シナリオ 85/150  キャラ 110/150 絵 80/100 音 80/100 その他システム 70/100 印象 25/50
合計 455/650 ESにつける点 75  (114位/全180ゲームぐらい中)


楽しい学園生活を過ごす、という意味ではまずまずの良作。
日常パートにおいては、ウザキャラは一人もおらず、ストレス要素が少なく良い気持ちでプレイできる。
一方で、シナリオ面は壊滅的な出来。

前半4ルートは『ドラマなんてほとんどない』状態で、最終ルートはドラマを盛り上げようとしているがとても拙い。
僕のようにシナリオも欲しい人には全くお薦めできない作品になっていますし、ただキャラと楽しい日常生活が過ごせればいい人にとっても、最終ルートは地雷だと思うのでお薦めしにくい。
【注:割と叩いているので、嫌な方は読まないでください】






本作は前半の4ルート(澄香以外)をクリアした後に、最終ルートとして澄香ルートが用意されています。
それでは感想をキャラ別に書いていきたいと思います。


 【前半4ルートについて】

前半4ルートについては、シナリオと呼べるものは全くといっていいほどありません。
ただ平坦で楽しい日常生活が延々と続いていくだけですが、この日常生活は結構楽しいです。
物語の中で唯一の山場となっているのは体育祭で、このシーンは(例外はあるものの)どのルートでも読ませてくれます。
体育祭のような熱いテキストが書けるなら、普通に考えてシリアスシーンも面白いものが書けると思うんですけど……その期待は最終ルートで見事に裏切られることになりました。
多分、プロットがまずいんだと思います。



【対馬はかり シナリオ評価 C+ キャラ評価 B+】 評価はS~E。

運動が苦手で勝負を投げ気味なはかりさんが、トライアスロンでやる気を出す体育祭のシーンは
なかなか盛り上がりました。
その頭脳を駆使してどのルートでも存在感があるはかりさんですが、やはりかわいい。
個人的に「姉属性」は持っていないどころか苦手な事も多いのですが、はかりさんは押しつけがましくないせいか好きになれました。

体育祭を除くとシナリオと呼べるものはないです。
「家庭教師が初恋の相手」ネタは、「あー、はいはい」って感じ。
チェリルートの項目でも書いたのですが、昨今この手のゲームでは「過去に好きな人がいた」とか「非処女だった」とか、そういう話はほぼ絶滅しかけているため、本作でも『どうせそんな事ないんでしょ』→『あ、やっぱりね』って感じでちっとも盛り上がりません。
そもそも、過去に男の家庭教師に恋をしていたところで、どうということもないんですが。

また、もし本当に昔乙女さんが好きだったり、音子ちゃんを気にしているならもう少しそちら方面のネタを押し出してもいいように思うんですが、それもナシ。とってつけたような~という感覚が拭えませんでした。


【刃牙音子 シナリオ評価 C- キャラ評価 B-】

体育祭のシーンが各ヒロインの活躍を表す一種の山となるわけですが、音子ルートの場合はそれすらもなし。
「音子自体が活躍する」ようなシナリオではないため、ヒロインの存在感が薄くなっています。
音子の「頭の硬さ」が薄れた感じもなく……このシナリオ、本当に中身が何もなかったなー……。
しかし中身がなかったというのは、本来的にはマイナス要素なのですが、本作に関しては何か中身をぶっこもうとすると必ず裏目に出てつまらなくなってしまうので、それならば何もない方がマシかもしれません。
日常シーン自体は楽しいし。


【伊那瀬子羽 シナリオ評価 B- キャラ評価 B+】

体育祭、子羽との初キスのシーン、ラストとそれなりに見せ場のあるシナリオでした。
ただ、一番気に入ったルートか?と聞かれると難しいところです。

子羽自体はかわいいのですが、このルートは主人公がややウザいんですよね。
元々主人公のさなぎ君は、「愛嬌のあるウザキャラ」とか「ウザカワ」路線だと思うのですが、
本ルートでは愛嬌よりもウザさが前面に出てしまっています。

原因は幾つも考えられますが、まずは子羽が唯一の後輩ヒロインだという事。
しかも仕事もさなぎよりよくでき、運動も成績も(身長も)上。
にも関わらず、さなぎ君は「自分が男で、一学年先輩」だということを理由に、やたらと偉ぶろうとしているのが
鼻につきました。
ダメ男のくせに、「男のプライドが~」とか何度も言い出すのはちょっとウザいです。

そもそも、プライドというのは他人に見せびらかすものではなく、自分の内に秘めていてほしいというか。
他人に対して偉ぶったり、自分が上に立とうとアピールする姿勢こそが「プライドの無い、見苦しい」行いだと私なんかは思ってしまいます。
それはプライドという名前を借りた、自己満足に過ぎないのでは?


また、本ルートはハッピーエンドには見えません。
子羽の母親はダメンズ製造機な上、すぐに飽きて夫と別れてしまったという人物です。
そしてこの子羽ルートでも、子羽は完全にダメンズ製造機と化しています。
なんでも許してくれ、甘やかせてくれる子羽のかわいさは素晴らしいものがあるのですが、
それに溺れたさなぎ君はどんどんダメになっています。懸垂もやめちゃいましたしね。

このルートにおけるさなぎ君の将来は子羽のヒモになってしまいそうですが、子羽に棄てられない保証はどこにもなく、率直に言って心配です。

まぁ、バッドエンドが1つぐらいあってもいいんですけど。


【八宮・イエロード・チェリッシュ シナリオ評価 C キャラ評価 B】

体育祭の野球勝負は盛り上がりました。
特に、栄一君が輝いたのが嬉しかったですね。
彼は良い親友キャラだと思います(ハンサム大野はどうでもいい……)。


シリアスに関しては酷い出来。
はかりルートでもそうだったんですが、『不自然に思わせぶり』なセリフでかき回される茶番は、一度で沢山。
軍曹の「女として悲惨な姿に、もう2度と女の幸せなど掴めぬかと思ったが」は明らかに不自然なセリフです。
特に後半がダウト。

前半に関しては、「坊主姿」は悲惨と言えなくもないですが、髪が伸びれば元通りになるのは解りきっているのだから、「もう2度と」という台詞は「ミスリード」にしたって稚拙すぎます。
こんなのなら、「皆から暴行されて身体に消えない傷を負ったチェリを救出した」だの、「レイプされちゃったチェリを時間をかけて癒した」とかの方がよほどいいです。


はかりルートのところでも書きましたが、そもそも、この手のゲームでは昨今そういうエグい描写はほぼ全くといっていいほどなくなってしまっているため、「思わせぶり」にそういう事を言われても、全く不安になったりドキドキしないのでつまらないのです。
どうせそんなシーンはないんでしょ、って最初から思っちゃいますから。
今回も案の定でしたしね。
ビビりながらプレイしていたら、チェリの無事を「良かった」と思えるかもしれな……あまりにミスリードがしょぼいからそれもないかな。

このライターさんは、「ミスリード」の全てが下手くそすぎるので、もう少し巧くやってほしいです。



【どうでもいいこと】

たまたまかもしれないんですが、僕がプレイした作品では3作連続
(「サクラノ詩」→「僕はキミだけを見つめる」→「つよきすnext」)でホモネタが使われていて。
僕はホモネタはあまり好きではない程度(大嫌いというほどではないん)ですが、いくらなんでも3作連続はキツすぎる……。
そんなに皆さん、ホモネタが好きなんですか? それともたまたま僕がプレイした作品が偏ってただけなのかなぁ。個人的にはもうウンザリしております……。




【大女ノ門龍院澄香 シナリオ評価 C キャラ評価 B-】

澄香シナリオは前半と後半に分かれています。
前半に関しては、やはり基本的に澄香とイチャイチャするだけの話ですね。
澄香がエロ可愛くて大変良いです。

ただ、後半の……ゲーム全体のトリでもある「龍鳴祭シナリオ」はとても問題。
というのも、本作は基本的に「シナリオなんてねーよ。気軽に女の子とイチャイチャすんぜ!」というゲームなのですが、このルートだけはそうではなくて。
悪役を出してきてそれをぶち倒す、というストーリーが展開されます。
一応、シナリオ重視派を名乗っている身なので、単なるイチャイチャではなくドラマを展開しようとした事自体は歓迎……はできないなぁ、このシナリオじゃ。


何がまずいかと言いますと、1つには悪役がウザすぎる点。
そしてその悪役に対して、ラストで「与えられる罰」が甘すぎる点。
更に、澄香が大して成長していないように思える点。
そして、ここでもミスリードが猛烈に稚拙な点。
4つ合わさって、厳しい事になっています。


悪役がウザい作品の場合、やはり悪役を完膚なきまでにぶちのめすシーンにカタルシスがあると思うので、
本作のように「ウザさに反して罰が甘い」と、ストレスだけが残ります。

ラストにおいて、あれだけ酷い目に遭わされた澄香、今まで人を憎む事なく自分の意思も伝えられずに過ごしてきた「弱気」な澄香。
その彼女が成長し、悪役に対して「二度と近寄らないでください、大嫌いです」ぐらい言ってくれるのかと期待したのに、出てきた言葉は「あまり(悪役を)怒らないであげてくださいね」というのもガッカリしました。

確かに澄香らしいセリフだとは思いますが、あのねぇ……と。
大好きな恋人を傷つけた相手に対しても、その台詞なのか。
それが澄香の良いところなのかもしれず、悪い意味でスレなかったのは確かですが、成長してないなぁと思いました。


僕がストーリーを書くなら、悪役をぶちのめすのは、主人公のさなぎじゃなくて澄香にしたと思います。
パワーファイターですし、今までDV(直接的な暴力は振るわれていないものの)まがいの恫喝を受けてきた、
悪役の支配を跳ね返す意味でも、澄香こそが矢面に立つべきだったのではないでしょうか。
そうではなく、さなぎが戦うならそれはそれで良いのですが、澄香からも何か一つ、悪役に制裁を加えてほしかったです。


更に言わせてもらえば、この衣という悪役。
一応一種の叙述トリックがなされているわけですが……叙述トリックと呼ぶには拙すぎます。
コンタクトを普段は使っているけど急に眼鏡になったらおかしいのでという理由で、「眼鏡もコンタクトも使わずに、視界がぼやけたまま」で行動する事が、犯人判明の決め手の一つになるわけですが、
音子ルートでは普通に眼鏡をかけてるじゃないですか。

また、音子ルートでは『衣』を相手に、キツネが丁寧語を使っているんですが、これだって酷い。
普段、『緒上』を相手にはくだけた言葉遣いをしているわけで、『衣』を相手に丁寧語になる意味がまるでない。
悪役の正体を隠したいのはわかりますが、必然性がまるでない、こういう綻びは個人的には致命的な減点要素です。


シナリオ前半部では、澄香のエロ可愛さが存分に出ていたのに、後半のせいで素直に萌えられなかったのは残念ですね。


【総評】

面白いかつまらないかと聞かれると、つまらなくはなかったんです。
ゲームのボリュームの大部分を占める、日常パートは結構楽しかったですし。
ただ、プレイ時間の割には何も起こらないゲームでもあるんですよね。
個人的には何十時間もの時間を費やすゲームなのですから、起伏のない日常シーンだけではなく、もう少し何か事件が起こってほしいと思います。
本作では各ルートにおける『体育祭』という山場が、起伏のない日常シーンをびしっと引き締める事に成功していますが、それ以外の山場は非常に弱い。

恋愛シーンにおける山場(二人の距離が近くなっていく様子、キス、告白、セックス、障害解決とかなんでもいいですが)は、子羽ルートのキスシーンを除いてイマイチピリッとしませんし、
はかりの初恋事件とか、チェリの過去とかは本当にくだらない。
更に酷いのはラストルートの出来、とくれば、本作に限っては山場なんてない方がまだなんぼかマシだったということもできます。

誰かほかの方にプロット作りは任せて、テキストはこのライターさんが書いてほしいと思ってしまいました。