注:この記事は、カンファレンス決勝第3戦が終わった時点で書いています。
(第4戦も既に行われていますが、筆者はwowow観戦のため、1日遅れています。悪しからず)


過去3年のNBAを支配してきたのは、西の雄ゴールデンステイト・ウォリアーズである、と書いても
誇張ではないだろう。
14-15優勝、15-16準優勝、16-17優勝。
15-16は準優勝じゃないか、という反論は当然の事だが、
決勝こそ敗れはしたものの、この年NBA史上最多の73勝を挙げたウォリアーズは、やはりこのシーズンのベストチームだったと思う。


さて、そんなウォリアーズとタイトルを分け合ってきたのが東の雄クリーブランド・キャバリアーズだ。
3年連続、同一カードの決勝はNBA史上初。
14-15準優勝、15-16優勝、16-17準優勝。
西高東低のNBAではあるが、東地区をこの3年支配してきたのがキャバリアーズである。


絶対王者ウォリアーズ。東の王者キャバリアーズ。
この2チームに対抗する新勢力はあるのか。そこが、今シーズンの見所であった。


☆ウェスタン・カンファレンス

決勝
ゴールデンステイト・ウォリアーズ
VS
ヒューストン・ロケッツ


〇ゴールデンステイト・ウォリアーズ   80点~100点(西決勝で負けたら80点。NBA優勝で100点)

そしてやはりと言おうか、今年もまた最強王者ウォリアーズは盤石の戦いぶりを見せつけている。
リーグ戦ではロケッツに1位の座を譲ったものの、それは負傷者に泣かされたから。
カリー、グリーン、デュラントといった主力が軒並み欠場した時期もあり、3月末からは負けも嵩んだものの、やはりベストメンバーが揃えばこのチームは強い。
「スプラッシュ・ブラザーズ」と称されるカリー、トンプソンの3ポイント攻勢だけでなく、
インサイドでもバッチリと仕事ができるデュラント、オールラウンダーのドレイモント・グリーン、
そしてシックスマンのイグダーラと、攻撃だけでなく守備もできるのがこのチームの強みだ。
チーム内の連携も非常に良く、カリーに象徴されるような「見ていてワクワクする、楽しいバスケ」を展開するウォリアーズ。
ラフプレーで名をはせるパチューリアや、もめごとの絶えないグリーンといったダーティーな面もあるにはあれど、『強く・美しいバスケ』で頂点に立ち続けるウォリアーズ。
唯一つまらない点があるとすれば、強すぎる事である。
今年の王者もウォリアーズで決まり……現時点(ロケッツ戦第3戦終了)で既にそんな予測が成り立ってしまう。それくらい圧倒的な存在だ。


〇ヒューストン・ロケッツ   85点~100点(西決勝で負けたら85点。以下略)

そのウォリアーズの対抗馬は、昨年はサンアントニオ・スパーズの役割であった。
今年は違う。スパーズを押しのけて、西地区のリーグ戦を制したのはロケッツだった。
ウォリアーズの3ポイント攻勢を更に極端な形に推し進めた、3ポイント爆撃が最大の特徴だ。
チームの絶対エースだったハーデンに、今年は相棒ポールを加え、2大スターの片方が不調でも
勝ち切る強さを手に入れたロケッツ。
アリーザや新加入のタッカー、そしてインサイドの守護神カペラの成長もあり、急速に守備力も整えつつある。
シーズン開幕前は、ポールとハーデンのポジションが重なる事から不安視された連携だったが、お互いをリスペクトし合う二人のエースはそんな不安をいとも簡単に払拭。
ウォリアーズに唯一肉薄しうる可能性を感じさせた。

その西地区決勝では、現在第3戦終了で1勝2敗。
善戦はしているものの、ウォリアーズに比べて、まだ1~2枚戦力的に足りていない印象だ。
とはいえ、ウォリアーズが異常なのであり、ウォリアーズを除く29チームの中では群を抜いた戦力を有している。

西地区ベスト4

☆ユタ・ジャズ     80点

クイン・スナイダ―HC(ヘッドコーチ)の元、守護神ゴベールを中心にバランスの取れたバスケでベスト4に勝ち上がったのがジャズ。
旧式の司令塔ルビオがボールを運び、驚異の新人ミッチェルが得点を量産。
3ポイントのイングルスと、時代の最先端を行く『尖った』バスケの2強とは違い、
良質な『旧来のバスケ』を展開するジャズは、どこか見ていて安心するチーム(主観です)だ。
スーパースター不在ながらも、まとまりのあるチームバスケで、西地区の驚きとなったジャズ。
ミッチェルがこれからどこまで飛躍するのかも注目したい。


☆ニューオーリンズ・ペリカンズ  80点

アンソニー・デイビス&デマーカス・カズンズのツインタワーを軸に、超攻撃的なバスケを展開してきたペリカンズ。
だが、悲劇はシーズン中盤にやってきた。まさかのカズンズ負傷。
終わった、と思われたペリカンズだが、フロントの動きは迅速だった。
カズンズとは持ち味の異なる3ポイントシューター、ミロティッチを即座に補強。
カズンズ出場時とはまた違う武器を手にしたペリカンズは、勢いを落とさずベスト4まで勝ち上がった。
チームを転々としてきたロンドが水を得た魚のようにゲームを支配し、ドリュー・ホリデーの成長もあり、とにかく点を取りまくるバスケ。取られまくるけれども、それ以上に取りまくるバスケで、1回戦トレイルブレイザーズを撃破。
ウォリアーズには敗れたが、ある程度の手ごたえを得たシーズンだった。

ベスト8

☆サンアントニオ・スパーズ    60点

長年西地区で安定した強さを誇ったスパーズは、今、転換期を迎えている。
40歳のジノビリ、35歳のパーカーだけでなく、パウ・ガソル、オルドリッジなど30代の主力が多い中、スパーズの大エースだったはずのレナードは原因不明の負傷で出場を拒否。
むしろこの状態でよくベスト8まで勝ち進んだ、と言った方が良いかもしれない。
老将ポポビッチがいる限り大崩れはしないだろうが、すぐに王者の位置に復帰できるとも思えない。
スパーズは今後数シーズンは今の位置(もしくはベスト4)にとどまりそうだ。


☆ミネソタ・ティンバーウルブス  65点

14年ぶりのベスト8進出。
今までの努力が報われ、飛躍したシーズンにしては点数が低いと感じる方もいるだろう。
それは、トム・シボドーHCの『選手を使い潰す』戦い方に疑問があるからだ。
主力はバトラー、ギブスンといった元シカゴ・ブルズ組で、シボドーHCも元ブルズ。
控えのブルックスやローズも、皆シボドー子飼いの選手たちである。
そんなブルズ組+タウンズ&ウィギンスの若手2人がウルブスの主戦力だが、いかんせん控えの層が薄い。
主力を使い潰すシボドーの元で控え選手は果たして育つのか。
そして酷使された主力が負傷欠場してしまったら? 
バトラーが負傷し、主力に疲労が溜まり続けた結果、シーズン終了間際でナゲッツの猛追を浴び、危うくベスト8の座から転げ落ちるところだった。
結果は出した。見事な結果だ。だが、薄氷を踏むようなベスト8だった。


☆ポートランド・トレイルブレイザーズ  60点

去年とほぼ同等の戦力で、ほぼ同等の成績を収めたチームは東西問わず幾つもある。
ブレイザーズもそんなチームの一つだ。
リラード&マッカラム体制で、ベスト8敗退。
ブレイザーズはこれをもう3年ほど繰り返してきた。
ベスト8に進める以上、悪いチームではない。
だが、これ以上の成績を求めるなら、何かを変える必要がある。
ブレイザーズはどう動くだろうか? それとも動かないのだろうか?


☆オクラホマシティ・サンダー 55点

大エース、ウェストブルックのワンマンチームである。
昨シーズン、ウェストブルックが孤軍奮闘していたチームは、この夏大補強を敢行。
カーメロ・アンソニー、ポール・ジョージと2人のスーパースターを加入させ、
OK3と呼ばれるスーパースターユニットを作り上げた……はずだった。

しかし、カーメロは全くの期待外れ。ジョージに関してはウェストブルックの補佐官として
それなりの活躍を見せたものの、
ウォリアーズのカリー&トンプソン&デュラントや、ロケッツのハーデン&ポールと比べるといかにも見劣りする。
そして、結局はウェストブルックの個人ショーだ。
OK3をしり目に、黙々とリバウンドを取りまくる影のMVPアダムスの奮闘が光るサンダー。
ウェストブルックは相変わらず化け物じみた成績を残しているが、チーム成績にはあまり結びついていない。このままウェストブルックと心中するならば、サンダーに浮上の芽は薄い。


☆デンバー・ナゲッツ 60点

惜しくもプレーオフ進出はならなかったものの、西地区の激闘を盛り上げてくれたナゲッツ。
ヨキッチを除くと、めぼしい選手はいないものの(ミルサップは不調だったし)、
プレーオフ戦線に最後まで踏みとどまり、最終節まで希望を繋いだその粘りには感動した。
最終節、プレーオフの座をかけて激突したティンバーウルブズ戦は、NBAファイナルと同等の緊張感に満ちていた。


☆ロサンゼルス・レイカーズ 60点

そして、もう1チーム。成績こそ振るわなかったにも関わらず、好印象を与えてくれたのがレイカーズだ。
偉大なベテラン、コビー・ブライアントが引退して2年。
クーズマ、イングラム、ボールといった若手を中心にした新星レイカーズは、
ロケッツ戦ではダブル・オーバータイムの死闘を展開。
ウォリアーズ戦でも2試合がオーバータイムと、『好試合製造機』のような熱戦を見せてくれた。
問題があるとすれば、いつも最後には負けてしまった事だが……。
ロケッツVSレイカーズ戦は、今シーズンのNBAのベスト5に入る熱戦だった。



☆東地区

決勝
クリーブランド・キャバリアーズ
VS
ボストン・セルティックス



☆キャバリアーズ   65~85点(東決勝で負けたら65点。勝ったら85点)

今年もキャバリアーズは、東地区を勝ち上がってきた。
しかし……。
去年までのキャバリアーズは、大エースレブロンと並び立つ、もう1人のスター選手アービングがいた。
だが、アービングを放出したキャブスは大きな武器を失った。
それだけではない。
夏に加入した新戦力(クラウダー、トーマス、ローズ、ウェイド、カルデロン、ジェフ・グリーン)のうち、クラウダ―~ウェイドまでの4人を冬には放出するドタバタ劇を展開。

カルデロンが意外とチームにフィットしたのは個人的に驚いたが、トーマス、ローズ、ウェイドが
キャブスのシステムにフィットしないであろう事は、ニワカNBA観戦者の私ですら予測が出来た
(まぁ、ハーデン&ポールも失敗するだろうと思っていたので、ドヤ顔は出来ないのだが)。

何のための補強だったのか? 
結局、例年以上にレブロンに負担がかかった、レブロンのワンマンチーム。
それが現在のキャバリアーズである。
昨シーズンの戦力からアービングが抜けた。そう言い換えてもいいだろう。

レブロンは相変わらず超絶パフォーマンスを見せているし、副官のラブ、リバウンダーのトンプソンは良い。3ポイントシューターのコーバーも相変わらず怖い。
しかし、彼らは皆、去年からキャブスを支えてきたいわば中堅・ベテラン選手たち。
新しい驚きはなく、例年以上にネガティブな印象が付きまとう。


☆ボストン・セルティックス   85~100点

翻って、セルティックスには未来がある。
なぜか。2大エースと目されたヘイワードとアービング(去年までキャバリアーズにいた)。
この2人が怪我で離脱したにも関わらず、ベスト4までたどり着いたのはそれだけで快挙と言って良い。
2人の穴を埋めるように、テイタム、ブラウン、ロジアーといった若手達が急成長を遂げ、
それをまとめるベテラン、ホーフォードも実に頼りになる存在だ。
若きスティーブンスHCの手腕も光る。
現在キャバリアーズを相手に2勝1敗と勝ち越しているセルティックス。
2大エース不在ながら、東地区を制してもおかしくない勢いだ。
そして、来シーズンにはヘイワードもアービングも戻ってくる。
完全体となったセルティックスは、ウォリアーズを超える事ができるだろうか?

まずは、不完全体である今シーズンの戦いを見守ろう。
まさかとは思うが、この状態でNBAを制覇したら……これは100点どころの騒ぎではない。


ベスト4

☆フィラデルフィア・セブンティシクサーズ 85点

毎年毎年負け続け、優秀な若手をかき集めてきたシクサーズが、今年ついに若手達の力を解放した。
エース、エンビードを軸に、シモンズ、シャリッチ、コビントンといった若手陣。
そこに、足りない3ポイントの力をベテラン、レディック&ベリネッリの補強でカバーする。
フロント陣も実に手堅い動きを見せ、新時代の東地区王者を伺っている。


☆トロント・ラプターズ  65点

またか……と言わざるを得ないのがラプターズだ。
毎年毎年、キャバリアーズに負けてきた彼らは、それでも選手を変えず、今シーズンに挑んだ。
そして、例年以上の素晴らしい成績でプレーオフに臨む。
だが、東準決勝で当たったのはまたしてもキャバリアーズ。そして、彼らはいいところなく敗れ去ったのだった。
ラウリ―&デローザンは素晴らしい選手だが、他チームのエース級の選手に比べて波があり、計算が立ちにくい。特に大試合になればなるほど、調子が下がってしまうのが問題だ。
そんな2人を補佐するヴァランチュナスとイバーカは心強いが、ヴァランチュナスは通常ファウルがかさむケースが多く、イバーカは逆に突発的に乱闘してしまったりするところが問題だ。
そもそも、イバーカは1人でチームを変えるような選手でもない。
ラウリ―、デローザン、ヴァランチュナス……この体制で闘う限り、東地区3~4番手の位置はキープできるだろう。しかし、キャバリアーズには勝てない。
過去3年で一番良いラプターズは、過去3年で一番悪いキャバリアーズにすら4戦全敗した。
ここには、選手の実力以上の何かがある。
それは、メンタルの問題……キャバリアーズ恐怖症。いや、レブロン恐怖症。
そういった何かが、このチームには蔓延しているのかもしれない。


☆ワシントン・ウィザーズ  60点
 ミルウォーキー・バックス 60点
 インディアナ・ペイサーズ 70点

あたりも書こうかと思ったけど、それほど書くこともないのでやめておく。
ウィザーズ、バックスは昨年とほぼ印象が変わっていない。
ウォール&ビール&ゴータットと選手の質は高いウィザーズだが、やはり去年と同じ選手の顔ぶれで成績も去年並。バックスに至ってはアデトクンボのワンマンチーム感が強い。

ペイサーズは、選手の顔ぶれは変わったが、『キャバリアーズを追い詰めながら、最後の最後で勝てなかった、キャバリアーズの難敵』といった印象である。


というかペイサーズは放送自体が少なかった……。
英語中継を見れば良いのかもしれないが、wowow&rakutenTVではペイサーズの試合はほとんど見られなかったのだ。



以上、NBA観戦に日が浅いニワカの今シーズン雑感をお送りしました。