★クロアチア 1勝1分1敗 得点4 失点3 攻撃 B- 守備 B+ 面白さ B- 総合 B

注目選手 CF マリオ・マンジュキッチ(63.3/3試合)

大会随一の試合巧者という印象だ。
幸運に恵まれたアイルランド戦の快勝よりも、むしろイタリア戦の後半、そしてスペイン戦の後半に
彼らの強さが垣間見えた。
それは、スルスルといつのまにかペースを握ってしまうペースコントロールの妙。
そして前線に構えるマンジュキッチに送り込まれる質の高いロングボール、クロスだ。
スペイン戦の後半にはGKまで上がっての全員攻撃を敢行。
熱い男、ビリッチ監督の魂が伝わる名シーンだったと言える。

一方、やや不満が残るのは、サッカースタイルの転換だろう。
Euro2008のクロアチアは、ラキティッチ、モドリッチ、クラニツァルを中心に、足元の技術を活かしたテクニカルで華麗なサッカーを見せてくれていた。
今大会のクロアチアは、中盤のメンバーはさほど変わっていないにも関わらず、泥臭いフィジカルサッカーへと変貌を遂げていた。
スペイン戦の前半でも見せたような、相手の中盤を潰すサッカーだ。

闘志溢れる激しいサッカー自体を否定するつもりはない。
だが、華麗さを失ってしまったのは少々残念である。
天才モドリッチが本領を発揮したのは、スペイン戦最後の45分間だけだった。




★オランダ 0勝3敗 得点2 失点5 攻撃 C+ 守備 C+ 面白さ C+ 総合 B-

失態を晒したA級戦犯は、ファンマルバイク監督だ。
2010ワールドカップ当時から、オランダのサッカーはロクでもないものだった。
前線のタレント能力だけに頼り、デヨング&ファンボンメルのフィルターがファウルで相手の攻撃を叩き潰すだけ。
だが、そのワールドカップでオランダは数々の幸運に恵まれ、なんと準優勝をしてしまった。
ワールドカップ準優勝。しかも、決勝では延長までもつれるほどの激戦。
やっているサッカーはつまらなくても、このままでいいんだ。
そんな誤った確信が、今回のEuro敗退の直接の原因なのだ。
考えてみてほしい。
あのワールドカップで当たった相手は、デンマーク、日本、カメルーン。
トーナメント1回戦のスロバキア、準々決勝のブラジル戦では前半のうちに相手にレッドカードが出され、オウンゴールまであった。
準決勝のウルグアイ戦では、相手の2大エースの片割れ、スアレスが出場停止に。
そして本来オフサイドだったゴールが認められての勝ち抜けではなかったか。

しかし、今回の相手はデンマーク、ドイツ、ポルトガルである。
相手の出場停止にも、オウンゴールにも、退場にも頼れなければこの結果は必然だ。

ファンボンメル&デヨングの中盤が調子を落とし、フィルターがかからなかったこと。ファンブロンクホルストの引退で、サイドに穴が開いてしまったことにより、2年前よりも明らかに守備力が低下した。

そして攻撃陣。
僕自身が当時オランダをどう書いたか、興味があればお読みいただきたい。
2年前当時と攻撃の印象は、まるで変わっていない。
ロッベン、アフェライ(当時はエリア)、スナイデル、そしてファンペルシー。
各々の破壊力は抜群で、個人技だけでも十分に相手に脅威を与えることができるメンバーが揃う。
だが、彼らが有機的に連携することはほぼ皆無で、特に前線のファンペルシーの切れ味の悪さは目を覆うばかり。
未だファンニステルローイの穴は埋まっていない、とは2年前にも書いた。

それならいっそファンペルシーをウイングで起用して、CFにフンテラールを置いてみては?と、
予想記事で書いた記憶があるが、結局ファンマルバイクはファンペルシーと共に心中することを選んだようだ。


僕は、それでも今大会のオランダをベスト8と予想していた。
それは、ポルトガルの力を甘く見ていたからだ。
だが、ポルトガルは僕の予測を遥かに超えた良いチームだった。

一方、オランダは、予想通りのパフォーマンスだった。
これでは勝ち抜けないのも、無理はない。



★デンマーク 1勝2敗 得点4 失点5 攻撃 B- 守備 B+ 面白さ B 総合 B+

注目選手 GKアンデルセン(平均68.3点/3試合)
      CF ニクラス・ベントナー(65/3)
      WG クローン・デリ(65/3)

ドイツ、オランダ、ポルトガルの死のグループに組み込まれながら、大健闘を見せたといっていいだろう。
GKアンデルセン、CBのキアル、アッゲルを中心にした最終ラインが見事に踏ん張り、攻撃陣、中でも大事な場面で2ゴールを決めたクローン・デリの勝負強さと、最前線でエースの重責を担い期待に応えたベントナーの活躍は見逃せない。
中盤の底、クビストやジムリングも好選手であったし、シモン・ポウルセン、ヤコブセンのSBのオーバーラップも見応えがあった。

一方、パスがあまり巧くない最終ラインでの繋ぎは、繋ぐ意識が高いこともあって、不安定なパスミスが散見された。この大会では致命傷にはならなかったものの、これは2010年以来の悪癖である。
また、期待されていたエリクセン、ロンメダルは今ひとつで、特に前者の切れ味が悪かったのは残念ではあった。
何より、ポルトガル戦。後半42分までリードをしておきながら、ヴァレラの一発に泣いたあの試合。
あと3分(+ロスタイム)を踏ん張り、引き分けのまま終えていれば、べスト8に進出できていただけに、本当に悔やまれる失点だっただろう。

大会前、列強3ヶ国ばかりを注目していた人もいるだろうが、そんな人たちを見返すだけのパフォーマンスを
今大会のデンマークは見せてくれたように思う。



★ロシア 1勝1分1敗 得点5 失点3 攻撃 B+ 守備 B- 面白さ B 総合 B

注目選手 WG アンドレイ・アルシャビン(平均70点/3試合)
       WG アラン・ジャゴエフ(60/3試合)

グループAで最大の実力を持った国であり、実際その実力もある程度の部分までは出せていた。
故に早すぎる敗退と言っても言い過ぎではないだろう。
だが、対戦相手に恵まれたグループAを突破できなかったという事実は、やはり深くかみ締めるべきである。

チェコを相手に4-1と圧勝した、あれこそがロシアの真の姿だろう。特に前半のパフォーマンスは見事で、
4年前の強いロシアを今大会でも見られると期待したものだ。
続くポーランド戦、そしてギリシャ戦・・・・・・。不思議と、ロシアが悪かった印象はない。
ただ、エンジンがかからず、のらりくらりとしているうちにいつのまにか負け(あるいは分け)ていた。そんな印象だ。
選手個々で見れば、アルシャビン、ジャゴエフの両ウイングは十分に持ち味を発揮していたといえる。
また、両SBのジルコフ、アニュコフもまずまずで、彼らには合格点が与えられるだろう。
GKのマラフェエフも特に問題はなかった。

一方、物足りなかったのが自慢であるはずの中盤だ。
デニゾフ、シロコフ、ジリヤノフのゼニト所属の3センターはロシア最大の強みだったはずだ。
彼らが「らしさ」を見せたのは、チェコ戦の前半だけだった。シロコフはチェコ戦、デニゾフはギリシャ戦で及第点以上のパフォーマンスを見せてくれたが、あくまでも日替わり。常に良質なパフォーマンスを期待したかった。
最大の失望はCFのケルジャコフだろう。とにかく点が決められない。シュートが枠に飛ばず、ゴールから完全に見放されていた。

返す返すも、チェコ戦前半の45分。あのパフォーマンスだけを良い思い出に残し、ロシアは大会を去った。


★ポーランド 0勝2分1敗 得点2 失点3 攻撃 B- 守備 C+ 面白さ B- 総合 C+

ポーランドを端的に表現するなら「ガス欠」。これに尽きる。
良い時間帯は確かにあるのだ。その時間には、ブラシュチコフスキがどんどん突破してきたり、
レバンドフスキが存在感を発揮したりもする。
ところが、その時間は長く続かない。その時間を過ぎると、反動が来たかのように疲労困憊してしまうのだ。
無駄走りが多く、体力が足りない。そんな印象である。

さすがといおうか、ドルトムント勢のクオリティは高かった。
だが、ギリシャ戦の露骨なホーム寄りの笛、そしてロシア戦でも審判に味方されておきながら。
そして何より、大国不在のこのグループを突破できないようでは、言い訳もできないだろう。
スムダ監督の弱腰の采配にも疑問が残る。
ギリシャ戦、相手が一人少ない時間もあったのに、どうして攻撃的なカードを切らないのか。

今大会のポーランドは「失敗」だった。そう思わざるを得ない。


★スウェーデン 0勝2敗 得点3 失点5 攻撃 C+ 守備 C+ 面白さ B- 総合 C

今大会べスト8進出を予想していた身としては、期待はずれと言わざるを得ない。
アウトサイダーと目されたウクライナと、相性抜群のイングランドに連敗。
グループ最強と思われるフランス戦を戦わずして敗退を喫したのだから、辛い評価にならざるを得ない。

世代交代に完全に失敗したというのが率直な印象だ。
元より4年前の2008年の時点で、とっくに限界は見えていた。
あれから4年、新しいタレントはまるでいなかった。
守備の要、35歳のメルベリが最も目立つようではダメだろう。
ウォルコットのようにスピード溢れるアタッカーを相手にすると、鈍重な守備陣はまるで無力だった。
中盤はある程度の構成力を保持していたが、サイドのエルム、ラーションは突破力に欠けた。
攻撃は構築からフィニッシュまで、全てイブラヒモビッチ一人に任せきり。
頼りになる相棒がいればまた違ったのだろうが、S級タレントの彼でもさすがにこれではどうしょうもない。
敗退は必然だった。振り返れば、そういうことなのだろう。


★アイルランド 0勝2敗 得点1 失点7 攻撃 C- 守備 C+ 面白さ C- 総合 D

注目選手 GKシェイ・ギブン(70点/2試合平均)

残念ながら全くいいところがなかった。
開幕戦、クロアチアを相手に不運な失点を繰り返すと、スペインには実力の差を完膚なきまでに見せつけられた。
敗因はやはり、工夫に乏しい攻撃にある。
前線へ向けてロングボール一本。 ポストに当てて、そのこぼれを拾うという戦術にも関わらず
そのポスト役が180センチのドイルや183センチのコックスでは厳しい。
その上、エースのはずのロビー・キーンは2試合通して精彩を欠いた。
ぱっとしなかったのはキーンだけではない。サイドのダフやマクギーディがもっと効果的なクロスを上げることができていれば。

守備に関しても褒められる点は少ないが、スペイン戦で魂のセーブを見せたギブンと、中盤で必死に火消しに走り回っていたアンドリュースの存在は、数少ない好印象を与えてくれた。