あまり比べてもいけないのでしょうが、どうしても比べてしまう前作『あやかしびと』の存在。
まずは、前作と比較してどうだったか。
最後に、総評をしていきたいと思います。
総評の部分には「あやかしびと」のネタバレはありませんので、前作のネタバレを嫌う方は下にスクロールして、総評部分のみお読みいただければと思います。
総評の部分には「あやかしびと」のネタバレはありませんので、前作のネタバレを嫌う方は下にスクロールして、総評部分のみお読みいただければと思います。
【前作との比較】
(アルファベット評価はS~E)
あやかしびと bullet butlers(以下『BB』と略します)
(批評空間への点数) 83 79
(主人公の魅力) A B-
「あやかしびと」の双七君は、泣き虫というファクターが実に良い味を出していました。
「BB」のリックも主人公として問題のない良キャラでしたが、双七君ほどのインパクトはありませんでした。
(敵の魅力) A+ B
「あやかしびと」はドミニオンの光念兄弟や氷鷹姉妹、九鬼先生に至るまで多士済々。
「BB」はレイスに惚れ、ギュスターヴも悪くないものの、シド、アルフレッドはイマイチ感。
(ヒロインの魅力) B+ B+
「あやかしびと」、「BB」共に、萌え転がるほどではなかったものの十分に魅力的。
甲乙つけがたいが、敢えてどちらかと聞かれれば「BB」を推したい。
理由は「あやかしびと」のメインである「すず」よりも、「BB」のメインである「セルマ」の方が好きなため。
(サブキャラの魅力) A- A-
個人的にイチオシの「おっちゃん」をはじめ、さくらや虎太郎先生など「あやかしびと」は脇を固めるサブキャラも魅力に溢れていた。
今回の「BB」においてもこれは健在で、個人的にはガラさん&プーキーコンビが良かった。レイスの恋人のヘルさんやコゼット、キャロルにアッシュも素晴らしい。
(テキストの魅力) A- A-
基本的に読みやすく、飽きにくいテキスト。「あやかしびと」の時は、東出さんの癖(「どこどこまでも」など、頻出する文章)が気になったが、
今回の「BB」では改善されていた。
一方で、(好きな人もいるだろうが)厨二病的な漢字&フリガナが少々行き過ぎているように感じられたのはマイナス。
(序盤の牽引、中だるみなど) A A-
「あやかしびと」は、主人公の戦う理由が序盤から印象的に表現されており、すぐに引き込む魅力があった。
「BB」は、主人公の戦う理由が『皆を守りたい』なので、皆との絆が存分に描かれ、主人公の気持ちに同調するようになるまで少々時間がかかった。
一方、『中だるみ』に関しては「あやかしびと」の方が強く、「BB」ではあまり感じなかった。
(音楽など) B+ B-
BGMでは、「あやかしびと」が優勢。「BB」はバトルシーンの音楽がカッコ良かった(ボイスつきのやつ)けれど、切ないシーンの曲は「あやかしびと」の方が遥かに良かった。
ボーカル曲は前作、今作ともに正直イマイチ。
と、こういう感じで、ほとんどの項目が「前作」の勝利という寂しい結果になりました。
とはいえ、S~Eランクでの採点であり、前作の存在を度外視すれば決して悪くないゲームであったこともご理解いただけるかと思います。
プレイして損はないのですが、やや小さくまとまっちゃったかなという印象を受けました。
【総評】
これだけのボリュームでありながら退屈な時間がほとんどなかったのは評価したいポイントで、
厨二病的フリガナにややイタさを感じるものの総じて良テキスト。
また、味方キャラは誰もが魅力に溢れ、イヤミなキャラ、不快なキャラがいなかった点も評価したいです。
ヒロインのセルマさんも可愛いし、脇を固めるガラさんやアッシュ、キャロルにコゼットなども良いですし。
この辺りは「あやかしびと」でもそうだったんですが、『萌え媚び』ではない、穏やかで楽しい日常を書いてくれるのは嬉しいです。
今回残念だったのは、『バトル』&『敵の魅力』でしょうか。
『ラッカー』として差別を受けてきたセルマが、エリートであるシドとの権力争いを戦うという熱い展開を期待していたのですが、
結局どのルートでもそれが実現しなかった。ここが最も失望したポイントです。
他の2ルートでは、シドは脇に追いやられてしまいますし、最終ルートではただ力任せに暴れるだけというのは、あんまりにもあんまりだなぁ、と。
戦友たちとの絆もいいですが、本人も自覚しているとおりあれではただの八つ当たりですし、
「迷惑に暴れまわる人を、力で鎮圧」というだけでは燃えられません。
「戦争が生み出した怪物」という流れで魅せるには、大物特有のオーラ、狂気なども感じられず、小物すぎたと思いました。