独断と偏見による印象順位

☆8位 ロシア

大会開催前は、エジプトにすら劣るのでは?という声も一部あった(はい、私です)
全く期待されていなかった開催国だが、スペインを下してのまさかのベスト8。
そのスペイン戦では「攻撃を度外視した人間の壁」戦法で、退屈な退屈な120分を披露してくれたため
僕の評価は低いが、それ以外の試合では「ちゃんと攻撃していた」。

大会に入って、ラッキーボーイ的に存在価値を高めたのがチェリシェフ。
また、運動量の多い司令塔ゴロビンのクオリティも目立った。
高齢化が進んだ上にレギュラーCBが2人も故障に倒れたDF陣も、
守護神アキンフィエフを中心に大崩れしなかった事も評価したい。
第1戦でダメだった、スモロフに代え、基準点型FWジューバを重用したチェルチェソフ監督の手腕も光る。
ベスト8の他の国と比べると、やはりクオリティの低さが目立つが、逆に言えばそのチームを率いてここまでの成績を成し遂げたのは素晴らしい。



☆7位 スウェーデン

今大会猛威を振るった「ブロック守備」。
別名「引きこもりサッカー」の使い手として、ウルグアイと並ぶ完成度の高さを誇ったのがスウェーデンだ。
守備の中心グランクビストを軸にしたその守りはまさに鉄壁。
奪ったボールは前線のベリ、またはトイボネンへ。
彼らがポストとなって落としたボールを、走力に溢れるフォシュベリやラーション、エクダルらが回収し、二次攻撃に繋げる。

全くファンタジーの欠片もないサッカーは、退屈ではあるが、強かった。
特にメキシコ戦では上背の大きさを活かし、メキシコを完膚なきまでに叩きのめした。

大会前、『お騒がせ男』イブラヒモビッチの復帰が取り沙汰されたが、チーム一丸となって「No」を叩きつけたその決断も見事。
イブラヒモビッチは大人しくベンチに座る選手ではないし、彼が入っていたらこの「引きこもり全員守備」は機能しなかっただろう。
ベリやトイボネンは、守備にまで参加していた。イブラはそこまではしないだろうから。

☆6位 ウルグアイ

スウェーデンと並び引きこもりサッカーの熟練者だが、このチームは年季が違う。
2006年のタバレス監督就任以来、ずっとこのサッカーをやっている(はず。僕が観たのは2010年からだが)のだ。

ゴール前に壁を築いて失点を最小限に抑え、少数の卓越した個がゴールを奪うサッカーは、
昔イタリアが実践していた。
既に死語となった感のある『カテナチオ(閂)』、そして少人数でも相手ゴールを崩せるスーパースター『ファンタジスタ』。
このウルグアイはそれを、現代に移植した『旧き良きイタリア・サッカー』である。
タバレスの経歴自体、ACミランでの指揮経験もあるのだから、それも納得であるし、
現在欧州サッカーで随一の『カテナチオ』を誇るアトレティコ・マドリ―で揉まれる
ゴディン、ヒメネスがウルグアイ代表でもCBを務めている。
クリスチャン・ロドリゲスも元アトレティコのプレイヤーだ。

そんなウルグアイは、フランスに敗れた。
卓越したスナイパー、スアレス&カバーニ。
そのうち一人(カバーニ)が負傷で欠場したフランス戦、その影響は如実に表れた。
過去の大会でも、スアレスが欠場した2014コロンビア戦、2010オランダ戦と、
凄腕スナイパーの片方が欠けると途端に破壊力が低下し、敗れてしまうのがこのチームの弱点である。
短期決戦とはいえ、アクシデントによる欠場は付きもの。
逆に言えば、五体無事でこのコンビが揃えば、どんな相手にも恐れを抱かせる事が可能なのだが。

守備の重鎮ゴディンも、スアレスもカバーニもみな同世代。
彼らが揃って30を超えたこのチームは、今回で見納めになる可能性が高い。
2010からほぼ一貫したメンバー、一貫した姿を見せてきたウルグアイの一時代は終わる。
彼らが4年後も、強豪としてワールドカップを迎えられるだろうか?

守護神ムスレラはまだやれるだろう。
SBのラクサ―ル、DHのトレイラ、OHのベンタンク―ルなど若手の好タレントも何人か発見できた。
ただ、スアレス&カバーニの代役はいない。
世界トップ10に入るストライカーコンビが、小国ウルグアイに誕生する事など、やはりなかなかないのだ。
それだけに今後のウルグアイ代表が楽しみである。
もちろん、共に35歳になっているスアレス&カバーニが4年後も躍動する、なんて可能性もゼロではないが……。

☆5位 ブラジル

優勝候補筆頭のブラジルが、ベスト8にも残れない。
ドイツ、スペインといった『敗退仲間』たちよりも上に残ったとはいえ、結果を見ればやはり『失敗』と言わざるを得ない。
とはいえ、パフォーマンスを見ればここで敗退するにはあまりにも惜しい好チームであり、
ベルギー戦での敗戦にしたって、内容面ではベルギーを凌駕していたのは事実である。

攻→守の切り替えは迅速で、遅攻からでも相手を崩せるその攻撃力は大会屈指だった。
ネイマール頼みだった前回とは違い、今大会は副官コウチーニョが躍動。
中盤の底から飛び出すパウリーニョも好調で、『得点を取れるピース』は何枚も用意できていた。

ただ、残りの2枚。ウィリアンとジェズスは物足りなかったと言わざるを得ない。
メキシコ戦では良かったウィリアンだが、ベルギー戦では沈黙。
ジェズスに至っては大会を通して良いところがなかった。
ベルギー戦ではネイマールを中心に、チャンスの山を築き上げたが、相手GKクルトワのスーパーセーブがあったとは言え、決定力を著しく欠いた。

カゼミーロの出場停止も響き、代役のフェルナンジーニョは戦犯級の不振。
ファグネルも(ここまで頑張っていたが)ベルギー戦では若さを露呈した。
大会を通してネイマール以上のインパクトを放っていたコウチーニョまでが、決定機を外す始末で、
「勝てた試合を落とした」印象は拭えない。


ネイマールに関しても評価は難しい。
元々「こういう」選手なのだが、今大会でその姿が随分と取りざたされ、
知らなかったファンにまで浸透してしまった感がある。
メンタル面に著しい問題を抱えた選手だけに、この選手をエースとして仰がなければならないというのはやはり苦しい。
ブラジルの攻撃の中心が彼であることは、間違いないところではあるのだが……。