆を置いても良かった。
ヒロインが死ぬところまで書こう、というある種の真面目さ、律儀さがマイナスに作用しているように思えてならない。


敢えて最後まで書くのなら書くで、世界最後の日を二人で過ごすエンディングにしても良い。これはこれでロマンチックなのだから。
また、どうしてもヒロインを殺したいのなら、ラストひとりぼっちの世界で主人公が段々狂気にとりつかれていくという、救いのないエンドはどうだろうか。
何だか沢山の人からお叱りを受けそうな気がするが、とことんやるならこれくらいやっても良いだろう。


世界崩壊を一人で~というのがお望みなら、ここは敢えて選択肢を導入し、
主人公がシオンの願いを入れて、真夜についていく別エンディングを用意しても良かったのではないか。
これはこれで一つのドラマだし、僕はこの選択もまた有りだと思っている。
遠く離れ離れになり、もう二度と会えないと知りながら、お互いを想い続けるというのもなかなかドラマチックなものである。
せっかくラジオというアイテムもあり、真夜というジャーナリストもいたのだ。
真夜の設定を雑誌記者ではなく、ニュースなどに出てくるインタビュアーとして設定し、ラジオに登場しても良かったのではないか。


……ここまでやると荒唐無稽かもしれないけど、僕はエリカのラジオに関してはもっと活かして欲しかったなと思う。
終末の日、ラジオを抱えながら草原でキスをする二人の耳に、遠い宇宙の彼方から、
真夜の、そしてラヴィの声が聞こえるなんてのも悪くないと思う。
クロスチャンネルっぽい気もするが、パクリと叩かれるほどのレベルでもない(たぶん)。


と、ここまでひたすら終盤の展開について不満をぶちまけたのだが、根底にあるのは
『どうしてシオンだけを殺したの?』という疑問である。
「二人だけの世界」なら、「二人」最後まで一緒の方が、物語が終わった後も(終末までは)一緒だろうと信じられるようなエンディングの方が、
よほどロマンチックだと思うからだ。


第二の疑問。これはより小さな疑問だ。
シオンと亮の二人の生活は本当に『ラブストーリー』だったのだろうか。
僕は、微妙なラインだと思っている。
亮が達観しすぎていて、シオンは『守るべき存在』、『恋人』というよりは『娘』のように僕には思えた。
丘でのキス以降、ほんの少しシオンが『恋人』らしく見えたのは確かだが、
それまではどう考えても娘にしか思えなかった。


さて、最後に。気に入ったキャラは実はエリカである。
僕の中ではシオンは、主人公とエリカの娘的ポジションでしかないのである。
シオンはかわいい。それは認める。けど、「世界で最後のロマンチック・ラブ」の相手としては、あまり相応しく感じなかったのである。
(名前ド忘れした)上司や、ラヴィ、真夜も含めてサブキャラの生き様は実に魅力的である。
主人公は正直ピンと来なかったが、別にダメな主人公ではないし、シオンも上ではあぁ言っているが、悪くない。
キャラクターは全体的にポイントが高かった。


また、音楽の美しさについても触れておきたい。この物語を情感豊かに彩ったのは間違いなくBGMである。
OPムービーともども、十二分に役割を果たしたと言える。


それだけに、シナリオが残念なのである。
「はるのあしおと」、「ef」で鏡遊氏の作品には触れている。
細かくどのヒロインのシナリオを担当しているのかは知らないし、実はefはまだfirst taleしかプレイしていないのだけど、好印象を持っているライターさんである。
今回の「EDEN」は僕にとっていささか残念ではあったが、壊滅的にダメだったか?と聞かれたら無論そんなことはない。
その意味で、点数に対して、批判が厳しすぎると思われる向きもあるだろう。
要するに、それだけ期待していたのである。


余談だが、僕は「世界崩壊モノ」というジャンルが大好きだ。


ネビル・シュートの「渚にて」。これが僕の世界崩壊モノのベスト作品。
「エンド・オブ・ザ・ワールド」という名前で映画化もされているので、(何故か評判が悪いけど、僕は大好きである)是非そちらでもいいから観てほしい。
号泣間違いなしの名作である(と思うのだが評判は悪いw)。


続いて、ラリー・ニーブンの「悪魔のハンマー」を挙げたい。
これは世界崩壊後、原子力発電所を怖そうとする暴徒どもから、人類の叡智の集大成である原子力発電所を守ろうという作品である。
これに対し、世界崩壊後、善と悪の陣営が闘うスティーブン・キングの「ザ・スタンド」では、
原子力は悪の側の兵器であり、主人公は原発を止めようとするストーリーである。
震災以降、原発問題は改めてクローズアップされている。
この二作品を読んで、自分の理想はどちらの陣営にあるのかを考えるのも面白い。
僕はどちらかと言えば反原発の立場だが、そういう立場を超えてこの二作品は楽しめると思う。


ロベール・メルルの「マレヴィル」には滅びの美学とも言うべき、死の静謐さが描かれていて、これも大好きな作品だ。
アニメなら「最終兵器彼女」だろうか。「世界で最後の」ラブストーリーと銘打つなら
僕はこの作品が一番好きかもしれない。
このように僕はこのジャンルの作品群が大好きなのである。


と、これらの名作たちに比べて、EDENは物足りない。非常に物足りない。
設定を見ただけで「おっ、これはもう僕のストライクゾーンド真ん中だな!」と思ったし、OPムービーを見てそれは確信に変わったのだが……。残念である。