評価はA。

ペタン政権下のフランスによるユダヤ人強制収容事件、通称「ヴェルディヴ事件」の被害者サラ。
ひょんなことからその事実を知り、 彼女の痕跡を追いかけるジュリア。
物語前半はこの二つの視点で推移していきます。


ユダヤ人迫害、虐殺といえばナチス・ドイツが真っ先に思い浮かびますが、
歴史を紐解けばドイツに限らず、ソ連、フランス、意外なところではポーランドでも虐殺事件があったようで、
ユダヤ人差別の歴史は根深いなと改めて痛感しました。


作品全体を通して共感したのは「負の歴史を決して忘れない」ということ。
そして、忘れないことでそれを「繰り返さない」ということ。
認めたくない過去から目をそらしたくなる気持ちはわかりますが、それでは将来また繰り返す可能性があります。 
そうではなく、「二度と起こしてはならない」と心に刻むその大切さを、この作品は描いています。


収容所の描写は、この手の小説にしては割とソフト。
僕はグロいシーンを読むのは苦手なので、助かりました。
迫力に欠ける、と思わなくもないですが、ユダヤ人強制収容所の実態はドキュメンタリー番組や他作品などで十分に知っていたので、その知識で補っていけば全く問題ないと思いました。


一方後半の、ジュリアがサラを探し出すパートは、(長々書いても仕方ない部分とはいえ)広いアメリカで、
名前しかわからない人物を一発で見つけてしまうあたり、ちょっとご都合主義に感じなくもないですし、
メロドラマ仕立てにしたのも、やや疑問が残りました。


 小学生並の感想になってしまいますが、そういう人種差別とは無縁の世界になってほしいと思うし、
そのためには、自分の心の中にある他人への差別意識としっかりと向き合うこと。
そして、過去の歴史を、たとえ直視したくないものであったとしてもきちんと受け入れ、認識することが大事だと思います。