S→味わい深く、いつまでも心に残りそうな作品

山猫の夏/船戸与一……何十年間も殺し合っていた二つの家が、ついに住民を巻き込んで全面抗争。
マッチョな作風なのに随所に挟まれる歴史トリビア含め、英雄的な『山猫』とそれを間近で見守る『おれ』、バンビーナやチラテンデスといった、ある意味原始的な(野蛮なと言ってもいい)が力強く暴力と金に活き活きと生きる人々の、ある種強烈なエネルギー。そして、胸を吹き抜ける爽やかさと寂寥感。
ブラジルを舞台に作者の描いた『白昼夢』に魅せられた。


A→読んで良かったと思える作品


毒薬の小瓶/シャーロット・アームストロング……感想はこちら(バレあり)で。

夜の熱気の中で/ジョン・ボール……黒人差別が蔓延る南部で、黒人探偵が活躍する。初めは彼を蔑んでいた警部や巡査も、いつしか彼に敬意を表するようになる。
ラスト「白人専用」の席で一緒に星を見上げる、白人警部と黒人探偵のショットも美しい。良作。

クロイドン発12時30分/クロフツ……非常に丁寧で趣深い倒叙小説&法廷小説の名作。欠点があるとすれば、あまりに丁寧すぎる&遊び(余分な部分)がなさすぎる点だろうか。ずっと読んでいると、疲れてしまうw しかし名作。

男の首/ジョルジュ・シムノン……なるほど、これがメグレ警部シリーズか。
古いながらも、犯人の心理に寄りそう作品で、なかなか読ませる。これがラディカルに進化すると、異常心理小説、あるいは社会派小説になるのかな。コンパクトで読みやすく、中身も詰まった作品。


B→暇つぶし以上の有益な何かを得た作品

リトルドラマーガール/ジョン・ル・カレ……愛する男に操られ、中東問題の渦中に投げ込まれた女性主人公。ラスト数十ページ、段々に壊れていく彼女の姿が印象深い。しかし、ル・カレは読みづらいな……。もう少し読みやすく書いてほしいw

キドリントンから消えた娘/コリン・デクスター……迷推理・珍推理を組み立てては外すモース警部のめくるめく妄想は、前作「ウッドストック行最終バス」から更に磨きがかかった。
ヒラリー・ウォー「失踪当時の服装は」に捧げる、素晴らしきオマージュ。


まるで天使のような/マーガレット・ミラー……夫ロス・マクドナルドの作風にあまりにも似ていて驚いた、ロスマクの妻、マーガレットの作品。
マーガレット自身も著名な作家なのでこういうのもおかしいが、よく描けている。怪しい宗教団体が魅力的だったので、できればそっちを濃密に描いてほしかったところはあるけど。


別れを告げに来た男/フリーマントル……『無能な上司とその取り巻き、無能な同僚に囲まれて、正しい事をしている有能な主人公が冷遇される(けど、最後少しだけ認められる)』話。
有能だけど不器用で、組織の中でいつも冷遇されているけど、正しいのは主人公なのだ……みたいな。
実力もあって優しいのに、気弱でルックスも悪い(若ハゲ)ため、ほとんどの人から相手にされない
悲しい主人公……。
最後に一発、上司にガツンと噛ます「消されかけた男」よりこちらの方が好きだけど、それにしたって哀愁漂いすぎ……。


高層の死角/森村誠一……ストーカーと大差ないような執念のアリバイ崩しが印象深い。しかし、冤罪だったらどうする気だったんだろう。
犯人の動機が意味不明すぎてどうにもノレなかった。普通こんな理由で人を殺すか? 『太陽が眩しかったから』の方が遥かに説得力を感じるぞ。
トリックもとても複雑だが、『ホテルのシステムを使って、やろうと思えばできたんだろうな』とは思った。

死神の精度/伊坂幸太郎……仔月さんという方と、対談を行ないました。よろしければ、対談記事をお読みください!

影の告発/土屋隆夫……アリバイ崩し系ミステリ。犯人のアリバイを執念の捜査で崩していくのだが、
被害者があまりにクズすぎて、「もうほっといてやれよ」と思ってしまった。追いつめられた犯人が2人目の殺人を犯してしまうのだが、警察が放っておいてあげれば2人目は死なずに済んだし、犯人も捕まらずに済んだんじゃない? 
そりゃ殺人者を捜査して逮捕するのは当たり前だけど、最初に殺された奴があまりにも酷すぎるので、むしろ殺した犯人に賞状でもあげたい気分だし、犯人を捕まえても誰も幸せにならない胸糞悪い話だった。




C→暇つぶし程度にはなった作品

消されかけた男/フリーマントル……肩の力を抜いて読める、良い娯楽小説。しきりに「サラリーマン小説」っぽいと解説で述べられていたが、確かにそう言われればそうだなぁと思った。

料理人/ハリー・クレッシング……悪魔のような暴君シェフが大暴れする話。特に退屈せずに読めたが、「……で!?」っていう。偉い人とお近づきになりたいとか、大豪邸でパーティーを開いて評判になりたいとか、そういった虚栄心を悪魔が巧みに突いてくる感じだけど、この手の欲がほぼ全くない僕には、なんでそんな面倒な事をしたがるのかサッパリわからないのだった。

スクールボーイ閣下/ジョン・ル・カレ……前作「ティンカー、テイラー~」に比べればまだ解りやすい。

スマイリーと仲間たち/ジョン・ル・カレ……
3部作の中では一番読みやすく、面白い。しかし、2000ページ読んだ感想が、「戦いは汚く、虚しいねぇ……」程度なので、読む必要はなかったよね。
僕には難しすぎたのかな。宿命の対決モノならジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」が好きです。

お楽しみの埋葬/エドマンド・クリスピン……

D→自分には合わなかった作品

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ/ジョン・ル・カレ……そもそも何が起きているんだかすら分からないw こいつら(英国情報部)は何と戦っているんだ? 普段の業務ってなんなんだ?
ソ連情報部に壊滅させられるわけだけど、そもそも英国情報部って普段何やってたの? 何やってたからソ連情報部と対決する事になったの? てかソ連情報部も普段何やってんの?
という基礎的な事すらよく解らない。
もちろん、『国防上の何か大事な事をやっているので、無いと困るんだろう』という推測はできるけど、実際何やってんだか分からないし、何やってんだか分からない組織同士が暗闘してても『ナンダコイツラ』ってなってしまった。
スパイ小説でこんな感想になったのは初めてかもしれない。




これから読む予定の本(直近)