評価はB+。ただし、それは純粋に面白さに対しての評価です。
『警察小説』という新たなジャンルを開拓した、という歴史的意義を考えれば評価はAにもA+にもなります。

舗装されていない『警察ミステリ』の道を切り拓いた、というそれだけでも評価に値しますが、
そういう外部情報を取っ払って、今、一つの娯楽小説として読んでも十分面白いのは偉いなと感じました。


ミッチェルという女学生が白昼に失踪。それを追いかける刑事コンビのお話です。
この、フォードとキャメロンの凸凹コンビのやり取りは地味に面白かったです。
捜査が進むにつれて、生前のミッチェルの姿が少しずつ浮かび上がってくる仕組みとはいえ、
そこまでドラマチックなものでもなく、淡々と捜査が進んでいくわけなので、この刑事コンビのやり取りがつまらなかったら、読んでいて本当に退屈したでしょう。
そういう意味では、キャラクター小説と言っていいのかもしれません。


ただ……、現在の目から見ると、あるいは警察の取り調べを受けた事のない僕の目から見ると、
ちょっとマズいんじゃねーか?と思えるシーンがあるのも事実です。
犯人が当たっていたからいいようなものの、そこまで確信が持てる状況じゃないのに、
犯人や、犯人の恋人(セフレですが)を狙い撃ちにするような嫌がらせは、少々まずいのではないか……事に犯人のセフレに対するセクハラ的な発言は、大丈夫なんかな?とは思いました。


ここから先は余談です。
余談その1

これは僕の感覚の方がズレているような気もするし、「だから何?」というところでもあるけれど、
わずか半年の間に、11人と36回以上のデートをしている女学生(SEXは1人とのみ。キスは3人か4人)って、本当に『身持ちの固い、真面目な女子なのかしら?』と思いました。
いや、別にいいんです。
ミッチェルが身持ちが固くない、不真面目な女子だったからと言って、殺されて当然だとは全く思いません。そんなに悪い娘だったとも思っていません。
ただ……「すげー遊び歩いてるな、コイツ」とは思ったので、そこら辺にズレを感じました。


1人の人と36回デートならまぁいいですし、
20~36人の人と36回デートなら、『恋活・婚活頑張りすぎ女子!』みたいな感じですけど、
中途半端に6回・7回のデートをした後で急に冷たくなって振ったりとかをしまくっているのは、
(相手も合意ならそれでいいけど)、ミッチェルに対して本気になっちゃった男子はかわいそうだなぁと思っちゃって。
SEX関係は1人とだけだったみたいですけど、SEXしてなければ真面目なのかなぁ?と。
世間の価値観と真反対で恐縮ですが、むしろSEXしまくり11人と36回の方が、個人的にはまだいいです……。

にしても半年で11人と36回デートってすげぇな。
俺は全然モテないけど、仮にそんだけモテたとしても半年で11人・36回もデートしたくないわ。
モテすぎるのも困りもんだな、ちょっと休ませてほしい(そんな台詞言ってみたいw)


余談その2

直前に読んだ「リリアンと悪党ども」でも思ったんだけど、海外小説だと30代中盤~後半って
普通にバリバリ恋愛生活を謳歌してますよね。恥ずかしい事ではなく、ナチュラルに。
スペンサーシリーズだって、ヒロインのスーザンは40代だし、多分スペンサーも40代だけど
全然枯れてないし、落ち着いた大人の恋愛が楽しめます。

日本の作品だと、老け込んでたり枯れてたり、「オジサン(オバサン)が無理してる」みたいな描写……要は年齢をネガティブに捉える作品がやけに多く感じるんですが
(たとえば今やってるゲームにも、35歳で自分のことを「オジサン」と呼ぶ、加齢臭を気にするキャラがいます)、そのたびに嫌な気持ちになります。
自分は何歳になっても老け込みたくないし、他人にもなるべく若々しくいてほしいと思いました。