話 105/150 人 115/150 絵 100/100 音 80/100 その他システム 100/100 印象 30/50

合計 530/650  (35位/180ゲームくらい中) ESにつける点 83~84


肩の力を抜いて楽しめる王道バトルものとしては優秀。それ以上を求めると、期待外れ。
個人的には、「ユースティア」に大差をつけられてのAugust内2~3位。それなりに面白いです。


本作は「滸パート」→「奏海パート」→「エルザパート」→「過去編」→「古杜音パ―ト」→「朱璃パ―ト」
といった流れで進んでいきますが、「過去編」を境に大きく物語の姿が変わります。
便宜上「過去編」の前を「前半」、「過去編」の後を「後半」と呼びます。


【前半部の感想】


本作「千桃」(と略します)において印象に残ったのは
ゾロアスター教をほうふつとさせる善(宗仁)と悪(かはく)との終わりなき激突。
そして、まつろわぬ神々や土蜘蛛のように、「敵対勢力」を神話上の悪神(あるいは妖怪・悪魔)として
歴史に組み込んでしまうその歪さと、桃の花を背景に抱き合うラスト、朱璃と宗仁の姿でした。



伝統的な倭国風の「皇国」が、アメリカを髣髴とさせる「共和国」に滅ぼされ、共和国の傀儡となった偽帝の翡翠帝と、それを操る小此木。
そして更にその小此木を操るウォーレン総督とその一人娘エルザという図式で始まる本作。
前半部では、共和国に占領された「皇国」の復興…というストーリーラインが展開されます。


ここでは「忠義」というワードについて、様々な掘り下げがなされています。

「本物の皇帝」であるが「現体制下では犯罪者」である朱璃と、「偽の皇帝」である翡翠帝、どちらに忠義を尽くすのか。
「主が誤っていると感じた場合、それでも主の希望通りにする」のが忠義なのか、「主を諭し、正しい道に導くのが忠義」なのか。
「血筋に忠義を尽くすのか、人柄に忠義を尽くすのか」。


そして本作では忠義を「必死に生きること」とし、「自分の中の譲れない何かに尽くす」こと。
ごく乱暴に言ってしまえば「忠義とは、自分の生き方に筋を通し、それに向けて必死に生きること」のような
結論がなされたように思います(あまり興味のあるテーマではないせいか、記憶がやや不確か)。



個人的には、前半部よりも後半部の方が面白かったです。
特に恋愛面でのヒロインの描かれ方は、後半部での古杜音や朱璃に比べてもいかにも弱いです。
奏海は個別ルートで「凄み」を見せてくれましたが、滸やエルザは個別ルート自体もやっつけ仕事めいたものでした。

ひ弱そうに見える、傀儡の皇帝、奏海ですが、実は「お義兄様に忠義を尽くす」という意味では恐らく作中ヒロインでは最もブレのないキャラクターで、ある意味物語当初から完成されています。
頼りなく見えたそんな奏海が、お兄様のために一歩も引かない「怖い女」としての真価を見せるに従い、彼女への好感度は大きく上がっていきました。


物語当初から「芯」がしっかり定まっている奏海とは違い、物語が進むに従って自分なりの「忠義」を見つけていくエルザは、作中大きく成長した人物の一人です。
ヒロイン格というよりも、もう一人の主人公として、本作を「エルザが『忠義』を身につけていく」ストーリーと見ることもできるでしょう。
そうした意味では、彼女はとても重要なキャラクターだということができます。


滸は……ラストで頑張ったから、まぁ……。


【後半部の感想と全体の感想】


上述したようにエルザ編あたりまでの物語は、要は共和国に占領された「皇国」の、復興の物語でした。
過去の因縁が明かされる「過去編」を挟み、後半部では、過去2000年にわたって戦い続けてきた「かはく」と、主人公の死闘へと物語が展開していきます。
現在、世界は「混沌の時代」であり、人知れず、世界のどこかで善神と悪神は戦い続けている。
だからこそ人の世には争いが絶えないという、そんな世界観の物語です。


ヒロインの感想で言いますと、やはり過去の因縁が深い後半ヒロインの朱璃・古杜音と、前半の3ヒロインでは
物語全体での存在感といいましょうか、重みに差があるように思えてしまいます。


また、これは全編を通してではありますが、本作は非常にオーソドックスなバトルものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。

物語は基本的に予定調和のまま進み、大きな驚きがない。
「ユースティア」にあるような、主要人物も死にかねないような容赦のない重みはなく、
あくまでもエンタメバトルものの枠に留まっているため、読者は安心して読むことができますが、
緊迫して読むことはできません。


骨太のストーリーもの、「ユースティア」のような作品を期待したい私としては、やはりとてもヌルく感じてしまいました。
さらに言えば……「エロゲー批評空間」の他ユーザーを批判するのもどうかと思いますが、トップページの一言感想に「ハッピーエンド最高!」と書いていくような無神経な方などもいて。


(最近、そういう方が凄く多いです。ネタバレを怖がらずに見られるのがこのサイトの良いところなのに、なぜ後半や終盤の展開、エンディング内容までわかるような事を、長文ネタバレ感想ではなく、一言感想で書いてしまうのか……。
ハッピーエンドで良かったとか、バッドエンドなのが気に入らないとか、ヒロインが死にます寝取られます注意、みたいなの、ほんとやめてほしい。「エンディングが良かったです」とか「ちょっと辛いシーンがあったのが残念でした」ぐらいに収めて、具体的な感想は長文で書くということが、何故できないのでしょう)


そういう意味でも「安心」と言いますか、終始平和でヌルーいストーリーだと感じてしまいました。


不死身の者同士が2000年間戦い続ける、神話的物語へと移行する後半はまだヌルくても良いのですが、
共和国の支配と皇国の復興という、シリアスなストーリーが展開される前半にこのヌルさは正直キツかったです。
武人が次々と処刑されていくわけでなし、囚われの身となったヒロインが陵辱されるわけでもなく、
物語内ではそれなりにシリアスな話をしているのに、読んでいる私の心は非常に平和でした。


また、パクリだのなんだのというわけではないのですが、後編のストーリーは昔「久遠の絆」という、
1000年以上に及ぶ「転生」と「悲恋」と「因縁」の物語がありまして。
「神」が絡んでくるところも同じなのですが、そんな心に響く過去の名作と比べると、
本作はどうしても弱いと思いました。


Hシーンがあまりエロくないのも問題で、Augustと言えばかつて「夜明けな」や「FA」ではむしろ「エロさ」も長所だったはず。
本作はHシーンでの声優さんの演技がイマイチなのと、Hシーンテキストも適当で、全然抜けませんでした。


忠義の物語なのに、「敵に囚われてエロいことされてそれでも忠義を曲げない!」的なシーンが1つもないのも非常に残念でしたが(滸と古杜都は、ヤバい奴に捕まったんだからさぁ。あってもいいじゃない、そういうの。)、それを抜きにしてもエロくなかったですね。

絵を大きく見せたい気持ちは解るけど、そもそもテキストが2行しか表示されないんじゃ、クリックも忙しくて抜いてる暇もないよ……。
サブヒロインの子袖のHシーンが一番エロかったかな…多分。


と、ここまで叩いてきましたが、テキストの読みやすさはさすがの一言。
また、(悪役以外の)登場人物への不必要な苛立ち、読んでて苛々する寒いノリや展開もなく、
良い意味でも苛々せずに平和に読めるのは、本作に限らないAugust作品の魅力。
大したストーリーじゃないなーと思いつつも、プレイ中、読むのを途中でやめようという気持ちには全くなりませんでした。

個人的には、宗仁と朱璃が再会しなくてもいいんじゃないかとは思いましたが、
桃の花びらが舞う中で抱き合う二人の絵はとても美しいため、これで良かったとも思います。

……まぁ、ネタバレのせいで、「ハッピーエンドだ」というのは解っていたから、
「良かった、本当に良かった!」というよりは、「まぁそうなるよね」という気持ちの方が強かったんですけど……。