シナリオ 120/150 キャラ 135/150 絵85/100 音 90/100 その他システム 80/100 印象 35/50
合計 545/650(歴代20位) ESにつける点 89
【共通するテーマ】
合計 545/650(歴代20位) ESにつける点 89
【共通するテーマ】
全ての章に共通するテーマは『夢』、ということになります。また、この作品ではその『夢』をより分かりやすい形で提示するために、芸術活動を強調した作りになっています。
そこで、便宜上、芸術活動に向かう者を主、それを側で力強く支える者を従とします(5組のカップルがいるわけですが、不思議と芸術家同士のカップルはいないんですよね)。
お互いがそれぞれ独立した夢を追うというベクトルではなく、内助の功を意識した組み合わせになっていますね。
「1章:『夢である仕事と、現実に直結する学校との選択に悩む少年の物語』」
主:広野紘(漫画)
従:宮村みやこ
1章は、夢と現実に悩む少年紘と、ゴーイングマイウェイな少女みやこが織り成す、青春物語。
夢を叶え漫画家という職業につけた紘。けれど、叶えられた夢は続き、1つの現実となっていく。
漫画家とは(他の芸術家と同様に)不安定な職業。
いつまで人気漫画家でい続けることができるかもわからない。
一方、学校に通い続けておけば、将来へのセーフティネットとして機能する。
学歴が全てではもちろんないけれど、それでも中卒(高校中退)と高卒では、選べる選択肢の幅が違う。
紘はその2つを両立させようと頑張るあまり、どちらも中途半端になっていく。
物語の結末で紘が選んだのは、『夢である漫画に専念するため、学校をやめる』というもの。
自ら退路を断ち、夢のために専心する決意をするわけですね。
今こうして振り返ると、1章の段階で既に、「ef」という物語の方向性を明示していたのだなぁと気づかされます。
そしてまた、紘が『現実に直結する』として切り捨てた学校生活自体を、
夢見ていた少女(千尋)がいたこともまた、心に留めておいても良いかもしれません。
対として、学問の天才でありながら、その才能の活かし方がわからず無軌道に生きていたみやこが、この1章のヒロインに据えられています。
みやこがきちんと学校に通うようになるというのが1章の結末なのですが……
紘が仮に売れなくなった場合に、セーフティーネットになるために大卒の学歴を得ることに決めたみやこ……と振り返ると、ちょっと夢がない気もしますね。
綺麗な言葉にしてみます。
1章をみやこ視点で見るならば、『どんな時でも紘の支えになるという夢』を得た少女が、前向きに将来を考え始めるエピソードということになります。
「2章: 2つの夢を失った少女が、新しい夢を見つけるまでを描いた物語」
主:堤京介(カメラ)
従:新藤景
『恋』と、『バスケットボール』という、2つの夢を失った少女が、新たな『夢』である恋を見つけるまでのお話です。
よく子供の頃からの夢と言いますが、移り変わっていく夢もまた多数あると思います。
そして余談ではありますが、『初めて結ばれた相手→結婚ハッピーエンド』とか、
『主人公に選ばれなかったヒロインが、新しい男性を見つけるシーンが描かれない』、
主人公絶対主義のエロゲーでは描けないテーマを持ち出してきたことは、評価したいと思います。
ただ……これは、本当に好き嫌いなのですが……efというゲームに登場する5人のヒロインのうち、景だけはどうしても好きになれませんでした。
そのせいで、2章に関してはどうも印象が薄いです。彼女のファンの方、申し訳ない。
景の対になるのは、『仲間たちとともに(馴れ合いながら)夢を追いかけていくのをやめ、1人ででも夢を追う強さを持った』少年、京介ですね。
恋愛面では、多数の女性と適当な関係を結んでいた彼が、真に愛する1人の女性に出会い~という流れですが、これは4章の久瀬さんと重複でしょうか。
ここまでがFirst Taleの物語で、ここからがLatter Taleの物語となります。
(注:First taleの物語は、約1年半前にプレイした記憶を基に書いています。間違いがあるかもしれません。
ディスクが見当たらないので、再プレイできないので:苦笑)
「3章:やり始める前から夢を諦めていた少女が、夢に向かって踏み出す姿を描いた物語」
主:新藤千尋(小説)
従:麻生蓮治
「13時間の記憶障害」という特殊なギミックに目を奪われてしまいがちですが、本質は今までの物語と何一つ変わっておりません。
この章では、重度の記憶障害のために夢を諦めてしまった少女が、蓮治という強力なサポーターを得て、再び夢に挑み始める物語となっています。
対になるのは、千尋と同じ夢を持つ蓮治。
ですが、才能にはだいぶ差があったようで、蓮治は千尋を支えるという新たな夢のもと、これからも精一杯頑張っていくことになります。
バックアップメモリである「手帳」や「PC」が壊れたら、このカップル(と言っちゃっていいですよね?)は大丈夫なのかと、めちゃくちゃ不安になるのではありますが……。
「4章・最終章」
ここからは少々特殊な作りとなっておりまして、現代編にあたるミズキ編の中に、過去編である優子編が組み込まれ、交差する形になっています。
しかし感想でそういうトリッキーなことをするのもどうかと思うので、ここでは、ミズキ編→優子編の順に書こうと思います。
「ミズキ編:死期が見え、夢を続けることをやめてしまった青年が、再び夢を掴む物語」
主:久瀬修一(音楽)
従:羽山ミズキ
かつて大成功を収めるも重病が発覚し死期の見えてしまった久瀬が、ミズキの支えによりエネルギーを充填し、ささやかな夢を再び見つける物語。
大舞台ではもう演奏できなくとも、限られた周囲の人へ素敵な演奏を届けることはできる。
そうして、幸せな余生を送るという、切ないながらも一応ハッピーエンドを迎えるのが、このカップルの物語です。
『精算』のために、ミズキを遠ざけようとする久瀬の行為は行き過ぎなのですが、それをも受け入れ、彼の愛を信じたミズキの健気さには胸を打たれました。
最年少ヒロインではありますが、包容力を持つミズキだからこそ、久瀬の支えになることができたのだと思います(ミズキちゃん可愛いよ!!)。
「優子編:恋人の死を乗り越えた少年が、数ある夢の中から最も自分が進みたい未来を選ぶ物語」
主:火村夕(建築)
従:雨宮優子
長年義兄から陵辱にあっていた優子の壮絶な過去や、未来(ミズキ)を助けて亡くなってしまうその最期など、実にドラマチックな物語。
ですが、テーマに沿って骨子だけを取り出すならば、
「多芸多才で様々な未来があるあまり道を決めきれなかった少年が、恋人の死をきっかけに、建築という夢を見つける物語」ということになります。
「どんなに突飛な夢でも、途方もない夢でも、信じ、それに向けて前進していけば叶う日が来る」という、
ある種のおとぎ話が『ef a fairy of the two』というゲーム自体のテーマであり、物語になっているわけですね。
「音羽が2つある(かもしれない)」というギミックは3章の段階で気づけましたが、
そのもう一つがオーストラリアにある、というのは率直に言ってぶっ飛びました。
その荒唐無稽な設定に一瞬怒りさえ覚えたのですが、実際最後までプレイするとその突飛さこそが大切だったことに気づきます。
また、あれだけ壮絶な過去を背負いながらも、『完全には』壊れなかった優子には、本当に強さを感じます。
4章のミズキもそうなのですが、妹が死んだという過去1つで(もちろんそれも大きな傷ではあります)壊れてしまう雨宮兄や、足踏みを繰り返す夕と比較して、
女性陣の強さ・気丈さがよく出ているなぁと。
2人もレイプされたヒロインがいながら、(ミズキのあれもレイプですよね)2人とも気丈に振る舞える。
それどころか、相手を許すことができる(優子は、「完全には許せない」とは言っていましたが)。
単純な力の強さや、あるいは何事をもやり遂げる意志の強さは割と頻繁に描かれる「強さ」ですが、
こういう懐の深さ、全てを包み込む「強さ」はあまり描かれることが多くないので、印象に残りました。
夕と再会した屋上のシーンでの、「あなたを恨んでいます」という言葉は、優子に(雨宮兄を超える)包容力がなければ現実になっていても(=夕を恨んでいても)おかしくありませんでした。
ここからは、シナリオテーマ以外で、他に思いついたことを軽く書いていきます。
『音楽について』
このゲームは、音に関して独特の演出を行っています。
いつから生まれたお約束かは知りませんが、ほとんどのエロゲ・ギャルゲにおいて、音楽はほぼ常に鳴り続けているものでした。
ヒロインが出てくればヒロインのテーマ曲、日常シーンでは日常曲、ギャグシーンではとぼけた曲、バトルになれば熱い曲、泣けるシーンではしんみり曲といったふうに。
ですが、このゲームではかなりの割合を、曲の流れない無音の時間が占めています。
正直に言って、音を使わない演出が、これほど効果的だとは思いませんでした。
ここぞという場面では、無音の状態から印象的に曲を使用することで、シーンの演出力を数倍にまで高めています。
ずっとほとんどの場面で音楽が流れていなければいけないという、妙な『お約束』を覆すだけでこれほど効果を得られるとは、目から鱗が落ちた思いがします。
『距離感について』
このゲームに登場するカップルの距離感は、とても心地良いものでした。
これを言葉で表現するのは極めて難しいのですが、何と言えばいいのかなぁ。
相手を、1人の人間としてきちんと認め、信頼した上で、親密に付き合っていく感じというか。
相手の心に土足で踏み入ったり、ベタベタしすぎて距離を『ゼロ』にしてしまうのではなく、すっと寄り添う感じと言いましょうか。
個人個人のパーソナリティがしっかりと確立された上で、1人と1人が合わさってカップルになっている感じ……。
……うーん、一応努力してはみましたが、伝わっている自信はあまりありません。
言葉にならないものを言葉で表現しようとするのは、非常に難しいですね。
『最後に』
萌えゲーとしてもレベルが高かったように感じています。
みやこ、ミズキ、優子の3人は大好きレベルで好きになりました。
5人中3人が、(好みをS~Eで表して)A評価以上というのは、なかなかあることじゃありません。
みやこの小悪魔的魅力と著しい不安定さ(first taleの感想で書きました)、
ミズキの健気な可愛らしさ、
優子の軽妙な語り口と、壮絶な過去からくる心の闇。
平面的ではない、しっかりとした存在感を持った良質なヒロイン像が描けていたように思います。