オーストリア  0-2   ハンガリー

試合内容 B
主審 D+
MOM CH ダビド・アラバ(70)(オーストリア)

GK アルマー(60)       キラリ(65)
DF ドラゴビッチ(30)      ラング(60)
  ヒンターエッガー(60)     カダール(60)
  フクス(55)         フィオラ(60)
  クライン(50)        グズミチュ(60)
MF バウムガルトリンガー(60)  ゲラ(60)
   アラバ(70)        ネメト(55)
   アルナウトビッチ(55)    ナジュ(45)
   ハルニク(40)       ジュジャーク(55)
   ユヌゾビッチ(60)      クラインハイスラー(65)
FW ヤンコ(40)         サライ(65)

監督  コラー  B-         シュトルク A

【オ】 ユヌゾビッチ(60)→サビツァー(55)
   ヤンコ(40)→オコティエ ?
   ハルニク(40)→シュプフ ?

【ハ】 サライ(65)→プリシュキン(60)
   クラインハイスラー(65)→シュティーベル(60)
   ネメト(55)→ピンテール ?


格上オーストリアと格下ハンガリーという開戦前の構図は、試合後もやはり変わらなかった。
しかし勝ったのはハンガリー。
誤審に助けられた感はあるが、誤審のおかげで勝てたとまでは言えず、一言でまとめるのが難しい試合となった。

前半、試合を支配したのはオーストリア。
立ち上がりのアラバのミドルシュートだけでなく、ユヌゾビッチ、アルナウトビッチ、バウムガルトリンガーらの中盤がハンガリーを完全に制圧。
しかしその後の崩しに乏しく、存在感に欠けたヤンコを始め、ハンガリーの40歳GKキラリを脅かすには至らない。
一方のハンガリーは足元で繋ぐのが巧いチームという印象はあれど、中盤を支配されてしまい、こちらも効果的な攻撃は繰り出せなかった。

そんな中、後半15分にゲームが動く。
一瞬の隙を突いたクラインハイスラーとサライが華麗なコンビプレイを見せ、見事に先制ゴール。
問題のシーンはその直後だ。ゴール前の一連の流れからヒンターエッガーが同点に追いつく。
しかしその前に笛が吹かれ、オーストリアのゴールは取り消された。
だけでなく、なんとドラゴビッチが2枚目のイエローカードで退場になってしまったのだ。

スローで見る限り、ドラゴビッチのファウルといえばファウルである。
なので、オーストリアのゴール取り消しは妥当だと思う。しかし、2枚目のイエローを出すようなプレイとは到底思えない。ゴールを狙ってシュートを打とうとした足が、たまたま相手選手にぶつかっただけではないか。
こんなジャッジをされてしまっては、イエローを1枚もらった選手はゴールチャンスにも絡めなくなってしまう。
これで10人になったオーストリア。
中盤にもスペースができ、ハンガリーも攻撃のチャンスが生まれるようになった。
皮肉にも、誤審によってスペースができたことで、試合はお互いにチャンスの生まれる好ゲームになったのだ。
しかし、オーストリアは主審への不満がプレイにも現れ、特にアルナウトビッチに顕著だったが冷静さを欠いてしまう。
そして後半ロスタイム、ハンガリーはカウンターの鋭い一太刀でオーストリアを完全に葬り去る追加点。
交代出場のプリシュキン→シュティーベルと、シュトルク監督の采配も的中し、44年ぶりのEuro本大会で価値ある一勝を挙げた。


【オーストリア】

負けてなお、強いなという印象を抱かせた。
特に中盤の構成力は見事だったのだが、前述のように課題はファイナルサードでの崩しだろうか。
ヤンコ、ハルニクの二人に怖さがなく、ハンガリーを崩しきることができなかった。
退場者が出た後に、メンタル面、戦術面の修正がともにできず、更なる追加点を許してしまった点ともども、
ベスト16以上を狙う上で克服すべき課題と言えるだろう。
MVPは、負け試合であるにも関わらずアラバを選出した。
バイエルン所属の23歳は、両チーム22人の中でやはり一人レベルが違う。
MFの中軸としてだけでなく、仲間への声かけ、サポーターを煽るパフォーマンスなど、到底23歳とは思えない大物感を漂わせていた。
このアラバを中心に、次戦以降の奮起を期待したいところだ。
ドラゴビッチの低採点は、退場に繋がったファウルによるものではなく、1枚目のイエローの方だ。
無駄なカードが結果的に退場に繋がってしまった。
また、ドラゴビッチが退場したにも関わらず、戦術的な修正を怠り、追加点を許してしまったコラー監督の采配にもやや疑問が残る。
同点に追いつかなければならない事情は分かるが、まずは守備を修正するべきだった。
動きの悪いヤンコ、ハルニクを下げたのは妥当だが、代わって入ったオコティエやシュプフも存在感に乏しかった。

【ハンガリー】 

誤審に助けられた印象は否めないけれど、先制ゴールは誤審の前。
一瞬の隙を見逃さないサライとクラインハイスラーのテクニックは見事だった。
中盤からボールを丁寧に繋ぐ現代的なスタイルと、ショートカウンターの鋭さは見事だったのだが、
先制点のシーンを除き、それらが存分に発揮されたのは相手が1人少なくなってから。
11人対11人の状態でこれができるなら、有力国の1つになれるのだが……。
とはいえ、相手が1人いなくなってもボール支配・カウンターが出来ないチームがあるのは事実。
数的有利の状況を活かしきるだけの実力はあったと評価すべきだろう。

グループFのもう一つのアウトサイダーであるアイスランドに比べ、そのスタイルは遥かに洗練されており、
順調に強化が進めば再び世界のひのき舞台の常連国になれるかもしれない。
そんな期待を抱かせるこの日の戦いぶりだった。