・この結果には心底驚いた。

マルティネス監督は日本戦で「空中戦」要員に使った、シャドリ&フェライニをこの日も先発起用。だが、この日は「空中戦」ではなく、守備面で効いていた。特にフェライニは、ヴィツェルと並んで中盤でネイマールをケアしていた。この二人との対戦を嫌がったネイマールを左サイド(ベルギーの右サイド)に追い出すことに成功した。

・ベルギーは前線でエデン・アザールが躍動。デ・ブライネも良かったが、ルカクは後半運動量が落ち、消えていた。もう少し早い時間に代えても良かった。

・守っては守護神クルトワがスーパーセーブを連発。逆に言うと、クルトワのプレーが目立つぐらい、ブラジルに押されまくっていた。守備は相変わらず、非常に危うい。
次節ムニエが出場停止になるのは痛い。ベルギーのサイドで、最も計算が立つディフェンダーだけに。

・ブラジルは、内容面ではベルギーよりも格上だったように思う。だが、決定機をことごとく決められなかった。中央から追い出されたネイマールは、左サイドを起点にチャンスを作っていたが、決められる選手がいなかった。特に大会通してのジェズスの不振は響いた。ウィリアンもこの日は元気がなく、コウチーニョは躍動したが、決めてほしい決定機を外してしまった。

・出場停止のカゼミーロに代わって入ったフェルナンジーニョは、不運なオウンゴールに、アザールを止め切れずのイエローカードと、良い所がなかった。

・次のベルギーVSフランスが事実上の決勝になる。フランス相手でも分が悪いと思われるベルギーだが、ブラジルに勝てた自信を胸に、ぶつかっていってほしい。



娯楽度 8

ブラジル代表採点 6

GK アリソン 6
CB チアゴ・シウバ 5・5 
  ミランダ 6
RSB ファグネル 4 
LSB マルセロ 6
DH フェルナンジーニョ 3・5
CH パウリーニョ 6→レナト・アウグスト 6・5
OH フィリペ・コウチーニョ 7
LWG ウィリアン  5→ロベルト・フィルミーノ 6
RWG ネイマール  7・5
FW ガブリエウ・ジェズス  4・5→ドグラス・コスタ 6・5

監督 チッチ 6

【欠場者】
DH カゼミーロ 出場停止
RSB ダニーロ 負傷(大会絶望)


ベルギー代表採点 8・5

GK ティボー・クルトワ 8
CB ヤン・ヴェルトンゲン 5・5
  トビー・アルデルワイレルド 6・5 
  ヴァンサン・コンパニ 6・5
RWB トーマス・ムニエ 6
LWB ナセル・シャドリ 6・5→トーマス・ヴェルマーレン 5
DH  アクセル・ヴィツェル 7
CH  マリアン・フェライニ 7
RWG ケビン・デ・ブライネ 6・5
LWG エデン・アザール 8 MOM
CF  ロメル・ルカク 6→ユーリ・ティーレマンス 5

監督 ロベルト・マルティネス 7


優勝候補に挙げられたチームが次々と姿を消していく中、ますます充実度を高めているのがブラジルだ。
その戦力には穴がない。
エースのネイマールを支えるサポーティングキャストは、コウチーニョ、ウィリアンと非常に充実しており、全員を抑える事は極めて難しい。
ウルグアイやスウェーデンといった『守備に覚えがあるチーム』でも、ブラジルを止めるのは至難の業だろう。

だが、ブラジルの強さはそれだけではない。
特筆したいのは『ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)の速さ』だ。
ボールを奪われた直後にプレスを仕掛け、最終ラインはしっかりと帰陣する。
一人ひとりが守備をサボらず、相手のカウンターを許すシーンはほぼ見受けられない。
ここまでの4試合で、得点は7。失点は『1』である。
それも、スイス、コスタリカ、セルビア、メキシコと、いわゆる『弱小国』との試合は含まれていない。いずれも、『中堅』に位置する好チームである。
特にメキシコ戦は、全く危なげない勝利で、改めてその強さを世界に知らしめたと言えるだろう。



ベルギーは、端的に言うなら『変なチーム』だ。
攻撃のタレントは揃っている。世界でも屈指のチャンスメイカー、デ・ブライネとエデン・アザール。
更に前線の小兵テクニシャン、メルテンスと巨砲ルカク。
それだけでは飽き足らず、ウイングのカラスコまで先発に並べたその布陣は、まるで
『面白い選手を全員、無理やり並べてみました!』と言わんばかりの、豪華攻撃陣。
逆に言うならば、本当に守備の事を考えているのか、実に疑わしい布陣である。

普通なら、デ・ブライネの位置にはより守備的なデンベレが起用されるだろう。
カラスコのウイングバック起用も尋常ではない。

普通なら、『謎の3バック』は辞め、CBにアルデルワイレルドとコンパニ。ヴェルトンゲンとムニエでSBを組むだろう。
中盤の底にはデンベレ(もしくはナインゴラン)とヴィツェルを置き、サイドにカラスコ(もしくはメルテンス)とアザール、トップ下にはデ・ブライネでFWがルカク。
これが普通の監督のやりそうな事だ。僕なら多分そうする。
僕ならそうするが、これではメルテンスが使えない。勿体ない。つまらない!
メルテンスも見たいよね! だって、ナポリであれだけ輝いているアタッカーを使わないなんて勿体ないよね!
じゃあ使おう! 守備を削って! 
デ・ブライネを無理やり守備的な位置に置いて、カラスコも守備的な位置に置いて、もちろん守備にはある程度目をつぶって。

そんな、『一サッカーファンの浪漫』を体現したかのような布陣で戦っているそのせいで、中盤の守備は緩く、日本に完全に制圧されてしまった。
ちなみに、双方二軍を出したイングランド戦を除くと、3試合で11得点4失点
チュニジアと日本に2失点ずつというのは、優勝を狙うにはちょっとマズいレベルである。
一方で3試合で11得点というのは、いくら相手がパナマやチュニジア、日本という『いわゆる弱小国』相手とはいえ、大したものだ。

で、そんな浪漫が攻守に隙のないブラジルに通用するのだろうか? 難しい。極めて難しいと思う。
だが、こんなチームが1つぐらいあってもいいのではないか? そんな風にも思うのだ。

マルティネス監督は一見、何も考えていないように見えるが、
日本戦ではメルテンス→フェライニという、『空中戦のオプション』を用意していた。
オプションを全く用意せず、散っていったスペインに比べれば、ちゃんと考えてはいるのだ。
(スペインは監督が大会2日前に就任したので、オプションを用意しろというのは酷すぎるが)

セルビアの空中戦に苦戦する時間があったブラジルだけに、
『地上戦』で崩せないとみればベルギーは『空中戦』も使用してくるだろう。
ベルギーの攻撃がブラジルに通用するようならば、派手な撃ち合いも期待できそうだ。