評価は B。

感想を書く前に、前置きをさせていただきます。
まず、僕は『煙草』という存在を、心底憎んでいることをお伝えします。


なので、『煙草が大好き(別に吸うことが好きでも構いませんが、煙草という存在そのものが好きという)な方』 は
気分を害されると思いますので、お読みにならないでください。
この件に関して反論をいただいても、お返事はできません。
感情的ではなく、冷静な頭で対応できてこそ、議論というものは成り立つものですが、この件に関しては冷静でいられる自信がなく、喧嘩をしてしまいそうなので。


では。



この作品は、タバコ訴訟を扱った作品です。
『ヘビースモークが理由で、肺癌になり夫を失った未亡人が、タバコ会社に損害賠償を起こした』という設定のお話になります。

僕は、この題材を提示されると、いろいろなことを考えました。


「いくらタバコが害になるからといって、それを承知で吸っている人間が死んだからといって、損害賠償を払う必要があるのかどうか? もしこれを認めたら、お酒会社も、ジャンクフード店も、その他少しでも害になりそうなものは次々に訴えられてしまい、物が作れなくなってしまうのではないか?」
 
また、こうも考えました。

「いくら、承知で吸っているからといって、どう考えても害悪しかもたらさないものを売って、金儲けをして良いものかどうか? 麻薬を売っていいとは誰も思うまい。同じく、中毒性があり、健康に悪影響を及ぼすものなのに、なぜ、煙草は許されているのか?」 


この2つの問いには、答えはありません。 
要はバランスの問題だからです。 


この問題については、 本書でもそれなりには取り上げられていました。
ただ、この本にはかなり不満も持っています。


ひとつは、『副流煙』の存在に全く触れていないこと。
もうひとつは、「サスペンス性・ストーリー性」を重視するあまり、 タバコ会社を過度に悪役に仕立て上げてしまったことです。


前者ですが、僕はこの「副流煙」こそがタバコの真の害悪だと思うのです。
吸っている本人は自分の選択で吸っているかもしれませんが、吸わされる人間は、そんな選択などしていない。
一方的に、被害者なのです。


ぶっちゃけてしまえば、僕の感情としては、「主流煙で死んだ、この物語の死者に損害賠償を払う必要があるかどうか」は、何とも言えませんが、「副流煙で死んだなら、払って然るべき」かと思うのです。 
副流煙について一切触れていないのは、(ひょっとしてこの当時、そこまで研究が進んでいなかったのかもですが)手落ちだと思います。


次に、サスペンス性の問題です。
この物語では、タバコ会社を悪役にするために、評の買収はまだしも、不法侵入をしたり、恐喝をしたり、放火をしたりとやりたい放題です。
さすがにアメリカの法廷の現状は知りませんが、いくらなんでもここまでフリーダムではない……と信じたいです。もしこれが本当の姿なのだとしたら言葉もありませんが、僕としてはあまりにも度がすぎていて、白けてしまいました。


また、 いくらタバコ会社が憎いからといって、主人公たちのとった行動もあまり褒められたものではありません。
汚い手を使ってでも彼らを倒さなければならない、正義の戦いだったのかもしれませんが……おいおい、と思えるようなシーンが幾つもありました。
陪審員にしても、主人公とエレーラ大佐は明らかに不適格者ですし、こんなんでいいのか?と呆れてしまいました。
法廷のシーンは基本的に興味深く、面白く読めたのですが、タバコ会社が暗躍する下巻の序盤は眠気を感じ、 途中で読むのをやめようか迷うこともありました。


ラスト、タバコ会社をやっつける!という意味で、胸がすっとし、カタルシスを感じられたために70点をつけましたが、しかしそれは僕がタバコが大嫌いだからではないでしょうか?
タバコについて、好きでも嫌いでもない人や、タバコが好きな人は、この小説を読んでもカタルシスを感じることはできないのでは?
そう考えると、素直に高評価はしにくいです。



最後に。
少し重い話になりますが、僕は小学1年生から中学1年生まで、都合7年間イジメに遭いました。
理由は幾つかありますが、一番大きな理由は「クサい」からでした。
そうは言っても自分ではよくわかりませんでした。汗の臭いなのか、何なのか……。
中学生になって、ようやく解りました。それは、父親の吸うタバコの匂いが僕にも染み付いていたのです。 

「あいつに物を貸すと、クサくなる」と言われ、漫画を貸してもらうこともできませんし、「近寄るな、クサい」とも言われました。
父親に「家で吸わないでくれ」と何度も言いましたが、取り合ってはもらえませんでした。何度も大喧嘩をしました。
僕は、父親が嫌いではありませんが、その一点のみ、とても憎んでいます。


その後、父親は脳出血で倒れて亡くなり、母も脳出血で倒れました(一応生きてはいます)。
タバコの害の一つに、高血圧になるというものがあります。
無論、味の濃い料理が好きだったという事実もありますし、ストレスなどでも血圧は上がるので、脳出血の原因がタバコのせいかどうかはわかりません。
ですが、モヤモヤした気持ちは残っています。


そんなわけで、僕は煙草を憎んでいます。この世から消えてほしいとすら、思います。

まぁ、僕の親友にも煙草を吸う人間はいますし、Twitterなどで親しくさせていただいている方も何人かは喫煙者の方です。
僕の前で吸わなければ何も言いません。
マナーを守っている喫煙者の方まで、 叩く気はありません。


ですが、マナーを守れない人間というのはいるのです。
夜、仕事から帰ってくると必ず路上で吸っている人間を見かけます。
僕は彼らの側を、息を止めて通り抜けます。後ろから喫煙者が近づいてくる時は、走って距離をとったり、敢えて追い抜かせてやりすごすこともあります。
コンビニの前で吸っている人間を見かけると(これは灰皿をそこに置いているコンビニが悪いので、マナー違反ではない気がしますが)、そのコンビニには寄る気がしません。
正直に言ってしまえば、他人の迷惑を考えずに煙を吐き出す人間を、僕は軽蔑すらしています。


それくらいタバコが嫌いではあるのですが、それでもこの作品を読んだ感想としては、
「タバコ会社を悪者にして、安易に解決しちゃっていいのかよ」と思いましたです。

だって、この未亡人も、結構な食わせ物だと思いますもんw