S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

ハイペリオン/ダン・シモンズ…… 記事アリ。こちらで。

解錠師/スティーヴ・ハミルトン……記事アリ。こちらで。

川は静かに流れ/ジョン・ハート……記事アリ。こちらで。

図書室の魔法/ジョー・ウォルトン……記事アリ。こちらで。

終りなき夜に生れつく/アガサ・クリスティ……記事アリ。こちらで。

亡国のイージス/福井晴敏...…記事アリ。こちらで。

たんぽぽ娘/ロバート・F・ヤング……ロマンチックな時空物語。ラストが秀逸すぎて震えた。こういうの、大好きなんですわ…。

IT/スティーブン・キング……記事アリ。こちらで。

ワイルドソウル/垣根涼介……記事アリ。こちらで。

慟哭/貫井徳郎……記事アリ。こちらで。

アンドリューNDR114/アイザック・アシモフ&ロバート・シルヴァーバーグ……記事あり。こちらで。

3,1,2とノックせよ/フレドリック・ブラウン……記事アリ。こちらで。

A→読んで良かったと思える作品

カーリーの歌/ダン・シモンズ……猥雑で熱気に溢れ、暴力の香りが立ち込める魔都カルカッタの描写が殊更印象に残る作品。大都会に住む人の心に巣食う闇、それはカルカッタにのみ特別なものなのか。事件の全貌、真相が明かされることはないが、それがまたいいのだと思う。

夜の終り/ジョン・D・マクドナルド……ある金持ちの青年が、残虐な犯罪を犯し、死刑囚になるまでの物語。犯行シーンは非常に迫力があり、胸糞が悪くなるものの読ませる。一人では犯罪を犯さない人間が、集団になると歯止めがきかなくなり、暴力がエスカレートする……そんな恐ろしさが描かれる作品。まぁ、自制心がなさすぎるんですが。

ブラックマーブル/ジョゼフ・ウォンボー……Bに近いA。ドッグレース場で犬を誘拐し、身代金を要求する犯人と、それを追いかけるアル中刑事&美人だけど眼鏡のダサい女刑事。登場人物各自のショボさが何とも言えず良い味を出しているが、同じウォンボーの『クワイヤボーイズ』や『センチュリアン』に比べると1ランク落ちる。


警官ギャング/ドナルド・ウェストレイク……平穏でありながら退屈な日常を送る冴えない警官2人組が、一世一代の強盗に打って出る。強盗してハッピーエンドというのはちょっとまずい気がしないでもないが、冴えない彼らの、人生を賭けた大冒険は素直に面白い。


悪党パーカー 死神がみている/リチャード・スターク……基本、バトルのパーカーシリーズだけど、本作ではヒロインのクレア視点のシーンが非常にサスペンスフルで面白かった。本番のはずのパーカーのバトルよりずっと面白いんだけど……。ちなみにスタークは↑のウェストレイクの別名義。


名門/ディック・フランシス……Bに近いA。主人公とヒロインの恋愛模様がなかなかよく、爽やかな気持ちで読ませる。ヒロインの夫でもあるゴードンと主人公の信頼関係も清々しい。しかし、冒険小説としては可もなく不可もない感じ。


祈りの海(短編集)/グレッグ・イーガン……Sクラスの作品はなかったものの、全体的に面白い作品が多い良質の短編集。特に気に入ったのは、同じ街に住む同年代の人間に脳が転移していく『貸金庫』と、神秘的な宗教体験に潜む秘密を描く表題作『祈りの海』。認識次第で世界が揺らぐ、という意味でディック作品に近い印象を受けた。

あなたの人生の物語(短編集)/テッド・チャン……こちらもSクラスの作品はなかったものの、全体的にアイディアの詰まった面白い短編集でした。コミカルロマンスに広告業界への風刺をちくりと混ぜた『顔の美醜について』、不条理な天使の襲来を描いた『地獄とは神の不在なり』、どこまでも伸びる塔が世界の果てをぶち抜く『バビロンの塔』など。

ブルーシャンペン(短編集)/ジョン・ヴァーリィ……どことなく古さを感じる(だがそれがいい)コンピュータ・ホラー『Put Enter■』、気軽に性転換できる世界でのジェンダーを描いた『選択の自由』、地球との繋がりを保つべくロリ少女へと中年おじさんが縋る『プッシャー』などが特に良い。どこか寂しさを感じる作風が好みだが、面白くなるまでやや時間がかかる作品が多いのがネックか。最後まで読めば、ハズレは一つもないのだが。


ポケットにライ麦を/アガサ・クリスティ……今まで読んだミス・マープル作品(5作)の中でベスト。二重三重のミスリードを誘うミステリとしても上質だけれど、何よりもそこで描かれた悲劇と、ミス・マープルの悲憤、格好よさが鮮烈。


知性化戦争/デイビッド・ブリン……人間&チンパンジー&ゴリラ連合軍の星に、鳥型宇宙人が来襲! あらすじだけを言うとなんだかとんでもなくバカらしく思えるのだが、これがなかなか楽しい。鳥型宇宙人の造形も良いし、ラストもグッド。これは良い娯楽SF大作。


鏡は横にひび割れて/アガサ・クリスティ……中盤までのスローペースぶりと、相も変わらず犯人がバレバレなのはあれではある。しかし、「トリック」よりも「動機(人間ドラマ)」に焦点を絞ったクリスティらしい、上質なドラマを楽しむとするなら、この作品は紛れもない良作だろう。非常に納得度の高い作品。


消えた少年たち/オーソン・スコット・カード……ある普通の一家が、世間の荒波に巻き込まれながらも助け合い、なんとか乗り越えていく家族愛の物語。一家の中でも、当然軋轢などがあり、それらに折り合いをつけていく姿がとてもリアルでした。

ジェニーの肖像/ロバート・ネイサン……過去から訪ねてくる少女、ジェニーとそれを待つ主人公。二人の不思議な触れ合いを描いた小品。面白いは面白いのだけど、二人の関係をもっと濃密に描いてくれても良かったんじゃないかなぁと感じた。尺が足りないせいだろうか?


ドゥームズデイブック/コニー・ウィリス……1348年にタイムスリップをし、ペストに倒れる人々や当時の社会を活写した力作。最後まで読めば、読んで良かったと思えるのだが、面白くなったのは700/1050ページから。それまで耐えられれば。

擬態――カムフラージュ――/ジョー・ホールドマン……何にでも(人間にも鮫にも機械にも植物にも)姿を変えられる宇宙人『変わり子』が、人間に擬態して生活していくうちに、人の感情、考え方、そして愛について知っていくSF作品。日本では無名の作品だけど、氏の代表作「終わりなき戦い」や「終わりなき平和」よりも好みだった。


ふりだしに戻る/ジャック・フィニィ……1880年のニューヨークにタイムスリップする物語。ロマンチックでエモーショナルな物語で、心に残る。のだが、ぶっちゃけ、全700ページのうち、面白いシーンは200ページぐらい(最初の50ページ、最後の100ページ、あとは飛び飛びで)。かなりの忍耐が必要なため、Bに近いAということで。

くらやみの速さはどれくらい/エリザベス・ムーン……Bに近いA。自閉症の男性の生活と、手術によって自閉症が治り今までの自分から脱却したその後が描かれる物語。自閉症が治ると、今までの感じ方も変わってしまうというラストはほろ苦い。

メソポタミアの殺人/アガサ・クリスティ……やや薄味ではあるものの、発掘場の雰囲気もよく、人間関係も面白い。トリックも読めず、犯人も意外だった。丁寧に作られた小品。

カリブ海の秘密/アガサ・クリスティ……Bに近いA。クリスティらしくさらっと読める良質のミステリ。脇役の老人がいい味を出していた。

カーテン/アガサ・クリスティ……Bに近いA。ポワロシリーズ最終作がそこまで悲しい話ではなかったのは、読後感という意味では良かったとも言えるけど、もっと泣かせに来てくれても良かったのよ?

五匹の子豚/アガサ・クリスティ……非常に感傷的な作品。絶対×が犯人だと思ったんですが、違ったのね……。
でも×が犯人の方が、更に面白かった気がしますが……。

ホロー荘の殺人/アガサ・クリスティ……Bに近いA。ミステリとしては正直あまりぱっとしない作品ですが、被害者の妻、ガーダの造形が実に良かったなぁと。

ブラックアウト&オールクリア/コニー・ウィリス……最後の300ページは文句なく面白いのだが、そこまでが長い、長すぎる……。しかし終盤が良かったせいか、読後感は悪くないのである。作者もお気に入りのビニー&アルフ、ゴドフリー。アイリーンの決断など、見どころも多い。が、やっぱり長すぎんよ。


スリーパインズ村の不思議な事件/ルイーズ・ペニー……人物がそれぞれ活き活きとしており、クラシカルかつ良質なミステリ作品。シリーズの別作品も追いかけてみたいと思わされた。


杉の柩/アガサ・クリスティ……クリスティお得意の、ドラマ路線によるロマンチックミステリ。読後感スッキリ。


密室/ペール・ヴァールー&マイ・シューヴァル……(当時の)スウェーデン警察の無能ぶりやスウェーデン社会の闇を描いた作品。喜劇的な味付けがされているため、読んでいてとても面白く、事件そのものも良かった。読後感もよく、登場人物の今後を応援したくなった。


ミザリー/スティーブン・キング……事故を起こした人気作家シェルダンを助けたのは、精神異常者にして大量殺人鬼のアニー。彼女はシェルダンの描く作品『ミザリー』の大ファンであり、彼を監禁し、物語を描くように命じる。少しでも彼女の気分を害すると、待っているのは絶え間ない苦痛。アニーが時折見せる正気の部分が、彼女を単なるキチガイな悪役以上の印象深いキャラクターにしている。

侵入/ディック・フランシス……Bに近いA。マジキチの悪役はぶちのめしてくれるけど、ややキチの悪役は見逃す形になるのが少し残念。いがみ合う両家の因縁やテレパシー話などは良かった。



エア/ジェフ・ライマン……テレビが村に2台、電話もほとんどないところに突如来襲したバーチャルリアリティ技術「エア」。主人公のメイはなんとか「エア」を学び、来たるべきテクノロジー時代に向けて準備を進めていくが……。地味な話だけど、地に足のついた、重厚な設定にそって紡がれる物語。面白い。


混沌の叫び1 心のナイフ/パトリック・ネス……壮絶なディストピア世界。星の先住民族スパクルとの戦争により、女が死に絶え、男たちはお互いの心が聞こえるようになってしまった(制御できないテレパシー)村の、ただ一人の少年トッド。一人の少女と出会い、彼は過酷な運命に巻き込まれていく。物語としてはかなり面白いのだが、主人公がほんっとーーーに苛々させられるガキ+状況がそもそも過酷なため、読むのがかなりしんどかった。あと、未完。2巻を読まないとどうしょうもないというか、1巻の終わり方は普通に酷いw


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

影の棲む城/ロイス・マクマスター・ビジョルド……Aに近いB。質の高いファンタジー小説で、全編飽きずに楽しめたが、山場がないのがやや物足りず。とはいえ面白い。特に「魔」と「神」の設定がとても良かった。

魔術/エド・マクベイン……ハロウィンの日、事件が続発するニューヨークを描いた作品。87分署シリーズの中では真ん中あたりかな。それにしても、物騒ですね。

シンディック/C.M・コーンブルース……主人公は穏健で自由な組織「シンディック」から、「管理社会」である「北アフリカ連合政府」へとスパイに送られる。冒険小説としての面白さと、SF、果ては思想面に至るまでしっかりした作品だが、ラストの非常に納得のゆく結末(他国の侵略を警戒するあまり、自らの思想、自らの国の在り方を変えてはならない。それでは、侵略されずとも国は亡びたも同然なのである)
を導き出しているのが主人公ではなく、最初と最後にしか出てこないフランク伯父さんなのが残念。


ギャルトン事件/ロス・マクドナルド……ロス・マクの新境地を切り開いた作品。その後の彼の作風を決定づけたという意味で、価値のある作品だが、いま読むなら「ウィチャリー家の女」や「さむけ」を推す。

地中の男/ロス・マクドナルド……これ、まんま「さむけ」じゃない? 悪くないけど……。


氷の闇を越えて/スティーヴ・ハミルトン……非常にテンポが良く、読みやすい。ただ、真相は拍子抜け。

所有せざる人々/アーシュラ・K・ルグィン……Aに近いB。時系列が交互になっていることに気づいたのが遅く、混乱していた時間が長かった。それに気付いた今、再読すれば、読み取れなかったものが見えてくるかもしれない。金が全ての資本主義社会ウラスと、同調圧力が息苦しい社会主義社会アナレスが対比されている。


銀色の恋人/タニス・リー……アンドロイドの美青年に恋をした少女の物語。設定的に大好きなはずなのだけど、イマイチ乗れなかったなぁ。


タイムシップ/スティーブン・バクスター……Cに近いB。単品として考えるならいいのだが、あの名作「タイムマシン」の続編として考えるといかにも辛い。広げすぎた風呂敷を、『観察者』の力でリセットしてしまうのも杜撰。

都市と都市/チャイナ・ミエヴィル……同じ場所に二つの都市が並立する、というアイディアが凄い。結末のつけ方も良い。ただ、アイディアは凄いのだけど、イコールそれだけで面白いか?と聞かれると厳しいところ。もう少しキャラの魅力が欲しいし、なぜ二つの都市を並立させる必要があるのかもわからなかった。

ハイペリオンの没落/ダン・シモンズ……これはこれで面白かったけれども、「ハイペリオン」がS級に楽しかったのと比べるとだいぶ落ちてしまうかも。アクロバチックな驚きがあった前作に対し、こちらは真っ当なSFになってしまった感じ。レイチェル絡みは相変わらず面白かったけれども。

無限の境界/ロイス・マクマスター・ビジョルド……連作短編集。障害をもって生まれてきた胎児殺しの犯人を突き止める、『喪の山』は面白い。残りの二つの短編は、つまらなくはないけれど、そこまででも……といった感じ。連作短編とはいえ、良くも悪くも長編のビジョルド作品と印象は変わらない。

死との約束/アガサ・クリスティ……皆から憎まれるクソ婆の死。誰が犯人だ!?というミステリだけども。クソ婆の自業自得なので、誰が犯人でもいいから見逃してあげてよとしか思えなかったのが辛かった。

愛国殺人/アガサ・クリスティ……最後まで読めば面白いのだが、真相が解るまでが退屈すぎるんだよなぁ……。犯人を許さなかったポワロには拍手。

もの言わぬ証人/アガサ・クリスティ……最後まで読めば面白いけれど、そこまでが長い上に退屈なんだよなぁ……(「愛国殺人」の感想の流用w)。犬はかわいかったです。


三幕の殺人/アガサ・クリスティ……よくも悪くも「ライト」。読みやすく、退屈しないのが良いところだが、あまりにゲーム感覚な犯人で、事件そのものも「軽い」。そして、そういう「軽いゲーム感覚で殺人を犯しそうな奴は?」と考えると、もう犯人もバレバレでした。

パディントン発四時五十分/アガサ・クリスティ……後半の50ページで突然面白くなるが、それまでは雲をつかむような事件でなんとも。タイトルから、列車の時刻表に関するトリックでもあるのかと思ったが、実際にはある館、一族の殺人事件だし……。ヒロイン格のルーシーは良かったけど。

白昼の悪魔/アガサ・クリスティ……悪女キャラが死んだところまでは興味を引いたのですが、真相は割と興ざめだったかも。あと、訳が酷いです。普段は丁寧なポアロが、この作品だけチンピラみたいな喋りになってる……。

親指のうずき/アガサ・クリスティ……犯人像は良かったけれど、それだけかなぁ……。説明不足に感じる部分もあり、辛かった。

丘をさまよう女/シャーリン・マクラム……長く生き続ける愛、時には死後も生き続ける、残留する愛を描いた作品。30年間、投獄された夫を待ち続けたリタと、記憶喪失で30年前の世界に生きる脱獄犯のハームを主旋律、今生きるマーサとレダンの愛を伴奏に描く。読後感は良い。


風の影/カルロス・ルイス・サフォン……一言で言うなら味わい深い作品。スペイン内戦、そしてフランコ独裁政権下の古都バルセロナを舞台に繰り広げられる、世代を超えた物語。それはいいんだが、やけに暴力的な男性キャラが多いですね……。昔のスペインはそうだったんでしょうか。


満潮に乗って/アガサ・クリスティ……悪くない作品なのだが、同じドラマ路線である「五匹の子豚」や「ホロー荘」などに比べるとだいぶ落ちる。第二次大戦の色が濃いのは見所。


密造人の娘/マーガレット・マロン……アメリカ南部の雰囲気が良く描けている。ただ、キャラクターが薄いこともあって、好きになれるキャラもおらず、犯人はどうでも良く、最初に殺された女はただのクズだったこともあってイマイチ感。

遠き神々の炎/ヴァーナー・ヴィンジ……群体宇宙人との異文化コミュニケーションが描かれる上巻はとても面白い。戦争モノにシフトしてしまう下巻はあまり……。

イリアム/ダン・シモンズ……ギリシャ神話のトロイア戦争を舞台にした作品。ホメロスの『イリアス』に詳しければもっと楽しめたかも、と思うんですが、読了して2か月が経つのにこの作品の記憶が結構鮮明なんですよね。ひょっとして俺、結構楽しんでた?


コララインとボタンの魔女/ニール・ゲイマン……設定は面白いけど、もう少し尺がないと苦しい。


白雪と赤バラ/エド・マクベイン……精神病院に入院中のサラと、サラを入院させた彼女の母&病棟スタッフ達。サラは自らを正常と語り、自分を精神病院に幽閉した母達に不信感を露にする。いったいどちらの言うことが本当なのか?というお話。ネタバレなしじゃ全然感想がかけないっすね。



スノータイガー/デズモンド・バグリィ……リスク管理を怠り、甚大な雪崩被害を招いた小村が舞台。こうした、人の心の怠慢さ、先を見通せない愚鈍さにスポットを当ててくれれば僕好みの作品になったのだが、これが冒険小説の限界なのか。単なるキチガイ悪役が雪崩を起こしたという結末、キチガイを倒して終わりというのは……。


去年の夏/エヴァン・ハンター……「善悪の区別のつかない」バカなクソガキ3人衆が、鳥を殺したり、男を騙してチンピラに襲わせたり、女をレイプする、非常に胸糞の悪い物語。これを綺麗な言葉で言うならば、「大人になりきれない少年少女たちの、スリルに憧れる危うさを描いた青春小説」となるのだろうけど……DQNすぎてドン引きよ。


殺戮のチェスゲーム/ダン・シモンズ……人間を操るマインド・ヴァンパイアをナチスの大佐や、差別主義者の白人におき、それと闘う人間側をユダヤ人や黒人においたのは示唆的で面白い。ユダヤ人が、強制収容所で殺された同朋の魂の力を借りて、ナチスの大佐を倒すシーンは良かった。ただ、好きになれるキャラがおらず、いくらなんでも長すぎた。


ロゼアンナ/ペール・ヴァ―ルー&マイ・シューヴァル……Hに対して奔放な女性に深い嫌悪感を抱き、殺して回る犯人の心理描写は悪くない。ただ、大した証拠もないのに犯人を決め打ちし、罠を仕掛けるこの捜査方針は(警察事情に詳しくないけれども)非現実的に感じてしまう。これ、間違ってたらどうするつもりだったんだ?と思う。犯人が後半にならないと登場しないところも含めて、謎解きモノとしてはかなり微妙。事件をめぐる物語としては悪くない。


C→暇つぶし程度にはなった作品

犬は勘定に入れません/コニー・ウィリス……「ドゥームズデイブック」の姉妹作。コミカル路線の作品だが、正直肌に合わなかった。

猫のゆりかご/カート・ヴォネガット……まぁ悪くはないんだが……ヴォネガットにしては物語が連続しすぎているというか、地に足がつきすぎじゃないか?

重力への挑戦/ハル・クレメント……芋虫型宇宙人の造形が光るSF冒険小説。重厚な筆致はよしあしで、多少読むのに苦労した。あと、訳が悪いです。

ユダヤ警官同盟/マイクル・シェイボン……ユダヤの風物が描かれる作品、ということで、ユダヤ人の生活に興味があれば面白いと思う。特に興味がなければ、(エンタメとしては)この評価。

消えた消防車/ペール・ヴァ―ルー&マイ・シューヴァル……さすがに自動車泥棒は、犯罪としてスケールが小さすぎた感……

ジョナサンストレンジとミスターノレル/スザンナ・クラーク……19世紀初頭にもし魔術が存在したら?というifもの。ユーモラスなやりとりが見どころだと思うけど、海外のユーモアものは合わないことも多くて……。というか、長い……。

ヴォルゲーム/ロイス・マクマスター・ビジョルド……悪くはないんだけど、普通なんだよねぇ……。このシリーズ、割とそういう作品が多い気がするけど。

リンカーンの夢/コニー・ウィリス……南北戦争を舞台にした作品。ウィリス色は弱い。南北戦争に詳しければもっと楽しめたかも。

シルバーショック/ポール・アードマン

ミサゴの森/ロバート・ホールドストック……主人公の家の周囲には森林が広がっていて、そこには人々の想像にのぼる歴史上の英雄たちが実体化していた。主人公の父、そして兄は森に消え、そして主人公も……
って、めっちゃ面白そうな設定なのに、なんでこんなにつまらないんや……。

サラトガ本線/エドナ・ファーバー……「くだらない因習になんて負けないわ! 私は私のやりたいようにやるのよ!」という気の強い女性が主人公の小説だけど、競馬場で詐欺を働いたり、自分に片思いしてくれる男性を嘲笑ったり、鼻持ちならねー女だとしか思えなかった。昔の小説って、こういう女性像結構いるよね。スカーレット・オハラ系列の。 


コスミックレイプ/シオドア・スタージョン……「人間以上」でも感じたけど、やっぱりスタージョンは短編の人だなぁと思った。群体頭脳を描いた作品だけど、どうにも合わず。


D→自分には合わなかった作品
  
ねじまき少女/パオロ・バチガルピ……近未来のタイが舞台。2つの省庁の権力争いに、差別虐待されているロボット(「ねじまき」)が絡んで~という話。権力争いに興味が持てず、ねじまき関連の話は、「ロボットが差別される」というよく見る内容で、正直面白くなかった。


言の葉の樹/アーシュラ・K・ルグィン……全く頭に内容が入らなかった。作品のせいというよりも僕の頭が悪いだけと思われるが、まぁ楽しめなかったのは間違いない。

イシャーの武器店/ヴァン・ヴォークト……古き良きドタバタ系SF。

アプターの宝石/サミュエル・ディレイニー