S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品


弁護側の証人/小泉喜美子……年間ベスト級の傑作。『レベッカ』+『わらの女』+『終わりなき夜に生れつく』÷2…と、『香りの近い作品』は数あれど、これらを巧みに融合させ、壮絶な作品を作り上げた作者の腕には感服するしかない。
心理描写、情景描写共に実に繊細で、物語への没入力が高く、一度本を読み始めたら置く事すらできない。
唯一の不満点は、『邪悪すぎる悪役』が『天罰に遭うシーン』がほとんどなかった事か。読み進めれば進めるほど、悪役たちの邪悪さにメンタルをズタズタにされたので、彼らがひき裂かれる姿を描いてほしかった。



千尋の闇/ロバート・ゴダード……大河ロマン小説の名作。
歴史に埋もれた高潔な紳士ストラフォードの悲運と、60年前の美しき元恋人エリザベス、完膚なきまでにクズでありながら悪気はない、独特の存在感を持つ悪役クーシュといった、過去編の登場人物たちの存在感が素晴らしい。
現代篇は、意志薄弱でお人よしのヘタレ男マーチンを軸に、どう見ても悪女なイヴ、歴史の闇から立ち上がった真の黒幕セリックと、クーシュマンの遺伝子を継ぐクズ一族(特にヘンリー)などが策動するストーリー。マーチンの波乱万丈の人生と、その成長(?)は楽しめるが、ここでも過去編唯一の生き残り、エリザベスの存在感が輝く。
ラスト、マーチンはどう行動を取ったのか。どちらを選んだかは定かではないが、『成長した』と読めば成長物語としてこれ以上ない終わり方だし、『成長しなかった』と読めばそれはそれで、『新たな冒険』の匂いがする良い終わり方だったと思う。

長文感想はこちら。

大誘拐/天藤真……愉快なユーモア誘拐劇。82歳のおばあちゃん、とし子刀自のキャラクターが光る。
万人受けするタイプの作品で、割と誰にでも薦められそう。

百万ドルをとり返せ/ジェフリー・アーチャー……詐欺で総額百万ドルを失った4人が集まって、詐欺師から逆に100万ドルを盗み返す作品。ユーモアに溢れ、軽快なタッチで描かれるアクションシーンは見所満載、笑いアリ、驚きアリの良作エンタメ。最後、余分に取りすぎたお金を返しに行こう!と言い合うシーンも笑える。


レベッカ/ダフネ・デュ・モーリア……Aに近いS。前半3分の2は、前妻レベッカとの比較に怯える後妻の「わたし」視点での、うまくいかない結婚生活の物語。後半3分の1は、実はレベッカがクズ女で、マキシム(旦那)がレベッカを殺していた事実が発覚。ミステリ的展開になる。
前半が面白かった(前半だけならS)だけに、そのまま「わたし」がおかしくなっていくようなホラーモノにしてくれた方が好みだったかもしれない。情景描写が美しく濃密なため、ページ数の割には読むのに時間がかかるものの、「良質な小説を読んだ~!」という気分に浸れる力作。


八百万の死にざま/ローレンス・ブロック……THE・アル中小説。主人公のアル中探偵が事件を追いかける物語、という感じではない。アルコール中毒との闘いこそが本筋で、事件は『ストレス因子』として機能しているように見える。辛い事ばかりのこんな世の中じゃ、酒に逃げたくもなる。『飲む事への言い訳構築』や、『告白できない恥の意識』を含め、非常に素晴らしい依存症小説。
ラスト、遂にアルコール中毒を告白する主人公の勇気に感動した。

長い感想はこちら



推定無罪/スコット・トゥロー……現役検事補の書いた本格的リーガル・サスペンスとして堅実な構成を持つと共に、『俺TUEEE』的に敵の検事をバッタバッタとやっつける爽快感あり、ほろ苦い愛情の物語アリと、人間ドラマとしても楽しい贅沢な一作。やや病んでいる愛情深い妻、バーバラの存在がとりわけ印象深い作品。
(難しいかもしれないけど)遊びの不倫でしかないんだから、目をつぶって……やれなかったんだろうなぁ。それにしても、キャロリン……40代でもますます盛んに男をとっかえひっかえ、とんだ悪女だぜ……。性欲と愛情は別、というのは女性にはあまり理解されてない気がするけど、本当に別だと思うんで、この手の『性欲しかなさそう』な不倫は眼をつぶってやってください(まぁ俺には関係ない話だが)



沙高楼綺譚/浅田次郎……感想はこちらに書きました。

伯母殺人事件/リチャード・ハル……こちらに書きました。

ホッグ連続殺人/ウィリアム・デアンドリア……非常に読みやすく洗練されたミステリで、古き良き時代の「ヒーロー的名探偵」と、現代的大都市ニューヨークでのリアルな殺人が同居する、
古く新しいミステリ。道具立てはクラシカルだが、キャラクターは現代的で活き活きと描かれている。
タイトルであっさり動機がわかってしまったのはご愛敬。

生ける屍の死/山口雅也……感想はこちらに書きました。


九尾の猫/エラリー・クイーン……あまりにも救いのない、重苦しい話。悲劇の人生を歩んだカザリス博士に涙。クイーンでまさか感動させられるとは……今まで読んだクイーン10作の中ではこれがベスト。
作風が全く違うので比べるのもあれだけど、個人的には国名シリーズよりも遥かに面白い。

やとわれた男/ドナルド・ウェストレイク……「シビれる」ハードボイルドを読んだのは、いつ以来だろう? 存外、僕はハードボイルドとは相性が悪く欠伸をしてしまう性質だ。感情のない人間には共感できないし、感情豊かで甘い作品はハードボイルドとは呼び辛いからだ。しかしこの「やとわれた男」には、シビアな人間関係・乾いた感情の中に確かな哀感があり、人間への愛がある。ミステリとしても一級品で、犯人当ての作品としても楽しめるし、言い知れぬ不安を抱かせるラストの描写も最高。
これは名作ではなかろうか。ウェストレイクを読むのは今回で13作目か14作目になるが、「ホットロック」と甲乙つけがたい、彼のベスト作品。



捕虜収容所の死/マイケル・ギルバート……皆から憎まれていた捕虜が殺された。問題は死体発見の場所。イタリア軍に隠れて掘っていた脱走トンネル内に死体があったのだ。トンネルの在処をイタリア軍にバレないようにしつつ、真犯人を探るというミステリとサスペンスが絶妙に混じり合った隙のない構成はただただ見事。ラストの脱走シーンの緊張感も素晴らしく、とにかく完成度の高い一品。


偽のデュー警部/ピーター・ラヴゼイ……「日常」から切り離された5日間の船旅は、ロマンチックな「非日常」空間を生み出すんだなあと改めて感じた。大勢の人間が、のんびりと過ごす5日間。その間に出会いもあり、別れもある。これが現代の飛行機旅行だとなかなかそうはいかないよなぁと。
非常にサクサクと読めるユーモア・ミステリ。ラストはちょっとモヤモヤとするけれど……

警察署長/スチュアート・ウッズ……人種差別の激しいジョージア州の街デラノを舞台に、3代の警察署長の目を通して、公民権運動の高まり、黒人の解放を描く
文句なしに面白い大河作品だが、黒人に対する白人差別がどうしょうもなく、読んでいて憤懣やるかたない気分になるのはテーマ上

A→読んで良かったと思える作品

ドーヴァー4 切断/ジョイス・ポーター……田舎で力を持っている謎の婦人会。謎の切断死体。自殺。
主人公は『村のヤリチン』を去勢して回っている婦人会の陰謀だと考えるが……。
笑えて、怖い、ユーモアホラーミステリー。面白いよ!

追いつめる/生島治郎……暴力団によって、妻子も職も失った元警官が、単身暴力団をぶっ潰す! というストーリー。A・J・クィネル「燃える男」にそっくりなストーリーラインだけど、こちらの方が先です。暴力団によって踏みにじられる人々や、主人公の周辺キャラ、そして何より、『強情で、扱いづらくて、不器用なほどの正義漢に衝き動かされ、何者にも縛られたくない』主人公の生き様が熱く、読ませる。

飢餓海峡/水上勉…… Bに近いA。真心を持ちながら不幸な人生を送った娼婦と、慈善事業で多くの人を救いながら殺人も犯してしまった殺人犯の姿が印象に残る、文学的な作品。素晴らしい内容なのだが、下巻のテンポの遅さは正直しんどく、少し減点。既に読者が知っている内容を、警察が1つ1つ捜査を進めて行くさまが丹念に丹念に描かれすぎていて、ちょっとな。そこ以外は良かった。八重さん(娼婦)マジ天使。


ヒューマン・ファクター/グレアム・グリーン……『祖国』と『家族』、どちらを守るべきなのか。
主人公は『家族』を取った。僕はその決断に『共感できる』。主人公は二重スパイとして祖国を売った。しかし、祖国が、主人公に何をしてくれただろう?
愛すべきバカ犬が死ぬシーンが悲しかったです。スパイ小説、という表現から想像しそうな派手な展開はなく、ひたすら地味で静謐だけど、『味わい深く、読ませる』作品。

ゴメスの名はゴメス/結城昌治……「ヒューマンファクター」に似た味わいを持つ、
『二重スパイの悲哀と孤独』を、ベトナム戦争勃発間近のベトナムを舞台に描いた作品。
コンパクトでありながら、どこか爽やかな旅情作品としても読め、人生の一期間における冒険小説としても楽しい作品で、面白かった。

欠点とも呼べない欠点を挙げるなら、
1・主人公が『思いつき』で行動を取って、他人もそれに巻き込まれるため、(主人公の一人称で書かれているためあまり気にならないが)、
他人から見たらこの主人公、相当気まぐれで付き合いづらそうだなぁと思わされた点。
2・リエンという女性キャラが『香取の妻にソックリ』というのは何かの伏線かと思ったけど、全く関係ない他人の空似だったっぽい点(僕の読み落とし?? 伏線の回収ミス??)
3・スパイ、二重スパイ、味方なのに襲ってくる奴含めて人物関係がすげぇややこしい上、登場人物名が覚えにくく(ベトナム人なので、トウとかバンとかそんな名前だし、組織自体もベトコンだのベトミンだの紛らわしい)上、登場人物紹介表がついていない点。
僕はもう途中からわけわからなくなって、そこは流した。
ちゃんと読みたければ自分で登場人物表を作った方が良いと思った。


ラバーソウル/井上夢人……主人公の設定があまりにもドギツクて、読んでいてとてもしんどかった(顔が醜すぎて、友人がいたためしがない引きこもり36歳設定とか、マジ辛い)。
『誰かを守れる(幸せにできる)自分』を発見することで、幸福を感じる気持ちは解る。本当によく解る。
でも、よりによって護る相手がこんな女かよ。


りら荘事件/鮎川哲也……サークル描写が良く、サークル間のリア充、非リア充ヒエラルキーの描写も良い、夏合宿連続殺人事件。青春モノの素晴らしい雰囲気でありながら、すぐにどんどん連続殺人が起きてしまい、殺人事件によってサークル間の人間関係に変化がほぼ生じないのは少し不満ではあるが。
『結婚前なのに非処女だった』だけで大騒ぎした、橘秋夫とかいう潔癖症の男のせいで、何人も死ぬ羽目に……。他人の恋路に口出しする人、ほんっと嫌い……。ほっといてやれよ……。
性格の悪いオタサーの姫、サロメ嬢。ワガママ太っちょ、恋人には一途のリリス嬢。モテないから恋愛には興味ありません(振り)な鉄子嬢と、女性陣の魅力が溢れる一方、男性陣はどうもしょーもない輩が多くて残念(行武は良かったのだが、魅力を発揮しきることなく死んでしまった)。
まぁ、女性陣もみんなしょーもないんだけど、そのしょーもないところが可愛いと思ってしまうのは、僕が男性だからだろうか……。



ブラック・ダリア/ジェイムズ・エルロイ……未解決殺人で母親を失っている作家が、同じく未解決で迷宮入りした実際の事件『ブラック・ダリア事件』に材を取った、エンタメ警察小説。被害者にとり憑かれていく主人公、陰惨なストーリーでありながら最後に救いが見える(ような見えないような)のも嬉しい。ブラック・ダリアにとり憑かれていたのは、恐らく作者も同じだろう。
読者にとっても面白いし、何より作者にとって『書かないではいられなかった』のだろうなと感じさせる、魂のこもった一作。これを書くことによって、何より作者自身が救われたのではなかろうか。

心引き裂かれて/リチャード・ニーリィ
レイプ魔が跋扈するニューヨーク。主人公の奥さん、ケイトもレイプ被害に遭うが、妻の束縛の強さに耐えかねていた主人公は、偶然出会った元恋人グロリアと不倫に精を出すのであった。
ラストで明かされる、奥さんケイトの正体は衝撃の一言。奥さん=母親かよ! 
色々考えさせられるお話。

女彫刻家/ミネット・ウォルターズ……母と妹を惨殺したシリアルキラー。主人公のフリーライターは彼女を取材するうち、事件にとりつかれ、過去の真実を探り出していく。過食と拒食。皆が傷を抱え、皆が病み、その中で何とか日々を送っていく、ロス・マクドナルド、ジョン・ハート系列(あるいは「ミスティックリバー」)のミステリで非常に好みだが、最後のドンデン返しはない方が良かったのでは……。

シブミ/トレヴェニアン……『シブミ』を持つ主人公ニコライの、とりわけ青年時代の描写が面白い。下巻も(洞くつ探検のシーンは少々退屈だったが)まずまず楽しく読めた。最後もなんだか、日本の歴史小説を読んでいるかのようで、ワビサビと言うか。
それとは別次元の話をするなら、アメリカの作品でありながらアメリカ文化を痛烈に叩いているところから、逆に『アメリカという国の健全さ』を感じた。

失踪当時の服装は/ヒラリー・ウォー……白昼失踪した女学生の謎を追う、凸凹刑事コンビのやり取りが楽しい。警察小説というジャンルを切り開いた歴史的意義のある作品だが、そういうのは抜きにして今読んでも普通に面白いです。半年で11人と36回デートした女学生が『真面目な女生徒』扱いされているのは、読んでて不思議だったけど。

殺人鬼/浜尾四郎……ヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」のオマージュであり、一つの進化系。「グリーン家」をオマージュした作品には、エラリー・クイーン「Yの悲劇」があり、「Yの悲劇」のオマージュである(らしい)横溝正史「獄門島」までを加えれば、ミステリの一大山脈を為す。
大富豪秋川一族を狙った連続殺人にして、遺産相続などが絡む、古式ゆかしい王道スタイルのミステリ。
登場人物の描き分けは、美人3姉妹がひろ子を除くとキャラが経っていないのがやや残念。
一族間の連続殺人を描く作品は、必然的に登場人物間の関係性が密接、かつ想像しやすいものとなっており、興味を持って読めるのが好材料。
非常に緻密に、丁寧に描かれる連続殺人は、今読んでも十分面白い。
ただ丁寧すぎるのがやや難で、何から何まで説明してくれるラストは正直ちょっとタルかったかもw


オデッサファイル/フレデリック・フォーサイス……ナチスドイツで悪逆非道を尽くしたロシュマンを追う、主人公。僕が考えていたのと違って、ドイツも戦争責任をきちんと取っていないのね。取っていないというか、『全部ナチスドイツがやった事で、俺ら一般ドイツ人には関係ありません』的な態度なのね……。それにしたって、元ナチス党員が5年かそこらで公務員に復帰してるのはマズくないか?
フォーサイスの『意気』を感じる作品。『娯楽部分』はそこまで面白いわけでもないが……。


殺人症候群/リチャード・ニーリィ……王道のサイコキラー作品。としか言いようがないが、王道=つまらない、ではない。現実に、こういう経過をたどって連続殺人に行きつく猟奇殺人犯はいくらでもいそうな、リアリズムを感じる。

レッドドラゴン/トマス・ハリス……有名だと思われる「羊たちの沈黙」の前作にあたる作品だけど、「羊たち」よりも面白かった。
「羊たち」の面白さが、カリスマ悪役のレクター博士とクラリスの謎めいた関係性に終始拠っているのに対し、「レッドドラゴン」はよりオーソドックスで、より堅実な、正統派サイコサスペンスだと思う。特に下巻、犯人の視点が増えてからは面白くなってくる(それまでは微妙)。
ただ、(ネタバレ。反転してください)→最後の50ページはない方が良かった。最後の50ページなしで終われば「美しく悲しい話」で終わったのに、最後の50ページで「胸糞悪いバッドエンド」になった。好みの問題だけど。


時の娘/ジョセフィン・テイ
王子を殺したとされる、悪名高きリチャード3世。だが、真犯人は別にいたのではないか? 入院中の刑事が、ベッドの上から真犯人を探し出す。
ミステリではあるけれど、歴史論文に近い感じの手触り。
大きな謎を解決(?)し、さて日常へと戻るラストも良い。
惜しむらくは、私にリチャード3世当時の英国史になじみがなく、かなり混乱を生じた事。
ネットでは歴史知識がなくても読める、と書いてはあるけれど、エリザベスが何人もいたり、ヘンリーが何人もいたり、リチャードも何人もいたり、結構混乱すると思うぜよ。読めないとは言わんけど。

シャーロックホームズの冒険(短編集)/コナン・ドイル

長い感想はこちら。

社会不適合者でぼっち、そのうえヤク中なダメ男、ホームズ君だが、推理の時だけは天才となる。
そんな目の離せないホームズ君を甲斐甲斐しく見守るワトソン君の友情が印象に残った。
一番面白かったのは「青いガーネット」。想像していた以上にユーモアミステリだった。


シンデレラの罠/セバスチャン・ジャプリゾ……『ドミニク』は『ミシェル』に殺意を抱いて、火事で彼女を殺そうとし、『ミシェル』も『ドミニク』に殺意を抱いて、火事で彼女を殺そうとし、
生き残った一人は記憶喪失。私は『ミシェル』? それとも『ドミニク』? というお話。
ミステリとして面白いんだけど、「どっちだってええがな」感もあった。
共犯者『ジャンヌ』が『ミシェル』を(性的に)狙ってた描写もあるし、『ドミニク』も読み方によっては『ミシェル』を狙っているように読め…なくもない(かなり無茶だけど)ので、百合の花咲き乱れるクレイジーサイコスリラー方面でやってほしかったけど、それだと別の話になっちゃいますかねw


獄門島/横溝正史……『跡継ぎが頼りないから、跡継ぎ継承順位の上のやつらを片っ端から殺して、頼りになる跡継ぎに跡を継がせよう』とはあんまりにもひどい動機じゃございませんかw キチガイに謎の復員兵、独特の横溝ワールドは堪能でき、面白かった。敗戦直後じゃないと書けなかった作品かも。

殺人者の烙印/パトリシア・ハイスミス……Bに近いA。迷惑な夫婦に振り回される周囲こそ不憫だ……。


十日間の不思議/エラリー・クイーン……犯人の特異な人物像に、なるほどと思わされる。復讐とはいえ、ここまでしなきゃならないものなのかなぁ。「赦す」事は、相手に限らず自分をも「救う」と思った。


星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン……物語的興味ではなく、学術的な知的好奇心で読ませる、良い意味でも悪い意味でもSFらしいSF。最初はとっつきづらいが、ラスト50ページは惹き込まれるように読めた。

鷲たちの盟約/アラン・グレン……フランクリン・ルーズベルトが暗殺され、ヒューイ・ロングが政権をとったアメリカで起こった、一つの殺人事件の物語。歴史改変SFとして、全体的に質が高く、物語全体を支えるリアリティの強度は高い。 
ただ……主人公の行動が、ヒトラーやヒューイ・ロングの命を救うなど
『煮え切らない・やるせない』展開が多い後半は、『解るけど……』という感じ。
真面目で悪い人間ではないのに、体制に迎合してしまう小市民的な主人公で、『革命戦線の闘士』みたいなキャラではないのも、『リアリティがある』とは言えるのだが……。
結局、『本当はいけない』と解っていても、自分の家族や仕事を守るためには、遠くでユダヤ人が殺されていても見て見ぬふりをするのね……という、何ともやるせない物語だった。


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

燃える男/A・J・クィネル……『マフィアを相手に、男が1人立ち向かう!』というストーリーを聞いた時は、いかにもつまんなそーだな……と思ったのだが、期待値が低かったせいか、予想に反してなかなか面白かった。全3部構成で、第1部を『生きがいを失った男が、生きがいを見つけたと思ったら、それを奪われるまで』、第2部を『復讐準備と、それを支える島の人々』、第3部を『戦闘開始』と、それぞれ独立した短編のように繋げる手法も(よくある手とはいえ)巧いと思ったし、
第3部を主人公視点から始めるのではなく、敵側から始めたのも面白かった。
また、『マフィアに1人立ち向かう男』を、『どこにでもいそうな市民』
たちが応援してサポートしてくれるシーンもなかなか熱い。

11枚のとらんぷ/泡坂妻夫……素人奇術クラブの楽し気な雰囲気が良かった。



憎悪の化石/鮎川哲也……古さを感じさせる社会派小説という事で、どこか松本清張に似た印象を受けた。わずか6分の違いで人生ががらりと変わってしまう、という構図は面白かった。

黒いトランク/鮎川哲也……緻密なアリバイ崩しと、過去の人間模様。
とりわけ、真犯人の人物像などなどが『過剰にクサくなりすぎず、抑制の効いた恋愛モノ』としても読ませ、『トリック・ミステリとしての出来も素晴らしい』。
のだが、僕はもっと抑制の効かない恋愛方面に力を割いて欲しかったw 折角、「じーん」と来る話で終わったかなと思ったら、最後長々と残された謎の解釈が入っちゃって、「じーん」で終われなかったのが、個人的には残念。真犯人の遺書で終われば良かったのに……。

A-10奪還チーム出動せよ!/スティーヴン・トンプスン……僕向きの作品ではないが、それでも割と楽しめた。派手なカーチェイスやらドッグファイトが見せ場『らしい』が、個人的にはそこよりも『父親との関係性』が読みどころだと思う。明るい希望は見えたものの、個人的には主人公のその後も、後日談として読みたかった。

刺青殺人事件/高木彬光……前半は面白いのだが、後半謎解き一辺倒になるのが残念。古い作品なので仕方ないのだが、説明なしに児雷也とか大蛇丸とか綱手姫とか雷おしんとかが出てきて困ったw 誰だよおめーら! はい、また知識が増えました。


ストリートキッズ/ドン・ウィンズロウ


月長石/ウィルキー・コリンズ……ある宝石(月長石)の盗難事件を機に燃え上がる、ロマンスの炎。
古典ロマンス小説、ミステリー風味のソース付きといった趣きの作品。主役のフランクリンやレイチェルよりも、『ロビンソンクルーソー』狂信者の執事ベタリッジや、醜くも優しいエズラといった脇役が印象的。



クリスマスのフロスト/ウイングフィールド……幾つもの事件が連関し合っている構造はなかなかテクニカルだし、俗物的なカッコ悪い中年警部フロストの活躍ぶりもユーモラスで悪くなく、その底に多少の悲哀も流れている。
ただ、娯楽色・文学色共にそこそこ良いものの、そこそこ。500ページとそれなりに分厚い作品なので、もう少し上を期待したい。350ページぐらいで軽く読めるサイズに、これだけの内容が描かれていればもっと褒めたと思う。

骨と沈黙/レジナルド・ヒル……傲慢不遜なダルジールと、人情味のあるパスコーが主人公の警察小説。
事件はダルジール&パスコーが担当するAと、パスコーが主に担当するBに分けられる。
A事件では、強引な手法で犯人候補を痛めつけるダルジールのやり方が、終始気に障った。
B事件はそれに比べ、繊細で読ませる内容だが、衝撃的なバッドエンド。悲しい。
ダルジールは死者を殺害した、生者を罰する事にしか頭がなく
パスコーは生者を救おうとするも、力及ばず。
しんみりとした悲しい幕引きで、こういうのは嫌いではないが、ダルジールがウザすぎた。


ウッドストック行最終バス/コリン・デクスター……「主人公がそう言うんならそうなんだろうけど……」としか言えない迷推理は個人的にはどうかと思った。
ただ、チャーミングで冴えない迷探偵モース警部と、それに振り回される部下のルイス君、事件関係者達のキャラ魅力は悪くない。

シャドー81/ルシアン・ネイハム……ハイジャックものの傑作。

苦い林檎酒/ピーター・ラヴゼイ……エキセントリックな謎の美少女アリスの登場と共に幕を開ける、ノスタルジー&ロマンチックな恋愛ミステリ……を勝手に期待したのが良くなかった。そんな話ではなかったのだった。勝手に違うものを期待したこちらが悪いが、冒頭のノリが好きだっただけに残念。

ゴーリキーパーク/マーティン・クルーズ・スミス……「寒い」「退屈な」「自由がない」「人間不信の」ソ連を描いた、地味な作品……と思いきや、500ページを超えたあたりから面白くなってくる。しかし面白くなるまでが長すぎ……。


リリアンと悪党ども/トニー・ケンリック……最初は微妙だけど、段々面白くなる。ただ、アクションシーンはイマイチに感じた。リリアンのキャラクター性が面白さの5割を担っているので、リリアンを気に入るかどうかが大きいかもしれない。

歯と爪/ビル・バリンジャー……一見関係のない2つの視点が交互に挿入されるので、とっつきづらいが、最後はなるほどと感心した。尻上がりに面白くなるが、面白くなるまで時間がかかった。

占星術殺人事件/島田荘司……トリックのインパクトと、探偵コンビの珍道中は高評価。ただ、面白くなるまでに時間がかかりすぎ。

見えないグリーン/ジョン・スラデック……ミステリ愛好サークルの同窓会をきっかけに起こる連続殺人モノ。
サークル員の一人『少佐』の、被害妄想描写が真に迫っており、非常に面白い(反面、怖い)。しかし、『少佐』を皮切りに、連続殺人が起こると、後半は『フツーの』ミステリになってしまう。それが好きな人の方が多いかもしれないけど、僕的には少佐の異常心理こそが面白かったので拍子抜け。殺される人物も、魅力的なキャラから死んでいってしまうので、残された奴らはどうでも良いキャラばかりなのも残念。犯人も魅力ないし。色々と勿体ないと感じた作品。

ひまつぶしの殺人/赤川次郎……「ひまつぶし」としては面白い。頻繁な視点変更はさながら映画のようで、作者の技量を存分に見せつけられた。語り手としての能力は、さすが赤川次郎といったところか。
母は泥棒、兄は殺し屋、主人公は弁護士で、妹が詐欺師、弟が警察官というユニークな一家が生み出す、ドタバタ犯罪コメディ。近親相姦を知らずにしちゃったくらいで何も自殺せんでも……と思いました。犯行の動機も、命も軽い。ちょっとウーンとは思うけど、こういう作品では、あまり気にしても仕方ないのかもしれない。

スイートホーム殺人事件/クレイグ・ライス……お母さんが再婚する話は良かったし子供はかわいかったけど、殺人事件はどうでも良かったw

翠迷宮(アンソロジー)……感想はこちら。

奇岩城/モーリス・ルブラン……怪盗紳士ルパンというキャラクターを生み出したルブランの功績。暗号、冒険、ミステリ、恋愛(男はつらいよ的な?)を結び付けたこのシリーズは、恐らく後世のエンタメ作品に特大の影響を残している。また、読書人生最初期に南洋一郎版ルパンに出会った事も、僕にとって財産となっていると思う。悪人であるはずの「強盗・泥棒」を魅力あるキャラクターとして描いた功績も、大きいのではないか(多分)。
で、大人になった今、新潮文庫版のルパンを読んでみたが、まぁそれなりに楽しめたものの、今となっては……と思わなくもない。
ただ、ラスト、怪盗であるはずのルパンが蓄えた「美」や「人情」が、正義であるはずの無粋な警官&卑劣なホームズ(他人のキャラを無断で出すなw)に踏みにじられる描写は、しみじみしてしまうところはあるが。あと、少年探偵のボートルレ君は、「黄色い部屋の謎」のルールタビーユ君より30倍かわいい。


野獣死すべし/ニコラス・ブレイク……1930年代にはまだ、完全な形の「倒叙小説」がなかった(タブーだった?)……のだろうか? バークリーの「試行錯誤」に続いてこの作品を読んだが、途中までは緊迫感のある倒叙モノだったのに、後半は純正ミステリになってしまう。一粒で二度おいしい、と見る向きもあるだろうが、個人的には前半の緊迫感溢れる倒叙のまま突っ走ってほしかっただけに、残念だった。

消えた玩具屋/エドマンド・クリスピン……事件自体というよりも、作中に流れる楽しげな学生街の雰囲気が良かった。


多摩湖畔殺人事件/内田康夫……「多摩湖畔」である必然性が全くないし、犯人の動機が不明すぎる。
犯人の人物像もよくわからないし。ただ、事件解決の鍵が酒田市の御殿毬というところから、酒田市に旅行したくなったのは事実だし、車いす美少女もかわいい。軽い気持ちで読んで、旅行したい気分に浸れるという意味では悪い作品ではないのかもしれない。ガチな物語、ガチなミステリの読み応えを求めると、辛いけど。そこそこ良質のラノベミステリ、という感じ(ラノベとは言わないのかもしれないが)

房総・武蔵野殺人ライン/深谷忠記……1995年発行にしては、登場人物像に古さを感じるが、それはおいといて。鬼畜と思われた主人公の父が実は被害者(と言っても不倫はしているが)で、不倫相手こそがド畜生の外道だというのは、なかなかドンデン返しが効いていて良かった。

緑は危険/クリスチアナ・ブランド……戦時中の病院を舞台にした殺人事件のお話。雰囲気が良い。

ロウフィールド館の惨劇/ルース・レンデル……

『10か月後に殺される一家』と『10か月後に一家を殺す狂人2人』が、どのようにして破局へと突き進んでいったかを、じっくりねっとり書いて、
『ここでこうしなければ、破局には至らなかったのに』的なエピソードが数多くある中で、『破局に進んでいく』登場人物の運命を読者は傍観者として眺め続ける、そんな作品。
なんて嫌な小説なんだ……。もう絶対この作家の小説は読みたくない!! ってぐらい嫌な小説。
でも質は高い。
ただ、これは『文字が読める/読めない』とかそういう次元の話じゃない。重度の知的障碍者で、その上サイコパスだと思う。


乱れからくり/泡坂妻夫……Cに近いB。最後まで読めば、なるほど『からくり』である必要もよくわかるのだが、からくり仕掛に興味がないと、作者のからくりにまつわるうんちくが退屈で仕方がなかった。寝取られ男と寝取られ妻と寝取り男、なんだか寝取られ系AVでよく見るパターンだな……と思ったが、事件をかき回してくれそうな妹キャラまで殺さなくても良かったのにな……


人形はなぜ殺される/高木彬光……Cに近いB。確かに『人形』という道具・比喩を効果的に使っているし、巧いとは思うのだが、勝手に「もっとおどろおどろしい作品」を期待していたので、
そういう意味での期待は外れた。もっと乾いた、理詰めの作品だった。
同じBでも「刺青殺人事件」の方が好き。

招かれざる客/笹沢左保……調査報告書形式で始まるのが面白く、目を引いた。
事件自体も描き込まれており力のある作品だが、それ故に『生臭く』、特に女性キャラが揃いも揃って悪女な上、悪女Bに至っては無罪放免になっているのが実に胸糞悪い。悪女Aは真犯人なので良いとして、Bも追いつめてくれ……。

C→暇つぶし程度にはなった作品

黒い白鳥/鮎川哲也……過去の作品なので、「不自由な時代だったんだね」とか「バカバカしい事が随分あったんだね」という感想が先に立ってしまった。
犯人は過去を隠すため何人も人を殺す羽目になったし、過去を暴いて強請りをはたらく阿呆も何人もいたみたいだけど。
『奥さんの過去が元風俗嬢だった!』って、もし自分が夫ならちょっとショック受けて終わりですわ。自分と知り合う前に何をしていたかなんて、興味ないです。足を洗ったなら猶更。


誘拐作戦/都築道夫……えらく複雑な話だったけど、登場人物があまり魅力的に描かれていないので、『ふーん』でおしまいになってしまった。



薔薇の名前/ウンベルト・エーコ……『中世ヨーロッパの修道院』という、ある種の異世界ファンタジーを読むスタンスで読めば面白い。ただ、なんつーか……『簡単な事を敢えて難しく長々と書く』筆者の文章に、僕はもう疲れ果てたよ……。Bにしようか迷ったけど、しんどさだけならD評価。

サマーアポカリプス/笠井潔……相変わらず小難しい。『バイバイ、エンジェル』の『革命運動に憑かれるマチルドやアントワーヌ』には感情移入できたんだが、こちらのシモーヌ・ヴェイユはちょっとよくわからんかった。理解できないのは僕がバカなせいなのだが、そうなると、これぐらいの評価にしかならない。

ジェゼベルの死/クリスチアナ・ブランド

はなれわざ/クリスチアナ・ブランド

古い骨/アーロン・エルキンズ

女には向かない職業/P・D・ジェイムズ……有名作なので期待しすぎた。
故人を叩くのはアレだけど、解説の瀬戸川さんさぁ。『シラミまみれで乞食の変装をしたり、脳症が飛び散った死体をまじまじと見て証拠を掴んだりするのは男性主人公が望ましい』って、なんやねん。そんなの女じゃなくたって嫌だがな! 男に汚れ仕事押し付けんな!(唐突な怒り)



黒死館殺人事件/小栗虫太郎……↑『薔薇の名前』と同じで、とにかくしんどい。『簡単な事を敢えて難しく長々と書く』筆者の文章に疲れ果てた。恐るべき厨2病。その意味不明かつ大仰な厨2魂にあてられて、一種の酩酊感は味わえるのでCにしたが、やはり辛いもんがある。


わらの女/カトリーヌ・アルレー……バカな女が詐欺に引っかかって人生を台無しにする話。胸糞の悪い話で、怖いと言えば怖いが、どちらかというとこんな詐欺に引っかかる方がバカなのでは?と思ってしまった。

赤い右手/ジョエル・タウンズリー・ロジャース……勢いとエネルギーと力業で無理やり物語を終わらせたような。酩酊感、ドライブ感は確かに凄い。しかし、『偶然』があまりにも多すぎない?

ミスブランディッシュの蘭/ハドリー・チェイス

パンドラ抹殺文書/バー・ゾウハー……最初と最後は面白い。ただ、主人公が『国家から使い捨ての消耗品扱い』されているのに、『主人公は国家に尽くしたがる』理由がわからなかった。


D→自分には合わなかった作品

813/モーリス・ルブラン……面白い、とか、面白くない以前に、作品として完結していない。「続813」とセットで1作であり、この「813」は「上下巻の上巻」としか言いようがない。
何せ悪役の正体は不明、令嬢は捕まったまま、ルパンも捕まったままである。
完結しての感想は「続813」を読んだ時に書こうとは思うが、「続813」を読む予定は今のところない……。

木曜の男/チェスタトン

39階段/ジョン・バカン……さすがに古すぎたか……

ジャッカルの日/フレデリック・フォーサイス

摩天楼の身代金/リチャード・ジェサップ……この方法は『新しい』のか? めちゃくちゃ展開が読めたのだが……。

猫は知っていた/仁木悦子……作者の人柄の素晴らしさを伝えてくれる、解説・あとがきには感動したのだが、作品本体には感動しなかった……。もっとも、トリックは意外ではあったが。


不連続殺人事件/坂口安吾……被害者の数が多く、容疑者の数も確保する必要上、登場人物が膨大な数になっているが書き分けはうまくいっておらず『空気』になってしまったキャラが多数。
また、トリックはあまりにも絵空事。女の部屋の前で大声で3時間も喚いて扉を殴ってる男がいたら、普通誰か1人ぐらい警察に通報するなり、皆で取り押さえたりしないものだろうか? 
更にミステリをある程度読んでいると、とある法則(ネタバレのため反転)
犯人に一度狙われたにも関わらず、助かった人間=真犯人
で真犯人を見破ってしまう確率が高いと思われる。


毒蛇/レックス・スタウト

逃げるアヒル/ポーラ・ゴズリング……『女だてらに、男まさりの』という、性差別なんだかそうじゃないんだかわからない誉め言葉が冠されている作品だが、『不必要に気が強く喧嘩早いヒロイン』と『ものすごく無愛想で、心に傷を持つ男』の関係性などは、
女性作家特有の(この女のどこがいいの? この男のどこがいいの?)と(僕に)思わせる人物像で、辟易させられた。


生者と死者と/エラリー・クイーン……目の前で人が殺されてるのに犯人Aを逮捕せず、2人目がまた犯人Aに殺されている時点で駄作だと思いました。1943年のアメリカの法律では、目の前で人が射殺されても現行犯逮捕できなかったんでしょうか?

ベルリンの葬送/レン・デイトン……

E……本屋に並べていいのか疑問に思う作品

石見銀山街道殺人事件/小谷恭介……情報の取捨選択に難があり、必要のない蘊蓄がやたら続くわ
(石見銀山の蘊蓄はともかく、被害者の実家の地方の、長々とした蘊蓄は必要か?)
文章に味がなく、表現は類義語辞典の引き写しといった様相で、
キャラクターは書き割り同然の薄さ。
何をやっても嫌みな事しかしない刑事や、あっけらかんとした態度を取り続ける女など、
まるでロボットのようだ。
睡眠薬の情報も間違っている。
プロの作品として、到底認められない作品だと思ったが、作者後書きを見ると健康を崩していたっぽい。
健康を崩していた作者が頑張って書いたんだから……と、ある種同情を持って弁護してもいいが、
読者が作者に同情して弁護しないといけない時点でどうなのよ、としか言えない。