評価はA。
面白かったです。

物語は、5人の男女が絡む泥沼恋愛小説といった趣が強いですが、
そういうのが好きな人には堪らないですね。


奈緒美(ヒロイン格)→良一が好きで、結婚するも、良一の欠点に幻滅気味。

良一(男主人公格)→奈緒美も輝子も好きなので、奈緒美と結婚して輝子も愛人にしちゃうぜ!

輝子(ライバル役)→良一の愛人。

竹山(失恋役?)→奈緒美のことが好きだけど失恋。未練タラタラ状態で、京子と結婚。

京子(良一の妹)→竹山と結ばれる。


という、感じです。
そんな恋愛設定も面白いですが、テーマは『キリスト教的な、愛と赦し』です。

ろくでもない良一が更正していくという筋書きで、彼が更正し、キリストに赦しを乞うシーンでは
思わずぐっと感動してしまいました。
僕のような無心論者にも訴えかける、 三浦さんの筆力、ストーリーテリングの巧さは、さすが往年の人気作家さんと思わされます。

また、(やや京子の描写が薄い気はするけれども)、良一や輝子といった、どちらかというと「悪役に近い人」にも
共感させられる、心理描写にも目を見張らされました。
やっていることはひどいけれど、良一の孤独も、輝子の孤独も感じ取ることができました。
輝子が、ただのやな奴として薄っぺらく書かず、きちんとした一人の人間として描いていたことも好ましいです(三浦さんの作品は、登場人物を少人数に絞る一方で、一人ひとりをきちんと描く姿勢に好感がもてます)。


『愛とは、赦すこと』。
僕の乏しい恋愛経験の中で、どうしても赦せなかった女性もいました。
今どうしているかもわかりませんし、恐らく相変わらずなのだろうと思いますが、
彼女を赦すことができていれば、僕も彼女も、ひょっとしたら今とは違った形で生きていたのかな、とも思いました。

……まぁ、現実にはなかなか、良一のように綺麗に改心して真っ当になる人は多くないと思うので、
最初からある程度真っ当な人を愛した方がいいような気もしなくもないですが、
人間なんて、皆、多かれ少なかれいろいろな欠点を持っているもの。


欠点まで含めて、愛せるようになりたいと思いました。