初読の感想

読んだことがない人でも、皆が何となく知っていそうなファンタジーの超有名作「ハリーポッター」。

叔母一家にいじめられている孤児の眼鏡少年が、実は魔法界の天才少年だった!
というストーリー。
第一作の


では、初めての「魔法学園(ホグワーツ)」へのワクワク感が素晴らしく、読者を惹きつけるのも請け合いです。

小学校に入学する時に感じたようなワクワク感(いや、不安しか感じていなかったような気もしますが)
を数倍にして追体験ができる、取っつきやすい良質ファンタジーです。

ただなぁ。
ハリーポッターの面白さって、魔法学園に対する高揚感に支えられていて、巻を追うごとにその新鮮さは失われていくんだよなぁ……。
第1巻では新鮮なホグワーツ生活も、慣れてくればそれが普通ですから。
しかも物語後半(不死鳥の騎士団あたり)


からは、魔法バトルが主体になってきて、これがつまらないのなんのって。

「トワイライト」でも感じたけど、大ヒット作の魔法バトル部はなんでこんなにつまらないねん。


魔法+学園モノが面白いんであって、バトルモノが面白いわけじゃないんで……。しかもえっらい長いし。

バトルなら

魔界転生 上

魔界転生 上著者: 山田 風太郎

出版社:講談社

発行年:1994

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とかの足元にも及ばないんで……。

というわけで、一応最後まで読んだものの
「『炎のゴブレット』まで読めば十分じゃん」というのが初読時の感想でした。


差別主義との戦い

今回、気の迷いで再読してみましたが、概ね感想は変わりません。

ただ、前回は全くノレなかった「不死鳥の騎士団」以降の展開について、
多少の気づきがありました。

それは、ハリーポッターに付きまとう、『純血』・『半純血』の問題。

ラスボスのヴォルデモート卿(トム・リドル・ジュニア)。
ホグワーツの校長、アルバス・ダンブルドア。
ハリーを産んだリリー・エバンス。
リリーへの愛に生きたセブルス・スネイプ。
ヒロイン格(?)のハーマイオニー・グレンジャー。

全てが半純血の出身であり、それぞれが『血統』に対してそれぞれに想いを抱えています。

母を捨てたマグルの父親が許せず、『父親憎し→マグル憎し』の差別主義者になってしまったヴォルデモート卿。

ジェームズ・ポッターにいじめられている現場をリリーに見られ、恥ずかしさのあまり
「穢れた血」と口走ったばかりに、リリーに嫌われてしまったスネイプ(スネイプ自身も半純血なのに……)。

妹がマグルにいじめられ、生涯心を病んでしまった結果、マグル嫌いの差別主義者になってしまった、若き日のダンブルドア校長(のちに宗旨替えしました)。

『穢れた血』と散々呼ばれ続けながら、
最終巻では「穢れた血で何が悪いの? それこそが私の誇り」だと言い切るハーマイオニー。

他にも人狼のルーピンとニンファドーラのカップルなど、物語の端々に差別問題が顔を出しています。
ヴォルデモート陣営とハリー陣営の激突は、差別主義と反差別主義の闘いでもあるのです。

赦すこと

そしてもう一つのテーマは、『赦す』こと。

ヴォルデモートは父を赦すことができず、最後には闇陣営の首領となってしまいました。

翻ってダンブルドア校長は、妹をいじめたマグルという人種を赦しました。
しかし、自身の過去を赦す事が出来ず、苦しむ事になりました。

リリーは傲慢さを恥じたジェームズを赦し、嫌っていた彼と結婚。
これが、最後までリリーに赦されなかったスネイプ先生の、闇墜ちの一因ともなりました。
そしてダークサイドに堕ちたスネイプ先生を、ダンブルドア校長は赦し、改心(?)のキッカケを与えたのでした。

ダンブルドア校長に一時不信を抱いたハリーは、なかなか彼を赦す事が出来ませんでした。
しかし最後には、再びダンブルドア校長を尊敬するようになりました。

ダンブルドアに対するハリーの想いは、キリスト教的なテーマに絡めて読むことも出来ます。
人は神に不信を抱き、それでも最終的には信仰に生きるのです。

ハリーと、チョウの決別も印象的でした。
ダンブルドア軍団を裏切ったマリエッタ、親友のマリエッタを庇うチョウと、裏切り者を赦さず呪いをかけたハーマイオニー。
そしてそんなハーマイオニーを赦せないチョウ。
ハリーとチョウの決別は、赦すことができなかった者同士の当然の帰結でもあり、現代日本に生きる私たちマグルの人間関係においても、よくある話だと思います。

最終巻でハリー達を置いて去って行ったロンを、ハリーとハーマイオニーは赦します。
だからこそ、ハーマイオニーとロンは結ばれ、ハリーを含めた3人は最後まで親友でいられたのでした。

人は過ちを犯します。
ダンブルドアはハリーに自らの恥ずかしい過去を語らず、ハリーの心を傷つけました。
スネイプは一時ヴォルデモート陣営に与していました。
ロンはハリー達を置いて、一度はその場を去ったのでした。

もちろん、全て赦すのが良いとは思いません。
しかしお互いを赦し合い、手を差し出すことで改善される人間関係もあります。

*ダドリーとハリー、ドラコの息子とハリーの息子の関係性も含め、色々と考えさせられました。

*過去にスネイプ先生を虐めていたジェームズ・ポッターを嫌う声はインターネットでもよく見ますが、
僕らも広い心を持ってジェームズ・ポッターを赦しましょう(棒読み)

最後に推しキャラ

好きなキャラクターは、ハーマイオニー、ルーナ、マクゴナガル先生、ルーピンあたりなんですが、
世間の人気を見ると、マクゴナガル先生ファンをあまり見かけません……。
ハーマイオニーは僕が推さなくても人気があると思うので、個人的にはマクゴナガル先生を推したいです。

聖人だし、真面目だし、お茶目だし、最高じゃないっすか?
僕の中で、アガサ・クリスティのミス・マープルと肩を並べる、ナイスレディなのですが……。

マクゴナガル先生、好きだ――!! 

(恋人にしたいのはルーナです)