コンフェデレーションズカップも終わりました。
最後にベスト4に勝ち上がった各チームの感想を書いてみます。


☆ブラジル

優勝したからいうわけではなく、今大会で最も収穫のあったチームがブラジルだと思います。


◎1:勝負弱さの払拭

コパアメリカ2011(パラグアイ戦)、ロンドン五輪(メキシコ戦)と、ブラジルは試合を押し気味に進めながらも相手チームに粘られ、終わってみれば負けてしまう姿が目立ちました。
しかし今大会では、予選リーグメキシコ戦、準決勝のウルグアイ戦と同様に粘られながらも、勝ちきる強さを手に入れたのが特に印象に残りました。これは来年の本番に向けて大きな武器になると思います。


◎2:ポゼッションとショートカウンターの両立

もともとショートカウンターの威力には定評のあるブラジルでしたが、今大会ではポゼッションのチームに変貌を遂げていました。
ではショートカウンターは封印されたかというと、決勝のスペイン戦ではネイマールを軸に鋭い速攻も見られ、「どちらもできる」チームであることを印象づけました。


◎3:勝負どころでの集中力

サッカーでは、前後半開始5分と前後半終わりの5分をよく「魔の時間帯」といいます。
これは、立ち上がりor終盤という「気が緩みやすい」時間な上に、この時間帯にゴールが決まると
出端を挫かれやすい、意欲を削がれやすいことからです。

さて、今大会のブラジルの得点を振り返ってみると。


VS日本 前半3分、後半3分、後半ロスタイムで3-0
VSメキシコ 前半9分、後半ロスタイムで2-0
VSイタリア 前半ロスタイム、後半10分、後半22分、後半43分で4-2
VSウルグアイ 前半41分、後半41分で2-1
VSスペイン 前半2分、前半44分、後半2分で3-0


と、この「魔の時間帯」に得点が集中しています。
ここまで偏るというのは偶然では考えにくく、チーム全体を通して「意識づけ」をしていることが伺えます。
そしてもちろん、意識をしただけでなくきちんと「ゴールを決めている」。
ブラジルの強さを象徴している数字だと思います。


◎4:活躍した選手

まずは何と言ってもネイマールでしょう。
大会MVPに選ばれたのも当然の圧巻のパフォーマンスでした。
彼のスピード、ドリブル、得点力は本当に卓越したものがあります。

前線では大会得点王にも輝いたフレッジの決定力はお見事。
来年の大会でもエースとしてブラジルの前線を引っ張ることになると思います。

右ウイングのフッキは、やっとチームに馴染んできた印象です。
今まで彼は全く良くなかったのですが、今大会では課題だった球離れの悪さも少しずつ改善されてきました。
まだ満点とは言えませんが、ようやく戦力として計算できるようになってきました。

中盤の要、パウリーニョは新たな発見でした。
守備と前線を繋ぐ、考えようによっては最も大切なポジション。
それもブラジルの弱点であるポジションで存在感を放ちました。
ブロンズボール賞(MVP投票で3位)も納得です。


唯一不満が残ったのは、オスカルでしょうか。
ブラジルの中では間違いなくワーストでした。
もっとも、オスカルの所属するチェルシーは、恐らく今シーズン最も多くの公式戦を戦ったチーム。
疲労が残っていたのかもしれません。
そう考えればエクスキューズもありますが……もっとも、チェルシーは昨シーズンも最も多くの公式戦を戦ったチームなので、チェルシーにいる限り改善されることはないのかも……。
DFのダビド・ルイスもチェルシー所属でしたが、今大会は良かったですし……。


後は、迷信じみてきますが、コンフェデで優勝したチームは翌年のワールドカップでは活躍できないという
ジンクスが気になってくるぐらいでしょうか。


とにかく文句のつけようがない優勝だったと思います。


☆スペイン

新しい発見はほぼ皆無で、有意義な大会にはならなかった、という印象です。
特に不満があるのは、デルボスケ監督の采配でしょうか。


◎1 ウルグアイ戦で見せた圧巻のポゼッションと、準決勝までの「いつもどおりの」勝ち上がり

南米王者のウルグアイを相手にした初戦、パーフェクトな試合をしたのがスペインでした。
完勝と呼べる内容でボール支配率は70%を超え、ウルグアイに何もさせなかった試合は、
ますます進化するスペインを印象づけました。


◎2 良かった選手

今大会素晴らしい輝きを見せたのはイニエスタ。
衰えの見えるシャビに変わり、攻撃を司る彼のボールキープ、パスセンスがスペインを活性化させていました。
完敗したブラジル戦でも唯一彼だけは、ブラジルを相手に及第点のプレイをしてくれました。


×1 フェルナンド・トーレスと心中を続けるデルボスケ監督


過去3年にわたり、フェルナンド・トーレスはほぼ全く、前線でスペイン代表の足を引っ張り続ける存在となっています。
ファンの方には申し訳ありませんが、全く怖さがなく、大事な試合で存在感なく、スペインの苦戦の主因となっています。
にも関わらず、デルボスケ監督は未だにこの選手に固執し続けています。

今大会、デルボスケ監督は初戦のウルグアイ戦でトーレスに代わり、ソルダードを起用しました。
ソルダードは期待に応えて1ゴール、素晴らしいスタートを切りました。
次のタヒチ戦、明らかに力の劣る相手にスペインは二軍を先発させました。
そこでトーレスは4ゴールの大暴れ。と言っても、相手はタヒチですし、試合は10-0でスペインが勝っています。

第3戦、ナイジェリア戦でも先発したソルダードはまずまずのプレイでしたが得点を奪うことはできず、
後半から登場したトーレスがゴールを決めました。ここに関してはトーレスも良かったと思います。


これでデルボスケ監督は早々にソルダードに見切りをつけてしまい、再びトーレスを先発に使うようになります。
以後イタリア戦、ブラジル戦で先発したトーレスですが案の定何もできずに終わりました。


今大会だけの話ならここまで言いません。
2010ワールドカップ、Euro2012と、デルボスケ監督はトーレスにこだわり続けましたが、
この二大会でトーレスが活躍したのは、Euro2012のアイルランド戦のみ。
後の試合ではほぼ全くといっていいほど、試合に絡めていませんでした。


そのトーレスを、なぜ未だに使い続けるのか。
ソルダードのことは1試合で見切りをつけるのに、なぜトーレスを辛抱強く使い続けるのか。
これがデルボスケ最大の疑問点です。
トーレスを使ったからブラジルに負けた、とは全く思っていませんが、
トーレスを起用して負けたでは、「選手のテスト」という言い訳もできません。


☆イタリア

守備が崩れたことは予想外でしたが、印象としては大会前と特に変わることはありませんでした。


◎活躍した選手

GKのブッフォン、中盤のピルロに前線のバロテッリ。
センターラインを固めるこの3人が傑出したパフォーマンスを見せ、チームを引き締めていたのがイタリアです。スペイン戦でのマッジョも素晴らしかったですね。
しかし、ブッフォンとピルロはもう大ベテランですし、ピルロとバロテッリは大会途中に負傷してしまいました。
ピルロをサポートするべきモントリーボやアクイラーニ、バロテッリに代わって登場したジラルディーノは正直物足りなさばかりが目立ち、選手層の薄さも感じさせられました。


×1 負傷者の続出

ピルロ、バロテッリ、アバテといった負傷離脱者も含め、3位決定戦の舞台に登場したイタリア代表は
野戦病院のような惨状を呈しました。
スペイン戦がPKまでもつれたこともあって、ピッチに立った11人はバテバテで、なおかつベンチにも五体満足な選手がほとんどいない状態に。

この1点をとれば不運と考えられなくもないですが、Euro2012でもイタリアは全く同じ状況に陥っています。
これはチーム全体のスタミナの問題、あるいは大会を通してのペース配分のミスではないでしょうか。
来年のワールドカップでは選手のフィジカルコンディションをしっかり調整し、休める試合では休み、
うまく選手をやりくりして、何とかやっていってほしいものです。


スペインもまた、Euro2012でもコンフェデ2013でもPK戦を戦っていますが、イタリアのような悲惨な状態にはなっていないことを考えなくてはなりません。


☆ウルグアイ

ウルグアイのベスト4は予想どおり。チームの印象も変わりません。
ですが、ここ最近調子を落としていたこのチームにとっては、失われた自信を取り戻した大会になったのではないでしょうか。


◎1 カバーニの活躍

フォルラン、スアレス、カバーニと豪華な前線を擁するウルグアイ。
ですが、前者二人はともかくカバーニに関しては、今までほとんど活躍できていませんでした。
2010ワールドカップでも、快調にゴールを量産するフォルラン、スアレスを尻目にカバーニは鳴かず飛ばす……。

ですが今大会、とうとうカバーニは代表でも本来の力を見せ始めました。
ブラジル戦、そしてイタリア戦。
負けはしましたが、守備に攻撃にと全力でピッチを駆け回るカバーニの姿はひときわ印象に残りました。
これからは代表でも「頼りになる」カバーニを目にすることができそうです。


◎2 健在だった強さ

2010ワールドカップ、コパアメリカ2011と素晴らしい成績を収めてきたウルグアイ。
そこから全くメンバーが変わらず、おまけにワールドカップ予選では大苦戦中ということで
どれほど「劣化」してしまったのか気になっていたのですが、
今大会では2010・2011の頃のような強さを見せ、安心させてくれました。
選手の入れ替わりが全くないのは心配ですが、今大会、弱体化を顕著に感じることはありませんでした。
変わらず「強い」と言って良さそうです。


◎3 中盤の番人アレバロと、新たな武器となりつつあるロドリゲス

今大会、カバーニの次に活躍が目立ったのが中盤のスキンヘッド、アレバロでした。
以前からペレスとコンビを組んでウルグアイの中盤を支えてきた選手ですが、
今大会では彼の守備能力は際立っておりました。

タバレス監督が、守備専業のペレスではなく、攻撃重視のロドリゲスを起用できたのは
アレバロ一人に任せても守備が安定していたから。
今まではベンチにいることの多かったロドリゲスが試合に出場し、良い動きができたのも
間接的にはアレバロの力が大きかったと思います。