著者はマーガレット・ミッチェル。評価はA-。


南北戦争時代を舞台にした、南部女性の一代恋愛記。
なのですが、このスカーレット・オハラというヒロイン(主人公)、とんでもねー女ですね。
ここまでウザい主人公は珍しいです。
どこまでも自己中心的、他人への気遣いなどは毛頭なく、とにかく貪欲に利益を求めます。

金目当てで妹の恋人を寝取り、「妹は魅力が足りないから悪いのよ、私は悪くないわ」と開き直るその図太さに代表されるように、最初から最後までこの女はこの調子です。


そんなスカーレットも一人だけ、好きな男がいます。
アシュリーという名前の男性です。
このアシュリーに対してだけは、スカーレットも態度が少し違うんですよね。
そういう意味で、とても女性的な女性だと(偏見かもしれませんが)思いました。
 
自分の好きな男に対しては優しいけれど、それ以外の自分に言い寄る男に対しては、気遣うどころか
その愛情を利用して、とことん絞り尽くすところとかね。


スカーレットも乙女してんなーと思ったんです。アシュリーに対してだけは、一途だから。
それが……ねぇ。
最終巻で突然、「私はアシュリーのことが好きなわけではなかった」などと言い出すんだから堪りません。
もう、好感度がただでさえ底辺スレスレだったのに、地の底まで落ちました。
あんた、「アシュリーに対して一途」という一点以外に、好きになれる点が一つもないのに、その一つすら投げ捨てるとは・・・・・・。
 
ま、そんなわけで最低の主人公でしたが、そんな最低の主人公を擁していても物語は面白く読める、という
稀有な読書体験ができました。
たいていは主人公を好きになることで、その物語を好きになることが多い僕には、これはとても珍しいことでした。


個人的に、スカーレットはレット・バトラーのことが好き、ではないと思いますよ。
単にレットが去って行きそうになったのを見て、慌てただけ。
映画版ではいかにも相思相愛のすれ違いのように描かれていましたが、小説版では徹頭徹尾レット君の片想いだったと思います。


あのエンドは、誰にとっても幸いでしたよ。
スカーレットは、さほど傷ついていないし。
レット君は、最低女の甘い罠から無事抜け出せたという意味で苦い痛みを伴ったハッピーエンドと言えるでしょう。