評価はA。

豊かな理系知識に裏打ちされたSFも良いけれど、胸の踊る冒険SFも捨てがたい。
本書は、読者をワクワクと楽しい世界へ誘ってくれる良質のSF作品でした。


まず、主人公がしがない保険会社サラリーマン、というのが良い。
もちろん少年主人公でも良いのだけど、少年時代を卒業してしまった僕のような読者でも、
ワクワクするような冒険に憧れたりもするのである。
毎日の退屈な日常に飽き飽きしているサラリーマンが、遠い未来世界の王子からテレパシーを受ける。
「6週間限定で身体を交換してみないか?」

どうですか?
何とも羨ましいというか、ぐっと引き込まれる出だしだとは思いませんか?


さてそんなわけで、主人公は未来世界へと飛ぶのだけれど、ここに来てアクシデントが続発。
王子の父親が死亡したり、その殺人容疑をかけられたり、
王子には恋人がいるのだけど、主人公は他の女性を好きになってしまったり。


なんだかんだあれやこれやの大冒険、色々ひどい目にもあっているのだけど、
「過酷さ」よりも「楽しさ」が先に立つ。
そしていよいよ、主人公は自分の世界へと帰る。
愛する王女を未来世界へと残して……とこう、泣くとまでは言わないが、しんみりさせてくれるシーンもきちんとあって、読後の余韻まで残してくれる冒険譚。


どうでしょう。
皆さんも騙されたと思って一つ、読んでみませんか?