マカロニ・ウェスタンや西部劇の世界には全く興味がなく、
好きな虚淵さんがライターをしているというだけで突撃したのだから、『合わない』のはある程度折り込み済みではありました。


気に入ったシーンは、
①「イライザと姉のやりとり」&それに対するミス・ノーバディの反応。
②イライザが正体をバラした時に、ジュリアンが涙するシーン。
③大金を得たイライザがジュリアンのもとにかけつけ、撃たれながらもスイートウォーター賛歌を歌うシーン。そして合唱。


これって、マカロニ的な部分じゃない(僕の狭い認識では。ひょっとしたら僕の偏見かもしれません)よなぁ、とも思ったりしなくもないですが。


①は、初めてイライザやミス・ノーバディの心の機微に興味が持てたシーンです。

②は、そのまま引用してしまいますね。


当然、事実を知ればこの青年はきっと無様に泣きじゃくるだろうと、そうイライザは予想していた。
だが、彼の涙は――イライザが思い描いていたそれとは違う。
目を伏せることもなく、毅然と切り結んだ口元を歪めることもなく、ジュリアンはただ真っ直ぐに前を向いて泣いた。
その姿はまるで無様ではなかった。哀れさとは程遠かった。
そんな泣き方をする男を、イライザは見たことがなかった。
止めどなく湧き出る涙とはうらはらに、その双眸に秘められた決意の色は微塵も揺るがず――
むしろいっそ磨かれて輝きを増したかにさえ見える


やっぱり文章が巧いなぁ、と。
一番ヒロインっぽいヒロイン、ジュリアン君の魅力が非常によく出たシーンでした。


③は、イライザの心変わりが唐突な気がして、少々違和感はありました。
「全然西部劇っぽい展開じゃない(けど、いいの?」と。
ただ、これを待っていたという気持ちも強くありまして。
盛り上げてきたなぁ、と。イライザのカッコ良さを堪能できて、嬉しいは嬉しかったです。


不満は、イライザとミス・ノーバディの活躍に比べ、リリィの存在感が少々薄かったかなぁと。
見せ場のシーンもあまり思いつきませんし、悪役(?)に回るならラスボス級の大太刀回りを見せても良かったんじゃないかなーと思います。
まぁ、『俺たちの闘いはこれからだ!』ENDも嫌いじゃないですし、
リリィをラスボスにするとその辺の処理が難しいのかもしれませんが。


余談になりますが、
ジュリアン君の

『貴方を想う僕がいると――そう知った上で、これから貞節を守ってくれるなら、いいんだ。たとえ女として純潔でなくても、花嫁としては純潔だ』。

という言葉を処女厨(単なる処女好きを通りこして、狂信的な人たち)の人に聞かせたいなぁとちょっと思いました。