* 本記事は辛口感想らしいので、そういうのが嫌いな方は読まないことをお薦めします。
読んだ結果、気分を害されて、中傷の類を送ってこられても対応しませんのでよろしくお願いします。




まずは採点から。
シナリオ110/150 キャラ105/150 絵80/100 音 90/100 その他システム 65/100 印象 30/50 
合計 480/650(80位/約150ゲーム中) 


 【前置き】
このゲームよりも、プレイ時間が長いゲームというのはいくらでもあります。
しかし、ここまで『長い』と感じたゲームは未だかつてありませんでした。
主人公の雄二が学園へと馴染んでいく過程を、コント的な小イベントを連続させて描いた共通ルートは、
なるほど、確かに割と笑えます。
ですが読み始めて、10時間経っても物語が動き出さない……というのはさすがにやりすぎではないでしょうか。


地味に痛かったのは、好きになれるキャラクターが少なかったこと。
主人公の雄二はいくらなんでもズレすぎで、なんでもミリタリー関係に持っていこうとする彼の会話はちっとも面白くありません。


また、このゲームには、みちるや学園長をいじって笑いをとるシーンが割と多いのですが、たまに度が過ぎると感じるシーンがありました。
特に蒔菜に顕著でしたが、雄二や幸にもそういうところがあって割と不愉快でした。
みちるが「おバカないじり役」であることは周知の事実だし、彼女をいじればギャグになるというのもわかります。
実際、結構笑えますし。


ですが(メモをとっていないので詳細には書けませんが)、「仲間はずれ」を思わせるような発言はやりすぎではないでしょうか?
「他の人のことを思って寂しかったけど、みちるのことは思い出しもしなかった」とか、
その手の発言が確実に3回はあったように記憶していますが、さすがにこれは冗談にしても悪質で、笑えないと思います。
蒔菜ルートの覆面会議でも、千鶴に対して行き過ぎた「いじり」があって不快でしたし(この時も幸の性格が悪かった)、
度を過ぎた「いじり」は「いじめ」と変わらず、笑えません。


特に大事でもない場面で、「あぁ、こいつら性格悪いな……」と、感じてしまい、キャラクターを好きになれなかったのは
割と痛かったように思います。


では、攻略した順に感想を書いていきます。



・蒔菜 C-

このシナリオを最初に持ってきたのは失敗でした。
前述の理由から、蒔菜には苦手意識を持っておりまして、正直この無礼な小娘が嫌で嫌で仕方がなかった(ファンの方、超すみません!!)。
そんなわけで、「あまり美味しくなさそうなものから、いただくのよさ!」と始めましたが、危うくゲームをやめてしまうところでしたわい。


クリアして真っ先に思いついた感想としては、「とにかく冗長」。
共通ルートの途方もない長さは、ヒロイン達と雄二の関係性を丁寧に描く役回りを果たしていましたが、
その調子で個別ルートまで書かれるといくらなんでもあくびが出ます。


例えば「バイクを見つけ」てから、「実際にバイクに乗る」までのあいだのメンテナンス作業を、
バイクの専門用語を交えて200行以上も使って描写しているシーンがありますが、
こんなのはムダもいいところです。
物語上全く必要のないポイントだし(バイクのメンテ不足や、メンテに伴う時間の経過が物語に何か影響するのかと思いましたが、そんなこともなかった)
バイクマニア以外の人間が楽しめるような描き方にもなっていません。
ライターがバイクを好きなことはわかったが、読まされるこちらの身にもなってほしい。
こういう言い方は好きではありませんが、ライターのオナニーに付き合わされるのは勘弁です。


主人公とヒロインの関係性についても、(これは単に好みの問題かもしれませんが)
最後まで蒔菜が『被保護者』以上のものになりきれていなかったのが大いに不満でした。
あくまでも雄二が保護者で、蒔菜が被保護者。
実際には年が2つくらいしか違わないはずなのに、蒔菜は雄二を『パパ』と呼び、甘え、
そして最後まで何一つ、雄二の役に立ちません。
あまつさえ、鉢植えを取りに行くなどという、頭のネジがズレた行動で雄二の足を引っ張った時は、心底キレかけました。


グッドエンドを見て、ヤレヤレとため息をつき、バッドエンドも回収。
バッドエンドでは雄二が亡くなってしまうので、雄二離れが出来ているものかと期待してみたら、より悪くなっていますし……。


そもそもこの2人の間に、およそ恋愛感情なるものが存在したとは僕には到底思えませんでしたし、
蒔菜を守りたいという気持ちにも最後までなることができませんでした。


それなりに人気のあるシナリオに対して使うのは勇気がいりますが、
正直に言って、ドギツい描写以外に見所のない、駄シナリオだったと思います。



・幸 B+

『良質な素材に、スパイスをびっしり振りかけたら失敗。でも、素材自体が美味しいから何とかなった!』という印象のシナリオ。
割と楽しめましたが、紙一重のところだったかもしれません。


このシナリオは、本来親娘のすれ違いを描いた、「何てことはない、小さくて平凡な。それでいて、暖かい物語」だったと思います。


ところが、それではインパクトに欠ける、ドラマ性に欠けるとライターは考えたのか、
妙に盛り上げよう、盛り上げようと頑張っている姿が目立ちました。
盛り上げを重視しようとするその姿勢は空回り、不自然さも見受けられます。


最大の問題は、最後の選択肢。いや、選択肢前の雄二の発言でしょう。
「殺さなくてはいけない」。


幸は、極めて視野の狭い、思い込みの激しい少女です。
プレイヤー視点で見れば、幸の両親が幸を嫌っているはずがないことは明白で、
ただ幸だけがそう思い込んでいます。
そんな幸に向かって、あぁいう深刻な誤解を招くようなことは普通、言いません。


なお、最後の選択肢は「母親を殺す」で正解です。
正解というか、「自分を殺す」は完全な間違いなので、消去法にすればそれしか考えられないというのが実際のところ。
まさに国語のテストそのものの選択肢で、ここでは幸ルートのテーマをプレイヤーが本当に理解しているのかを尋ねているのではないかと。


幸は、今まで「自分」を殺して生きてきました。
そんな幸が、新しい一歩を踏み出す物語において「自分を殺さねばならない」という選択肢は当然誤りになります。


ただ……そうは言いましても、ね。
そもそも雄二があんな誤解を招くような発言をする必然性は、実際まるでないわけで。
物語をドラマチックに、そしてテーマを強調するためにのみ発された雄二の発言はいかにも作為的で、
主人公の無能さを強調してまで、書かれるべきセリフだったのか、疑問が残るところです。


作為的といえば、学校の破壊もです。
より詳しく言えば、学校の破壊そのものは良いのですが、学校の破壊を生徒たちに伝えていなかったところが問題だと思います。


恐らくプレイヤーにこの後の展開を予測しにくくさせるため、そして生徒たちと一緒に驚いてもらうため、意図して伏せたのだと思いますが、
普通に考えれば、こんな大事なことを生徒たちに隠す方がおかしい。

盛り上げよう、盛り上げようとして、リアリティを欠く展開にしたのはライターの腕不足を感じます。


ただそれを差し引いても、幸ルート自体が本来持っている「おうちに帰ろう」という暖かなテーマは
プレイヤーを感動させるに十分ではあるし、幸の持つ狂気自体は非常に巧く描けていました。


「言われたとおり、早寝早起きをする良い子ですから」


幸ルート前半のこの台詞が発する狂気、それを聞いた時、ぞくっと背筋に寒気が走りました。
そんな経験はなかなかできるものではありません。
エンディングでの感動も含め、一定の評価はしたいと思います。



・みちる B+

良いシナリオでした。


とりわけ良かったのが、『過去からの電話』。
『立ち絵つきの親友(以下、親友と呼称する)』へ向けた電話だと、僕は疑いもなく信じました。
なのに、まさかあそこに繋げてくるとは。
ちょっぴりファンタジーだけど、ここで「なぜ?」と考えるのは野暮でしょう。
優れた物語にはたいてい、グッと引き込まれるシーンが存在するもので、みちるシナリオの『過去からの電話』は
まさにそんなシーンでした。


ラストへの展開も地味に評価したいポイントです。

ありがちなパターンとしてすぐに思いつくのは、『もう一人のみちる』の正体を『親友』ということにし、
ラストで『親友』から卒業するという形。
僕などが書いたらきっとこんな感じの話になることと思います。
これはこれで良い話にはなるものの、特に目新しさのない、手垢のついたストーリーラインです。


この物語ではそうせずに、『もう一人のみちる』の正体をズラすことによって、
『擬似ハーレム(2人ではハーレムとは呼ばないか)』エンドを作りあげることに成功しました。
重いシナリオが多いこのゲームにおいて、幸せな結末を迎えることができたのは、このアイディアのおかげでしょう。


ラストの演出も泣くところまではいかずとも、暖かい気持ちになれてとても良かったです。


一方、ちょっと気になる点もあります。
最も気になったのは、「大切な箱を見つけるシーン」での幸の強引さです。
箱を見つけないと話が進まないのはわかるが、幸はあそこまで空気が読めないお節介キャラだったでしょうか?
もう少し巧い方法で、雄二が箱を見つけるよう仕向けられなかったのでしょうか。
この辺の処理は割と雑で、もう少し説得力ある展開を期待したかったところです。


【また、楽々と言葉の壁を超越しているのはやはり気になります。
アメリカ人であるはずの「彼女」やその親が、どうして日本語でみちると会話できるのでしょうか。
そもそも相手を『アメリカ人』にする意味はどこにもありません。】

→この部分は、通りすがり氏のコメントにより疑問が解消されました。
有益なご指摘、感謝いたします!
 


このような粗さえなければ、更に素直に楽しめたのですが。



☆由美子ルート  B-


批評空間では随分と不評なこのルート。
ビビりながらプレイしてみましたが、至ってフツーでした。
そんなに言われるほど悪くないじゃんと思う一方で、
必死になってこのルートの良さを力説したいような出来でもないという……。


他シナリオと比べて、良かったのは恋愛描写ですね。
蒔菜、みちる、幸、天音。
どのルートでも、雄二とヒロインの間には保護者―被保護者という関係性はあれど、
お互いを支え合うパートナーという意識が欠けていたように思います。
幸に関してはまだ、回想シーンでは『支え合う』ことができていたのでいいのですが、
蒔菜やみちる、天音に関しては、あくまで雄二が導いてあげる側。ヒロインが導いてもらう側という分業体制が貫かれており、
なおかつ雄二がヒロインを好きになる描写が弱いため、恋愛モノとして見ることが難しかった。


一方このシナリオでは、由美子自身、雄二に守られることに罪悪感を覚え、(お嬢様ゆえなかなか思うようにならないながらも)
何とかして対等であろうとする意識が見えたし、雄二が由美子を好きになる過程も、他シナリオに比べて自然に描写されていたので、
恋愛モノとして見ることができた。
由美子自身の可愛らしさも相まって、キャラクターノベル、萌えの強度はこのシナリオが一番でした。


物足りないのは、『インパクト』が少なかったことでしょうか。
蒔菜ルートのようなドギツさもなければ(僕はあのドギツさはあまり好きではないが、印象には残る)、
幸ルートのような静かな狂気もなく、みちるルートラストのような心がほっこりとするようなシーンもない。
無難、を地でいくようなシナリオで、もう少し何かあっても良かったのにとは感じました。


ま、でも由美子に萌えたので、最低限の満足は味わえましたよっと。




☆天音ルート A-


本作の中で、最も気に入ったルート。
ではあるのですが、手放しで褒めて良いかと聞かれると、割と難しい。


天音ルートでよかったところを挙げると、一も二もなく「エンジェリック・ハウル」(天音の回想シーン)です。
逆に言うと、「エンジェリック・ハウル」前の現代話は、やけにウェット(雄二ベッタリ)でそのうえ下品な天音に
ウンザリさせられ、お世辞にも読み口が良かったとは言えません。
下品なのとエッチなのは違うと、今すぐ天音ちゃんに言いたいです。


「エンジェリック・ハウル」における、サバイバル描写のリアリティはなるほど一読の価値があり、
(雄二なんかよりもよほど魅力のある)一姫という主人公格の少女と天音、そしてバスケット部の部員たちが織り成す
極限状況の生活は緊迫感もあり、本作の中でも読み応えのあるシーンでした。


ただ一方で、「そうは言うても、回想シーンなのよさ。現代の物語だけを抜き取ってみたら、しょうもない話なのよ?」というのも
また事実でありまして、


『天音が雄二にベッタリ→天音、辛い過去を告白【エンジェリック・ハウル】→キモいおっさんが襲ってくるけどあっさり返り討ち→エンディング』という
構造を抜き取ってみると、いかに「エンジェリック・ハウル」の部分が優れていようとも、手放しで賞賛して良いものだろうか?とも
思ってしまうのです。


【その他感想】


このゲームを一文で表すなら、『社会生活から阻害されたヒロイン達が、雄二に問題を解決してもらう話』となります。

どのシナリオでもほぼ共通なのが、『親との関係で問題を抱え、社会からも阻害されたヒロイン』という構図で、
必然的にどのヒロインにも過去回想話が重要になってきます。


何か過去に不幸があって、結果「美浜学園」に通うことになるわけなので、仕方ないといえば仕方ないのですが、
この辺の構造は少々ワンパターンだったかなと感じました。


特に、ほぼ全てのルートで、親の虐待・愛情不足の問題が関わってくる(幸の場合はすれ違いですが)のは少々不自然で、
何か意味がありそうなのですが、
天音ルートに関しては彼女の親はクローズアップされませんし、正直よくわかりません。


また、(そういう人たちは実際にもそれなりの数いるのでしょうが)、ヒロインの過去エピソードに出てくる周囲の人々が皆、ゲスいのもどうかなと。
渡る世間はゲスだらけというか、ここまで頭のおかしい人々が多いのかしら?とも。
そうなのかもしれませんが、あまり認めたくはないですねぇ……。


【総評】

5ルート中、3ルートが(大当たりではないものの)当たり。
にも関わらず、苦手なキャラクターの多さと、あまりにも冗長なテキストが災いし、どうにも点数が伸びませんでした。


大体、ここまで無駄に文章を増やすなら、
三部作などにせず、一本のソフトにまとめられなかったのでしょうか。


物語には適切な長さというものがあって、当然、長大なボリュームを費やさないと描けないテーマというものもあるでしょう。
ですが、今回の「グリザイアの果実」という物語を描くのに、ここまでのボリュームが必要だったかと聞かれると、
必要なかった。と思うのです。